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“いい仲間といい仕事がしたい” ありのままの思いを真っ直ぐに伝えた、ひとり人事の冴えたやり方

圧倒的なエントリー数はさることながら、会社が求める人物を確実に採用する「株式会社エバーセンス」。自社にマッチする人材との出会い方、採用までの筋道を伺いました。

エバーセンス様のWantedly実績プロフィール

- Wantedly経由採用実績:27人
- 採用ポジション:エンジニア / 編集 / ディレクター / マーケティング / 新卒など
- Wantedly利用期間:約4年6ヶ月(※2019年6月時点)
- 運用担当人数:1人
- ご担当者様が感じるWantedlyの特長:Wantedly経由入社メンバーの入社後パフォーマンスが高い

前澤様の自己紹介プロフィール

- 入社時期と入社理由:2014年7月1日入社。前職の上司だった代表の牧野に声をかけてもらったのが入社したきっかけです。
- 入社から現在まで:iOSエンジニアとして入社して、最初はアプリを作っていました。2つアプリをリリースしたあとにWebメディアの編集を担当し、現在は人事になって新卒採用と中途採用を担当しています。
- 座右の銘:倒れるなら前へ

キーワードは「家族」。ぶれない軸は自然に生まれた

前澤様:
まず、私たちの会社について説明させてください。私たち株式会社エバーセンスは、「家族を幸せにすることで、笑顔溢れる社会をつくる。」ことを目指し、育児中のママやパパ、妊婦さん、妊活中の女性などをサポートするWebサービスやスマホアプリを開発、運営しています。

定額制の読み放題絵本アプリ「PIBO」を創業サービスとしてローンチし、その後は、妊活や生理管理アプリ「michiru」や子どもの健康を守るアプリ「キッズドクター」、成長段階に合わせたレシピを紹介する無料アプリ「手作り離乳食」、妊活から出産、育児まで役立つ情報をお届けするWebメディア「こそだてハック」などのサービスを生み出してきました。

認知度はまだまだですが、時には命にも関わる情報を発信する責任をよく理解し、日々、真面目にモノづくりへ取り組んでいます。創業時から一貫して大事にしているキーワードは「家族」。つまりは自分が守りたい人たちのことです。

「家族」は、代表の牧野がエバーセンスを起業したきっかけでもあることから、Wantedlyに限らず採用活動においても「家族」がキーワードになったのは必然の流れだったと思います。

家族は人それぞれ

前澤様:
とはいえ、一言で家族といっても、エバーセンスの考える「家族」に明確な定義はありません。社内には、外国籍のメンバーもいますし、子どもがいる夫婦、子どものいない夫婦、また、子どもが苦手だというメンバーもいます。

それぞれにとっての「家族」のあり方は違っていて当たり前。だからこそ自分にとっての「家族」の価値観を押し付けることはありません。そうした「自分の家族観」を大切にしながら、「相手の家族観」を大切にする魅力が、Wantedlyの募集ページをフォーマット通りに作成したり、ストーリーを活用することで自然とコンテンツに反映されているのだと思います。

統一感よりも重視したのは「ありのままの自分たち」

候補者は、Wantedlyや、自社ブログで、そうした伸びやかな社内の様子を知ることができます。人事だけでなく、社員がローテーションで執筆した記事には、ありのままの気持ちが書き連ねられていることから、自然な温度感に触れることが可能。面接を通過する採用候補者には、こうした記事を熟読している傾向が見られるといいます。

前澤様:
自社のブログでは、「今まで大事にしてきたもの」と「入社してから大事にしているもの」の2つを、その人らしいエピソードで言葉にしてもらっています。会社のブログだからと言って、綺麗に体裁を整えることはしません。本人の思いの丈をそのまま綴ってもらうようお願いしています。それぞれのメンバーが持つ「その人らしさ」が消えてしまうことほどもったいないことはありませんので(笑)。

見方によっては統一感が薄れるかもしれませんが、それこそ入社後のありのままの姿ですし、先ほどの「家族」の考え方にも通じる「多様な家族観」を尊重しあう部分だと思っています。

