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“日本の金融教育”が進まないワケ「お金をどう働かせるか、7歳までの教育で決まる」

昨今、キャッシュレス化、物価高の加速から注目される金融教育について、金融教育に携わる株式会社MEMEの齋藤舞氏にお話を聞いてきました。子どもと親のためのお金のアプリケーション「manimo」、学校の集金業務を効率化する「スクペイ」を運営し、日本の金融教育の改善に注力している齋藤氏から見た課題と実態とは?

株式会社MEME・代表 齋藤舞

中3のカナダ留学でお金の大切さを学ぶ
――金融事業を始めたきっかけは?

齋藤舞(以下、齋藤):中学校3年生の時にカナダ留学をし、ホームステイをしました。その際に、ホストファミリーから契約に含まれていたはずの食事や学校への送迎の拒否がありました。そのため、電車賃、バス代、食費を自分で賄っていくということを、1ヶ月間続けざるを得ない状況となりました。そこで、お金の大切さを学んだと思います。

――子ども時代に自分でお金のやりくりをして気づいたことはありますか?
齋藤:お金のやりくり方法、大切さと共に、食事にこんなにお金がかかるんだと改めて実感しました。日本とカナダでは物価が違うので、こんなに高いんだと驚きました。日本だけでなく、海外で生きていこうと考えがあるのであれば、世界各国のお金について学ぶ必要があると思いましたね。大人になったら、しっかりとお金のやりくりをしていこうと思った記憶があります。

海外ではお金について家庭内でオープンに話す
――諸外国の金融教育と日本の金融教育の違いとは?

齋藤:海外だと、お金のことについて「家庭内でオープンに話す文化」があると思います。一方、日本ではお金について「子どもは親に聞いてはいけない文化」があると思います。家庭外でもお金について相談できる人がいない、どうやって相談したら良いかわからないということに悩んでいる人も多いということです。学校に関しては、国によって様々です。ヨーロッパは、金融教育を色々な教科に入れていくという目標設定をしています。例えば、算数や社会など、違う角度でお金について学んでいくようになっています。アメリカは、州によって違うのですが、家庭内で教えていくという文化になっているというところが日本との違いになると思います。

――日本の金融教育を今後どのように変えていきたいですか?

齋藤:私が一番最初にやりたいのは、学校を当てにするというよりかは、家庭内でお金の話をしやすい関係を作っていくということです。親子でお金について話すことができる関係性を今の子どもたちができるようになると、大きくなった時に、当たり前に自分の子どもに対してお金の話をできると思います。そのため、早めに「お金に関して話すことの習慣化」をできるように弊社でサポートしてきたいと思います。

日本の金融教育はなぜ進まない?

――日本で親子間でお金の話をしづらい要因は?
齋藤:昔からの文化で、お金が汚いという文化になってしまっていること、「日本は過去、経済大国だったので、お金について困ることはなく、そもそもお金について話さなくても大丈夫だったということ」があると思います。

――「お金は汚いもの」、「苦労して稼ぐことが美徳」とされている理由は?

齋藤:今は、崩壊していますが、終身雇用が関係しており、自分が勤めている企業のためにひたすら働かないといけないという考えが今でも残っていると思います。また、男性社会というのも残っていると思いますね。今では、男性の方でも一概に稼げる環境ではなく、「たくさん働いた=お金がたくさん稼げる」という訳ではないので、女性も働かなければならないことも多くなってきていると思います。また、人口が減少していることも背景として大きいと思います。働く人が数多くいて、日本が豊かになってきたという歴史があるなかで、今もたくさん働き、苦労して稼ぐことが美徳となっているのかなと思います。しかし、今は、たくさん働いても稼ぐことができない場合も多いため、自分が働くよりもお金をどう働かせるかを子どもの時から考えることが必要になってくると思います。

――家庭で子どもへの金融教育は何歳から、どのような話をしたら良いでしょうか?

