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Wantedly Journal | 仕事でココロオドルってなんだろう?

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今年で創業70周年。大幸薬品の『正露丸』を支える幸福なコミュニケーションの在り方

「お薬」で人の暮らしをよりよく豊かに。自社の役割を果たすために、大幸薬品が大事にしていること【前編】

2016/02/26

創業以来、消費者に愛され続ける商品を作る企業があります。経てきた年数が長ければ長いほど、その企業が一体どんな仕組みで成り立っているのか、働く人たちはどんなことを思って仕事をしているのか、知りたくなるものではないでしょうか。

黄色のパッケージとラッパのマークでおなじみの『正露丸』を製造・販売する大幸薬品株式会社もそんな企業のひとつ。創業は1946年。今年で70周年を迎えます。正露丸の日本国内での認知度は9割以上と言われ、現在では香港、中国、インドネシア、マレーシア、アメリカなど10の国と地域で展開され、世界規模で愛される商品となっています。

今回は、マーケティング部で働く松本貴之さんにお話を伺いました。2009年に新卒で入社し、店舗への営業を行う部署を経て現職に。現在は、主にドラッグストアなどの店頭で使われるPOPなど、陳列装飾ツールの作成、展示会やイベントの企画運営を行っています。

「新しい血をどんどん入れていきたい」
前向きな姿勢に興味を惹かれて

兵庫県で生まれ育ち、京都の大学に進学。在学中はマスコミ系を専攻していたという松本さん。大幸薬品に入社したきっかけは、大阪に本社を置く関西の会社だったことがひとつ。そして、もうひとつ、事業拡大を視野に入れた前向きな姿勢に共感したからだと振り返ります。

松本貴之さん

「学校に求人がきていまして、会社説明会に足を運びました。そこで今後の会社の方針として、今、力を入れている二酸化塩素の商材を第二の事業として拡大していくと説明がありました。当時は今より社員の数も少なかったのですが、将来的に新卒や中途を問わず、どんどん採用していきたいと言っていて、新しい血を入れることに前向きなんだなと、いい印象を抱いたのを覚えています。周りは何十社と採用試験を受ける人が多かったのですが、私はちょっと変わっていて、会社の数を絞り込んで集中して受けていくタイプだったんです。そうしたら最初に採用の内定をいただいたのがここだったので、迷いはなかったですね。こういうのってやっぱりタイミングというか運命というか、そういうものがあると思うんです」

当時、第二の事業として会社を上げて力を入れていたのがクレベリンという商品です。

常温ではガス状で流通させるのが難しいとされてきた二酸化塩素を特許技術により商品化に成功。空気中のウイルスや菌、ニオイを除去できる置き型の商品は、乳幼児やお年寄りのいる家庭を中心に大きく売上げを伸ばし、現在では看板商品である正露丸に並ぶ同社の主力商品です。このクレベリンで空間除菌市場を築き、市場を牽引するというミッションと共に2010年4月には東証一部上場を果たしています。

入社後は店舗の営業を担当されていたそうですが、店舗というのはドラッグストアですか?

「ドラッグストアのお店だったり、チェーン店であれば統括管理をしている本部に伺ったりもします」

正露丸の場合、わざわざ営業しなくても既に取扱いがある、というお店が多そうです。具体的にどんなことをしていたのでしょうか?

「簡単に言うと売り方の提案なんですよね。棚に並んでいるのは通常ですが、『この期間は需要があるので特売をしましょう』といった提案をします。例えば、年末年始には帰省やお出かけなどで長距離の移動が増えるので携帯用のアイテムを提案して、外出先で需要のありそうな商材を揃え、売り場展開してもらうといった感じです。特売となると弊社からフォローとして販促物の提供や、チラシを掲載してもらったりします」

特売はお店の戦略だけではなく、メーカー側から提案するケースもあるんですね。

「ありますね。小売店さんに並ぶ商品は何万点とあるので、お店の方もどれが売れる、売れないといった整理がしきれないところがあります。そこで、こちらから積極的に働きかけ、まずこのお店が何を一番売りたいのかをチェックします。商品の打ち出し方は、季節性を大事にしているのか、立地・客層を優先しているのか。

チェーン店の本部で決まったことは全国どこでも同じように展開するんですけど、お店によっては、立地や客層で独自色を出しているところもあるので『がんばっているなぁ!』と思ったり。

