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「デザイナーは領域を決めるべきじゃない」デザイン組織のマネージャーが見つめる未来

こんにちは!経営企画室の杉本です。

本日は、グッドパッチのクライアントワーク部門であるDesign Div.でマネージャーを務める柿迫 航のインタビューをお届けします。柿迫は、UIデザイナーとして2017年5月にグッドパッチへ入社。その後わずか3ヶ月でマネージャーとなり、現在はデザイナー、エンジニアが在籍するチームを率いています。「入社当時はマネージャーになるとは思ってもいなかった」と語る柿迫が、どのような想いでグッドパッチと向き合っているのか。デザイン組織をつくるために必要なマインドセットについても聞いてみました。

テレビのテロップづくりから、未経験でデザイナーに

大学では経営学を専攻していました。当時、面白いと思っていた授業は、企業や商品のCMやプロモーションを研究する広告の講義や、商品パッケージや小売店での陳列方法を研究するマーケティングの講義、西洋の美術史の講義でした。もともと、広告やデザイン、アートに関心はあったのですが、当時「デザイナーで食べていけるのは美大生だけ」という世の中の風潮と強い思い込みがあったので、そういう願望や興味は押し殺すように生きていましたね。なかば諦めていたんだと思います。それでも、憧れの世界と近いところで働きたくて、広告代理店やマスコミ系の総合職を狙って就活していましたね。自分の中で全く深掘りできていなかったので、すぐにうまくいかなくなって、アルバイトに明け暮れるようになりましたが(笑)。

そんな当時、テレビのテロップづくりのアルバイトをしていたんです。深夜から朝にかけて、リアルタイムで生放送のニュースのテロップを打つ仕事でした。テロップをつくるとき「悲しいニュースなら青色を使う」「盛り上げるニュースなら赤色を使う」「フォントは明朝にするか、ゴシックにするか」といったことは、アルバイトの僕に任されていたんです。ニュースの内容を咀嚼して、文字の一つひとつを丁寧に作ることがとても楽しくて、「こういうことが自分のやりたい仕事なのかもしれない」「自分でも手を動かすデザイナーになれるかもしれない」と思ったんです。そこで、専門学校のWebデザインコースに通うことを決めました。3ヶ月間の短いコースで、デザインとコーディングの基礎を必死で勉強しましたね。その結果、美大出身ではなかったけれど、新卒でWebデザイナーとして小さなWeb制作会社に就職できたんです。その会社では、WebデザインやHTML/CSSの基礎から、仕事のプロセス、そしてデザイナーと呼ばれる人たちがどんな働き方をしているのかなど、デザインにまつわる全ての基礎を学ばせていただきました。たった3ヶ月勉強しただけの、全くの未経験の自分を拾っていただいたので、社長には今でも頭が上がりません。

ビジネスとデザインが分断されているのは当たり前?

新卒で入社したWeb制作会社で2年間勤めた後に、先輩から紹介いただいたIT系ベンチャー企業にインハウスのデザイナーとしてジョインしました。ARやVR、電子マネー、データセキュリティなど様々なジャンルの事業を展開する会社で、デザイナーはその全ての事業のクリエイティブを担っていました。当初は上司のクリエイティブディレクターと僕の二人だけのデザイン組織だったので、常に二人三脚で奔走していましたね。スマートフォンアプリのUI/UXはもちろん、Webサイト、販促用の紙もの、展示会のブースまで、幅広い領域のデザインを経験させていただきました。アウトプットは様々でしたが、上司にいつも言われていたのは「細部にまで意味を込めろ」ということでした。0.1mmの余白にまで意味を持たせるのがデザイナーだと教えてもらったんです。新卒の頃から、デザイナーとしてがむしゃらに走り抜けてきましたが、この頃に本当の意味でのデザインを理解しました。

当時、社内ではビジネスサイドとデザイナーの役割が分担されていたので、サービスの根幹となる企画のディスカッションに深く加わることはあまりありませんでした。その時は自分自身、それが企業とデザイナーの関わり方として当然なんだと思っていました。既に決まっている企画に対して「これでユーザーに使ってもらえるのかな?」と疑問を持つこともありましたが、当時は、ビジュアルのクオリティを上げることだけで精一杯でしたね。

