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仲間のために道をつくる──宮崎から始まった執行役員になるまでの4年間

2020年12月、エスプールリンクで働く酒井 麻美は、執行役員に就任した。しかしこの辞令は、妊娠7カ月目を迎え翌年2月から産休に入ろうとしていた酒井にとって寝耳に水だった──。中途入社4年目にして執行役員に任命され、エスプールグループに前例のない半育休のモデルケースをつくろうとする酒井の現在に迫る。

「センター長として働いてみないか」──その一言で世界が変わる

                   ▲只今妊娠中の酒井

人口約5万人の宮崎県日南市には、エスプールリンクが初めて地方に出店したコールセンターがある。2016年の出店当初から3年に渡ってセンター長を務めていたのが、現在エスプールリンクで執行役員を務めている酒井 麻美だ。

エスプールリンクとの出会いは、偶然のたまものだった。酒井は結婚を機に日南市に移り住み、市役所で地方の雇用を創出するプロジェクトに携わっていた。そこに、日南市でコールセンターの出店を検討していた鬼木 陽一(エスプール新規事業開発部長)が現れた。

酒井 「本当にたまたま、市役所で鬼木に出会ったんです。企業やお店の採用代行をするコールセンターを地方に設置することで、地方での雇用を創出するプロジェクトの候補地として視察に来ていたんですね。そのことをフランクに話してくれる鬼木をみて、こんな人と一緒に働きたいと思いました」

コールセンターを日南市に設置することが決まってから、すぐに一般オペレーターとしての求人に応募した酒井。面接の結果は、思いがけないものだった。

酒井 「電話がかかってきて『センター長として働いてみないか』と言われました。まったく予想していなかったことなので、本当に驚きましたね。でも、与えられたチャンスには飛び込んでみようと思い、その申し出を受けることにしました」

こうして酒井は、センター長からエスプールでのキャリアを積み始める。研修担当として業務を教えに来ていたメンバーは二週間で本部へ帰った。そこからはセンターの手本として、オペレーター業務をこなしながら他の同期のサポートまで行うようになる。

酒井 「当時一緒に働いていた人から、聖徳太子みたいだねと言われたこともあります(笑)。店舗の業務をしながら電話をして、周りの人の状況も気にかけて……。多忙な日々を送っていました」

そんな酒井を支えたのは、日南センターで一緒に働いている同期の存在だった。

酒井 「未経験者だった私が、センター長としてやって来れたのは他ならぬ同期のおかげです。あの時に力を貸してくれたからこそ、今でも続けることができていると感じています」

誠意を持った対応で、相手を自分のファンにする

             ▲日南センターオープニングセレモニーの様子

オペレーター業務の中で印象に残っているのは、クレーム対応である。

酒井が勤めるコールセンターの電話相手は、アルバイトを探している人が大半で、クレーム対応をする機会は少ない。それでも、まれにお叱りの電話がかかってくることもある。

酒井 「オペレーターが電話に苦手意識を持たないよう、そういったお問い合わせは極力私が代わるようにしていました。周りには普通の顔で電話しているように見せていましたが、マウスを持つ手が震えていることもありましたね。

でも、誠意を持って対応をしていると、相手の方が一気にファンに変わるという瞬間があるんです。そういった瞬間はとても記憶に残っています」

他のオペレーターが3時間対応し続けていた相手が、酒井と話す中でファンに変わりその場を丸く収めたこともあったという。

実は、酒井の人柄や接客スキルは前職での経験によって培われたものだった。

酒井 「今までさまざまな仕事をしてきましたが、その中でも一番長く働いていたのが大手脱毛サロンでした。5年間務めたうちの3年はお客様に商品をお勧めするカウンセラーとして全国を飛び回り、営業成績は全国3000人の中で3位まで上り詰めたこともあります。

他にも、業績が伸び悩んでいる店舗での教育やマネジメントにも携わり、まさに天職といえる仕事でした」

結婚を機に退職をしたが、業種は違っても培ってきたマネジメント力や、人の気持ちを読み取る力は無くならない。その経験を生かしながら、管轄する仕事の幅をどんどん広げていった。

酒井 「半年を過ぎたあたりから、オペレーター増員のための採用業務も始めました。具体的にはチラシづくりに面接や会社説明会、そして採用後の研修までを行うようになりました。その他にも、業務内容に対する改善点を本部に伝えるなど、こちら発信で意見することも増えました」

入社3年目には、エリア長に任命され、他の地方のコールセンターの立ち上げに関わりながら、各店舗の業務改善や売上の立て方のレクチャーを行うようになる。4年目には日南センター長の座を同期に譲り、エリア長として全国のオペレーター8、90人余りが酒井の部下となった。

