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安藤はどうしてセミナー講師・金融教育に力を入れているのか?(自分史より)

そもそものキッカケ

保険代理店として、保険を売るためだった。

飛び込みもお願いも、トークを使ったセールス術も苦手。セミナーなら行けると思ったが、過度に煽るのもカリスマ教祖的に惹きつけるのも苦手。

個人事業での開業から約4年は、マジで「売れない保険営業マン」だった。

その中で、実直に金融教育をして個別相談に繋げていくやり方をしたら、今までにないくらい保険が売れた。

2015年に●●生命(保険会社)のセミナーで▲▲さんに出会い、書籍を読んで直接指導をお願いしに行き、お客様への伝え方などいろいろ教えてもらったことをそのまま実践。

まずは個人事業で開業した初期のお客様や、その他の友人・知人にとにかく声をかけまくり、とにかくセミナーを聞いてもらうところからのスタートだった。

それを愚直に継続していると、思った以上にお客様の反応が良く、試行錯誤しながらセミナーコンテンツや話し方を磨いていくうちに、保険も売れるようになった。

セミナー講師、金融教育をしているうちに

セミナー講師および金融教育を何十回とひたすら実践しているうちに、使命感がわいてきた。

使命感がわいてくると、お客様もどんどん増えてきた。そうなると金融機関等からタイアップセミナーの講師依頼も来るようになった。好循環。

やればやるほど、日本人のみなさんは将来のお金の不安を抱えていることを実感。でも、投資や税金・社会保険など、金融・経済・社会保障のこと、すなわち「お金のこと」を知らないと実感。また、投資については嫌悪感があったり、「私には無理」という大きな壁がある人がほとんどということも分かった。

僕がセミナーをやることで、少しでも将来への不安や投資へのネガティブなイメージを払拭してほしいと思うようになった。

ハイブリッド型・独立系FPとしての歩みを進める

実行支援策は販売している変額保険のみだったが、保険だけでは真にお客様の役に立てないと思い、確定拠出年金と金融商品仲介業を始め、実行支援できる商品の幅を広げた。

また、金融商品以外で情報提供・コンサルティングに対して報酬をいただく「会員制度」をスタート。運用会社とタイアップしてセミナーを開催するなど、保険などの金融商品販売を目的としない金融経済に関する情報提供の充実を図った。また、金融商品や投資と異なる分野のサポート、例えば住宅ローンや年金・健康保険、相続、ふるさと納税など多岐に渡る分野に対応できるようにした。その金銭的な対価として会費をいただくビジネスモデルとして、提供サービスの柱の1つになった。

iDeCo、つみたてNISAのサポートを軸にする独自路線を貫く

私たちがセミナー営業を始めた頃、同じ保険業界では変額保険など収益性の高い商品を販売すること、特にできるだけ高所得層にアプローチすることを重視してきた。

2017年から始まったiDeCo、2018年から始まったつみたてNISAは、その制度を使う金融商品を販売しても共に収益性が極めて低いもの。当初ほとんどの金融機関や保険代理店(独立系FPを名乗る人も含めて)は、表向きは「弊社で加入できます」とアピールしながら、実際はほとんど力を入れていなかった。

しかし、私たちは収益性が低いことを承知であえてiDeCoとつみたてNISAの実行支援に本気で取り組んできた。目先の収益性は低くても顧客開拓になり、長い目でビジネスとして成立すると考えたこと、そして、長期投資のすそ野を広げるという社会的責務を果たすことに繋がると考えたため。

結果として金融機関などに頼ったり、大きな広告宣伝費をかけずに集客ができたり、付随的に保険などの金融商品販売や会員数の増加に繋がった。

顧客本位の業務運営で先を行く存在に

時を同じくして2017年から金融庁が「顧客本位の業務運営に関する原則(フィデューシャリー・デューティー)」を実践するよう金融機関に指導を始めたが、現場になかなか浸透しない中で、私たちのやり方はまさに顧客本位の業務運営であるため、注目された。私たちからすると、金融アドバイザーとして持つすべき職務上の倫理観にそって、やるべきことを実直にこなす「当然のこと」であったが、金融業界はそれができていなかったのだ。

