残業のお話 その3〜個人の観点から〜
残業について、過去に2回、
を書きましたが、今回はその最終回、「個人の観点」から書くことにします。はい、すみません、約1年ほったらかしました。。
その1で述べたように、僕の基本スタンスは、残業の恒常化はマネジメントの怠慢、です。ただ、個人はそこにあぐらをかく存在だとは思ってなくて、個人としては、残業とか気にならないくらい好きなことを目一杯やって欲しいし、それができていない場合、その原因を、これから記載する3つの観点でぜひチェックしてみて欲しいです。
タイムマネジメントからストレスマネジメントへ?
現代の魔法使い、筑波大学の落合陽一さんが、労働時間が価値単位というマルクス以来の考え方はもう時代錯誤で、これからは、ストレスを適切に管理することが大事だ、と言っています。
仕事を、時間ではなくストレスと報酬のバランスで考え直す。なるべく好きなことをする。好きなことだけでお金が稼ぎ切れないなら、ストレスがなるべく少なくて稼げる仕事もそこに散りばめる。ストレスを最低限にするポートフォリオを作り、管理していく。
僕はこの考え方に基本的に賛成なんですが、以前「違和感のある場所に身を置こう」で述べたように、成長という観点から必要なストレスはむしろあった方がいいとも思ってます。
そもそもストレスとは?
コロンビア大学のウィリアム・ダガン氏によると、ストレスは分解すると、
- プレッシャー
- プレッシャーから生じるネガティブな感情
に分けられるそうです。
そして、プレッシャーは頭脳を明晰にするアドレナリンを分泌し、ネガティブな感情は記憶をブロックするコルチゾールを分泌するそうです。つまり、プレッシャーはパフォーマンスを上げ、ネガティブな感情はパフォーマンスを下げるってことです。
なので、目指すべきはストレスフリーではなく、以下の計算式が成り立っている状態だと思います。
「①好きなこと + ②プレッシャー ー ③ネガティブな感情」
①がない場合は、、どうしようもないですね。。でも実はこれがない人が多いから、労働を時間で語る=残業の話になのかな、とも思います。今回はさらっと流しますが、好きなことをすることは最重要なので、できないなら、できるように変えるか辞めるかしかないかと思います。
②については、以前書いたように、ない方が楽なので人はついついない方に流されがちだからこそ、常に敏感になった方がいいと思ってます。下の立場の場合、顧客や上司がそういうプレッシャーを与えてくれているか考えた方がいいし、上の立場の人は、自分の周りに自分を否定してくれる人が近くに何人いるか、考えた方がいいと思います。
③の「ネガティブな感情を回避する」ことについては、なかなか難しいですよね。②と③は表裏一体だったりもします。この記事は「個人の観点」にフォーカスをあててますが、この点は難しく、かつ、組織的な取り組みがとても重要になると思うので、以下、少し詳しく触れてみたいと思います。
ネガティブな感情はどうやったら消える?
たぶん誰でもネガティブな感情を抱いたことはありますよね。仕事に限定しても、上司に怒られたとか、目標を達成できるか不安とか、得意先とウマが合わないとか。。
そういうとき、どうやってそれを取り除いていますか?強い人ならきっと一人で対策を考えて実行して乗り越えるんでしょうけど、僕もそうですが、大概の人は弱いので、一旦ネガティブな感情に支配されてしまうと、なかなか一人で対処するのって難しいと思います。
そんな時に、上司や同僚が一緒に解決してくれたり、アドバイスくれたり、助けてくれたら本当に幸せですよね。特に仕事に関する悩みなら、近くにいる人のサポートは最強です。
逆に上司や同僚が原因でネガティブな感情が生まれてしまったら最悪ですね。少なくとも起きている時間の半分くらいは仕事をしているはずなので、その間ずっと(そしてきっと職場を離れても)ネガティブな感情に包まれてしまうことになります。結果としてパフォーマンスはだだ下がりです。更には、こういう時ってたいがいその当事者の周りにもこのメンタリティが波及するので、全体としてのパフォーマンスも下がりがちになります。
だから組織としてとてもとても大事なことは、
- 自組織が原因でのネガティブな感情を発生させない
- ネガティブな感情を相互に軽減・消滅させられる関係性を作り上げる
ということだと思います。そして実はこれは、2016年にGoogleが研究結果を発表して一躍有名になった「心理的安全性」を確保することにほかなりません。
心理的安全性
Googleの研究については知ってる方も多いとは思いますが、日本の人事部というサイトにこの事例に関する記事があったので、抜粋します。
