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「リアルと同じようなサービス経験をネットで作る」これからの企業成長に欠かせないパーソナライズド·マーケティングとは

今やECサイトなどでもおなじみの「レコメンド機能」。それを可能にするSaaS型レコメンドエンジンの国内トップシェアを誇るのが、私たちシルバーエッグ・テクノロジーです。日本で初めてのレコメンドエンジンを開発し、これまで多くのクライアント企業のパーソナライゼーション(※)を実現し、事業成長を支えてきました。

これまで20年以上に渡りレコメンドシステムを開発してきた私たちですが、さらなるパーソナライゼーションの実現に向けて、現在新たなステップを踏み出すための転換期を迎えています。今回はCEOト-マス・フォーリーと、取締役のフォーリー 淳子に、事業にかける想いと今後のビジョンを聞きました。

※パーソナライゼーション:消費者一人ひとりのニーズにあわせたコンテンツを提供することで顧客体験を豊かにし、顧客満足度とLTVをあげる手法

トーマス・アクイナス・フォーリー
代表取締役社長 & CEO。アメリカ合衆国マサチューセッツ州生まれ。1985年、デジタル・イクイップメント社(DEC)に入社。人工知能部門のプリンシパル・エンジニア兼コンサルタントとして活躍したのち、ジェンシム社の日本支社長として来日。1998年、大阪でシルバーエッグ・テクノロジーを西村淳子とともに設立。日本におけるパーソナライゼーション・サービスのパイオニアであり、現在もコードを書き続けるテクノロジスト。
フォーリー 淳子
神戸女学院大学卒。大阪府知事付通訳として勤務後、会議同時通訳者として活動。33歳でオンラインデータベースの会社を起業。1998年にAI技術の会社シルバーエッグ・テクノロジー㈱をト-マス・フォーリーと設立。専務取締役&COOとして同社の事業構築に携わる。2015年3月に退任。2016年9月に東証マザースに上場。2021年3月、取締役就任。
2010年に、民事再生にてファンドの手に渡った家業のレストラン・チェーン「焼肉の大同門」を買戻し、社長に就任。大阪スタートアップコミュニティで関西を元気にするために積極的に活動中。

創業当初、資金調達をするも事業は難航。つらい時期を支えた信念とは

―まずはシルバーエッグ・テクノロジーの創業の経緯を聞かせてください。

トーマス・フォーリー(以下、トム):私はかつて世界的なIT企業、DEC(現在はHPが買収)のAIコンサルティング部に所属し、全米・全欧の企業を顧客に仕事をしていました。その後、ボストンのAIの会社に移り、日本支社立ち上げのため支社長として来日しました。実は私自身は、自分のビジネスのアイデアを起業という形にしたいとずっと思っていたこともあり、日本に着任後に後ほど共同創業者になる淳子に出会い、ビジネスを一緒に立ち上げようと意気投合したことが創業のきっかけです。

フォーリー淳子(以下、淳子):私は当時イギリスの上場企業のオンラインDBサービスを日本で独占販売する会社を起業し経営していました。その会社を事業譲渡したタイミングでトムに出会い、意気投合して一緒に創業することにしたのです。

創業した90年代の大衆向け商業ウェブサービスはまだ黎明期で、ユーザー同士のインタラクション(双方向のアクション)も未発達でした。テレビのようなブロードキャスティング的な使い方が多かったのですが、ウェブの未来は「1to1でのインタラクション」というトムのビジョンに共感しました。トムはテクノロジー、私がセールスとマーケティングを担当する形で事業を始めたのです。


―創業した当時はどのようなサービスを作っていたのですか。

トム:最初のプロダクト「アドバボット」は、Webサイトに訪れた人、一人ひとりの嗜好性にあった広告を配信するシステムでした。

このプロダクトがリリースされたときに、日経新聞が「考えるWebサイト」として大きく取り上げました。IT企業が急成長していたドットコムバブルだったこともあり、合計6億円超の資金調達に成功しました。私たちの技術がこれからのインターネットにおいて重要なものだと評価されたのです。そして、最初のレコメンドエンジンの開発に取り掛かりました。最初のバージョンはいわゆるパッケージソフトとして、一つ800万円という価格で販売を開始したのですが、当時の日本ではまだそういったレコメンドを必要とする時代にはなっておらず、時代を先取りしすぎた私達のプロダクトは、たったの4つしか売れませんでした。

―6億円超も調達してリリースしたプロダクトが売れなかったのは精神的にもきびしいですよね。会社自体をやめようとは思わなかったのですか。

淳子:当時からトムはいつも「ネットが、一人ひとりのユーザーに個別に対応するパーソナルでインティメートな世界になり、1to1での双方向コミュニケーションの必要性が認識される時代は必ず来る」と言い続けていました。「必ず時代が私たちに追いつくから、もう少し頑張ろう」と話してくれたのです。

決して楽な時代ではありませんでしたが、自分たちが信じているものに強い確信を持っていたからこそ会社を続けてこられました。

「技術力」と「課題解決のノウハウ」の両輪こそが、シルバーエッグの強み

―何がきっかけで事業を成長させられたのか教えて下さい。

トム:何か大きなきっかけで爆発的に成長したわけではなく、地道に事業を展開していって、少しずつお客様が増えていきました。強いて言うなら、TSUTAYA onlineや楽天ブックスといった知名度のあるサービスの比較的初期に導入していただいたことにより、いい事例になったことは大きな要因だと思います。

―当時の経験から、今に活きている教訓はありますか。

トム:市場全体をターゲットにするのではなく、目の前のお客様の課題解決にフォーカスすることです。そのために、実際にお客様がどんな課題を持っているのかを引き出すヒアリング力と、本質的な課題を見つけ出す想像力が欠かせません。

