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「カルチャーを体現できない」。多言語化SaaSのWOVN.ioがOKRをやめた理由

今スタートアップ界隈で話題の目標管理制度「OKR」。「Objectives and Key Results」の略称で、目標(Objectives)と主要な成果(Key Results)を用いて、組織・個人の目標管理を行う手法です。

Wovn Technologies 株式会社(以下「Wovn」)も、1年半ほどOKRを導入していたのですが、この度OKRを「廃止」しました。

OKRの何が問題だったのか、OKRのメリット・デメリット、OKRを廃止したあとの目標管理制度について、代表取締役社長の林鷹治と人事マネージャーの田中りずむが語ります。


カルチャーと管理指標を整合させる

OKRを導入前の目標管理制度について教えてください。

林:
会社には年間・半期・四半期などの経営目標があって、それを社員全員が達成のために活動しています。その際、「全社売上」という大局的な数字だけだと管理しにくいので、「ユーザー数」「個人売上」「チャーン(解約率)」など、管理用の細かな数字を設定し、目標を客観的に管理している会社が一般的なのかなと思います。


Wovn Technologies 株式会社 代表取締役社長 林 鷹治
北海道札幌市出身。車載機の開発、ソーシャルゲーム開発、ECプラットフォームのグロースハッカーを経て、Wovn Technologies 株式会社を創業。

正直に言うとWovnは、OKRの導入前は目標管理制度というものはしっかり運用していませんでした。というより、必要があるフェーズではなかった。

当時は社員も30人程度しかいなくて(注:2019年10月現在、Wovn Technologiesには倍以上の正社員がいます)、全員でひとつの目標を追っていられたんです。MRR(Monthly Recurring Revenue、毎月経常される収益)やリード数といった、一般的なSaaSの指標を全員でなんとなく見ているという感じでした。


当時の重要な指標はなんだったんですか?

林:
そのときどきによって違います。例えば、一般的にはSaaSの指標はMRRが大事と言われることが多いのですが、Wovnでは一時期管理用の数字として、意図的にACV(Annual Contract Value、単発サービスやコンサルフィーなども含めた、1年間で顧客が支払う金額)を使っていました。その理由は「売上を意識する」という文化をつくるためです。

Wovnは代表である僕がエンジニアだったこともあって、テクノロジードリブンな会社。今でこそちゃんと営業体制も整ってきましたが(※整ってはいるのですが足りません。営業の方も採用募集中です)、当時から組織にエンジニアが多く、売上に対する意識が希薄でした。プロダクトを作り込んでいるフェーズではそれでもよかったのですが、サービスもいい感じになってきてこれから営業にいくぞ! というときにこの状態はまずかったわけです。

そこでACVをKPIに据えて、社員全員が意識するようにしました。MRRはキレイに計上されていく指標ですが、ACVは導入費用やショットの翻訳費用も含めた、お客さまから頂くすべての金額。これを指標に据えることで、お金を稼ぐことは悪いことじゃない、むしろ追いかけるべき目標だ、というカルチャーを植え付けたかったんです。今はこのカルチャーも根付いてきたので、ACVを全社目標とはしていません。


OKRの運用と感じた課題

そこからOKRを導入したきっかけを教えてください。

林:
そもそも経営には「モード」みたいなものがあると考えています。事業計画を達成するための方針のようなイメージですね。例えば今期は「リード」が大事、翌期は「チャーン」が大事、みたいな。

そのモードをコントロールしなければいけない、もっと言うと時期によって変化させなければいけないわけで、その方法を模索していました。ちょうどその時期話題になっていたOKRは、クイックに「モードの向き」を変えられる武器に見えたんです。実際導入してみても、たった1個の目標を全社で追いかけるというOKRは、みんなのパワーを同じ方向に向かせ、大きな目標を達成するという意味では役にたちました。

ちなみにOKRの内容って話しても大丈夫ですか?

林:
それはダメ(笑)。どうしても知りたい方は入社してください(笑)

じゃあ別の質問を(笑)。OKRは結果的に、テストを含めて1年ほど実施しましたが、やってみた感想を教えて下さい。

林:
一言で表すと、「全員で1個の目標に向かうというのはいい。ただそれ以外を許容する必要があった」という感じです。具体的に説明しましょう。

まず、Objectiveには定性的な目標を据えて、KRで定量的に管理するというのがOKRの基本スタイルですよね。ただ数回実施してみたのですが、KRの目標を達成したところで、本当にOが達成できているかどうかがジャッジできなかったんです。もちろんこれはOとKRの設定の仕方が悪かったのかもしれませんが、当時Wovnが達成したかった経営目標があったわけですが、それをOKRという仕組みで具象化できなかったんです。

林:
2点目に、全員で同じ目標を追いかけるって、逆に難しいなと思って。ちょっと単純化しますが、例えば「競合他社に負けない製品を開発する」というObjectiveがあったとして、これって「いい製品をつくる」ってことじゃないですか。エンジニアにとって「いい製品をつくる」っていうのは当たり前なことで、目標管理には使いにくかったんですよね。

田中:
エンジニアの仕事には例えば、「サービスのレスポンスを早くする」「サービスを安定稼働させる」というテクニカルものがありますが、これは「いい製品をつくる」という、新しい開発をするというのとは、ちょっとニュアンスが異なりますよね。


Wovn Technologies 株式会社 人事マネージャー 田中りずむ
新卒で株式会社光通信に入社後、管理本部長室に配属。経営課題の解決をミッションとし、コスト削減や業務改善を行なう。2018年にWovn Technologies入社。人事領域全般を担当し、採用、労務、組織開発、制度設計に携わる。

林:
コーポレートもそう。「『競合他社に負けない製品を開発する』という目標のために経理処理を早くする」っていう目標は立てられますけど、それってObjectiveがなんだろうと同じになりかねない。もしそうなったらコーポレートにとってOKRという目標管理制度は形骸化してしまう。これを防ぐのは非常に難しいと感じました。

そういう課題を超えられるOKRは設定できなかったんでしょうか?

