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弁護士とリーガルテック ~ 私がMNTSQに感じた可能性 ~


この度MNTSQにJOINした弁護士の野崎です。

2019年は日本におけるリーガルテック元年などと表現され、現在までに数多くの弁護士がリーガルテックプレイヤーとして登場し、次々と資金調達に成功しつつある昨今の状況ではありますが、まだまだ多くの弁護士にとってリーガルテックは聞きなれない言葉であるように思われます。弁護士でありながら、私がリーガルテック企業であるMNTSQにJOINするという選択をした理由・経緯などについて簡単にお話しようと思います。

1 経歴について

私は67期の弁護士で、40名程度の弁護士を擁する東京丸の内法律事務所という法律事務所において弁護士としてのキャリアをスタートしました。同事務所では顧問先対応からM&A等まで幅広く企業法務を経験し、その他大型の民事再生や破産事件も扱いながら、ときには顧問先からの紹介等により離婚・相続や自己破産などの一般民事を扱うこともあり、弁護士として幅広い分野において研鑽を重ねました。


東京丸の内法律事務所 | The Tokyo-Marunouchi Law Offices
トピックス 2020/10/7 六角麻由弁護士が「 民法改正と契約書~第8回 債権譲渡~」「 民法改正と契約書~第9回 契約不適合責任~ 」と題する弁護士ブログを更新しました。 2020/9/30 上村剛弁護士 が公認不正検査士の資格を取得しました。 2020/9/14 平素より当事務所をご利用賜りまして誠にありがとうございます。 お客様より当事務所へお電話でお問い合わせの際に、間違い電話となってしまい、ご迷惑を被っている方がいらっしゃいます。 当事務所へのお問い合わせの際には、電話番号(03-3213-
https://www.tmlo.jp/


弁護士の業務は職人芸的なところもあり、弁護士により事件処理の方針・法的見解・クライアントとのコミュニケーションが異なるところ、多くの先輩弁護士から仕事のやり方を学べることは非常に重要なことですが、多くの先輩弁護士から指導いただきながら幅広い経験を積むことができたことは、今でも私にとって大きな財産となっています。


2 MNTSQという衝撃

私が初めてMNTSQというリーガルテック企業の存在を知ったのは、2019年10月にMNTSQが長島・大野・常松法律事務所(NO&T)と株式会社 PKSHA Technology (PKSHA)と資本業務提携を行い、8億円の出資を受けたという日経新聞の記事を目にしたときです。


リーガルテックベンチャー「MNTSQ」、長島・大野・常松法律事務所と株式会社 PKSHA Technology との資本業務提携を締結し、一般企業向け法務サービスの提供へ
法律事務所向けに法務デュー・ディリジェンス業務を効率化するプロダクトを提供しているリーガルテックベンチャー企業であるMNTSQ株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役:板谷 隆平、以下MNTSQ)は、長島・大野・常松法律事務所(本社:東京都千代田区、マネージング・パートナー:杉本文秀、以下NO&T)と株式会社PKSHA Technology(本社:東京都文京区、代表取締役:上野山 ...
https://www.mntsq.co.jp/news/partnership-with-noandt-and-pksha/


ちょうどその日、修習同期の弁護士たちと集まる機会があり、この日経新聞の記事が話題にあがりました。四大事務所の一角であるNO&Tがリーガルテック企業に8億円もの出資の意思決定したことの重大さについて、その場にいた弁護士一同は大きな衝撃を受けました。法律事務所では共同経営者たるパートナー弁護士による合議で経営上の意思決定を行うことになりますが、意思決定にはパートナー弁護士の全員一致を必要とする事務所も少なくなく、何か決定しようと思っても何も決まらないということがよくあります。このような現実に嫌気がさし、事務所を離れる選択をする弁護士も少なくありません。

この事実を肌感覚として理解している弁護士にとって、四大事務所の一つで、数百名の弁護士を擁するNO&Tがリーガルテック企業に対して8億円もの出資をするという前例のない決定をしたことの衝撃は大きなものでした。実際、法律事務所がスタートアップ企業に対してこのような投資を行った事例として、私が知りうる限り世界的に最も大きな事例だと思います。


3 MNTSQとの縁

MNTSQの代表である板谷は、司法修習の同期で、修習当時からの友人でした。ちなみに、司法修習とは司法試験合格後に義務付けられた研修制度であり、裁判官、検察官、弁護士のいずれを志望する場合であっても同一のカリキュラムに沿った実務研修が1年間行われることになっています。興味があればこちらをご覧ください。


司法修習
司法修習(しほうしゅうしゅう)は、 日本の 司法試験合格後に 法曹資格を得るために必要な 裁判所法 に定められた「司法修習生の修習」の通称である。司法修習を行っている者を司法修習生という。 司法試験の合格者は、 最高裁判所に司法修習生として採用され、 公務員に準じた身分で司法修習を行う。司法修習は 裁判官・ 検察官・ ...
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%B8%E6%B3%95%E4%BF%AE%E7%BF%92


司法試験を受験する前提としてロースクール(法科大学院)を卒業する必要があるのですが、板谷は大学在学中に予備試験(ロースクールを卒業せずに司法試験の受験資格を得ることができる試験)という狭き門を通過し、最短ルートで司法試験に合格しており、同期の中でも一目置かれる存在でした。

