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制約は喜んで受け入れる。ブランドコミュニケーションの設計を担うデザイナーの挑戦

新しい資産運用体験の実現を目指すWealthParkには、様々なバックグラウンドやスキルを持つメンバーが集まっています。社員インタビューでは、それぞれのメンバーが日頃どの様な想いでWealthParkで働き、組織や事業に関わっているかをお届けしていきます。

第13弾は、WealthParkのデザイナーの松本さん。大学在学中にデザイン事務所を設立し、グラフィックデザイナーとして活躍。その後、時代の波に乗りながらチャレンジの場をインターネット広告/メディア事業から金融、大手製造業へと移していきました。紆余曲折を経ながらもステップアップしていた松本さんですが、全力でデザインができる環境を求めて辿り着いたのが、ブランドコミュニケーションを一から設計できるWealthParkでした。過去のキャリアにも触れながら、松本さんが考えるデザインの力に迫ります。


プロフィール
松本 夏弥 | Kaya Matsumoto
三重県出身。祖父と両親が陶芸家のため、土と陶器に囲まれて育つ。上智大学哲学科在学中に個人でデザイン事務所を立ち上げ、大手広告代理店と取引を開始。卒業後も個人事業としてデザイン業を続けていたところ、友人の誘いでインターネット広告事業の立ち上げに参画することに。その後、カカクコムにて食べログのデザイナー兼フロントエンドエンジニアを経て、日本クラウド証券のCrowd Bankの立ち上げ、製造業の生産財プラットフォームであるミスミにて、アートディレクターとしてブランドガバナンスを経験。2018年、デザイナーとしてWealthParkに参画。

デザイナー以外の道を考えていなかった

― まずはWealthParkに入社されるまでの過去のキャリアからお伺いさせてください。

デザイナーとしての原点を紐解くと、中学生まで遡ります。アップルコンピュータ(現アップル)のMachintosh Performa575を購入して、HyperCardというプログラミングツールを使い、ゲームやコンテンツを遊びでつくっていました。高校に上がると文化祭のチラシをつくったりして、その頃から「自分はデザインをしている」という感覚が芽生えていました。大学生の時は既に自分をグラフィックデザイナーと称して、友人のクラブイベントのフライヤーやCDのジャケットもデザインしていました。

仕事が増えてきたので在学中に個人でデザイン事務所を立ち上げて、卒業した先輩や友人経由で受注した大手広告代理店やエンタメ系の案件を手掛けていました。特にCDの仕事が多かったですね。就職活動もせず、卒業後はそのままその仕事に就いた様な感じです。

― 周囲とは違う道に突き進むことに迷いはなかったのですか。

自分の中ではデザイナー以外の道を考えていなかったし、迷いは全くなかったです。若かったから、なんとでもなるというポジティブな気持ちが先行していて、当時は仕事で悩んだことがなかったですね。余談ですが、あの頃はアウトローだったので、昔からの友人によると、今の自分は「ドロップアウト」の逆の「ドロップイン」(笑)。最初は道から外れていたのに、いつの間にかちゃんとした会社の会社員になっていると。

― 面白い(笑)。

そういう意味では、ユニークなキャリアパスなのかもしれないです。デザイン事務所を一人でやっていた時期は、音楽業界の仕事をひたすら受けて、レコードやCD 、DVDのジャケットをデザインしていました。毎日デザインしては入稿してという生活を2年間送っていて。そんな折に、友人がウェブ広告の会社を立ち上げて、少しずつ手伝っているうちに入社することになりました。これが僕の会社員生活の始まりです。そこではウェブ制作に携わっていました。

新しいチャレンジとしてフィンテックの世界に飛び込む

―グラフィックデザインからウェブデザインに転向されたのですね。

僕は音楽業界に特化したグラフィックデザイナーで、クライアントもレコード会社やクラブ経営者、もしくはミュージシャンでした。産業構造の変化でパッケージの仕事が激減すると、今度はインターネット系の仕事が急増して……つまり成り行きですね(笑)。

― なるほど。時代の変化ですね。

その頃はインターネット広告にフォーカスした企業はまだ少なく、LPO/Flash開発/CGMコンテンツといったカテゴリであれば、リソースが続く限り無限に受注できる時代だったので、社内でアドクリエイティブの部署を立ち上げて、その売上が会社のメインの収益になるまでやり切りました。会社を上場企業にバイアウトした時は、既にバナー広告もコモディティ化して、単価も下がっていたので、一つの時代を見届けた感覚です。

