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“動きを止めた瞬間に採用は終わる” 現場を巻き込みスカウト返信率0.5%から逆転したサクセスストーリー

創業間もないスタートアップの経営者にとって、欠かせない業務が採用活動。企業の文化を作っていくためにも、しばらくは経営者自らが採用業務を担うケースも多いはず。しかし、ある程度組織が拡大すると、今度は逆にチームを巻き込んで採用に立ち向かっていく必要があります。そして、チームをうまく巻き込めずに困惑している経営者や人事の方も多いのではないでしょうか。

今回話を伺ったのは、自ら行っていた採用活動にうまくチームを巻き込み、ダイレクトスカウトの返信率が20%を超える株式会社スリーシェイクの代表取締役社長、吉田拓真様。いかにして採用活動にチームを巻き込んだのか、そして、巻き込んで生まれたメリットなどを伺いました。

スリーシェイク様のWantedly実績プロフィール

- Wantedly経由採用実績:25人
- 採用ポジション:ウェブエンジニア、インフラエンジニア、学生インターンなど
- Wantedly利用期間:約2年7ヶ月(※2019年6月時点)
- 運用担当人数:1人(スカウトは複数人)
- ご担当者様が感じるWantedlyの特長:他サービスではリーチできない人材を獲得することができる

吉田様の自己紹介プロフィール

- 設立時期と設立理由:2011年DeNA入社後、インフラエンジニアとして決済代行ペイジェント社の基盤担当。AWSの東京リージョン進出時からのユーザーで、クラウドプラットフォームが社会に与えるインパクトを痛感。2013年に創業期のポッピンゲームズジャパン株式会社に入社し、インフラレイヤーを統括しつつ、ゲームプロデューサー、事業戦略室室長など、ベンチャー創業期の技術・事業・経営を全般的にリード。日本発のインフラプラットフォームを作るべく2015年1月に株式会社スリーシェイクを設立。
- 設立から現在まで:創業後、SREエンジニアとしてインフラ構築/コンサルテーションをしつつ、自社プロダクトの立ち上げに従事。直近は採用やカタリストが主な活動
- 座右の銘:未来は自分で切り開くもの

創業直後からWantedlyでの採用にこだわったわけ

吉田様:
私は創業してすぐ、自分一人しかいない時からWantedlyを使っています。結果的に一人目の社員は紹介で採用しましたが、2人目以降はWantedlyで採用しています。

スタートアップ界隈では、最初の10人目まではリファラルで採るべき、という風潮があるように思います。ですが、私はリファラルには固執しませんでした。創業直後ということもあり、一緒に成長を目指せる正社員を求めていましたが、リファラルでリーチできる30歳前後のエンジニアの姿勢とのずれを感じたのです。数年前から、中堅のエンジニアでフリーランス的な働き方を望む方が増えていたからです。

リファラルを重視しなかったもうひとつの理由は、前職での失敗経験にあります。前職の会社は積極的にリファラル採用を行ったことで、同じ会社出身の方が社内に増えてしまい、元々いた会社のカルチャーが強くなってしまいました。採用した方々が元々いた会社はメガベンチャーでしたが、それでも大企業的な課題解決の考え方になってしまう上に、多様性がなくなってしまったのです。この経験があったので、大変でも最初から求人媒体を使って多くの方にお会いし、初めて会う方を採用しようと思いました。

前職の会社から、採用活動を7年続けてきたという吉田様。求人媒体での採用を考えたタイミングで、数ある媒体の中でも、Wantedlyを選んだ理由があったようです。

吉田様:
前職の会社では、Wantedlyではない採用媒体を活用していました。しかし、創業前から「イケてるベンチャーはWantedlyを使っている」というイメージを持っていたので、使ってみたいと思っていました。また、共感を重視するWantedlyなら、カルチャーマッチするメンバーを集められるとも思いましたね。

