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つくば万博(1985年)の記録~秋田世豪

「つくば万博(1985年)の記録と思い出」
~秋田世豪(地域活動支援員)

●科学と人間

頭脳が生み出す科学技術の、日進月歩に驚き、その感嘆とは別に最大の印象は、人々が食べていた、おにぎりでした。

会場の食事風景の中で、一番多いのが、かのおにぎりです。科学技術のスピードは加速度的ですが、一方、人間はまだこうして、江戸や明治の時代とそう変わらぬにぎりめしを食べています。

急速に変わるものと、ごくゆっくりとしか変わらないもの。いいかえれば、人間の頭脳と身体です。両者のズレは、ますます大きくなって行くのではないでしょうか。将来の人類はこの亀裂に耐えられるのでしょうか。

●子供向け

子供のためのイベント、ショー、展示などが驚くほど多かったです。

技術レベルから見ても、子供を相手にするしかないものもあるでしょう。しかし、エネルギー、光磁気ディスク、INSなど、もっと正面から問題をとらえてほしかったです。子供に科学のロマンと希望を与えるのであれば、第2会場のエキスポセンターのプラネタリウム、2001年の夜明けなどの方が、ずっと素晴らしいといえるでしょう。

技術重視の日本にあって、それぞれの企業が、苦心して科学のイメージを打ち出した点で、興味深いものでした。自らの技術偏重の反省をも含めて、非常に良いひとときを過ごしたと思います。

●行列

最も驚くべきは入場整理券を得るための長い行列です。ご自慢のコンピューターは見せ物用なのでしょうか。各入館券発行の全体的集中的コンピューター化を行うべきでした。技術をいたずらに誇る未来社会よりも、全世界の人間と楽しくつきあえる社会の方が、少なくとも老齢の方々にはありがたいのではないでしょうか。

●映像

大スクリーンにカナダグースを映し出すサントリー館がよかったです。科学技術を利用しながらも科学そのものを見せるのでなく、自然を見せてくれました。現代の、特に都会の人々に必要な「ゆっくリズム」を与えてくれました。

自然を題材とした住友館の立体映像もありました。自動音声で「スミトモダ!」「スミトモダ!」と連呼しているのが強烈でした。