林:
とはいえObjectiveに合致しない仕事というのは発生しますし、合致しないからといってやらなくていいということにもなりません。しかもWovnは「インターネット空間をローカライズする世界的な黒子企業になる」というビジョンを掲げていることもあって、「目立たないけど大事な仕事」を大切にするカルチャーがあります。毎回同じことをやるのが大事なら、それをきちんと評価できる制度をつくるべきだと判断しました。

なので「重要なことだけにコミットする」というOKRは、マッチしない部分があったのかなと思います。


OKRをカスタマイズしなかった理由

OKR運用の難しかった点は他にもありますか?

田中:
ルールがたくさんあるところですね。

教科書的には、KRは7割達成くらいにする、毎週「ウィンセッション」というミーティングを行おうなど、細かい点がたくさんあります。もちろん運用・浸透させることもできたとは思いますが、それにはコストと時間がかかりすぎると感じました。


林:
ここで主張したいのは、決してOKRが無意味な制度だということではありません。OKRはGoogleやインテルが導入したことで有名になりましたが、彼らにとっては教科書にある細かいルールも意味があるんだろう、ということです。

おそらくOKRの基本コンセプトがあって、それを運用していくうちに細かいルールを設定していったのではないかと思います。Googleにとって細かいルールには意味があったはず。ただ現在日本に伝わっているのはルールが設定された後のOKR。なんで7割がいいのかはわかりませんし、企業によって異なっていいはずなのに、教科書的には7割になっているという点は、正直使い勝手が悪いですね。もちろんこれは70%ルールだけではなく、随所に同じ感想をもちました。

本来的には自分たちの組織に合わせた制度をつくるべきなのに、それを理解せずにそのまま運用しちゃうことになるな、と感じました。

田中:
じゃあ教科書的なOKRをカスタマイズしようって最初は思いました。いいところだけ残して、必要に応じて変えていこうと。

でもそうすると、今度は「OKRのフレームワークと違くない?」っていう疑問が皆さんから出てくる。OKRはいまや有名なフレームワークなので、ちょっと調べればいろんなことがわかってしまう。「これはWOVN独自のOKRだから」と説明するのも違いますし、そこにかけている時間があれば日々の業務に集中した方が良いと思いました。

逆にOKRでうまくいった点はありますか?

田中:
1on1は以前よりやるようになって、うまく機能しています。OKRを廃止した今でも、コーポレート部門は同じ仕組みを続けています。

林:
全員で1個の目標に向かうというコンセプトははいいですよね。ただWovnでは他の活動を許容する必要があった、ということです。


OKRはカルチャーにフィットしなかった

OKRを廃止して、今の目標管理制度はどのようなものにしたのでしょう。

林:
細かいことはお伝えできませんが、新しいルールはみんなで共通の目標は追うものの、OKRの細かいルールは削ぎ落としたというイメージです。例えばOKRのObjectiveは四半期や半期の短期的な目標を据えることが多いと思いますが、Wovnは中期的な目標からスタート。またOKR廃止後の最初の目標には数字が入っています。OKRのObjectiveには数値は掲げられないですよね。

まとめると、OKRのコンセプトは残しつつも、細かい仕組みはオリジナルにしました。これをOKRという名前にしちゃうと、みんな教科書的なOKRに引きづられてしまうので、「OKRは止めました」と言っています。

田中:
現行制度のポイントは、柔軟性をもたせたことです。基本的に目標の設定や管理は各部門の責任者に委ねています。

林:
今の制度も始めたばかりだし、当然完璧だなんて思っていません。むしろOKRが完璧に機能しているケースがあるなら教えていただきたいです。制度云々より、会社がより成長するほうがよっぽど大事ですから。


林:
結局OKRはカルチャー的にフィットしなかったんですよね。Wovnはスタートアップにしては堅実な会社だと思っていて、ミーハーなのが苦手なんです(笑)。OKRもそうだし、他にもカスタマーサクセスという概念は取り入れていますが、他の言葉に置き換えています。そのまま取り入れると、やっぱり教科書的な考え方に引きづられちゃうんですよね。

他の会社のことはわかりませんが、Wovn Technologiesにとっては他社のルールをそのままインストールしてもダメで、自分たちに合ったルールを作ることが大切だと考えています。

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というわけでWovn Technologies 株式会社は、目標管理制度はもちろん、さまざまなルールを試行錯誤しながら作っています。単に決まっている制度を運用するだけでなく、制度設計に関わりたい人事などコーポレートスタッフはもちろん、エンジニア・デザイナー・広報・営業・インサイドセールス・IT戦略コンサルタント・翻訳者・法務など、考えうる全職種をWovn Technologiesでは絶賛募集中です。

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