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ハンコを作ったら物作りの基本に立ち返った話

先日ハンコを作りました。(上の写真は昔作った迎春ハンコです)

ことの発端は、パートナーがハンコをなくしたと言い出したことでした。そのときハンコなら作れるんじゃ? と思い「ハンコ 自作」で検索すると出るは出るはインターネットに漂う人類の英知。その中でも石を削って実印を作った人の話を読んだらもう、試したくて仕方なくなったので試しました。

※なお、パートナーのハンコはその後すぐに見つかりました。

まず行ったのは石を買いに行くこと。これまで買ったことがありません。婚約指輪とも結婚指輪とも無縁に生きてきたのにここに来て急に石を買うことになりました。一体どこに売っているのやら。新宿の世界堂に売っていたという情報はありましたが、このコロナ禍で新宿まで行くのは心配なので、近所で一番大きな画材屋さんへ。お店の人に「石を削りたいんですが」と質問したら「最近減ってるから……」との返事。これは、ネット通販コースかな。届くまでこの気持ちは続くかなと心配しつつ店内を歩く店員さんについて行くと「あ、まだありますね」の声。サイズバリエーションはありませんでしたが、確かに石が売ってました。書道コーナーでした。後から知ったのですが、石を削ってハンコを作る篆刻というのは書道の分野? の一つらしいです(以下参照)知らなかった。知識ってちょっとのことでも増えると世界の解像度が上がって楽しいです。

NHK高校講座 | 書道Ⅰ | 第18回 篆刻と刻字 オリジナルの印を刻もう ~篆刻~

石を無事購入し、いざ鎌倉。いざ篆刻です。篆刻には彫刻刀を使いました。あの小学校や中学校で購入したアレです。うっかりが多くものをすぐなくす自分ですが、何故かこういうのは実家を出ても持ち続けているので不思議です。本当は石用の刃物があるらしいのですが、画材屋さんで買えなかったので彫刻刀で代用です。

結論から申し上げますと、全然削れませんでした。刃を当てれば削れることは削れるんですが、消しゴムハンコのようには深さが出ないため削っても削っても文字が浮かび上がりません。また、準備が不十分なため、石にいい感じの文字を書けるペンがなく(ボールペンは全く書けず、家にあった油性ペンは太すぎて書けても彫れるサイズにならなかったため)鉛筆書きでは下書きがよく見えないため、初日は今の備えでは何も出来ないということが分かっただけで終わりました。

翌日、前日の反省を生かし同じ画材屋さんで油性ペンを、100円均一のお店で木材を買いました。(蛇足ですが、今の100円均一ショップって木材もプラスチック段ボールも売っててホームセンターみたいでした。自分のように車の運転が苦手な人間にはホームセンターはアクセスしづらかったので100円均一のお店の品ぞろえには感動しました)目的は、下書きの視認性の向上と、石よりも削りやすい木材で練習を兼ねて試作することでした。木材は油性ペンで下書きするとものすごく滲むので、視認性の向上にはいまいち結びつきにくかったですが、それでも木の削りやすさに助けられ、短時間で2回ほど削る練習が出来ました。削り方が何となく分かったところで2日目は終了しました。

ついに決戦の3日目です。いざ削ろうと思ったら、風呂の排水口が詰まって水が溢れたり、あれやこれやとアクシデントが発生しました。そのとき、自分は確信しました。今日は出来る! どういう訳か分かりませんが、自分は不運なアクシデントが続くほど結果が良いというジンクスがあります。ポリテクセンターの試験の日も転んでスーツに穴開けたけど受かりました。

いざ油性ペンで下書きをした辺りから明らかに初日とは違います。まず何より見やすい。細い油性ペンで石に書くと滲まないしはっきり見えるし、書き足せるしでこれだけで急にやりやすさが段違いに上がりました。そして彫る方も、何が違うかははっきりとは言葉にできませんが、なんか知らんが削れるぞ! という感じでサクサク石がハンコになっていきます。こうなってくると自分でも不思議ですが自分が作っているというよりも自動モードに入ったような感覚で、物が勝手に出来ていくのを見ているだけな感じです。

こうして削りあがったハンコを押印しての感想

下手くそ(笑)

シャチハタの綺麗なハンコを見慣れているせいか自分の作ったものは線はガタガタだし、そもそも自分の字だから汚いし、線も太いで、全然ダメでした(笑)一応パートナーに見せたらほめてくれましたが、個人的には職人さんの凄さを思い知って終わりました。

最後に、今回のことで自分が学んだのは以下のことです。

①出来るような気がすると出来るは違う。

②道具の準備は大事。道具がそろわないとなにも出来ないし、出来ても結果が伴わない。

③試作は大事。試作をケチると本作で失敗することになる。試作を笑うものは試作に泣く。

④ハンコ職人はすごい。でもハンコ文化はもうなくなって欲しい。切実に。ハンコのサイトを見たら未だに象牙を推していて目を疑いました。本人がいて、本人証明書類があっても印鑑がないと何もできない現状はすぐにでも改善されるべきだと思います。