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Wantedly Journal | 仕事でココロオドルってなんだろう?

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普通のことはしない。『AKIRA』から始まった神風動画・水崎淳平が、本物のアニメを学び神風動画を立ち上げるまで。

神風動画・代表取締役の水崎さんがアニメーターを志したきっかけ、そしてアニメーターの地位向上を目指し奮闘する理由とは?

2018/10/25

「妥協は死」という社訓を掲げ、深夜アニメ「ポプテピピック」や、劇場アニメ「ニンジャバットマン」など、数々の話題作をつくり続けているCGアニメスタジオ「神風動画」。作品の評価が高いことはもちろん、過酷な労働環境が多いと言われるアニメ業界でアニメーターの地位向上を目指し、“残業・徹夜をしない”などホワイトな働き方を推奨するアニメ制作会社としても注目を集めてきました。代表取締役社長である水崎淳平(みずさき・じゅんぺい)さんは、アニメーターの地位向上のパイオニア的存在とも言われています。

この前編では中学生で『AKIRA』に出会い、アニメ業界を目指した水崎さんがどのように神風動画を立ち上げたのかを教えていただきました。

世間の当たり前や常識をひっくり返す。引っ越しの多い環境で水崎少年が見つけた人生の指針は「自分のことは自分で決める」

アニメの制作費は安くて当たり前、だからアニメーターは長時間労働でも低賃金でも仕方がない……。神風動画の水崎さんは過酷と言われるアニメ業界の“当たり前”を疑い、働き方や制作スタイルを見直し、その常識を覆してきました。

――当たり前や常識をくつがえす視点はいつから生まれたのでしょうか。

「ある種の型破りさ?(笑)世間の当たり前や常識をひっくり返したい! という部分は生まれもった性格として持っていたと感じています。それと、中学生まで引越しが多く、その影響もあるかもしれません。何度も転校しているので、一年中、冬でも絶対に半ズボンじゃないといけないとか、よくわからないローカル・ルールを経験して(笑)。小さい頃から地域によって校則やルールが全然違うことを知っていたんですよね。だから小6くらいで、『ルールの一部は大人の都合で決まっているな』って察しちゃったんです(笑)。それからは、『常識やルールにとらわれず、自分のことは自分で決めよう』と思いました。先生や学校はこう言うけれど、『自分はどう生きたいのか? 』ということを考え始めたんです。自分が思っていることは他人と同じものではないんだ、という意識ができた時期だったと感じますね」

――引っ越しが多かったことで、他になにか影響はありましたか?

「中学2年生の2学期に転校をしたのですが、転校前の学校では、社会の授業を前期で地理、後期で歴史を学ぶ予定でした。でも転校先ではその逆で、前期で歴史を教えていて……(笑)。だから歴史はまったく履修できないままになってしまったんです。そんな状態で高校受験に挑んだので、大人になった今でも歴史への劣等感があるんですよ。いまだに秀吉って誰? 織田信長は何をした人? という状態(笑)。でも、それで戦国時代が舞台の『ニンジャバットマン』を作れたんですからね(笑)」

――歴史を知らずに作れるものなんですか……?

「むしろ僕が歴史を知らないから、あれだけめちゃくちゃな作品ができたんだと思います(笑)。

神風動画は法人化をして今年で16年経つんですが、『ニンジャバットマン』を作ったことによって、既に普通のことはしない会社という“曲者感”は浸透しましたから(笑)」

ニンジャバットマン:Batman and all related characters and elements are trademarks of and © DC Comics. ©Warner Bros. Japan LLC

高校卒業後、京都の芸術系の大学に進学した水崎さん。その大学での就職先は大手ゲームメーカーや広告代理店が多く、アニメ業界を目指す人はごく少数でした。居心地がいい大学でしたが就職活動はせず、卒業後は印刷業者へ就職。その後、契約社員として大手ゲームメーカーでCGキャラクター制作の仕事を行い、アニメの世界に入ったのは、25歳の頃だったそうです。

――水崎さんがアニメ業界を目指そうと思ったきっかけは?