自らの領域を更新し続け、飛び越える

この頃、デザインへの理解を深めるために、水野学さんや佐藤オオキさんなど著名なデザイナーの方の本や記事を読み漁っていて、自分と彼らの大きな違いに気づいたんです。水野さんはグラフィックデザインをバックグラウンドに持ちながらも、プロダクトや空間、最近では電車のデザインまで行っている。一方、佐藤さんは建築から、プロダクトはもちろん、ガムのパッケージ、企業のブランディングまで行っている。

デザインを行う領域にとらわれない彼らの在り方を見て「デザイナーを彼らのような存在と定義するなら、自分はデザイナーじゃない」と思ったんです。そして、自らでデザイナーの在り方を決めつけていたことに気づきました。グラフィックも空間もプロダクトも、サービスやビジネス、企業までもがデザインの対象で、デザイナーは自分の領域を更新しながら超えていかなければいけないと、深く感じました。

同じ時期に、自分の結婚式の準備で、オーダーメイドウェディングをプロデュースしている会社に顧客として通っていたんです。最後の打ち合わせ後、オフィスの見学をさせてもらっていたら、当時のチーフアートディレクターの方に「空間デザインとか興味ありますか?」と声をかけられたんです。新しい領域に挑戦したいと思っていたタイミングだったこともあり、すぐに飛び込むことを決めました。

当時の僕は、展示会のブースをデザインした程度で、空間デザインの経験はほぼゼロ。ウェディングの空間づくりは、展示会とは目的も規模も違って、世界でただひとつのお客様にとって大切な1日をデザインするということ。なので今まで経験してきたデザインプロセスとは違って、クライアントとデザイナーがすごく密にコミュニケーションをとって当日まで漕ぎ着けるんです。今まではMacひとつで仕事をしてきましたが、使うツールは紙と鉛筆とインパクト(電動ドリル)になりました(笑)。

この経験は本当に貴重で、今まで平面に留まっていた自分のデザインが、空間ないしは場の「空気感」にまで昇華できたんです。そして「本来のデザイナーは、肩書や領域にとらわれずに誰かの幸せを作るべきだ」という仮説を自ら体現できたんです。

グッドパッチのことは昔から知っていて、Prottを使ってクライアントに提案したこともありました。でも、UIデザインの会社だと思っていたので、自分自身の領域は狭めることになってしまうんじゃないかなと懸念がありました。その矢先に代表の土屋と話す機会があって、いろいろ話してみたら、価値観がぴったりフィットしたんですよね。その時に土屋が話していたことは、本来どんなものもデザインするべきで、アプリケーションのUIはあくまでその一部ということ。今はアプリケーションというアウトプットでユーザーの課題にアプローチしているけれど、本質的に解決したいのはユーザーの課題だから、今後はアウトプットにとらわれず、様々な形で世の中を前進させるデザインをしていきたいということでした。

深く共感したのは、世の中のためにデザインを突き詰めてデザインの可能性を最大化したいというミッションです。自分がこれまで抱いていたデザイナーの課題感ともつながる部分があり、デザイナーとしてそのミッションに共に挑みたいと、ジョインすることを決めました。

デザイナーとして組織をデザインする

グッドパッチにジョインした当初は、UI/UXデザイナーとして、クライアントワークを担当していました。不動産系のWebサービスのUI/UXデザインや、2018年3月にリリースされた「コミックDAYS」のロゴデザイン等を行いました。

入社後2,3ヶ月くらい経った時、「マネージャーをやってみないか」と話をもらったんです。今までマネージャーとしての経験は全くなかったので、最初に話を聞いたときはイメージが持てませんでした。自分はあくまでUIデザイナーとして実績を積んで、ゆくゆくはリーダー的存在になるのかな、と想像していたくらいで、マネージャーになる未来なんてないだろうと。

それでもやってみようと思えたのは、デザイナーは領域を決めるべきじゃないという価値観が自分の中にあったからです。「マネージャー」という肩書きはつくけれど、これもデザイナーとしての仕事だと思ったんです。マネージャーの仕事は、組織と人の課題に対して向き合うこと。僕が今までクライアントやユーザーに向けていた目線が、組織やメンバーの方に向いただけなんですよね。