齋藤:日本では、お金の研究が進んでいないのですが、海外では進んでおり、3歳からお金の認識が始まるとされています。7歳までにお金の性格が決まり、それが、一生変わらないと言われています。しかし、日本の今の現状だと、7歳までにお金のことを教えていくとなると、どのように教えていけばいいのかわからない、という声が多い状況です。私は、「わからないかもしれないけれど、話してみる」という環境を家庭内で作っていくことが一番大事だと思っています。

子どものうちから始めたいお金の話

――日本でも投資などのお金の運用を進めるために、どのようなアクションをすれば良いのでしょうか?

齋藤:私が一番伝えていきたいことは、将来的にお金が足りなくなってくるという、漠然としているものの確実な未来に対し、まずは教えていく必要があると思います。次に、家計管理が基礎だと思います。自分のお金をただもらうのではなく、何をしてお金をもらい、何を目的としてお金を使うのかを決めることが大切です。これは、お手伝いをして、お小遣いをもらい、そのお小遣いを何に使うのかを決めることから始めることができると思います。ただ無駄遣いをしてはいけないと伝えても、なぜ無駄遣いをしてはいけないのか、子どもにはわからないですし、お金を稼ぐ目的や背景もわからなくなってしまうためです。お金の価値=硬貨ではないです。よく、価値観がわからなくなるから現金にするという声もよくいただくのですが、どこからきているかが価値になっています。

――「キャッシュレスが進む社会で、現金社会で生きてきた人がスマホでチャージをして、気づいたらお金がなくなっていた」というニュースを度々目にするのですが、キャッシュレス社会でお金を使いすぎないためにはどうすれば良いのでしょうか?

齋藤:おそらく、使いすぎてしまう人は振り返りをしない人だと思うんですね。例えば、よく1ヶ月の明細を見てびっくりするというのがあると思うのですが、明細を見るのは、1ヶ月ではなく、1日にすべきだと思います。1日、10,000円使ったという明細を見て、このまま毎日使っていたらひと月の支出は30万円だと認識する。他にも、毎日、振り返りが可能なツールやカードを持てば良いのかなと思っています。自分にどんなツールがあっているのかというのは、きちんと情報収集をして決めていく必要があると思います。

――ほとんどのご家庭で子どもは、学校の教育費、習い事にいくらかかっているか知らない状況だと思うのですが、これもお子さんに対して、「見える化」していくことが大事だということでしょうか?

齋藤:私には子どもが3人いるのですが、子どもが習い事に行きたくないと言う時があるんですね。そんな時は、「あなたには月に〇〇円かかっていて、〇〇円払うためにママとパパは一日お仕事したんだよ」と話すと、両親が働いたお金で習い事をしていると理解してくれます。まだ、子どもが小学1年生なので、1,000円がどれくらいの価値なのかわかっていないのですが、子どもから「1,000円欲しい」と言われたら、「わかった、じゃあママ1時間働いてくるね」と言うと、「大丈夫、我慢するから1時間働かなくていいよ」と言われたりするので少しづつ理解してくれるのかなと思います。


世界の物価や金融事情は日々変化し続けているため、親が子に教えるというよりも、「親子で一緒に学ぶ」ということが大切だと感じました。私は、日々、アプリで支出入を管理しているのですが、2024年が始まったということで、幸せな年にするために、より最適なアプリを探したり、他の投資方法を考えたりとお金について改めて考えたいと思います。


齋藤 舞 さいとう・まい

株式会社MEME代表取締役。テンプル大学国際経営学部に在学中にインターンにて商社へ入社後、そのまま大学を休学し就職。貿易業務、プロダクトマネージャー、海外新規事業のプロジェクトに従事。海外事業部の責任者の経験を経て、2019年にコンサルティング会社を設立し、親子向けの金融教育セミナーの企画運営や女性向け商品の販売を行う。コロナを機に、再び医療物資の輸出入を始め、貿易に事業を転向。2021年3月に株式会社MEMEを創業、代表取締役に就任。2022年に一般社団法人日本金融教育推進協会の理事に就任。

<取材・文/梶山悠莉彩>

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