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【5】就職浪人から抜け出すまで(完)

「あなたのお顔はデザイナーというより、 ご実家の板金屋を継いだ方がお似合いなんじゃない…?」

面接でそんなことを言われると思ってなかったので正直、ビックリした。そして今なら…

「顔、関係ねーだろ!」とツッコんでたかもしれない。


しかし、なぜかその時とっさに出たものは「笑い」だった。

しかも爆笑だ! 手を叩き大笑いしながら 「ですよねー。私もそう思います。あはははーっ!」


長身で日焼けした筋肉質の体型を見たら「ま、オレはデザイナーじゃないよな」と

納得して思わず笑ってしまったのかもしれない。

経営者として世の中には悪い奴がいることを身をもって体験してきた今の私からはとても

考えられないが、 当時は思ってることと言ってることが違うなんてことは

あまりなかったのだ。(今は結構あります。笑)


そう、素直に笑っていたのだ…。そして、そこから空気が変わった。

と、同時にどうせ冷やかしならば、この場も楽しく過ごそうと思ったかどうかまでは

正確には思い出せないが、終始すべての質問に対して楽しい雰囲気で打ち返していった。

もちろん面接マニュアルの類いなど一切読んでいないありのままの自分だった…。


ただ、とんちんかんな返答も多くあったとは思う。笑

例えば雑誌メインのデザイン会社で 「好きな本は?」と問われれば

当然、好きな雑誌を答えるべきだが (ナショナルジオグラフィックとか、BRUTUSだとか)

しかし私の答えは

「アレクサンドル・デュマのモンテクリスト伯(巌窟王)です!」 とか

「吉川英治の三国志です!」と言った具合だ。

でも私がどんなに感銘を受けたかを熱心に語るもんだから、

向こうは途中で遮れずに最後まで聞いてくれた。。

そして、一番年配の役員は、

「君は何もかもダメだったけど、あの手紙をもらってなんか会ってみたくなったんだよねー」

みたいなことも言ってくれた。

時間となり一礼をして帰ろうとする瞬間に、 ふと…

「ま、冷やかしだったかもしれないけど、かなり楽しかったな」 と思って席を後にした。


そして、最終試験から田舎に戻り実家の仕事も落ち着いた年の瀬の夜に

その会社の総務部の女性から1本の電話があった。


胸が高鳴り、息を止め、向こうの声に耳をそばだてると

「厳正な審査の結果、あなたには当社で働いて欲しいと思っています」

正直「マジか⁈」と思い、大きな声を上げそうになった…、がしかし女性はこう続けた。

「ただしひとつだけ条件があるのです…」

ゴクリと唾を飲んで相手からの言葉を待った。待つしかない。

「その条件というのは、すぐにでも働いて欲しいのです。 1月からはどうでしょうか?」

私は拳に目一杯チカラを込め、天に突き上げた。

なぜなら「できれば1月から働きたい!」と強く願い続けていたからだ!

「もちろんです! よろしくお願いします!」

そしていよいよ新年から社会人としての本番がはじまることになる。

そこから木下藤吉郎ばりのへんてこな物語がはじまるのだ。。

さすがに、わらじを温めはしなかったけど…。(でもそれに近いことはした。笑 )



【本編 完】

(追伸)そして次回は(次回もあるんかい!)自分で選び選ばれた会社にどう報いるかをバカなりに考えて働き始めます。 自分で決めた会社だから辛いことがあっても後悔がなかったです。そして仕事が楽しくなる秘訣を何かしらお伝えできればと思います。

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