「動きを止めた瞬間に採用は終わる」採用活動は諦めずに発信し続けることが大事

吉田様:
Wantedlyを使い始めた2016年頃は、エンジニアにダイレクトスカウトを送る際、送る人に合わせて個別に文面を作成し、熱い想いを込めたものを送っていました。それこそ、1000文字もあるようなスカウト文です。しかし、その時のダイレクトスカウトの返信率は0.2%くらいでしたね。半年くらい続けてやっと一人採用できたほどです。

ただ、そんなスカウトが響いたメンバーなので、その頃入ってきたメンバーというのは熱いですね。会社のフェーズによって、入社するメンバーの雰囲気に違いがあるように感じます。5人を超えるとサービスをグロースするフェーズなので、多少落ち着いた人たちが入社するようになりました。

継続的にWantedlyを使い続けた吉田様は、2018年に採用活動を本格化させます。しかし、積極的に活動はするものの、思うように採用ができない辛い時期が訪れます。

吉田様:
採用活動を本格化した2018年頃のスカウト返信率は0.5%くらいでした。インターンの学生は採れても正社員が採れない時期が続いて、一番つらい時期でした。この時は別の採用媒体も試しました。ところが、別の媒体では会う方は、『この開発環境が好きなので興味持ちました』のような表面的な話ばかりで終わってしまいますし、いざ採用してもパフォーマンスは上がりませんでした。結局、モチベーションの高いカルチャーフィットした人材を採用するならWantedlyしかないと思い、徹底して使いきってみようと決めました

焦らずに、自社の「足りない」に向き合う

カルチャーフィットしない方を採用した経験から、「採用は会社の肝、一人を採用することで、会社が衰退することもあれば、逆に急成長することもある」と吉田様は続けます。だからこそ、焦らずに採用活動にこだわることも。

吉田様:
Wantedlyを徹底して使うために、とあるベンチャーのCHROの方にアドバイスをもらって、PDCAを回すようにしました。募集要項を常にフレッシュにするために常に募集ページを更新して、閲覧数も記録するようにしました。タイトルやキーワードに注目し、どんな人が流入するのかを記録として残していき、競合企業のキーワードも見ながら毎週キーワードを作っていきました。スカウトも毎週10通送ると決めて、KPI管理しながらPDCAを回していったのです。

最初の数カ月はPDCAが功を奏し、KPIが改善していきました。それでも2018年の夏頃には、何をしてもKPIが改善しない期間が3ヶ月くらいありましたね。本格的なWantedly運用を始めて、初めての躓き。この時期は悶々としましたね。

しかし、『動きを止めた瞬間に採用は終わる』と思っていたので、焦らずにWantedlyで発信し続けることにこだわりました。うまくいかないことを落ち込むのではなく、自分たちには何が足りないのか前向きに考え、ストーリーをライターに制作してもらったり、イベント内容の発信を続けたのです。Wantedlyを見ている人に、『この会社は常に動いているな』と思ってもらえるようにこだわりました。

Wantedlyを見ていると、そこまで知名度がなくても、採用を成功させている企業がたくさんあります。そういう企業を見ると、毎週ストーリーを投稿したり、社員のプロフィールに統一感を持たせて充実させているのです。そういう他社の努力に気付くと、自分たちの努力が足りないだけだと思わされますね。

メンバーを巻き込むことで、彼らの採用へのコミットと自信が変わっていった

吉田様:
2018年から1年ほどは私一人で採用活動を続けたましたが、2019年に入ったあたりで、メンバーから『このままでは採用のペースが遅くて、開発が間に合わない。私達が採用活動をします』と言われたのです。要は、『吉田さんには任せてられない』ってことです(笑)。

当時は採用業務が増え、面談の回数は増えているにも関わらず、私とメンバーの間で応募してくれた方への印象にギャップが出てきた時期でもありました。そこで、メンバーにそれまで私が溜め込んだWantedlyのノウハウを伝えて運用してもらうことにしました。実際に採用戦略やスカウト文章、募集ページをどのように工夫していったか、そして結果がどうだったかを記録してもらうようにしたのです。その結果を見ながら週次でMTGをして、PDCAを回す。