そういった一人ひとりの入社ストーリーに込められた「家族観」に興味をもってもらえて、記事の熟読という形で思いが届いているのかもしれません。

ありのままの自分たちを「カバー画像」でも表現

こうした自社のブログやWantedlyの記事は、「採用の入り口側のコンテンツ」として位置付けていると言う前澤様。記事そのものに「知ってもらう」ためのものだと期待する役割をはっきりとさせ、ねらいを絞ることで求める成果が得られやすくなるといいます。では、「入り口」を経て、どのようなフローで自社にマッチする人材を選び抜いているのでしょう。

前澤様:
自社にマッチする・しないの判断は「採用メッセージ」に合うかどうかで判断しています。例えば19・20卒は「はじめてを面白がる人は強い」というメッセージを打ち出して行いました。メッセージには、いいモノづくりをするために経験のないことを楽しめるか、楽しもうとできる人がほしい!」という意図を込めています。

前提として「はじめてを面白がれない新卒がうちに来ても不幸になるだけ」という認識のすり合わせができているので、あとはそういう人材なのかどうかを見極めるだけです。もちろん「はじめてを面白がれる」だけが要件ではありませんが、認識の合っている「共通言語」を社内でもてていることは自社にマッチする人を選ぶうえで重要かもしれないですね。

そういった基準を作った後は、具体的に学生さんの言動と基準を照らし合わせています。例えば、「はじめてのことを面白がれる新卒はSNSをどう扱うのか?」という視点で考え、プロフィールにSNSアカウントを連結させている、させていないという事実を確認し、その人材の面白がり方を想像します。

そういった流れで、プロフィール情報を見て相手を、想像し、メールのやりとりで行動のスピード感を知り、面談を通してプロフィールに載っていないより深い話を聞いて、「はじめてを面白がれる人なのかどうか」を判断しています。

結果として、250以上のエントリーから1次面談に進むのは全応募の30%くらいです。さらに、1次面談の通過率は10%ほど。自分たちの合う人に出会うまで、採用は絶対に妥協しないので、結果的に通過率はかなり低めかもしれないです。

実際の募集記事。カバー写真は17卒の新卒メンバーが自分たちで作成した。自分ごと化できる人をターゲットにするために、あえて新卒メンバーに任せ「自分ごと化」して作成してもらったとのこと。

前澤様:
カバー写真は社内で実際に撮影しました。緑の服を来て、ペンキみたいのを塗って、相当楽しかったみたいです。カバー画像を撮影したのは初めてでしたが、「印象的な画像に惹かれて応募しました」と言ったもらえることが多いので、結果的にやってよかったと思っています。

また、17卒の新卒やデザイナーの協力のもと撮影をしたのですが、こういった協力が社内で得られるのは、社内が採用を「自分ごと化」できているからかもしれません。採用に限らず、売り上げから会社の貯金までなんでも情報がオープンかつ、自分たちでやるのが普通な社風があるんです。トイレ掃除担当を毎日交代でやったり、社内に20個ほどある観葉植物を育てたり。

業務だけでなく普段の活動から自分たちが主体となっているので、「採用」もまた同じ意識なのかもしれません。

「採用しない理由」を明確にした

採用は自分と関係のあること。そうした意識からも、一緒に働きたい人物像のすり合わせが社内でなされています。この感覚がずれることで、自分たちの仕事である「いいものづくり」から遠ざかるリスクがあるとわかっているのは、日頃から代表が「すべきでないこと」を考える姿勢でいることにも関係するのだそう。

前澤様:
僕たちは、「採用したい理由」だけではなく、「採用しない理由」を明確にしています。社内では「辛いときに人の陰口を言う人、攻撃的な人は採用しない」という会話をよくします。いいモノづくりをするために、うまくいくことばかりではないので、そういうとき他責にして憂さ晴らしをしがちな人は採用しないということです。

これを設けるメリットとしては、採用におけるコミュニケーションコストが最小限で済むこと。採用したい理由を挙げ始めると話はひたすら発散状態に向かいがちですが、採用する可能性が低かった場合、その議論に費やした時間はもったいないものになります。

入社後のディスコミュニケーションを極力生まないために、「そうあるべきではない」という肌感は重要な鍵を握っています。どんなに誰かがいいと思っていても、誰かが「採用しない理由」を感じてしまった場合、その人は採用しないことにしています。この結果、現時点では新卒・中途ともに非常に質の高い人が採用できていると感じています。