バイアウトした後は、デザイナー兼フロントエンドエンジニアとして、カカクコムの食べログ事業部に転職しました。2年程勤めた後、新しいチャレンジとしてフィンテックの世界に飛び込もうと決め、日本クラウド証券のCrowd Bankの立ち上げに参画しました。そこでやっていたことは、貯蓄から投資へというマネーの流動化の一つの取り組みで、今に繋がっています。僕が関わっていたのは、融資型クラウドファンディングで、どこかの土地にソーラー発電所や学校をつくるといった、社会的に意義のある事業のファンドを組成していました。投資する側にとってはもちろん利回りが高かったことが一番の大きなモチベーションですが、僕自身は情緒的価値を見出せる投資に設計されている側面にやりがいを感じていました。こうした仕組みを通じて預貯金や所有資産が有効に活用されて、マネーの流動化が実現できれば、お金が偏在しているからこそ生まれる貧困や格差は是正されると考えています。この頃に証券外務員と内部管理責任者の資格も取得して、振り返るとWealthParkに興味を持つ土壌は醸成されていたと思います。

世界10ヶ国以上あるECサイトのブランド体験の統一に挑戦

― その後、製造業の生産財プラットフォーム、ミスミにアートディレクターとして入社されたのですね。

ミスミは一般的には知られていないかもしれませんが、わかりやすく言うと、製造業の人にとってのAmazon。800垓という膨大な商品を扱っていて、製造業界ではなくてはならない会社です。別の側面では、「V字回復の経営」の著者である三枝匡氏が経営していた会社としても知られています。僕がいた頃でも10カ国以上に支社があって、社員数1万人、時価総額1兆円(当時)という、自分のキャリアの「ドロップイン」の最たる場所ですね(笑)。デザイナーとしてキャリアを歩み始めたときは、まさかそういう会社に入って毎日スーツを着ているとは思ってもみませんでした。

― またかなりの方向転換ですね。ここは2年勤められたのですよね。

はい。自分のやりたいことや、できること/できないことが明確になった2年間でした。当時コンシューマー向けのUXばかり考えていた自分にとって、製造業プラットフォームという、真面目に理解するなら10年かけても全く足りないくらいディープな世界は強烈でした。そこはC向けの世界の常識は通用しない世界です。「新規ユーザーの獲得」ではなく「ベテランユーザーのさらなるUX改善」の方が重要視されます。「UIをいきなり変えるな、リニューアルするなら10年かける覚悟で」と念を押されました。例えるならマイクロソフトのエクセルのUIをリニューアルしている様なものです。まさにB2Bの洗礼ですね。

そんな中、アートディレクターという、全社でも僕だけの、ミスミとしては珍しい肩書を頂いて、世界10ヶ国以上あるECサイトのブランド体験の統一というプロジェクトを推進していました。そこで、海外支社も含めた大勢のステークホルダーを巻き込んでプロジェクトを推進することの面白さや難しさを体験することができたのは、大企業で働く醍醐味だと感じました。一方で、自分のデザインの力で解決できる課題の少なさに愕然としたのも事実です。「雨垂れ石を穿つ」みたいな精神で、少しずつ改善していこうと決めてやっていたものの、結果的には迷いは払拭できなかったですね。結果、ゼロベースから思い切りデザインできる環境、いろいろなアイデアを試すことができる場所を求めて探したところ、このWealthParkのロゴが目に入りました。

デザインとはストーリーに表象を与えるもの

結局2、3社しか見なかったのですが、その中で出てきたWealthParkのロゴを見た瞬間、ピンときました。この会社のデザイナー、経営者のセンスや思考がなんとなくイメージできる、面白いロゴだと思います。国内の企業で投資系かつ不動産業なのに黒一色というのは、日本のしがらみや慣習をあえて無視するような強いWillを感じました。実際に面接でロゴをデザインしたVPoDの吉本とも話してみて、思った通りの人だったというのが、入社を決めた大きな要素です。吉本とはバックグラウンドも似ていて、単純にコミュニケーションがショートカットできるんですよね。「こういう感じ」って言ったときのイメージが外れないので、仕事がやりやすそうだなと思いました。その印象は今でも変わっていません。

