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ITって、こういう多重派遣みたいな構造って、まだあんの?(2024の記事)

あれな。
SNSでもあるとか無いとか、ケンカになるやつな。

リアルなところの話をすると、『原則、無い』のだが、『あるっちゃ、ある』と言った感じ。
構造は少し複雑な話だが、境目が割と明確にあるので、知っとけば回避が可能です。

人材紹介の人も知らないし、ネットで語られる事もほとんどないのだが、IT業界にいる人だったら『なるほどなー』と納得できる内容のハズ。これからITに来るつもりの人にも役に立つかもしれない。



1.『原則、無い』側の話。(いいとこにいる奴ら)

なお、散々、他の界隈のポジショントークでDisられてきた層の方々なので、本人たちに『いいとこにいる』なんて自覚は無い。待遇もふつうである。別に入社ハードルも高くはない。

まず、クッソ当たり前レベルの前提の話として、下記のように顧客のリーダーが準委任の外注さんを直接管理するケース。

違法である。

違う会社の人(やフリーランス)に指揮命令をしてしまうと、準委任契約ではなく派遣契約であるとみなされます。偽装請負ってやつですね。

東京労働局の偽装請負のページ


じゃあ、派遣契約なら多層で契約できるかっつうと、これも

違法である。

と言った具合でして、派遣契約である時点で多層構造になり得ないんですな。
(職業安定法違反)

厚労省の資料のリンク

ですので、下記の画像のようなケースは、かなーりイレギュラーな状態と言えます。

さらに言うと、いわゆるSIerとそのパートナー企業の業界は、偽装請負問題に関して2005年前後で行政より徹底指導を受け、現在では

・再委託回数の制限(階層深いのNG)
・社員を含まない再委託(丸投げ)NG
・一人請負(準委任も)NG

と言う発注時のルールが一般化しているのである。(SIer側の発注時のルール)

なにしろ、契約面が怪しい人たちはプロジェクトの途中で全撤退とかになったからね。プロジェクト運営者側としては飲めないリスクになった訳だ。


さらにさらに、ビジネス構造の話をしよう。

そもそも『システム』って、まあまあな規模のモノが多く、一人で作るものではないうえ、専門性が要求される分野なワケだ。

内製化って言っても簡単じゃない。一線で通用するエンジニアやリーダー格を直接採用、育成するとか、現実的にはけっこう難しい。なので、エンドユーザーはふつうベンダーに対して、自前で管理が必要な労働力の提供を求めるのではなく完成品のシステムの提供を求めることになるよね。

(飲食系の企業が多店舗展開狙うからって、自社で大工さんを雇ったりはしないよね。内製化の話はゴチャるので、今日はしない。)

つまり、システム開発は基本的に『派遣』ではなく『チーム戦』になるという事です。

現在ではSI商流では下記の制限がつくわけですので、プロジェクトの構造も下図のようになります。

※制限
・再委託回数の制限(階層深いのNG)
・社員を含まない再委託(丸投げ)NG
・一人請負(準委任も)NG

SIer(プライマリー)は、顧客に対して納品の責任を負い、超上流・プロジェクトマネジメント全般を担当し、その下請けベンダー(セカンダリー)はプロジェクトの主力として上流から納品までを担当し、3次請けベンダーは、特にプログラム製造周辺の工数が膨らむあたりで増員参加し、活躍します。

再委託の制限がこの辺りまでで、4次請け以降の存在は割とイレギュラーな要素を含むケースになってきます。(4次請けの会社から3次請けのチームに派遣契約で参画し、3次の社員のていでふるまうなど)

と言う訳で、いわゆる【SI商流の元請~3次】の領域で仕事をしている人に『多重派遣って今もあるんですか?』と質問すると、『無いよ?』と言う返答が帰ってくることになります。契約が請負でも準委任でも変わりません。(取引先が固定的である為、成果出せないと切られて終わる。)

まー、【いいとこ】というよりも、【ふつうのカイシャ】って感じですかね。
SI商流の全体の案件量はかなりの物量となり、IT業界内でのシェアもかなりの規模となる訳ですから、『特に恵まれたレアケース』と言う訳ではありません。


2.『原則無い』の、外側の話

頭数が必要なのは特にアプリ開発の領域でして、チーム規模ではない需要もあります。そんな『原則の外側』のケースとしては下記のようなケースが考えられます。

・調達難易度が高すぎる  (SAPとかたぶん)

