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A.C.O.メンバーの1日をカスタマージャーニー化することで見えた意外な姿

ジャーニーマップに落として見ると、メンバーのあれやこれやが見えてくる?

こんにちは。UX ストラテジストの岡本です。A.C.O.は30人程度の会社でほぼ毎日全員と顔を合わせますが、プロジェクトがかぶらないとあまり話す機会がないため、どんな人なのかあまり知らないということも少なくないです。そんな彼らが、普段、どんなことを考えて仕事に取り組んでいるのか、プライベートでは何をしているのかなど、メンバーの事をもっとよく知りたいなと、常日頃から感じています。

ところでUXデザインには、サービスやプロダクトの利用者に共感をし、利用者の思考や不満を読み解き、具体的な解決案などを考える仕事があります。それを行うためのメソッドとしてデプスインタビューなどがあげられます。

今回、過去にあまりプロジェクトで一緒になることが無かった同僚、長谷川 大輔に被験者となってもらい、UX調査のメソッドを使って長谷川を理解してみます。


  • 長谷川 大介 | DAISUKE HASEGAWA
    神奈川大学工学部機械工学科を卒業。自動車内装部品メーカーにてプロダクト設計の経験を経て、現在に至る。UXデザイン、情報設計担当。UX/IA部所属。


デプスインタビューとカスタマージャーニーマップで、調査・分析を行う


今回、長谷川の調査と分析に使うメソッドは「デプスインタビュー」「カスタマージャーニーマップ」の2つです。

デプスインタビューとは?

被験者にオープンな質問を投げかけ深掘りを行う定性調査の手法です。
1時間から1時間半という時間をかけ、被験者の行動を深く聞き込みます。定量調査とは異なり、ユーザーの潜在的な価値観を聞き出すことができます。デプスインタビューで被験者から本質を聞き出すためには、インタビュアーと被験者が深い信頼関係を形成し、話しやすい雰囲気を作ることが重要となります。


「カスタマージャーニーマップ」とは?

被験者の行動・思考・感情や、サービスやプロダクトにおけるタッチポイント(被験者との接点)前後の情報を時間軸上で整理し、視覚的にわかりやすく図式化する手法です。

時間軸をステップ毎に区切り、行動の文脈を読み取ることができるので、旅(ジャーニー)に見立てられています。カスタマージャーニーマップは、サービス開発のアイデア発想やヒントを発見するためによく用いられています。

これらの方法を選んだ理由としては以下の2点です。デプスインタビューでは定性的に被験者の1日の行動と思考を深掘りできること、そしてカスタマージャーニーマップでは時間軸に沿い、インタビューから得られた情報を整理できるからです。

それでは、実際に行ってみましょう。


デプスインタビューでは「オープンクエスチョン」でユーザーの心理を掘り下げる

まずはデプスインタビューで長谷川の1日を洗いざらい聞き出していきます。事前準備としてボイスレコーダーとメモの用意、そして「トピックマップ」を作成しておきます。

トピックマップとは?

話の中で重要になりそうな話題(トピック)同士の関係をまとめた図を「トピックマップ」と言います。

デプスインタビューでの会話の流れは事前に設計できるものではなく、時にインタビューの目的から大きく外れてしまう時があります。トピックマップがあれば話が脱線しても立ち返えれるので、迷子になることが少なくなります。


デプスインタビューは、定量的な調査ではわからない発見をする際に有効な手法です。 インタビュー中は、深掘りをするための質問を心がけます。質問内容も被験者の意見を引き出すために重要な要素です。

好ましい質問項目としては、回答が定まらない自由に回答してもらえる質問(オープンクエスチョン)が有効です。解答をある程度予測できる質問、例えば「はい or いいえ」で答えられる質問(クローズドクエスチョン)よりも、会話の中で有意義であると判断したトピックを深掘りするほうが効果的だからです。

インタビュー終了後は、得られた情報のまとめます。カスタマージャーニーマップに落とし込むというゴールがあるので、情報をステップ、思考、感情、行動ごとに分解しておくと作成が簡単になります。


カスタマージャーニーマップを作成し長谷川の行動を分析してみよう!

インタビューで得た情報をもとに、長谷川のとある一日のカスタマージャーニーマップを作成します。

一日の行動を勤務前、勤務中/午前、勤務中/午後,勤務後と、大きく4つのステップに分けることができました。時系列ごとに行動の詳細、思考、感情の揺れ幅を整理するとわかりやすくなります。

それでは、各ステップごとに見て行きましょう。

STEP #1 勤務前

彼の1日は朝起きて好きな服を選ぶところから始まります。清潔感の中にも個性を出せる服を着て働くモチベーションを高めているようです。この日はクライアントに会うので少しかっちり目の服を着ます。通勤中の空き時間を利用して、はてなブログなどでテックや経済のニュースなどを読んでいることが多いようです。


STEP #2 勤務中/午前

出社したらまずは1日のタスクを整理します。午前中は集中力が高くなるので、考える作業を中心にこなします。出社前にカフェで仕事をすることもあります。

STEP #3 勤務中/午後

お昼を食べた後は眠くなりがちなので、ルーティーンワークを行うことが多いようです。A.C.O.は席がフリーアドレスなので、スタンディングテーブルを使うなど気分に合わせて作業場所を変えています。