「アニメが好きになったのは中学生の頃で、『AKIRA』の劇場アニメを観てからです。それから大学在学中に、アニメ監督の森本晃司さんが作成した KEN ISHII の『EXTRA』というミュージックビデオを観てアニメーターを志しました。森本さんは『AKIRA』の制作にも参加しているんですよ。当時、ミュージックビデオをアニメーションで作るっていうのは革新的で……。森本さんの描くあのダークな絵がテンポよく展開されていくことが衝撃だったんです。この作品を観て、『アニメは文化やファッションになれる!』と感じましたね。それまでは子供向けだったりコアなファンが楽しんだりという印象をもっていたのですが、アニメの捉え方そのものを変えてくれた作品だと思います」

――神風動画のはじまりは?

「京都にいたときです。はじめは個人事業主としてやっていました。その後に求人を出し、森田修平と桟敷大祐が入り、僕を入れて3人になって、ゲームの背景などの仕事を請けていたんです。この3人が神風動画の原点ですね。当時、月額契約でゲームのグラフィックの業務を請け負っていたんですが、開発途中で制作がストップしてしまって…。幸い、お金は入ってくるけれど、やるはずの仕事が来ない状況になってしまったんです。そのとき3人で『AKIRA』を全編コマ送りにして、どう動かしているのかを研究しました。セリフを全部、覚えてしまうくらい。森本さんの『EXTRA』も同じように全部コマを解析して、レンダリングで不具合が出ているようなカットを見つけてしまうほど(笑)。とにかくひたすら研究しました。

今考えると、二度とない非常に贅沢な時間ですね。その後、お金と時間があるのなら作品を作ろう! と3人で作ったのが『ガソリンマスク※』です。

この作品をコンテストに出したら素晴らしい賞をいただいて……。でも僕らが作ったものは“アニメのような”もの。そこで基礎から“本物”のアニメを知りたいと思って、神風動画を解散して上京しました」

※ガソリンマスク…1999年制作。神風動画始動のきっかけとなった初のオリジナル作品で、Sony DPE賞を受賞。気圧異常により地質が変化してしまった未来の大阪が舞台で、2014年には長編プロジェクト『GASOLINE MASK』として改めて始動することが発表された。

ガソリンマスク © Kamikazedouga

ガソリンマスク © Kamikazedouga


最初は神風動画ではなく、「イマジオフ」という屋号を使っていました。しかし「AKIRA」に影響を受けたことを思い出し、ジャパニメーション・日本風の屋号をということで、半年で今の「神風動画」にしたそうです。

本物のアニメを学びたい――。1コマにかけるこだわりをスタジオ4℃で目の当たりに。

“本物”のアニメを学びたい一心で上京した水崎さん。自分をアニメに導いてくれた憧れのアニメーター・森本晃司氏、元スタジオジブリの田中栄子氏が中心となって創設した「スタジオ4℃」にアニメーターとして入社します。スタジオ4℃は、映画マトリックスのアンソロジーアニメーションアニマトリックスの制作や、劇場版アニメ鉄コン筋クリートでは日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞を受賞するなど、日本が世界に誇るアニメ制作会社です。そのときの様子を水崎さんはこう語ります。

――入ってみて、衝撃を受けたことは?

「今ではデジタルで作るアニメが当たり前ですが、今普及しているデジタルでの制作の作業手順は森本さんが1996年に作った『EXTRA』で誕生したものだったんです。デジタルでアニメを作る。誰も作ったことがないものを、必死に作業を進め模索しながら作った手順がスタジオ4℃でデジタルアニメのマニュアルとなったことを知って、改めて感銘を受けました」

――上京のきっかけは本物のアニメを作りたいということでしたが、“本物”とは?

