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新卒がITの面接落ちるあるある 3(市場価値上げたい!!の罠)

新卒採用や中途未経験採用やってて、割とよくあるパターンなんですが。
『市場価値上げたいです!』ってのが志望動機なひとね。

これ、本来なにもおかしくはない訳ですよ。
だって、新卒にしろ中途未経験にしろ、『未経験者』なわけじゃないすか。
特にIT業界、未経験者の扱いがめちゃめちゃ悪いですよね。転職市場での市場価値を確保しないと、何かあった時にアウトになっちゃう訳です。

グロービス経営大学院 MBA用語集 より引用

これ、みんな大好きカタカナ語で言うと、『エンプロイアビリティ』って言います。

・ITは未経験者に厳しい
・終身雇用は崩壊している
・組織論的には、企業は労働者に環境や機会を提供するべきものとされる。

と言う事から、『転職市場での市場価値=個人での生存能力』を早期に確保したいと考えるのは当然です。

と言う訳で、なにもおかしくないんですが、カルチャーマッチだとかパーパス採用だとか、共通目的への納得度とか、採用対象を選べる会社ほど、志望動機がこれだけだと通じなかったりします。

これ、なんでなん?

どうしたらええねん。

と言う話が、今日のネタになります。

1.『市場価値上げたいです!』がNGな理由・背景

ぶっちゃけ、10年前とかでしたらNGではなかったんじゃないかなと思います。

『エンプロイアビリティを早期に確保したい』と言う事は前述のとおり間違ってはおらず、初期段階から危機感を持ち、成長する動機を持っている人材と言う事になります。入社ゴールであとはダラダラやりたいとか考えてる人に比べたら、ずっと期待できますよね。

この状況が変化したのは近年の話で、早い話が『企業側の離職への対処』が原因と言えそうです。


〇ちょっと歴史の話

〇離職の大量発生まで
もともと、エンプロイアビリティの確保自体は、社員の離職確率を下げるものと考えられていました。

近年は知られなくなってきましたが、昔から現在まで、ITエンジニアは加齢によって市場価値が減衰する仕事・人材市場です。ですので、40代50代をいかに生き延びるかと言う至上命題を追うエンジニアが多かったのです。

一般的には、『上流を経験しろ』『業務知識を覚えろ』『マネジメントやれ』『エンドに逃げろ』と言う、今でもオジサンがよく言うやつが≪解決法≫とされていましたので、多くのエンジニアの目線はそちらに向いていました。

要は上流を経験しなくてはいかん訳ですが、IT業界は多層構造の中で垂直に分業しているしている訳ですから、そもそも所属企業が上流を経験できる会社でなくては、生存の道はありません。
と言う訳で、商流上方向への転職活動が多かったわけですな。

まあ、大手狙いとなる訳ですから、やたらめったらと転職する訳にもいかんかったわけでしょう。

しかし、2015年を超えますと、少しづつ状況が変化してきます。

2012年に始まったアベノミクス。政府はベンチャー企業による牽引も期待していた訳ですね。リスクマネーがVCを経由してスタートアップに流れ込むようになり、ベンチャーは成長のあかしとしてエンジニア採用を重視(本来、必ずしも完全内製が必要なビジネスではないのも含む)し、エンジニアバブルへ。
カネは人材サービス業界へ、そして、広告へと流れていきます。

2017年ころかと思いますが、遂にGoogleの検索結果がアフィリエイトサイトで埋め尽くされることになり、市場環境が一変します。

『上流を目指せ』から、『スタートアップを目指せ』に、ルールが変わった訳ですね。
(この影で、ITエンジニアは加齢によって市場価値が減衰するは、隠蔽された。)

ITベンダーやSES会社は、(彼らから見て)理不尽な、離職発生の危険にさらされる事となった訳です。

〇『育成』の投資価値が低下した
ベンチャー企業は、プロダクトの展開や上場を急がねばなりません。
未経験を採用してじっくり育成する様な時間もなければ、その様な体制だってない訳です。

手取り足取りフォローの不要な経験者となりますと、一般的には2~3年経験のエンジニアと言う事になりますが、このあたりを主なターゲットに獲得競争が繰り広げられる展開になります。給与を高額にしたり、必要経験年数を下げて、1年目から狙っていったりと言う事も起こるでしょう。
また、社員の代わりとして派遣社員やSESを受け入れるという事も増えていきます。

さて、草刈り場となったベンダーやSES会社の視点でこの状況を考えますと。

未経験を採用し、育成投資を行っても、1~3年の間には離職。投資に対するリターンが期待できないという事になります。育成投資を行う企業は激減し、また、残った育成企業も採用方針を硬化させます。つまり、人材の投資価値が厳しく判断されるようになったわけです。こうして、近年の中途未経験者はIT業界への就職活動で苦戦する様になっていきます。