四大事務所の1つであるNO&Tがリーガルテック企業に出資するという意思決定をしたことには非常に大きな衝撃を受けたわけですが、その代表が板谷であることを知って妙に納得したのを覚えています。

その板谷からオフィスに遊びに来ないかという誘いを受けたことが私にとって大きな転機でした。

オフィスでは、MNTSQで提供しているという法務DDプロダクト(現在ではMNTSQ for M&Aと呼んでいます)を見せてもらいました。DDとはDue Diligence(デューデリジェンス)の略で、M&Aの対象となった会社に潜在的な法的リスクがないかの評価・分析を行う業務です。短期間で契約書を始めとする膨大な資料を一枚ずつ読み込んでいく必要があるところ、弁護士(特に若手)がこの作業に多くの時間を費やしています。

私もかつては膨大な契約書を綴じたファイルを抱えながら朝まで契約書のリストを作成したり、危険条項がないか契約書を一枚一枚チェックしていたわけですが、MNTSQの法務DDプロダクトの完成度は非常に高く、最終的には人がチェックする必要があるものの、自然言語処理技術を活用し、危険条項などの自動抽出を非常に高い精度で実現していました。

このような不思議な縁で私はMNTSQとの関係を深めていくことになりました。


4 MNTSQの可能性

リーガルの分野では高いクオリティを維持することはもちろんのこと、「信用」が非常に重要だと感じます。

MNTSQでは、四大法律事務所の1つであるNO&Tとの業務提携によるリーガルリソースの提供に加えて、機械学習技術ではTOPクラスの技術力を誇るPKSHAから技術提供を受けており、スタートアップらしからぬ最高峰の「信用性」と「技術力」を有しています

2020年12月7日、春からトヨタ様、コマツ様、福岡銀行様等のパートナー企業と続けてきた実証実験を通じて開発した契約データベース(MNTSQ for Enterprise)の一般販売を開始し、プレスリリースを発表させていただきました。そのローンチカスタマーとして実証実験先のパートナー企業や大阪ガス様という大企業に名前を並べていただけたのは先に述べたMNTSQのスタートアップらしからぬ「信用性」と「技術力」が背景にあると思います。ここではお伝えできないものの、商談を進めている取引先企業に誰もが知っている大企業の名前がずらりと並ぶのを眺めていると不思議な感覚に陥ります。


大企業向け契約データベース「MNTSQ for Enterprise」正式版がリリース。 コマツ、大阪ガスなどに提供開始へ
MNTSQ株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役:板谷 隆平、以下「MNTSQ(読み方:モンテスキュー)」)は、弁護士事務所向けのソフトウェア開発で培った契約書解析アルゴリズムを活用し、大企業向けの契約データベースシステム「MNTSQ for ...
https://www.mntsq.co.jp/news/mntsq-for-enterprise/


また、リーガルテックといえば「自動レビュー」のイメージが強いのですが、契約書のレビューとは、取引の背景事情を把握・理解した上で、自社のスタンスとして許容できるリスクと許容できないリスクを見極め、目の前にある契約書の文言に反映すべきコンセプトを入れ込んで文言を適切に修正・ドラフティングする作業で、完全な自動レビューを現在の技術力で実現するのは難しいという感触があります

例えば、現在の自然言語処理技術では損害賠償について制限がかかっている条項を抽出することは可能でも、どの程度の制限であれば許容できるのかを取引背景を踏まえて判断したり、法的リスクをこちらが許容できるレベルに修正するために目の前の文言を活かす形で修正することは非常に難しいと考えています。現在の技術では、法的リスクが少しでもあるもの全てにアラートを出したり、文言を活かして修正するのではなく条項そのものを取り替えるような取引背景を前提としない一般的な修正提案が限度だと思います。

足元で技術的に実現可能なソリューションを冷静に分析した上で、まずは契約データベースにより企業がこれまで締結してきた膨大な契約書を集約・管理し、自然言語処理技術により契約を「見える化」することを通じて企業の資産に変えていくことから始めるというMNTSQの姿勢は非常に紳士的なアプローチだと感じます。

国内でも最高峰の「信用性」と「技術力」を有しながら、出来ないことを出来ると言わないMNTSQの誠実さに魅力を感じ、MNTSQにJOINすることを決めました。


5 ユニークな専門性を成長させられるMNTSQの魅力

MNTSQでは機械学習による自然言語処理を技術を契約書という対象に適用・活用するという新しい課題に取り組んでいます。

この難しい課題に取り組む過程で、リーガルとは異なる専門分野を持つエンジニアの方と日々議論を交わすことを通じて、自らの専門性をユニークに成長させることができていると感じています。また、個人的なチャレンジを歓迎する組織であり、リーガルテックという新しい領域において会社の成長を肌で感じながら、当事者として大きなビジネスに関与できる環境がここにはあります。

弁護士やパラリーガルをはじめとする法務パーソンは自分だけの専門性を身に付けたいと日々願いながら模索していますが、ますます広がりを見せるリーガルテックという領域の最前線で、自らのリーガルマインドやビジネス感覚をユニークに成長させたいという熱い気持ちのある方は、MNTSQのドアをノックしていただければ幸いです!

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