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【AITech #3】AIに本気のアートをさせてみた

こんにちは!
AI事業開発部 関根です。

突然ですが、こちらの写真をご覧ください。

美術館でしょうか?
いいえ、弊社の玄関です!!

現在トライフォートのエントランスには、期間限定でこんなアート作品が展示されています。

四角い枠の前に立つと、AIによってその瞬間の自分が様々な画風の絵画に変換される仕掛けになっています。「カイロスの窓」というタイトルも、その時々の瞬間を司る神様の名前から取っていて、一瞬一瞬を大切に生きようというメッセージが込められています。

トライフォートにはTECH倶楽部という、いわゆる部活制度があり、社員がそれぞれ自分たちで興味のある分野を研究したり、ものづくりに励んだりしながら、自由にスキルの向上を図っています。実を言うとこの作品は、そんなTECH倶楽部の一つ、AIアート部として制作したものなのです。

というわけで今回はAIとアートについて少しお話したいと思います。

AIによる美術作品の生成

少し前の話題になりますが、2018年にニューヨークで開催されたオークションにて、AIが描いた肖像画が約4900万円もの高額で落札されたというニュースが流れたのをご存知でしょうか。こちらがその時出品された肖像画です。

果たして上手いかどうかはさておき、ちゃんと誰かの肖像画に見えますよね。しかしこの絵は過去に人間が描いたどの絵とも異なる、AIオリジナルの絵画なのです。

とは言え、AIが自分でオリジナルの絵を描く、と言われてもいまいちピンと来ない方も多いのではないでしょうか。

それもそのはずです。私たちが普段利用しているソフトウェアは、例えば電卓に数式を入力すると瞬時に正しい答えが表示されるように、与えられた入力に対して常に厳密で正確な判断を行う事に特化したものがほとんどです。逆に、何かを自由に考えたり生み出したりといった想像力を必要とするタスクは、プログラムで解決するのは難しいという考え方がこれまで一般的でした。

自由に絵を描くという行為は明らかに後者に当たりますから、これまでの常識では捉えきれない何かが起こっているという感覚を覚えても不思議ではありません。

ディープラーニングは、そんな私たちがこれまで抱いていた数々の常識を打ち破って来ました。AIが描く絵画もそのうちの一つです。

AIが絵を描くということ

「AIが絵を描く」というのは実際の所わかりやすく丸めた表現で、当然ながらパソコンが筆を持ってキャンバスに向かっているわけではありません。では、一体どのようにしてAIは人間の意図を介さずに視覚的に意味の通る画像を生成しているのでしょうか?

今回はそのあたりについてもう少し直感的に説明したいと思います。以下はあくまで一例なので、必ずしもこれに当てはまるわけではないという事を予めご了承ください。

紙の上に分厚いスポンジを置いて、その上に適当にインクをこぼすとします。
こぼしたインクがスポンジの中を浸透し、最終的に紙の上まで到達するところを想像してみて下さい。そのとき、紙にはどんな模様が出来上がっているでしょうか?或いは一様に同じインクの色が広がっているだけかもしれません。

何か奇跡でも起こらない限り、出来上がる模様は最初にこぼしたインクのように全く意味のない形になっている、というのが真っ当な予想だと思います。

ところが、そんな奇跡が必ず起こるようスポンジに細工が施してあったとしたらどうでしょうか?スポンジの内部に無数に存在する繊維と繊維の隙間を一つ一つ制御して、どの隙間にどのくらいインクが通りやすいのかを意図的に操作できるとします。そして何度も何度もインクをこぼしながらそれら全てを徹底的に調節していき、最終的には、スポンジの上にどんなインクのこぼし方をしても必ず何か意味のある像が浮かび上がるような内部状態を作り上げていきます。

考えただけで気が遠くなりそうな作業ですね。でもご安心ください!そんな膨大な調節作業を自動的に行ってくれる魔法のスポンジがあります!!そうです、それがAIなのです。

AI(ニューラルネットワーク)とは、そのように繊維ごとにインクの浸透率を自由に設定できるスポンジのようなもので、その内部の状態を調節する作業こそがいわゆる学習にあたるものなのです。

このようにして、入力された数値がAIの内部を浸透しながら何らかの意味を持つ像に変換されていく過程を「AIが絵を描く」と表現しています。

上記はあくまでイメージではありますが、専門的な用語で言うとスポンジは畳み込みニューラルネットワーク、内部のインクの通りやすさは重みバイアスなどの学習パラメータに相当し、上からランダムに垂らすインクはネットワークに入力するいくつかの乱数を表します。(乱数以外を入力する場合もあります)

そして、これは画像生成のみならず機械学習全般に言える事なのですが、この時「どんなスポンジを使うか」ということよりも、「一体どういう基準でインクの通りやすさを調節するのか」ということの方が重要だったりします。