「セル画1枚にどれだけのカロリーを使っているか? つまり1枚にどれだけの熱意を込めることができるかということだと思います。在籍していた当時、ハリウッド映画のアニメ化の企画があって、向こうの高名なプロデューサーがスタジオ見学に来たんです。そのとき、プロデューサーが腕をちょっと作画スタッフの机に乗せていたんですが、それを見た社長がすぐに『線がガタガタになるから腕をつかないで!』というニュアンスで注意して……。向こうは『ごめんなさい』とすぐに腕を退けていましたが、僕は “次元の違い”を目の当たりにしたと思いました。

だって、もしそれでプロデューサーの機嫌を損ねてしまえば、彼の判断次第ではハリウッド映画のアニメ化という大きな仕事がなくなるかもしれない。でもスタジオ4℃はそういう次元で仕事をしていないんです。

今、作っている作品に全力を注いでいる。たった1本の線も、間のコマも絶対に妥協しない。それだけのエネルギーを使って制作をしているんですね。CGアニメではポーズごとにコマの先を予想して作り、つなぐという作業を繰り返すんですが、僕は“間”にエネルギーを注いでいなかったと反省しました。
なぜCGアニメが既存の手描きのセル画アニメの質にたどり着けなかったのか、その理由を思い知らされた気がします。スタジオ4℃では、一瞬の動きにもハイカロリーな情熱を注いでコマを作っている。だから、高品質で世界が認めるような作品を生み出すことができるんだと思いました」

自分たちで成功例を作ればいい。「アニメ制作は安い」という常識を覆す最初の挑戦

アニメ制作の現場では、企画や絵コンテ、作画などのすべての流れを終えた最後の段階にCGチームの作業が入ります。そのため前半部分で作業が遅くなると水崎さんがいたCGチームが徹夜をし、なんとか納期に間にあわせるということもあったそうです。

そこで水崎さんが感じたのは、必死にいいものを作っているけれど、“この環境は変えたい”というものでした。

――独立を考えたきっかけはなんですか?

「スタジオ4℃は、僕をアニメの世界へ導き、基礎の基礎から作品に絶対に妥協しない姿勢と、作品にかけるエネルギー、アニメ制作のすべてを僕に教えてくれた存在です。演出の方や作画スタッフなど皆さん素敵な方ばかりで、僕はわからないことをたくさん教えてもらいました。ただ、アニメ業界自体に問題があると感じていたんです。もともとの制作予算が安く、作業量に対しての対価がものすごく低いのに、ハイクオリティで効率のいいことを求められている。『このまま体力的にも経済的にも厳しければ、若い芽は潰れるかもしれないし、そうなるとこの業界の全体的な質も下がってしまう』と思いました。そうとはいえ、ここでかき回すのは迷惑になると思ったので、自分たちが独立してこの問題に挑戦してみよう! と考えたんです。アニメの仕事は苦しくて当然と言われている中で、そうじゃない方法があるということを証明できれば、きっとみんなも続いてくるんじゃないかって」

アニメが大好きだから、アニメーターにとって働きやすい環境を作る――。経済面もクオリティもどちらも妥協しない会社に。

スタジオ4℃から独立し再び始動した神風動画は、2002年に法人化をします。アニメ制作におけるデジタル化を進め、個々のクリエイターの報酬を増やすという方法に手応えが出てきた頃だそうです。

「短編やミュージックビデオなど、普通のアニメ制作よりも予算が潤沢に出る仕事を中心に請け負い、制作はデジタル化を進めました。仮に一般的な予算だとしても、デジタル化を進めることで作品の制作に携わる人数を減らすことができるんですね。そうすると自ずと1人が得られる金額は高くなります。法人化したときには、少しずつですが、その成功例が積み上がってきていましたね」

独立をしてからは、今までしていなかった予算交渉もしていくことに。水崎さんはクリエイターが徹夜をせずに制作できる価格を試算し、数字を出してみました。その価格は当時、アニメ業界で当たり前とされている予算よりもはるかに高い金額でしたが、金額的な齟齬は少なかったそうです。

「実際に直で数字面の話し合いをすると、間に入る会社によっては制作に回す予算を結構削っていたことがわかったんです。アニメ制作って予算によってコマ数を減らしたりせざるを得ないんですよ。そうなるとやっぱりクオリティが下がってしまうんです。僕らはどっちも妥協したくない。だから請ける仕事は選んでいます」

――当時、同業種の方からはどんな風に見られていたんでしょう?