例えばWantedly経由で入社した17卒の古賀は、新卒3年目にもかかわらず活躍しています。最初は1つのプロダクトに関わっていたのですが、今では複数のプロダクトに関わる役割に抜擢され、今まで以上にものづくりに没頭しています。

いい仲間といいモノづくりをする人は、きっとうまくいかないこと他責にする人より、「今の事業をよりよくするにはどうしたらいいのかを考え、行動できる人」なのではないか。そう考え、採用しない人の行動特性を言語化し、共有しています。

あくまで採用は会社のため、チームのため。それを分かってもらうことが大切

採用人事にとって、社内のメンバーが自発的に、そして、同じ方向を向いて採用活動に関わってくれることほど救いになることはありません。一方、こうした環境は当たり前ではなく、巻き込みがなかなかうまくいかないと悩む人事の方へ、どういった突破口が考えられるのか。もし、前澤様がそういった立場に立った時、どういったことをされるか伺いました。

前澤様:
僕だったら敢えて仕事を投げ出すかもしれません。サボる、と言いますか。それから、面と向かって、協力してくれない人たちと喧嘩するかもしれないですね(笑)。これは完全の僕の性格的が出ているやりかたですが。

ただ、そうした喧嘩しながらも人事(自分)だけでは力不足だということ、採用が無理だということを説明します。それに、人が採用できないことでどんな結果になるのかも。基本的に人手が足りるなんてことはありません。

喧嘩というと過激かもしれませんが、喧嘩したくないのであれば、対話しやすい関係性を築いておくことは大事だと思います。協力してくれる側の立場や事情を理解した上での相談であれば、信頼関係もありますし、物事が進めやすくなります。社内での信頼関係は大事ですよ。もともと事業側の人間であればいいですが、人事だけをやってきたということであれば、一度そのポジションを離れて、現場と目線を合わせてみると今までと違うものが見えてくるかもしれません。

まずやってみる、困ったら頼る。これを早くやるだけ

さらに、前澤様は自分の力だけでどうにもならない場合には、自分だけでどうにかしようとしないことを徹底しています。

前澤様:
新卒の子たちにも言うんですけど、困ったらすぐに人を頼った方がいいと言っています。僕自身めちゃくちゃいろんな人のスネをかじりまくるんですが(笑)。「ごめんなさい、今はすぐに恩返しできないですけど、いつか必ずお返しします」って心の中で思っています。

ライフネット生命の岩瀬代表取締役社長が言うところの「50点でいいから早く出せ」に込められた意図と同じで、結果的に100点になればいいのです。

今までにもHRの関連記事を読んで、編集やライターの方へ読んだ感想と、感謝のお礼を伝えて、なにかあったら相談に乗ってくださいとメッセンジャーで連絡したこともあります。あと、人事コンサルの方の力を借りたりもしました。僕が言っても協力を得られなさそうだったら、第三者で、しかもプロであるコンサルの人がこうおっしゃっていたからするべきです、と力ずくで納得してもらったり(笑)。僕自身人事がはじめての経験だったこともあって、最初はすごく困りました。

人事の仕事は何をやっているかわからない、と僕自身今だに言われますが、第三者の力を借りると、どんな働きかけをしているのか気づいてもらえたり、協力的になっていただけたりするんですよ。他にも、Wantedyの運用においては募集ページの壁打ちをしてもらっています。

なにはともあれ、大事なのは、困ったら自分だけでやらないということです。まず、自分の頭で考えていきますが、悩んだ挙句ハゲ散らかして困り果てても、ただ仕事が滞るだけ。考える能力が10しかないのに、12求められても無理なんです。

1人の採用が、会社を大きく変える。
その1人のために、人事1人だけで辛酸を舐めることはありません。
また、1人で解決するべき問題でもないはずです。

時に、頼り、甘え、足りない要素を補ってもらうことで、より満足いく採用活動に繋がるかもしれません。人に頼ることは迷惑、ではなく、頼ることが結果的にその人のためにも、会社のためにもなる。そんなスタンスで、肩の力を抜いて、飾ることなく採用活動と向き合ってみてはいかがでしょうか。

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