グーグルが得意なはずの分析作業は、思いがけず難航しました。というのも、チームの働き方そのものやメンバー構成などに関しては、生産性の高いチームに共通する目立った要因が抽出されなかったからです。最終的に導き出された“解”は、「他者への心遣いや同情、あるいは配慮や共感」といったメンタルな要素の重要性であり、それによって醸成されるチーム内の「心理的安全性」と呼ばれる概念でした。
「心理的安全性」とは、こんな発言をしたらリーダーからにらまれる、他のメンバーにバカにされるといった不安を持たず、本来の自分を安心してさらけ出し、それが受け入れられる場の雰囲気をいいます。同プロジェクトでは、そうした環境が担保されているチームほど高い生産性を発揮している、と結論づけました。
これ、まさに「ネガティブな感情」を取り除いてくれる感じがヒシヒシと伝わってきますよね。で、これをめいいっぱいストレッチさせると、
- チームメンバーの誰にでも
- 公私の別なく
- 共有や相談ができる
という状態になります。ただこれ、言うは易しでそうとう難易度が高いです。僕らもまだまだここまでに至ってませんが、僕らの理想はここにあります。ここまでできると、ネガティブな感情を回避できるだけでなく、創造性も向上するという研究結果もあります。この話はまた別の機会にでも。
心理的安全性を高める取り組み
実はタイガースパイクでは、いかにもデジタル企業っぽいハッカソン的な取り組みよりも、この心理的安全性を維持・向上させるための取り組みの方が多かったりします。それをもってふわふわしているように思われたりがちですが、こういう取り組みは、なにげにかなりマジメに考えながらやってたりします。まあ、タイガースパイク版人類補完計画ってとこかと思います。以下、紹介します。
毎日
- ヨガ&ストレッチ #毎朝11時
- 1分間スピーチ #毎朝11時。スピーチテーマは毎日変わります。
- コーヒーブレイク #毎日15時
- THE SHELF #各人の好きなことを自由に表現した棚です(↓写真)
毎週
- フライデービア #毎週金曜にビール飲んでます。外部からの参加も多いです。
隔週
- 社内版TED #好きなテーマで語ります。ポテチの歴史とか、地元自慢とか。
- フライデーランチ #ランダムな数人で全員分のランチを作り、みんなで食べます。
毎月
- チームアワー #いろいろ共有したり相談したりします。
四半期ごと
- H.A.B.O. #Help A Brother Outの略で、本務以外でチームに貢献した人を讃えます。
年ごと
- Away Day #遠くに行きます。
- Innovation Day #ハッカソンです。これは心理的安全性向上メインの取り組みではないですが。。
こういう取り組みを通じてネガティブな感情を軽減・消滅させ、
「好きなこと + プレッシャー + 心理的安全」
が実現できている状態が、個人の観点からベストな状況ではないかと思います。これらがしっかりと維持管理できていれば、きっと、残業という概念そのものがなくなっていくのではないかと思います。
まとめ
残業のお話について、3回分をまとめると、以下になります。
マネジメントの観点からは、残業問題はマネジメントの問題に他ならなず、マネジメントは、残業させずに儲かる仕組みを作ることが第一の仕事であると認識すべきと書きました。
ただ、日本の残業問題はマネジメントからだけでは語り尽くすことはできず、実は日本文化の観点から、日本人が残業を発生させやすいメンタリティを持っていると推察しました。
個人としては、残業とか関係なく、安全な場所で、好きなことを思いっきりやれる状態が理想だよねー、という整理をしました。
これをまとめると以下みたいな感じかと。
会社からは残業せずに終わらせられることを担保してもらいつつ、安全な場所で、ポジティブなプレッシャーを受けながら好きなことを思いっきりやれる
うん、確かにこれ、理想ですね。パフォーマンスもメッチャ高そうです。うちはまだまだここまでできてないです。ただ、目指す像としては、改めてクリアになりました。はい。あとはやります。がんばります。
残業のお話 その1〜マネジメントの観点から〜
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残業のお話 その2〜日本文化の観点から〜
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残業のお話 その3〜個人の観点から〜 (本記事)
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