・チーム戦規模ではない依頼 (PMOとかインフラとかもたぶん)

・不人気過ぎて人が集まらん (炎上とか遠方の常駐とか)

SIerも、自社ルールで制限つけて人員不足になって、肝心の顧客への責任が果たせませんとか、優先順位がオカシイですからね。必要であれば原則の外の調達も行われます。上記のパターンなんかはよくあるんじゃないでしょうか。

ただし、『違法状態』は別です。
なお、単独の準委任作業者をアサインすることが即、偽装請負・労働者派遣法違反となるわけではありません。委託者が受託者の労働者に対して直接指揮命令されている状態がアウトとなります。

詳しくは参考にしたサイトをどうぞ、業務委託契約書の達人(運営:小山内行政書士事務所)

『直接指揮命令せざるを得ない状態。』を、ITあるあるなケースで言いますと、『ロースキルSESの1名常駐』ですね。自律で判断し、受注した業務の善管注意義務を果たせるレベルの専門性が無い、または主体性が無い人物の場合、一名で契約しますと違法状態になる可能性が高く。このレベルの人材1名で準委任契約・請負契約で直接発注をすると言う事は、商流が高いほど発生しづらいという事になります。

また、十分な専門性を有する優秀なエンジニアを、極端な多重派遣状態にしてアサインするまともなベンダーがいるかと言うと、まずいないと思います。(単価以前に、自社の社員から会社の格や方針を疑われるので、まずやらない)

やはり、現実的には下記の画像範囲内での再委託か、せいぜいフリーランスが3次と直接契約するくらいが限度となってくるのではないかと思います。


3.『あるっちゃ、ある』側の話

では、ここまでの話とは違う目線。Top画像の多重派遣状態が起きやすい側の、構造・条件の話をする。

発注者・受注者ともに条件がそろう必要があるので、ひとつひとつ説明していこう。


●『多重派遣の発注者』になりうる条件

まず、SI独自の規制がないところ。
『非SIerの商流』であること

また、大手のメーカーや、一部の大手ゲームパブリッシャーなど、
『派遣契約以外NG』の商流でもないこと。

内製化エンド・Webサービス・上記以外のゲーム屋さん・受託会社などが発注者となる場合、『条件がそろう』と言うことになる。

当然、会社によっても違いがあるが、コレらの発注企業は[外注人員を社員の様に使いたい](管理が要らないレベルの人材のみ単品派遣してほしい)と言うスタンスの会社が多く。所謂(箱売りをしたい)2次3次のソフトウェアベンダーとの相性がイマイチである。その為、準委任で派遣を行う業者。つまり、SES企業のほぼ独壇場となる。(なお派遣会社とは競合)

※注 【本記事でのSESの定義】
SIerや、SaaS、パッケージベンダー、2次・3次請け等のソフトウェアベンダーは、なるべく商流を浅く、人員アサイン権限と単価を得る事を志向する為、【体制で受注し、QCDを担保して納品する能力】を確保。【顧客から信頼され、継続的に発注を受ける】ことが、ビジネスの勝利条件となります。(準委任・請負はどちらでも良い)言わば、顧客側に矢印が向いたビジネスモデルです。

対して、【派遣を行う】ビジネスの場合、派遣単価には相場がありますので、【派遣社員の数を多く集める】が勝利条件となります。言わば、労働者側に矢印が向いたビジネスモデルとなります。(ただし派遣法の縛りを強く受ける)

派遣法のくびきを逃れるには派遣契約を行わなければよいので、代替の契約方法として準委任契約を利用する。再委託による多重派遣が可能となる為、仲介を行う営業会社も登場します。やはり、労働者側に矢印が向いたビジネスモデルとなります。
この、準委任で派遣を行う業者。仲介を行う業者。を【SES会社】と、個人的に定義しています。(ベンダーと比較した場合、勝利条件も)

上記のエンドの他、2.『原則無い』の、外側で


次いで

●『多重派遣の受注者』になりうる条件

さて、SES会社であっても、自社で十分な営業能力を確保しており、浅い商流を狙えるレベルの人材を抱えている企業は、その人材をあえて深い商流でアサインする必要がない。また、営業力のあるSES会社は他のSES会社から人材を借りてまた貸しする事で利益を得ることもできる為、一人当たりの単価の高い浅い商流を確保する動機があるという感じなので、前述の内製化エンド・Webサービス・上記以外のゲーム屋さん・プライマリの受託会社などの顧客層を直接開拓してくる役割となる
技術社員の平均スキルにもよるが、上記顧客層と直接契約でSESやってる率は高め。