現場のメンバーがダイレクトスカウトを送るようになったことで返信率12%まで上昇し、3月には18%まで上がりました。そして、メンバーに採用活動を任せたメリットは、返信率が上がったことだけではありませんでした。

採用活動を任せたことで、メンバーの採用に対しての自発性が高まり、自らアクションをするように。これは採用を任せたときには意図しなかった嬉しい効果でしたね。それまではエンジニア勉強会などにはあまり参加しなかったメンバーも、積極的に勉強会に参加して名刺交換するようになったのです。社内でも『あの勉強会には良いエンジニアが参加してるよ』という話題が出るようになりました。

「採用」という成功体験が、メンバーの採用後の意識をも変えた

メンバー自身が採用活動をするメリットは、採用までのプロセスだけに留まらず、採用した後にもあると言います。

吉田様:
メンバーにとって『自分たちでもPDCA回せば採用できるんだ』という、自信が生まれたのは組織にとってプラスに働きました。これまでエンジニアリングでしか貢献できなかったところから、自らの採用活動でチームや会社を良くしていくことができて、メンバー自身も満足感がすごく高かったようです。

エンジニアにとって、『自分にパワーがあっても、マンパワーが足りなくてプロジェクトが進まない状況』、つまり『自分ではどうにもできない状況』はとてもつらいこと。しかし、採用活動が可能になり、自分たちで手を動かして課題を解決できるという道が見えてきました。それまでの『エンジニアリングを磨けばいい』という狭い視点が、『自分たちで組織を支える』という視点に広がったのはとても嬉しいです

もう一つ嬉しいことがあって、自分たちで採用することで、採用した後の新しいメンバーとの関わり方も大きく変わったことです。私が一人で採用活動をしている時は、メンバーからすると『代表がいきなり人を連れてきた』という意識でした。なので、以前は私がフォローしないと、入社した人が輪に入れなくて浮いていることもありました。

しかし今では、自分たちで採用しているので、責任を持って受け入れるように変化しました。入社した瞬間からパフォーマンスを発揮できるようにwikiを整備したり、積極的に食事に誘う場面が見られるようになりましたね。

採用活動にメンバーを巻き込むことの大切を感じている経営者や人事の方は多いと思いますが、いったいどのように巻き込んでいけばいいのでしょうか。

吉田様:
私は、一人で採用活動をしている時も、『今日Wantedly経由でこんな人に会ったよ』という話題を、積極的にするようにしていました。そうすると必ずみんなも気になって、私が面談している間にWantedlyでプロフィールを見て『さっきの人どんな人でしたか』と聞くようになったのです。

一番良くないのは、いきなり会議室に呼んで『今日から君がWantedly担当ね』と採用活動を押し付けてしまうこと。少しずつでもいいので、Wantedlyの情報を伝えてメンバーに興味を持ってもらうことが大切です。その上で先程お伝えたように、興味をもってくれたメンバーにどんどん運用を任せていけばうまく巻き込んでいけると感じています。

会社の魅力だけではなく、雰囲気も含めてありのままを伝える

吉田様:
2019年の3月に18%だったエンジニア向けのダイレクトスカウトの返信率は、エンジニア職だけでなくビジネス系職種のストーリーをアップしたことで、20%まで上昇しました。候補者の方は、一見自分の職種と関係なさそうでも、その会社を知るために様々な種類のストーリーを読んでいることがわかりました。スカウトしたからといって、すぐに返信がするわけではなく、自社HPやストーリーを読んでから反応するので、会社の方向性や夢をもたせる記事、社風を伝えられるメンバーの記事を書いておくことが大切です。

よく見かける『弊社の魅力』のような押し売りになりがちなコンテンツよりも、メンバーのインタビュー記事がおすすめ。私達が発信しているのは、シンプルにメンバーの人生をコンテンツにすることです。候補者の方が知りたいのは、どんな人が働いているかということなので、それをシンプルに伝えるようにしています。

