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オンラインコンサートホールを公開しました

この度、個人で作成したオンラインコンサートホール "initium ; auditorium" が公開されました。

initium ; auditorium
Online concert experience from Japan. Explore your favorites.
https://www.initium-auditorium.com

ゼロからサービスを作る初めての経験でしたが、リリースから数日が経ち、多くのお客様から反響の声をいただいており、開発者としてとても嬉しく思っています。

このコロナ禍において、職業音楽家の立場は非常に弱いものでした。
ライブハウスを守る署名活動 #SaveOurSpace が注目されたように、音楽業界はこの騒動でかなりの影響を受けています。音楽家も向こう半年間の舞台が延期または中止されるなど、その影響は計り知れません。私も趣味音楽家として様々な音楽活動を行っていますが、多くの舞台が中止されました。

幸運にもエンジニアは影響が少なく、また上記の通り趣味も大きく縮小されたため、コロナ禍当初の私は時間が有り余っていました。対して職業音楽家の方々は、時間はあるが本番はできない、稼ぐことができない、という大きな課題がありました。

この課題に向き合って、出た結論が "initium ; auditorium" の開発でした。

本サイトの特徴についていくつか紹介します。

1. コンサート単位で購入でき、購入後に初めて閲覧できる

Youtubeの投げ銭機能(SuperChat)は、私の周りの職業音楽家たちにとって、生計を立てる手段としては到底成り立たないものでした。
まず、収益化までのハードルの高さがあります。チャンネル登録者数1,000人以上などの条件は、開始して1-2ヶ月ほどで簡単に突破できるようなものではありません(一部の方は可能でしょうが、それが多くの人に当てはまるようなものではありません)。

また投げ銭機能は、配信者が比較的不利な立場におかれています。
Youtubeは基本無料で聴くことができるため、閲覧者は投げ銭をしなくても良いわけです。対して、配信者側は投げ銭を必要としている事情がありながら、投げ銭をしつこくお願いするわけにもいきません(多少の範囲内であれば好意的に受け止められると思いますが)。

このため、やはりお金を頂いて、それに対して演奏という形で価値を提供する、という形式が最も音楽家と視聴者を健全に結びつけるだろうという結論になりました。
余談ですが、音楽家にチップを渡せる仕組みも用意しています。Youtubeの投げ銭機能の良いところだけを輸入したような格好でしょうか。

2. 美術館のような鑑賞体験を目指す

ただ動画を見るだけであれば、視聴者はYoutubeで事足ります。鑑賞に対してお金をいただくからには、それ相応の価値を追加で提供する必要があります。

そこで私たちが目指したのは、美術館の鑑賞体験でした。
美術館では、作品と解説が対になって配置され、それぞれを見比べることで作品の理解を深めながら、より作品に没入できる仕組みが提供されています。

クラシック音楽は、一聴しただけでは「綺麗だな」「ちょっと奇抜だな」程度の感想しか持てないことがあります(私自身も、あまり知識のない領域では、音楽をただ受け止めることしかできない、ということがよくあります)。しかし裏を返せば、丁寧な解説が用意されていれば、それを足掛かりにして作品への深い没入感を提供できるということにもなります。

こうした考えから、私たちは演奏のみならず、その解説についても力を入れることとしました。
演奏の前後にはインタビューや解説が挟まり、ページ下部には詳細なプログラムノートを用意しています。
さらに、ピクチャ・イン・ピクチャが利用できない方でも、演奏と解説を同時に見比べることができるよう、動画の位置を右下に固定できるような仕組みも提供しています。

また、美術館で作品を鑑賞する際、ちょっと急いでいたら皆さんはどうするでしょうか? 解説を読む気分じゃなかったら? 次の展示を先に見たくなったら?
美術館には、こういった鑑賞体験の自由さがあります。その時の状況や気分に合わせて、好きな順番で、好きな内容を楽しむことができます。

本サイトでもこれを踏襲しており、インタビュー動画を省いて演奏のみ再生できる機能や、特定の演奏を指定して再生できる機能を提供しています。

きっと他にも、より没入感を生み出せる仕組みがあることと思います。今後のアップデートを通じて、より良い鑑賞体験を追求し、他のサービスにはない付加価値を提供していきたいと考えています。

3. 多言語対応

Youtubeなどの世界的なプラットフォームを除いて、海外に向けた日本のクラシック音楽配信プラットフォームと聴いて、皆さんは思い当たるサービスはあるでしょうか。恐らく数は多くないのではないかと想像します。

私の感覚ですが、日本のクラシック音楽はかなり内向きだと考えています。私は主に合唱を趣味にしているのですが、日本で一番大きな合唱コンクールは国際コンクールではなく国内コンクールですし、国際コンクールとは言え、蓋を開けてみたら国内の団体の方が多いということもよくあります。
では世界から見て日本のクラシック音楽がつまらないのかと聞かれると、決してそんなことはありません。海外に出向いて演奏すると、その特殊性ゆえか大きな反響をいただきます。身近にない言語、身近にない作曲手法、身近にない歌声…。そういった一つひとつが、どうやら新鮮に映るようです。

この度リリースするにあたって、多言語対応することとしたのも、こうした現状を変えたいという個人的な思いが一役買っていることは間違いありません。

今回の開発は、仕事の傍ら作業をして、3ヶ月ほどかかったのですが、決して長い期間ではありません。その中で、サイト内文言、メール文言、コンサート文言といった、鑑賞体験に必要な文章を多言語対応しました(2020年7月7日現在、利用規約、プライバシーポリシー、特定商取引法に基づく表記については多言語対応がなされていません。近い将来対応いたします)。

私の願いが通じ、当サイトが日本の配信プラットフォームの一つとして全世界的に注目される日が来ることを願ってやみません。

リリースから数日が経ち、現在安定して稼働しています。
この記事を読み、少しでも興味をもっていただけたら、ぜひ一度サイトをご覧いただければ幸いです。

initium ; auditorium
Online concert experience from Japan. Explore your favorites.
https://www.initium-auditorium.com


【備考: 使用している主なサービス、フレームワーク】

  • React
  • Next.js
  • firebase-auth(認証)
  • firestore(DB)
  • cloud functions for firebase(API)
  • mux(動画配信)
  • stripe(決済)
  • mailgun(メール配信)
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