※原則、SES会社間では営業会社の能力を備えた会社の方が商流が高くなる。営業会社のカラーが強い会社は他社に頼らない商品の調達方法としてフリーのエージェントを兼ねるタイプが多い。

逆に、エージェントに人を貸している側のSES会社は、エンドを直接開拓する営業力を持たない会社や、単独でSEの役割を果たせないロースキル層(他社の人員の管理下に入る必要がある)のSES派遣が主力である会社が多くなる。

つまり、[外注人員を社員の様に使いたい]&『非SI商流』のエンドや受託会社に強い、エージェントや他のSES会社など、他社の営業力に依存した採用メインのSES会社所属。または、ロースキル専門のSES会社所属、または、SES会社所属かつ本人がロースキルである場合。

Top画像の様な多重派遣状態に陥りやすいと言える。

構造としては明確で、ちゃんと浅い商流で参画できるだけのスキルを有しているのであれば、SESと言う働き方を変えずとも、今のSES会社→別のSES会社 と言う転職でも解決できるし。
図を見てわかるようにフリーランスへの転向でもかなり解決できる。
ほか、派遣契約をメインとする派遣会社の場合は多重派遣は違法なわけなので、原則、人のまた貸しは起こらない。派遣会社への転籍でも解決ができる。さほど解決が難しい話ではない。


●何回転職しても多重派遣の底なんじゃが。ってケース

ふつうは無いと思うのだが、考えられる『ハマるパターン』としては、商流が深いSES会社特有の採用トークに毎回引っかかってる人。とかじゃないかなと。

商流が深い会社特有のトークってなんやねんと言うと、『深い商流を良しとしているから使える強み』みたいな部分になるね。例えば、

・いつでも自由に撤退調整するよ。
いやこれ、直接やってたら客に恨まれるよね。出禁あるよね。営業に投資をして、金と時間をかけて、せっかく得た商流を、エンジニア側のワガママでいつでも潰してOKよ!って仕組みにしないよね。
間に他のSES会社やエージェントを挟むからこそ、使えるトークなんである。
一番上のSES会社(上図で言えばエージェント)は信用にダメージを負うので怒ると思うけど、エージェントから見えてる範囲は所属ではない『SES1』までであり。『SES2』『SES3』はどこの会社かバレないし、他の中間会社をかませば同じエージェント、同じエンドの案件に参画することが可能である。
つまり、客に対してやらかした時のコストが皆無なんだな。


・めちゃくちゃ採用ハードルが低い
やらかしコストが皆無だからこそ、採用のハードルもめちゃくちゃ低く設定できる。
設計できますでアサインしといて設計はできませんとか。実は経歴偽装でしたなんて話でもノーコストである。ロースキルほど採用しやすい(他社が採用避けるので)こともあるので、この手の会社は一気に大きくなる。とくに経歴偽装はスキル不足でも決定できる、待機が減る、売上が高めになる。など、この手の会社と相性が良い。次項の還元率トークとも相性が良い。
この手の会社でしか内定が出ない状態だとしたら、経歴書か希望条件面でかなり詰んでいると考えられる。


・高還元
個人の売上と給与が連携しており、マージンが少ない。みたいなやつだね。
本当にマージンが少ないとしたら、イコール、営業部隊に投資していないと言う話になるので、普通に考えたら商流は深い。また、売上の高さをウリにしている訳ではないことに注意。
還元『率』が高いって話だろうからね。
実際には低マージンでも派遣契約メインの会社とか、営業頑張る会社もあるようなので、高還元=商流深い、で確定と言う訳でもない。あくまで傾向の話だね。
例えば、フリーのエージェントが本業で、それで食えてる会社が社員募集するのだとしたら、商流と還元率は両立可能になるだろう。


ここまで書いたが、いずれの条件も『フリーランスで独立』で容易に実現できてしまうものでもあるので、働き方で求めるものは変えたくないが、商流も浅くしたいという事であれば、フリーランスで独立してしまうのが良いかもしれない。

案件選択や撤退はフリー本人の判断。
還元率は100%
開業届を出せばフリーなので、採用ハードルなどもない。

まともに作業ができるのであれば、営業上で嘘をつく必要もないわけで、エージェントと直接契約して商流を浅くした方が決定率は上がるだろう。

あんましいないと思うけど、ハマっちゃって困ってる人は、検討してみてもいいかもしれないね。

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