また、資産の流動化というテーマにも惹かれましたし、さらに一歩進んで不動産を含めたオルタナティブアセット(非流動資産)にフォーカスしている点も革命的だと思いました。多くの既存のフィンテックサービスが株や現預金のさらなる流動化を目指している中で、土地やアートなど流動化されていない資産に注目しているところが新しいですね。例えば一般的に、個人の資産の7割が不動産、残り3割が現預金、株、保険です。この7割の莫大な資産を流動化して社会に循環していけるなら、世の中を変えられるし、社会的意義があると考えました。

― ロゴ自体が会社やサービス、カルチャーを体現されていたのですね。

それと同じことを僕も達成できたと思えた体験があります。新規事業部の滝澤(https://www.wantedly.com/companies/wealth-park/post_articles/247859)が言ってくれたことですが、WealthParkからの内定を断ろうと最後にコーポレートサイトを見ていたら、それが放つイメージからプロップテックへの夢を捨てきれないと強烈に感じてくれたそうです。僕がつくったコーポレートサイトがこの世界に飛び込む背中を押すきっかけになったと聞いて、カルチャーを感じさせるブランドコミュニケーションができたんだと嬉しかったですね

ー 確かに、これまでインタビューさせて頂いた皆さんが語るWealthParkのストーリーと、アプリやウェブサイト、オフィスやノベルティグッズまで、それぞれのデザインから受けるイメージが一致している印象です。

まさにそれこそが僕がやりたかったことです。WealthParkにはユニークなストーリーがあります。ただしそれは、聞けば誰にでもピンとくるようなシンプルなものではありません。物語(ナラティブ)というものは、物語内容(ストーリー)と語り口(ディスコース)で構成されます。ブランド体験を設計するという文脈において、デザインとはストーリーに表象を与えるもの(=ディスコース)だと思っています。WealthParkのストーリーが求職者に伝わったというエピソードは、そういう意味では一つの成功体験といえます。

デザイナーに求められるマインドセットが変わってきている

WealthParkに限らず、未整備な環境でデザインしていく時には「制約」がつきものです。テクノロジーの制約、法律や商習慣、倫理、予算、時間、体力。しかし無限の選択肢の中から、何かを選択する手助けをしてくれるのも制約です。チャールズ・イームズの「制約は喜んで受け入れる」という有名な言葉もありますが、様々な制約とどう付き合っていくかということは、デザインシンキングの本質だと考えています。

制約を受け入れるというと、消極的な態度に思えるかもしれません。実際に、目の前にある制約を前提に判断してしまうのは、ただ状況に流されているだけでデザインシンキングとは言えません。何が制約で、何が本当は制約ではなかったのか、それを正しく評価することこそが重要です。WealthParkに来て、そのあたりの考えが少し深まったような気がしています。

2018年、経済産業省・特許庁が「『デザイン経営』宣言」を発表し、同年のジョン・マエダ氏の”Design in Tech Report”で、デザイン教育とコンピュテーションデザインの乖離が問題として指摘されました。デザイナーに求められるマインドセットが確実に変化しているということです。エンジニアリングに精通していなければプロダクトのことがわからない。経営に深く関わっていなければ予算や期日について何も言えない。法律や商習慣を知らなければただ前例に従うしかない。これは、デザイナーの職域を超えた要求でしょうか。しかし今デザイナーに求められているのはそういう仕事だと思います。

ー100名近い組織の中でデザインチームはたった2人という、少数精鋭体制ですよね。松本さんと吉本さんの役割分担は。

元々はプロダクト開発からマーケティングデザインまで、すべてを吉本が手掛けていました。僕が入ったことで、プロダクトデザインは吉本が中心となり、マーケティングやコーポレートブランディング周りは僕で、という役割分担になっています。来期以降は僕もプロダクトのUIデザインやプロダクトマーケティングを含むUX全般に範囲を広げる予定で、チーム編成を進めています。

ー これからのデザインチームが楽しみですね。本日はありがとうございました。

インタビュアー
飯田 明 | Mei Iida
渉外法律事務所にてファイナンス・パラリーガルを務めた後、大学院留学を挟んで飲食業の世界へ。外資系チョコレート会社のDirector of Communicationsとして、HR/ブランディングを担当。現在はフリーランスに転向し、複数の会社とのプロジェクトを通じて、カフェのプロデュース事業や人事、国内外のダイニングイベントの企画・運営に携わっている。
Mei Iidaのプロフィール - Wantedly
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