私たちとしてはこの現状がとても悲しかったが、そんな金融業界に一石を投じたい!との思いで、顧客本位の業務運営を貫き、できるだけ多くの方に金融教育とコンサルティングを施し、少しずつでも「本当にやるべき資産形成」をサポートしてきた。小規模ながらお客様と世の中にご支持をいただき、事業を継続してきた自負がある。

プロからの講師依頼も来るようになり、自社でも独自に独立系FP養成研修を実施

前述の▲▲さんに教わったことを徹底的に実践して保険販売の成果が出ていた頃、▲▲さんのご縁で保険会社の社員や保険代理店向けに「つみたて投資の伝え方」をテーマとして研修講師に登壇する機会もいただいた。

そこでのご縁もあり、上記の独自路線・顧客本位の業務運営を貫いているのに保険も売れるし保険以外のサービスも伸びていることが注目され、保険会社などから「iDeCo、NISA」「顧客本位の業務運営」等をテーマとするプロ向けの講師依頼も来るようになった。

プロ向けの研修では「いかにお客様に分かりやすく伝えるか」を指導してきたので、自社の教育・コンサルティングのスキル・コンテンツもブラッシュアップされた。

●●生命からの依頼で全国の保険代理店に研修を実施したのをキッカケに、「顧客本位なコンサルティングと金融商品販売を実践するFP」のための独立系FP養成研修(AAT)も実施した。

これは、前述の「金融業界に一石を投じたい!」という思いを共有できる仲間を増やしたいとの思いがあって始めたこと。

コロナを機に、やり方が大きく変化

開業当初からセミナーもコンサルティングもほぼ対面であった、2020年2月のコロナ禍突入で状況は一変した。対面が全くできなくなったのだ。これまで対面以外でやってきたことは、月1回程度でずっと続けてきたメルマガくらい。そこから初めてZOOMやYouTube等を使って情報提供・コンサルティングを始めた。

既存のお客様のフォローはなんとかなったが、困ったのが新規の集客。チラシ等を使ったセミナー集客もできず、紹介もほとんどなくなってしまった。

いろいろ試行錯誤した結果、行きついたのがHP上での記事執筆。

オンライン集客に詳しい方にアドバイスいただき、とにかくひたすら良質な記事をたくさん書いていくことにした。2か月くらい連続で執筆したあたりかた徐々にアクセスが増え、3か月後には月間3万のアクセスとなり、オンラインセミナーや個別のカウンセリング申し込みが入るように。5~6か月間は毎日執筆し、その後はライター募集をかけて一部を任せるように。これが結果的に優秀な人財の獲得にも繋がった。

そうしてオンラインで記事による情報発信を続け、執筆開始から半年後には月間10万アクセスに到達。日経新聞等のメディアからの取材依頼や、FP協会・近代セールス等のプロ向け雑誌への寄稿、オリックス銀行等の金融機関メディアの取材、上場会社から従業員向け金融教育セミナーの実施依頼など、多くのご依頼をいただくようになった。

私たちのようなごく小規模な独立系FPオフィスでも、オンラインでの情報発信を通じてより多くの生活者に資産形成に関する情報を提供し、長期投資のすそ野を広げることができると実感。

コロナ禍を機に客層が変化し、社会課題も明確に

私たちがオンライン集客に力を入れてから1年ほど経過すると、記事を見てオンラインセミナーに申し込んでくれる人やコンサルティングを受けてくれたお客様の傾向が明らかになってきた。当初はコロナ禍を機に将来への不安が増したこと、テレワークで時間的余裕ができた人も多かったことなどから、初めて資産形成や長期投資に興味を持つ方が多くセミナー受講・コンサルティング申込をされた印象。