ディープラーニングによる画像生成技術はまだまだ発展の途中で、スポンジの種類や内部を調節する方法などにおいて、これまで数々の手法が提案されてきました。その中で代表的なものをご紹介します。

Generative Adversarial Network

こちらの画像をご覧ください。

どう見ても写真にしか見えないと思いますが、これらは写真ではありません。AIが生成した画像です。

thispersondoesnotexist.comというサイトにアクセスすると、その場で全く新しい人間の顔写真を生成して表示してくれます。検索してどこかかから画像を持ってきているのではなく、アクセスするたびに新しく作っているのです。
つまり、ここに描かれているのは全員、過去一度もこの世界に存在していない人物だということになります。そう、先ほどの例で言えば偶然できたインクの染みです。

ここまで来るとリアルすぎてもはや写真という媒体の信憑性すら揺るがしてしまいそうなくらい脅威的なものを感じますが、ディープラーニングによる画像生成技術がここまで発展を遂げた背景には、Generative Adversarial Network、略して「GAN」と呼ばれる学習手法と、その進化の歴史が大いに関わっています。

このGANは、非常にユニークな方法で生成画像の品質を高めています。下の図のように、生成を行うAIとは別にもう一つのAIを使用して学習を行うのです。


生成器 : 画像を生成する。先ほどの例で言うところのスポンジ。
鑑別器 : 見せた画像が、元々あった画像なのか、生成器が生成した画像なのかを見極める。

GANの最大の特徴は、これら二つのAIが互いに競い合いながら成長していく所にあります。つまり、生成器は何枚も何枚も画像を生成しながら、どうすれば鑑別器に見破られない画像を生み出せるのかを学習していき、また鑑別器は与えられた画像のどこにどう注目すれば生成器の下手くそな部分を見つけられるかを学習していくのです。その結果、生成器は私たち人間にもパッと見ただけでは本物と区別できないような画像を生成する事ができるようになるというわけです。なんだか人間同士のライバル関係みたいですね。

GANは現在では用途によって多種多様な亜種や進化系が発明されています。白黒画像を自動で着色してカラー画像に変換したり、短い文章からその内容通りの画像を生成したり、誰かの顔写真の表情をむりやり変えて笑わせる事もできます。

先ほどの顔写真はその中でも抜群に高解像度の画像を生成する事ができる Style GAN という手法で生成されたものです。

GANで育てたAIに絵画を描かせる

というわけで、GANで育てたAIに自由な発想で絵画を描かせてみました。
その一部をここでご紹介したいと思います。

これらはパブリックドメインの絵画を約5万点学習させたAIで新しい絵画を生成したものです。

たしかに「何らかの物体」であったり「どこかの風景」だと認識できるイメージを作り出せていますが、どれも人間の発想の一歩外側を行っているような気がします。なんだかこことは違う次元にある別の世界を覗いているようで、見ているとだんだん不安になってくるのに、不思議と目が離せないような、そんな魅力を個人的には感じてしまいます。機会があれば何枚か額縁に入れて飾りたいですね。

これらの作品は一枚一枚タイトルを付けたり文章を加えたりしてこちらのInstagramアカウントでも公開しています。ご興味のある方は是非ご覧になってみてください。

最後に

これから先、絵画や写真のみならず様々なジャンルの表現作品をAIが自動で、高速に、ほぼ無限に生成できるようになる時代が訪れるかもしれません。楽しみな部分もありますが、私たち人間が作品を作る意味を奪われてしまうのではないかという一抹の不安を感じている方もいるかもしれません。

でも安心して下さい。AIがどんなに多くのデータを生み出そうと、実際の所それらはいくつかの数値を加工して偶然できた染みに過ぎないのです。道端に転がっているかっこいい色の石ころや、海岸に漂着した人の形の流木みたいなものです。そういった偶然の産物を作品たらしめるには、やはり私たち人間が自らの感性で何か解釈を加えたり、それらを素材にしてさらにもう一段階上のものに仕上げる必要がどうしてもあるのではないでしょうか。AIアートは人間がその手で生み出す芸術作品とは全くの別物であり、人間による創作が必要なくなるという心配はいらないでしょう。

しかし、AIが自動で創り出す表現物は、人類にとってこれまでなかった全く新しい素材であることもまた確かです。それらを利用してこれからどんな作品が生まれるのか、今から楽しみで仕方ありませんね。

こちらのブログではAIに関する色々な実験結果を発表していきたいと思っていますので、これからも是非ご注目下さい。

それでは、最後までお読みいただきありがとうございました。

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【AITech #3】AIに本気のアートをさせてみた
関根 誠
株式会社トライフォート / エンジニア

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