エンジニアメンバーだけでなく、ビジネスメンバーの社員インタビューも並ぶ、スリーシェイク様のストーリー一覧

スカウト文面も候補者ごとにカスタマイズし続ける

ストーリーに加え、スカウト文面も改善したと話す吉田様。スカウトで響く内容はビジネス職やエンジニア職など職種によっても違うそう。

吉田様:
先程もお伝えしましたが、Wantedlyを始めたころはやたらと熱い文章を送っていました。ビジネス系の職種は反応がよかったのですが、エンジニアからの反応はよくありませんでした。

メンバーに任せるようになった時に、『このスカウトもらったらどう?』と聞いたところ、『ひいちゃう』と言われたので、もっと気楽に話を聞きに来れるような文面に変えました。エンジニアって自分で意思決定するのが好きなので、向こうからグイグイ来られたり、強く誘われるのが苦手な方が多いんですよね。すぐに取り入れたのは『雇用形態は正社員にこだわらないので、まず会ってみませんか』というスタンスです。改善してすぐに返信率が上がりましたね。

もう一つ意識したのが返信のしやすさです。開発技術については、『こんな技術使ってるんだぞ』と自慢するよりも、コーディングをサポートする環境や、学べる環境をアピールした方が、返信率が高くなりますね。他にも、お昼でも土日でも大丈夫です、と添えておくだけでも、格段に返信率が変わりました。ビデオチャットでお願いされることもあれば、出社前に会いたいです、という候補者の方もいました。

スカウトはとにかく継続して打ち続けることが大切です。しっかり開封率を計測しておいて、スカウト文章と返信してくれた方の相関性を記録します。キーワードだけを変えたり、スカウトを送るセグメントを変えたりして、返信してもらうにはどんなタイトルがいいのか、練り込むことが大事ですね。

人は決して歯車ではない。今ではなく未来を見つめて、お互いのことを伝えあえるのが「カジュアル面談」

吉田様:
Wantedlyを使うようになって変わったことに、面談の仕方もあります。以前は質問のチェックリストなどを作って、面談でスキルチェックをしようとしていました。しかし、そういう方が実際にジョインしてみると、意外にスキルのアンマッチが起きていました。逆に面談ではスキルアンマッチかもしれないと思って、体験入社をして頂いたところ、弊社とベストマッチな方と判明したケースもありました。

そんなことが何度かあって、『面談でスキルを測るのは無理だ、自分には向いてない』と諦めました(笑)。そうすると、段々と会社のビジョンや、自分のプロダクトへの想いなどを話すことが増えていって、結局僕らのことを伝える『カジュアル面談』になっていきました。

そもそも面談って、会社としては候補者が活躍できる人なのか知りたい場ですし、一方で候補者にとっては会社やプロダクトについて知りたい場なんです。そのズレがあるのに、一回の面談で両方のニーズを埋めるのは難しいですよね。

ですから私たちは、カジュアル面談は相手に委ねて、候補者の方が知りたいことを答えるスタンスでやっています。面談に3人くらいメンバーを連れて行って、入社の馴れ初めとか、仕事で楽しいことや大変なことを話してもらうのです。カジュアル面談では、そういった雑談に馴染める人なのか、というパーソナルな部分を見ています。逆に候補者の方から『僕のスキル聞かなくていいんですか?』と言われるほどで(笑)。

技術に関しては数日体験入社をして判断させて頂くことを候補者の方に推奨しています。パーソナルな部分を見るカジュアル面談と、技術を見るお試し期間を完全に分けて考えていますね。

今や面談をした候補者の約7~8割が、入社の意思を見せてくれるそうです。Wantedlyでの採用がうまくいくようになり、Wantedlyのイメージも変わったと吉田様は話してくれました。

吉田様:
私がWantedlyを始めたころって、ネームバリューがある会社や、大規模な資金調達をしている会社ばかりがランキング入りしていて、『彼らならそりゃうまくいくよね』って思っていました。今、私達もWantedlyで採用がうまくいくようになってようやく分かったことがあります。

地道な運用を続けることと、候補者の立場にたって発信をしていくこと、この2つがあれば必ずしもネームバリューがなくても採用に成功するということです。

是非試してもらいたいですね。

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