ところが、コロナ禍突入から1年半ほど経過した2021年の秋頃より、いわゆす初心者が減少し、自分でネット等の情報を調べたうえで「セカンドオピニオン・サードオピニオン的に独立系FPを利用しよう」という顧客が増加した。こうした人たちははブロガーが書いた資産形成に関する記事や、金融系の情報発信をするユーチューバーなどの情報を重視する。彼らが金融・経済の専門家でもなく、FPなど実務に携わっている者でなくても、だ。

人によっては、対面・オンラインを問わず個別にじっくりマンツーマンで向き合う私たちFPよりも、著名ブロガー・ユーチューバー等のいわゆる「インフルエンサー」の発言に信頼を置く場合もあった。

これは一概に由々しきこととは言えないが、様々な情報を自分で取捨選択するよりも「あの人が言ってたから大丈夫そう」という“依存”にも似た状態に陥っている可能性もあり、投資などの知識は向上しても情報を判別するスキルが向上していない、とても注意が必要な状況にあると感じた。

しかしかたや、上記のような情報収集を一切せず、相変わらず資産形成や長期投資の情報収集や具体的な行動を起こさない人の割合も多いと感じた。やはり、「お金のこと」に関するメンタルブロックや無関心があるのだろう。

私たちFPもこれまでの金融・経済の固定概念に捉われてはならず、変化しながら生活者の将来不安の払拭と資産形成の成功を後押ししていかなければならない。

上記のような、生活者の中でも資産形成・長期投資に「興味がある層」「興味がない層」と二極化しているだけでなく、情報の取り方がインターネットやSNSに偏ってきている現状をふまえ、私たちのように「1対1で目の前のお客様のために最善をつくす専門家」がもっと多くの人に正しい情報提供とコンサルティングを実施する必要があると強く感じた。

BtoBに挑戦することを決意

コロナ禍における社会情勢の変化と、私たちのビジネスモデルのオンライン化、客層の変化をふまえ、私たちが資産形成を支える独立系FPとして果たすべき社会的責任も明確になってきた。

しかし、多くの人に正しい情報を伝え、寄り添うアドバイスをしようと思っても、拡散力ではインフルエンサーに敵わない。月間10万PVがあっても、インフルエンサーの発言がツイッターやインスタグラムでどんどんシェアされていくのに比べたら、足元にも及ばない影響度合いだ。

ありがたいことにお客様からのご紹介はコンスタントにいただける程度に回復してきたが、それでもスピードとしては遅い。

もっと多くの生活者に、もっと早く金融教育とコンサルティングの場を提供しなければならない。

それを考えたとき、生活者に資産形成と長期投資のキッカケを作るべき立場にいるのは、企業ではないか?という仮説が出てきた。

国でもなく教育機関でもなく金融機関でもなく、企業!

国も、iDeCoやNISAなど国民の資産形成を支える制度を拡充したり、金融リテラシーの向上のため高校などで金融教育を義務化するなど、だいぶ踏み込んだ改革を行ってきた。

しかし彼らは、国民一人ひとりが実際に新たな一歩を踏み出すところまでのサポート、すなわち実行支援まではしない。社会保障制度により一定のセーフティネットはあるものの、資産形成や長期投資はあくまでも「自己責任」という考えがあるからだ。

そして、特定の事業者の利益ほう助を避けるため、金融商品を扱う事業者に協力するというよりは、「このルールの下でちゃんとやれ」と指導するスタンスだ。

これでは、なかなか国民全体に資産形成と長期投資の文化が根付かない。

では金融教育を担う立場にもなれる教育機関はどうかというと、その機能は果たすのは難しいだろう。

仕方ないともいえるが、高校に金融教育の専門家はこれまでおらず、それを外部委託しても金融機関の社員がやってきて専門的なことをつらつらと話すだけ。金融機関がそのまま口座開設手続きを案内して良いなら、金融機関側もメリットがあるので積極的になるだろうが、前述のように特定の事業者の支援と見られたらアウトなので絶対に認めない。結局は「ただ知識を教えただけ」なので、社会人になった時にも役立たないものとなってしまう可能性が高い。