話を戻しますと、『IT企業で1~3年、育成投資をうけた状態』これが、『市場価値のある状態』となりますので、育成をする企業から見て重要な確認事項は、

『市場価値を得た後どうしたいの?』

と言うものになりますよね。
育成投資を行う企業ほど、このポイントを重視する様になっていったわけです。

カルチャーマッチと言うワードはこの頃から出始めた印象です。(ブランドのある大手企業でもこれを担ぎ出した)ひょっとしたら、他の業界でも似たようなことは起こっていたのかもしれませんね。この後もパーパス採用など、似たようなバズワードが続きます。

その後、2021~2022の頃だったと思いますが、ベンチャーへのVC投資は減少。
エンジニアバブルは終了するも、育成企業にはトラウマと、ある種のエンジニアへの不信感。そして高くなった採用ハードルと、大量の広告は残った。そんな状況が現在と言えます。

2.『市場価値』はマーケティングワード=『NGワード』

『市場価値のある状態』を目指す『だけ』のひとは、その後のリターンが計算できない為、採用を回避される。これはこれであるとして、もうひとつどうしようもない理由があります。

≪エンジニア 市場価値≫ で、ググってみてください。

ひたすら転職サービスの広告出てきません?

これね。もう、『マーケティングワード』なんすよ。

もともと、『エンプロイアビリティ』の言い換えとして『転職市場での市場価値』と言う言葉が使われた訳ですので、べつに新しいワードでもないのですが、『カネや福利厚生でぶったたいて転職意欲を喚起する』と言う視点でもフィットしますし。

なにより個人的には、SNS上の変なインフルさんなどが多用したワードと言う印象を持ってます。
人事によっては、『情弱さん』に見えちゃう可能性も高めになっちゃう訳ですねェ。


〇インフルさんの教え

だいたいどのインフルさんも、短期で転職して給与上げよう! フリーランスを目指そう! そのためには、Webサービス運営で使われてそうなプログラム言語を習得しよう! みたいなこと言うとる印象ですね。

どちらが先かはわからないのですが、プログラミングスクールや人材サービス。それらの広告とも連動した世界観を語っており、IT業界外の未経験者から見るとひたすら同じような語り口の広告や動画、SNS投稿を目にする事になる訳です。 

実際には、当のインフルさん自身が40代くらいのおっさんが多いようで。『開発者として忙しいはずなのに、動画作ったりブログ書いたり、ヒマなのかな?』って感じだったりするので、ITエンジニアは加齢によって市場価値が減衰する問題を、クリアできてない様に見えるんすけどね。

未経験~3年くらいのPGが収入や市場価値を上げるという意味では彼らのスキームは正しいと言える。しかし、中長期的な生存を重視した場合は、必ずしも最適ではないと言った感じ。
まあ、あれでしょ。情報商材売って信者からお布施引っ張って生活できるようになるから、生存できる!ってロジックなんでしょうな。


3.んじゃ、どうすりゃええねん。

いや、難しい話になったよね実際。
『市場価値を得た後どうしたいの?』を、語れる必要があるんすわ。

なんかふわっと、『御社に貢献したいです!』とか、『マネジメント層を目指したいです!』とか、ある程度、企業の種類に合わせて決め打ちで用意しとくでも別にいいっちゃいいんだけど、とにかく嘘くさいというか薄っぺらい!(企業理念とか社会貢献とか、お互い様なかんじだよネ)

ベストは、ちゃんと応募企業を分析して、その企業の『やりたいこと』を把握し、それに合わせた志望動機を用意するべきじゃろーなー。

まず大前提。

企業ってのは、他の企業と競争しています。

この競争に負けると、まいにち飯を食うための利益と言うものが得られない訳です。その企業は解散するでしょうね。とにかく絶対に負けてはいけない勝負なわけです。

この勝負に勝つための方針・戦い方・やりたいこと、それが、『戦略』です。

企業の戦略と、相性の良い『やりたいこと』をもった就活生が仮にいるとします。
おそらくこの就活生は、この企業と中長期目線で利害が一致する訳で、離職しづらいだけでなく、持続的なモチベーションを持ったハイパフォーマーとなる事でしょう。

企業の人事の立場に立って考えたら、そういう人を採用したいですよね。

じゃあ、どうやって『戦略』を把握すんだよて。
調べるしかないんだよなー。採用広報とか会社説明会とかをチェックし、キーワードを拾ってくるしかないでしょう。


〇戦略がない会社

実際、中小だとあるみたいですね。戦略ない会社。
これ、どうしたらいいんでしょうね。私でも困るだろうな。

戦略が無いという事は、惰性で走っているとか、日々の細かい戦術レベルの勝ちを積み上げ続ける事で生き続けている会社と言う事になるので、『市場価値を得た後』と言う中期~長期くらいのスコープが存在してないってことなんですよね。

面談内でやり取りしているうちに、潜在ニーズが見えたり、それを解消するための方法を提案して、それの実行にコミットすると言えば、それで勝ち確にはなりますが。
これはたぶん営業とかコンサルとかのスキルだからなー....。

なんなら、本当の戦略はあるが、搾取構造の維持とかなので、求職者には説明できない。なんてパターンもあると思うので、できれば避けた方が良いかもわからんね。

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