「『気になる』とは言われていました。神風動画のやり方が正しいかわからないという意見も多かったのですが(笑)、それでも気になる存在だったようです。

神風動画を立ち上げてから、ひたすら経済面もクオリティもどちらも妥協しないという姿勢を貫いてきました。その上で、『自分たちが間違ったことをした』と思ったことは一度もありません。後悔はしていないです」

『AKIRA』で衝撃を受けた水崎少年は今、アニメの世界で“既存の常識”を破壊し、創造する経営者になりました。神風動画は、ミュージックビデオやアニメのオープニング動画などの短編の制作から始まり、自主制作アニメ『COCOLORS』ではオリジナル中編作品に挑戦。今年2018年、この中編作品はメディア芸術祭のアニメーション部門で優秀賞を受賞しています。そして同年、長編アニメ制作としては初挑戦である『ニンジャバットマン』が劇場公開されました。後編では、常に挑戦を続ける神風動画という組織のこれからを伺っていきます。

後編▶「人間として生まれてきた記念」に何ができるか? 神風動画はアニメーターの地位向上を目指し、業界を変えていくフェーズへ――。

「ニンジャバットマン」のインタビュー取材を受けた水崎さん。偶然、隣に掲載されていたのは、高校生の頃、美大受験予備校の同期だった現・スタジオポノックの米林監督でした。

日本発!ぶっ飛びアクション・エンターテイメント!「ニンジャバットマン」のBlu-ray / DVDが発売開始

バットマンが戦国時代にタイムスリップし、歴史改変を阻止するために立ち向かう物語「ニンジャバットマン」のBlu-ray / DVDが発売されました。

Batman and all related characters and elements are trademarks of and © DC Comics. ©Warner Bros. Japan LLC

絢爛豪華版は、キャラクターデザインを手がけた岡崎能士による、描き下ろしデザインの三方背アウターケースと、アートデジパック仕様でスペシャルブックレット付き。また、85分の本編に加え、「ポプテピピック」とのコラボCMなどを収めた約90分の映像特典も収録しています。

詳細はこちら http://wwws.warnerbros.co.jp/batman-ninja/home_entertainm

絢爛豪華版

Batman and all related characters and elements are trademarks of and © DC Comics. ©Warner Bros. Japan LLC

通常版

Batman and all related characters and elements are trademarks of and © DC Comics. ©Warner Bros. Japan LLC

後編▶「人間として生まれてきた記念」に何ができるか? 神風動画はアニメーターの地位向上を目指し、業界を変えていくフェーズへ――。

Interviewee Profiles

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水崎淳平
有限会社神風動画 代表取締役
CGプロダクションとアニメスタジオの混血児として活動する「神風動画」の代表。グラフィックデザイン、ゲーム会社、アニメスタジオ勤務の経験を活かし、遊び心とスタイリッシュな映像センスとCGとセルアニメーションの融合をテーマに、常に新しい表現手法を模索し続ける。「FREEDOM」オープニングや安室奈美恵、EXILEのMV、「ジョジョの奇妙な冒険」オープニング、「ドラゴンクエスト」シリーズのオープニング映像が話題となり、プロモーション制作において確固たる地位を築く。映画「ニンジャバットマン」が世界的に話題となった他、企画・制作として関わったTVアニメ「ポプテピピック」が各メディアで話題となるなど、活躍の場が広がっている。

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