では、国も教育機関も関係なく、金融機関がビジネスの一環として資産形成と長期投資の啓もうに取り組めば良いのだが、今もなお彼らは及び腰だ。

これまでも金融業界の慣習について触れたが、彼らは基本的に自社の収益を最重視していて顧客本位でない。収益性を重視するため、メインターゲットは富裕層・高所得層で、低所得層・中間層の優先度が低いのが見て取れる。iDeCoやつみたてNISAは本当に極めて集積性が低いと述べたが、金融教育をやること自体も収益性が低く、どちらもメインビジネスに据えることはありえないと言って良いだろう。

こうした状況をふまえると、多くの人が会社員として社会人のキャリアを歩む中で、会社側が資産形成・長期投資を後押しするのが一番理にかなっているのではと思うのだ。

自分で調べたり行動するのは難しい、国も学校もちゃんと教えてくれない、家庭でも教えてくれない、金融機関もまだまだ及び腰…

それなら最後は企業だ!という訳である。

企業が金融教育に取り組む意義

前述の通り、生活者一人ひとりが資産形成・長期投資に取り組む後押しをするということは、それ自体が社会的意義が大きい。社会の公器とも言われる企業が、そうした取り組みをすることで、社会的責任を果たすことにも繋がる。

しかし、実際に企業がコストなり人的労力なり何らかのリソースを投入するのであれば、当然ながら「うまみ」がなければ動くはずもない。実際、安藤もイチ中小企業の経営者として、社会的意義以外のメリットが何もなければ、二の足を踏むだろう。

では、従業員の資産形成・長期投資に取り組む後押しをすることで、どのようなメリットがあるのだろうか?

それは、「従業員のファイナンシャル・ウェルビーイング(経済的な幸福)の実現に繋がる」というものだ。

従業員のファイナンシャル・ウェルビーイングを実現できれば、エンゲージメントが高まり、生産性の向上と離職率の低下が見込める。

実は、従業員の資産形成・長期投資は「企業における人の問題」に関して、こんな大きなメリットをもたらしてくれる可能性を秘めているのだ。

生活者はだれもがみな幸せに暮らしたいと思っているわけだが、全員幸福度が高いかといえば当然そうではなく、特に「経済的(金銭的)」なストレス・不安を抱えている傾向にあると言われる。米ブラックロック社の調査によれば、その割合は50%に迫るほどだ。

経済的ストレスというと給与に関する不満も挙げられるが、それではなく物価上昇(インフレ)による家計の圧迫、年々増大していく教育費や、住宅ローンなど負債に対する負担感など様々だ。

そうしたストレスがある従業員に金融教育をしてどうなる?と思われるかもしれないが、実は効果が十分見込める。

正しい知識に基づいて資産形成・長期投資を実践している人と何もしていない人では、幸福度が20ポイント程度異なるというデータもある。

人はみな長期的なリスクについて不安を抱くものだが、しっかりとその対策を立てて豊かな未来づくりへ一歩ずつ進んでいるということ、そしてリスクに自ら対策を講じているという事実が自己肯定感をもたらすこと、これらがストレス・不安の減少と幸福感の向上に繋がるのであろう。

こうして「ファイナンシャル・ウェルビーイング」が高まれば、それを後押ししてくれた会社への愛着と貢献欲求すなわちエンゲージメントが高まる。さらに日々の余計なストレスが減るため業務への集中力が高まる効果も当然期待でき、やりがいと生産性(パフォーマンス)も高まる。そうなれば当然離職率低下にも繋がるだろう。

このように、従業員の「ファイナンシャル・ウェルビーイング」を高めることで、従業員本人だけでなく、企業にとって多くのメリットをもたらすのだ。


こうした従業員の資産形成・長期投資の後押しを企業が社内リソースで実践するのは限界があるため、私たちは「資産形成サポートの専門家」として、企業に代わり正しい金融教育とコンサルティングを実施し、従業員のみなさんがファイナンシャル・ウェルビーイングを実現できるよう全力でサポートしていく。