グッドパッチには、優秀で尊敬できるメンバーが揃っているから、今後もデザインのクオリティはどんどん上がっていくと思います。クオリティを維持しながら高めるためには、みんなが長く働き続けられることが大事ですし、「ここで働けてよかったな」と思えるような環境が必要ですよね。でも、組織づくりに適性があるもしくは、マネージャー側にキャリアパスを描くデザイナーはまだまだ少ない。だからこそ、自分がやることで何が必要なのか考えてみよう、何ができるのか体現してみよう、と考えたんです。

マネージャーの適性、デザイン組織づくりのポイント

僕は、マネージャーに必要な適性とは無償の愛を持てるかどうかだと思っています。対ユーザーのデザイナーのモチベーションは、どちらかというと承認欲求型です。アウトプットに対して、褒められたり「使いやすい」と言われることに喜びを覚えます。しかし、対組織のデザイナーが対ユーザー型のモチベーションでいると、一生報われません。僕自身も、もともとは対ユーザーのデザイナーだったので、マネージャーになりたての頃はマインドチェンジする必要はありました。でも、メンバーの笑顔だったり、「このプロジェクトに関われてよかったです」「クライアントさんにここを褒めてもらえました」「こんな課題解決ができました」と話してくれる様子を見ることが、一番の喜びになっています。

グッドパッチには「偉大なプロダクトは偉大なチームから生まれる」という言葉が浸透していて、チームワークを重んじるカルチャーがあるので、お互いがお互いにとってのモチベーターでありたいという気持ちでメンバーに接するように心がけています。

組織づくりには、打たれ強い、ポジティブマインド、オープンマインドなど、普遍的なマネージャーのスキルももちろん必要です。その上で、デザイナーをマネジメントするために大切なことは、デザイナーのマインドやモチベーションを理解してあげることだと思っています。
僕自身もそうなのですが、彼らは自分が関わるプロダクトに、強い愛着や愛情、想いを持っています。マネージャーは、その想いを認めてあげること、しっかり集中できる環境を用意すること、悩んだらモチベートしてあげることが大事です。これは僕がデザイナーであるからこそ分かることかもしれません。
目標を数値化しすぎないことも心がけています。測定するべき部分は数値化していますが、モチベートする部分は、本人が実現したい世界観にどれだけ近づけているかどうかだと考えています。なので「この数字を達成しよう」という接し方はあまりしません。

組織に向き合い、デザインの可能性を広める

これからはグッドパッチを、ナンバーワンのデザイン会社にしていきたいです。そうしてグッドパッチが光り輝くことで、光の当たらない日本のデザイナーたちにスポットが当たるようにしたいです。日本のデザイン投資額は年間で3000億円で、2兆円のアメリカや、4000億円のイギリスと比べても少ないですし、グッドパッチ自体もまだまだ日の目を見てはいません。まずはデザイン業界以外の業界、次に日本国内、ゆくゆくは世界で、グッドパッチのデザインをスタンダードにしたいです。

関連記事:日本企業はAppleを見習え:最高デザイン責任者が必要な理由

スタンダードな存在になるために、今は世の中の人みんなが使っているアプリケーションのデザインという形でアプローチしています。僕たちが関わることで、当たり前のようにアプリケーションが使いやすくなったり、使うことが楽しいと思える機会をコツコツと増やし続けていこうと思っています。それを見た世の中の企業が、デザイナーが上流から関わってくれることで、いいサービスができるんだなと感じてくれるようにインストールしていきたいです。最近は「グッドパッチが家電を作ったらどんなものができるだろう」と考えたりもします。オフィスや電車、空港のデザインも実現してみたいですね。

僕は今まで、日本におけるデザインへの偏見や、デザイナーの在り方に疑問を持ちながらデザイナーをやってきました。それを経てグッドパッチという場所に巡り会えたことをとても幸せに感じます。なぜなら、同じ価値観を持ったデザイナーがたくさん集まっているからです。
デザイン組織の作り方の正解はまだまだ分かりませんが、愚直に向き合い続けることが自分の使命だと思っています。そしてグッドパッチをより良い場所にすることが、世の中をより良くすることに繋がると信じています。

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