STEP #4 勤務後

勤務後はジムに通っています。自宅では設備もなくだらけやすいので、トレーニングをしなければいけない環境に身を置くことで継続につながっているようです。 また、睡眠時になかなか寝付けないことが悩みのようです。プロジェクトの目的によってインタビューの整理の方法は異なりますが、今回は、被験者である長谷川以外の万人に共通して言えるそうなもの、そうでないもの、人によって異論が出るものの多くの人に共感してもらえそうな面白いもの、などと行った観点で整理をします。



いくつかの具体的なもの、抽象的なものを含めて3つのポイントが見えてきました。


インタビューで見えてきたポイント

ジムに行ったり、スタンディングテーブルを使用したりと、時々によって最適な場所を選んでいる。 怠けてしまう自分を強制的に動かす必要がある。 食事に関心が高い。好きな食べもの/飲みものについて詳しく調べてたり、栄養をとろうと心がけている。 いろんなカフェを回るのが好き。 外食時の栄養の偏りを気になる。 健康を気にしている。栄養価の高い食事を選んだり、ジム(週2で通う)に通ったりしている。 健康的な食事をとらないと、体に影響がでる気がする。 自分が痩せていることが気になる。 睡眠の質によって感情が上下している。

インタビューで見えてきたことの整理


インタビューをして見えてきた傾向は、ポイントの1にもある、「被験者は行う作業の内容によって、最適な場所を選んでいた」ということです。被験者の行動の動機や本質的な欲求が、一つだけではなく複数あることがわかりました。

例を挙げてみると、スタンディングテーブルを使用する動機には、昼食後は眠気が多くなるため、足腰を鍛えるためという二つの動機がありました。ジムに通っている動機には、体を鍛えるという目的を達成する、継続のためにトレーナーが集まっている環境に身を置いているなどということがわかりました。これらの事は被験者との会話の断片から、解釈が見えてきました。

インタビューで得られた情報のグルーピングを行います。赤はグループ、黄色はインタビューで得られた情報を記載しています。同じ発見でも、掛け合わせるものによって様々なグルーピングをすることが可能です。多くの人が「アハ!」となるような新しい気付きが得られるまでフレーミングを繰り返すとよいでしょう。

長谷川は以前、A.C.O. Journalでオフィス改善に関する記事を執筆したことがあります。メリハリが生産性向上において重要だと考え、気分に合わせて、ソファやラウンジチェア、ハイテーブルなどワークスペースを変えることで、常に最適な環境で仕事ができると彼は分析しています。

ただオシャレなだけじゃない。健康的で生産性向上を考え抜いたA.C.O.のオフィス作りメソッド

インタビューを受けての長谷川コメント

長谷川 業務で他人の行動を調査することはありますが、自分自身が普段何気なくとっている行動にどんな背景、目的、感情が伴っているのかを、深く考える機会はなかなかありませんでした。 今回、自分の行動をジャーニーマップで可視化し、他者に整理や分析をしてもらったことで、面白いぐらいに自分自身を客観視して見ることができました。
ジャーニーマップから客観的に行動を分析することで、自分でも気づかなかった行動の根幹にある思考を知ることができました。それらの思考を集め組み立てると、生々しい人物像が浮かんできます。まるで自分の頭の中を覗かれているようで、恥ずかしかったです(笑)
「ジャーニーマップは他者の行動を客観的に評価分析することができる」と理解していましたが、いざ自分が被験者になると、「なるほど、こういうことなんだな」と、デプスインタビューとジャーニーマップが、行動分析において非常に重要だということが改めてよくわかりました。

定性調査での発見がプロジェクトの方向を大きく変えることもある

今回はUXメソッドを使い、A.C.O.のメンバーを分析してみました。同じUX部の長谷川の1日の流れを観察してみると今まで見えて来なかった行動や考えている事の断片の間に、共通の考えがあるというインサイトを発見できました。

解釈には決まった正解がありません。プロジェクトでリサーチを行う際は、複数のデザイナーでインタビューの情報を一緒に考えると、よりよい解釈を見つけることができます。インタビューで得た情報を文字通りに整理するだけではなく、情報を解釈し、自分以外の人に上手く伝えるのがUXデザイナーとしての腕の見せ所になってきます。

整理した情報によって「アハ!」と見落としていた事に気がついたり、アイデア発散を手助けしてくれる事ができると理想的です。特に新規事業などの答えが定まっていないプロジェクトの場合、このようなインサイトを見つける事で、先の見えないプロジェクトを大きく前進させてくれます。

仮説やインサイトを作る作業の分析を一人で行うと客観性を失いやすいので、定性調査のダウンロードは複数名で行うとよいでしょう。

定性調査でユーザーから得られた情報を元に深掘りをし、当初考えてもいなかった視点を発見することによって、そこから発生したアイデアがプロジェクトの方向を大きく変えることがあります。UXデザイナーとして、そういった瞬間に接する事ができることは大きな喜びだと感じています。


WRITER

岡本 拓 / TAKU OKAMOTO
UX STRATEGIST / DESIGN SPRINT MASTER

近畿大学国際人文学部四谷アート・ステディウム修了後、The Basel School of Design(スイス)にて修士課程修了。アムステルダムと香港にてビジュアルデザイナーとして勤務後、現在に至る。UXデザイン、ユーザーリサーチ担当。認定デザインスプリントマスター。UX/IA部所属。

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