そういうお店は、常に良い情報を求めていらっしゃるので営業として訪問したときはやりやすいですね。

仕事と関係なくドラッグストアに行くといろいろ見てしまいますね。他のメーカーの新商品はどこにあるかとか、パッと目に飛び込んできた商品があれば、なぜ目がいったんだろう?ってお店の中で立ち止まったり。お店の人からすると『あの人、普通のお客さんじゃなさそう』という雰囲気は出してしまっていると思います(笑)」

「20代のうちは守りではなく、攻めの姿勢で」
営業を通じて体得した、仕事のスタンス

営業を担当されていたときに大変だったことはありますか?

「お店の方は営業時間中は忙しいので、正直邪険に扱われてしまうこともあるんですけど、そんなことでくじけていたら前に進めない。『まあ、こういうもんや』と思って、切り替えるのが大事ですね。たぶんこの業界にかぎらずどこの営業も同じだと思います。細かいことを入れたら最初の2年間は失敗ばかりでしたね。弊社は上司や先輩、同僚もみんな優しいので社内でガーッと怒られることは滅多にないんです。どちらかというと外の人に怒られることが多かったですね。一番の失敗は商談に行って、自分の提案したものが受け入れてもらえなかったとき。そういうときって引き際が大事なんですよ。『これ以上いってもあかんな』というのを雰囲気で感じないといけない。でも、若かったので『このまま会社に戻ったら成果ゼロやん』って、食い下がりすぎて怒られてしまいました(笑)。いいようにとらえたらガッツがあるとも言えるんでしょうけど、いきすぎましたね」

そんな失敗だらけの経験から学んだことは、松本さんが仕事をするうえでの指針となっているようです。

「20代は守るのではなく積極姿勢でいくことが大事だと思ってます。商談で思い切って自分の意見や提案を言ってみることで怒られることもありますけど、アドバイスをもらえることもあるので。スタンスとして縮こまっているよりは、思っていることをある程度言った方がいいと思っています」

営業での数々の経験を経て、マーケティング部へ異動。現在は、かつて松本さんが所属していた営業部のスタッフから現場の声を聞きつつ、売上アップに繋がる販促企画を考えるのが主な仕事です。季節毎に変わるもの、TVCM等のマス広告やWEBを使った企画を打ち出すタイミングで、店舗の販促企画を連動させることもあると言います。

「正露丸はラッパのマーク」など、キャンペーンや季節に合わせたPOPを作るのも松本さんの仕事のひとつ。

今の立場で仕事をするにあたって、心掛けていることはありますか?

「何かしらの根拠やデータに基づいて動くことと、ひとりで考え込みすぎないことです。部内はもちろんですけど、営業担当とコミュニケーションをとるように心掛けていますね。大阪のスタッフとも、電話やメールでコミュニケーションするようにしています。なかなか私も大阪に行く機会がないこともあって、店頭の情報は教えてもらわないと把握するのが難しいので、営業からの情報を非常に参考にさせてもらっています。大事にしているのは、仕事に関係ないときでもマメにコミュニケーションをとること。用事のあるときだけ話をしても、うまいこと意思疎通できなかったりするので、例えば、自分の担当ではないけどクレベリンの情報や、スポーツ等の趣味の話のような何の気無しの情報でも送ってあげたり。そうすると相手からも送ってもらえるんです。相手が変にかまえてしまったり、気を遣ったりすることがないように。それはちょっと意識すればできることです」

仕事かどうかは関係なく、コミュニケーションを取り続けることが、自然と仕事にも結びついていく。松本さんが他のスタッフとこまめに情報交換するように、他のスタッフもまた、上司や仲間とコミュニケーションし、仕事を進めていくそうです。後編では、スタッフ同士の関係性や、ユーモアを交えて柔軟に対応していく会社独自の在り方を紹介します。

Interviewee Profiles

松本貴之
大幸薬品株式会社マーケティング部
兵庫県出身。同志社大学卒業後、2009年に新卒採用で大幸薬品株式会社に入社。営業部を経て、2014年マーケティング部販促グループ、2015年よりマーケティング部医薬品チームでPOPなどの装飾ツールや、展示会・イベントの企画運営を行う。
  • Written by

    梶山ひろみ

  • Photo by

    岩本良介

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