お客様の課題を本質的に捉え共に解決していくことで、自然と同じような課題を持つお客様にも頼られるようになっていきました。一つの課題が新しい製品の核となり、次のビジネスチャンスに繋がっていくのです。

―技術力だけに頼るのではなく、お客さんの課題に寄り添ってきたのですね。

トム:そうですね。そしてそれが今の私達の武器にもなっています。今は技術も進化し、素晴らしいサービスを作っている会社も少なくありません。しかし、どんな優れた技術・サービスがあっても、お客様の本質的な課題を解決するノウハウがなければ表面的な解決で終わってしまいます。

ここ10年ほど、国際的なレコメンドシステムのカンファレンスに参加していますが、素晴らしいサービスは増えているものの、どうしてもビジネスの現場とのギャップを感じます。テクノロジーの追求と顧客のもつ課題解決、その両方をバランスよく実現できているのが私たちの価値だと感じますね。

―技術的な強みについても教えてもらえますか。

トム:リアルタイムに大量の情報を分析し、学習できることです。通常、AIの学習には大量のデータを「バッチ」で学習することが一般的ですが、私たちはこれまでの長年のサービス提供実績を元にした経験から、最適なアプリケーション・クラウドサービスの組み合わせを設計・実践することにより、大量のデータをリアルタイムに学習できています。

それもECだけでなくやデジタルコンテンツ、不動産や人材サービスのサイトなど、幅広く様々な領域においてサービスを提供してきました。各領域において我々のAIエンジンが活用できているというのも、私たちのサービスの強みと言えるでしょう。

まずはアジア、そしてグローバルへ。成長市場の追い風にのれるかが勝負

―今後の目標について聞かせてください。

トム:「パーソナライゼーションならシルバーエッグ・テクノロジー」と言われるような存在になることです。海外では特定のサービスで第一想起される会社を「Go to Company」といいますが、パーソナライズにおけるGo to Companyになりたいですね。

―トムさんはもともとアメリカで働いていましたが、今後は海外の市場に打って出ることも考えているのでしょうか。

トム:海外進出は考えていますが、いきなりアメリカ市場に参入することは考えていません。そもそも私が日本でサービスを始めたのは、日本の市場がアメリカに比べるとまだまだ未開拓で、大きなチャンスを感じたからです。アメリカの市場はすでに成熟していて、市場進出にも大きな投資が必要となります。今は、日本の市場に集中しようと思っています。

ただ、時期がきたら海外進出は考えており、次に進出するとしたらアジアです。今はアジアの成長が著しく、私達がさらなる成長を狙うなら成長市場で戦うしかありません。そこで次のGAFAとなるようなアジアの企業と一緒にビジネスをすることで、アメリカ・ヨーロッパで戦うための準備ができると思います。

レコメンドで消費者の「自己実現」をサポート?パーソナライゼーションの面白さ

―レコメンドのシステムが進化・普及することで、どんな未来が待っているのか聞かせてください。

淳子:例えば近所の顔馴染みのお店に入ったら、自分の好みにあった商品を提案してくれますよね。昔はそういう光景が当たり前でしたし、今でも自分の好みを把握して商品を提案してくれるお店は信頼できます。

そのようなお店とお客様の親密な関係を、レコメンド機能を使ってネット上でも再現したいんです。ネットでの買い物はたしかに便利ですが、温かみを感じることはありませんよね。レコメンド機能が進化することで、買い物が便利になるだけでなく、まるで昔なじみの店に来たような「温かみ」を感じさせてくれるはずです。

―これまでレコメンドの事業を展開してきて、どのような面白さがあるのか聞かせてください。

トム:エンドユーザーの自己実現をサポートできることです。私は買い物が自己実現の一つの手段だと思っています。もしレコメンドされた商品が今まで思いもしなかった商品で、自分の好みに一致していた場合「自分はこんなものも好きなんだ」と新しい自分を発見できるかもしれないですよね。まさにレコメンドによるセレンディピティの効果です。

買い物におけるレコメンドを通して、新しい自分を発見したり、なりたい自分に近づく手伝いができるなら、それほど嬉しいことはありません。エンドユーザーは直接私たちのお客様ではありませんが、エンドユーザーにしっかり価値を伝えることを考えてサービスを作っています。

淳子:私はクライアントのビジネスの売上が当社のサービスの力でアップする様を見て喜びを感じます。これまでレコメンドサービスを取り入れて売上に貢献できた瞬間を何度も目の当たりにしてきました。そんな時は自分たちのビジネスのことのように嬉しいですね。

だからこそ、自分たちで解決できない課題を一つでも減らしたいですし、単純な「レコメンド機能」を超えたパーソナライゼーションを実現していきたいと思っています。

―最後に、貴社に興味を持った読者にメッセージをお願いします。

淳子:シルバーエッグ・テクノロジーの魅力は、働く人達の多様性です。代表がアメリカ人で、オフィスは東京と大阪。大阪弁で喋る人もいれば中国語を喋る人、多種多様な考え方を持っている人が働いています。まじめだけど個性が強いメンバーが集っているので、ダイバーシティの中で働きたい方にはおすすめの環境です。

トム:現在私たちは大きな転換期を迎えています。これまでレコメンドサービスに特化して会社を成長させてきましたが、今後は「パーソナライズド・マーケティング」とより広い範囲でサービスを展開していく予定です。

パーソナライゼーションに興味のある方、「インターネットを人間らしく」というビジョンに共感する方は大歓迎なので、ぜひ一緒に働きましょう。


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