常にスタッフの声に耳を傾け、すぐに相談できる存在へ

                  ▲仕事中の酒井(写真左側)

前職での経験と人柄を生かし、とんとん拍子でここまで来たように思える酒井だが、常に壁にぶつかりながら進んできた。

酒井 「苦労したことはほとんど全部です(笑)。始まったばかりの事業を未経験者が引っ張っていくのは、頼れる指標というものが何も無いことを意味しています。どんな対応をするのが正解なのかわからず、常に手探り状態でした」

そこで酒井は『自分が欲しかったもの』を指標にしてマニュアルづくりを始めた。

実は、最初に酒井がコールセンターで働き始めた時のマニュアルは紙切れ1枚だった。会社全体でも初めての試みだったため、マニュアルをつくれるほどの情報が無かったのだ。

酒井 「最初は、素人の私がマニュアルをつくるなんて良いのだろうかと悩みました。でも、自分がした経験はなるべく他の人にも生かしてもらいたいと考え、作成に取り組みました。

好都合だったのが、作成したマニュアルを使い始めた全拠点のスタッフから、直接意見をもらえるエリア長というポジションにいたこと。不便な点や改善点がないか聞いて回り、もらった意見はすぐに反映させていきました」

たとえば、新人オペレーターが最初に受講することになっていた3時間のレクチャーは、「毎回同じ内容なのに、教える側の時間が取られてしまう」という声を受けて動画研修に落とし込んだ。こうしてブラッシュアップされた研修マニュアルは、全国のスタッフの意見が詰まったものになった。

酒井 「他にも、エスプールリンクがエスプールから会社として独立したときの人事制度、評価制度を定める際にも私が携わりました。地方で働いている方に寄り添った内容のものにするよう心がけたら、良くなったという声がたくさん届き嬉しかったです」

常にスタッフの声に耳を傾ける酒井には、センター長として日南で働き始めたころからずっと変わらずに心がけていることがある。

酒井 「心がけているのは、何かあったときにすぐに相談できるような存在であることです。メリハリをつけるのは大事ですが、相談しにくい上司というのは現場の意見がつかめず、不利益になってしまいますよね。特にエスプールリンクで設置しているコールセンターは、地方の方たちの力がなければ成り立たないので、交流を大切にしています」

前例のない制度を自ら体現し、新たな道しるべをつくることを目指して

            ▲懇親会での一枚。(画面上、左から二番目が酒井)

働く人に寄り添ったマニュアルや制度づくりは会社からも高く評価され、2020年12月に執行役員に任命された。このとき酒井は妊娠7カ月 。公私ともに充実している中でも、心配なことがあった。

酒井 「もともと1年ほど育休を取ろうと考えていました。しかし今後のキャリアを考えると、仕事に長いブランクができることへの不安が拭えませんでした」

酒井が担っていたのは、東京本社と各地方のコールセンターをつなぐ役割。これまで築いてきた信頼関係が途切れてしまうのではないか。また、丸々1年間休んだ後の前線復帰についても実現できるのか、と頭を悩ませた。

そんな時に人事部から提案を受けたのが「半育休」という制度の活用だった。

酒井 「『半育休』は、仕事を少しずつ継続して行うものです。たとえば私の場合、産休入りから出産予定日までの間に1カ月ほどの時間があるので、そこで月10日ほどのペースで仕事を続けようと思っています。こうして、法律で定められた範囲内で仕事をできるように手配してもらいました」

半育休という制度はエスプールの中でも前例がなく、新しく制度を使う酒井に対して、人事部をはじめ周囲からの積極的なサポートがあった。

酒井 「私の上司も個人的にいろいろ調べて教えてくれて嬉しかったです。周りの人の理解があって助かります」

あと数十日で半育休に入ることになった酒井は、今までの仕事をこう振り返る。

酒井 「こんなに成長できるような環境は二度とないと考えています。前例がないことにチャレンジさせてもらえ、たとえ失敗しても次につなげることで価値あるものになる。企業理念をここまで体現している企業はなかなかないですね。役員の方もフランクで、中にはちゃん付けで呼んでも許されてしまうような人もいます(笑)」

4年に渡り新しいことに取り組み続けてきた酒井は、今後何を目指すのか──。

酒井 「直近の目標は、自分の出産や子育ての情報を残して、半育休という人事制度を根付かせることです。長期的には、地方のセンターからでもエスプールリンクの役職者になりたいという人たちのために道をつくりたいです。誰もがチャレンジができるような教育体制や育成に力を入れたいですね」

センター長としての採用、役員への出世、前例のない半育休。道なき道を切り開いてきた酒井は、たった4年の間で多くの後輩達に道しるべをつくってきた。より多くの道をつくっていきたいという酒井は、これからも自らが先陣を切り、新たな道を切り開き続けるだろう。

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