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しるしブランドマーケティング講座② 「消費者理解」とは?

こんにちは、しるし株式会社 代表取締役の長井です。

しるしでは、月1回の頻度で、現役のブランドマーケターを招き、「ブランドマーケティング講座」を開催しています。ブランドに寄り添い、成長を共にすることを目的とした投資です。
実際のトレーニングではケーススタディを挟みながら進めていますが、ストーリーでは概要をシェアしていきます。

今回は「ブランドマーケティング」をしていく中で最も重要な要素である「消費者理解」について深掘っていきたいと思います。

なぜ「消費者理解」が最重要で、そもそも消費者の何を理解する必要があるのか。そしてそれを理解した上で、ブランドを購入していただくために何を考える必要があるのか。

前回の記事(しるしブランドマーケティング講座① 『ブランドとは?』)でもお伝えしたように、ブランド育成の上で重要なことは、「WHO(誰に)」「WHAT(何を提供するか)」を決め、「HOW(どのように伝えていくか)」を考えていくことです。
「消費者を知る」とは、この「WHO」の部分を深堀りしていくことになります。まずは、消費者理解が大切な理由と、どのように理解を深めていけばよいのかについて解説していきます。

トレーナー
日系化粧品会社マーケティング部バイスプレジデント
外資系消費財メーカー入社後、日本とシンガポールにてアジア全域のブランディングに携わるなどの幅広いマーケットでのブランドマーケティングに従事。手掛けた新製品が日経トレンディ・日経MJ優秀製品サービス賞を受賞するなど、新製品開発・新規の価値開発で多くの結果を残す。
その後、日系化粧品メーカーへ転職、バイスプレジデントとしてメンズブランドを伸長し、メンズ美容市場を牽引している。

1. なぜ消費者理解が大切なのか?

経営学の第一人者であるドラッカーの言葉にこのようなものがあります。

「真のマーケティングは顧客からスタートする」

つまり、「私達が何を売りたいのか」ではなく、「消費者は何を買いたいのか」が全ての始まりということです。自社の商品やサービスの強みや性能をアピールすることも大切ですが、それ以前に消費者が何を必要とし、何に価値を感じるのかを理解することが最も重要だといえます。
「WHO」がブラッシュアップされて理解が深まると、「WHAT」と「HOW」も1本の川のようになり、必然的に見えてくるのです。

それでは私達は消費者の何を、具体的に知っていけばいいのでしょうか。

消費者の属性を分類するためのマーケティング用語として、「デモグラフィックデータ」と「サイコグラフィックデータ」という言葉があります。それぞれ以下の表のような分類になります。

・デモグラフィックデータ
性別・年齢・所得・職業・学歴などの社会的属性
・サイコグラフィックデータ
消費者の習慣・趣味・趣向・価値観などの心理的要因

この2つのデータを元に消費者を分析し、心理を理解することで、同じような行動を起こすであろう消費者の集団を見つけることが大切です。これをセグメンテーションといいます。

セグメンテーションをしっかりと行い、マーケティング活動をしていくことで、消費者に「これは自分のための商品だ」と認識してもらうことができるのです。

2. 消費者理解のよくある誤解

マーケティング活動において、消費者理解やペルソナ設定をしていく中で、犯してしまいがちなミスがあります。それは「デモグラフィックデータ」のみに捉われてしまうことです。

ペルソナ設定の際に、消費者の性別・年齢・所得・職業・学歴などの社会的属性のみで判断していないでしょうか?社会的属性のみでは消費者の心理を読み解くことはできません。

有名人に例えるとわかりやすいかと思います。

「40代、男性、東京都在住、独身、高所得、こだわりが強い」
というペルソナ設定をしたとします。これを有名人に例えると、大野智、徳井義美、堀江貴文、マツコ・デラックスなど、アイドルから実業家まで、幅広いジャンルの名前が列挙されます。この4名に同じ商品を売ろうと考えたとき、アプローチの方法は同じでしょうか?また、この4名は同じ購買行動をしているでしょうか?

全く違うということが、容易に想像できるのではないかと思います。
そこで、消費者を理解する上でこうしたプロフィール的な面よりも大切なことは:

  • その人の好き嫌いが分かること
  • その人が一日にどんなことをして楽しんだり辛くなったりしているかがわかること
  • その人の願望や理想がわかること

など、消費者の心理面の特徴を読み取っていくことになります。

3. 接客業の鉄則とは

大手アパレル会社で研修している考え方を紹介します。

あなたがアパレル店のスタッフだとします。来店するお客様は、無意識のうちにお店に対していくらかの期待値を持って来ます。あなたの接客をお客様が採点したと仮定して、90点・100点・120点だったときの、それぞれのお客様の反応を想像してみてください。いずれも高得点ですよね。学生時代のテストで90点が取れていれば褒められることでしょう。

しかし実際のお客様の反応は、下記の図のようになります。

お客様の期待値に対して100点満点、つまり期待通りの接客をしたときのお客様の反応は「普通」です。期待通りの接客をすることは、お客様にとって当たり前だからです。セリフにすると「まあまあかな」「普通じゃない?」と、このような感じでしょう。

お客様の期待値に対して90点、期待値を下回る接客をしてしまったら、お客様を怒らせてしまい、クレームに繋がります。セリフにすると「ふざけるな」「こんなお店に来るんじゃなかった」となるでしょう。

お客様の期待値に対して120点、期待値を越える接客をしたときに初めてお客様は笑顔になり、喜んでくれます。セリフにすると「またこのお店に来たいな」「店員さんありがとう」となります。

この考え方は、マーケティング活動においても重要です。消費者を理解することは、消費者の期待値を知ることでもあります。そしてその期待通りの商品や訴求の仕方では満足して頂けません。期待値を越える120点を叩きだしてこそ、消費者に喜びと幸せを感じていただけるのです。

つまり、プラス20点をどうやって作るのかを考えることが大切になってきます。

4. 消費者へのマーケティング活動とは、大事な人へのサプライズプレゼントで喜んでもらうこと

プラス20点を作るには、消費者のことを深く理解することが必要不可欠です。プラス20点を作る要素は「WHAT(何を提供するか)」「HOW(どのように伝えていくか)」の部分になります。何をどのように提供するかは、当然「WHO(誰に)」によって変わってきます。「WHO」を深く理解しないことには、「WHAT」も「HOW」も設計できないのです。

そのため、消費者を理解することがマーケティング活動の1番の根幹となる部分になります。

皆さんは、大事な人へサプライズプレゼントを贈ったことはありますか?大事な人を驚かせ、喜んでもらえるプレゼントを贈るには、まずは相手の趣味や趣向、好きなものなどを理解する必要がありますよね。

マーケティング活動も全く同じなのです。届ける相手のことを理解することから、全てが始まります。

5. 消費者理解は仮定と検証の繰り返し

では具体的にはどのように消費者理解を進めていけばよいのでしょうか?

「定性調査や定量調査などのアンケート調査で消費者の心理がわかるのではないか」とよくいわれますが、それだけでは不十分です。アンケート調査に参加されたことがある方なら経験があるかもしれませんが、周りの目を気にした意見を書いたり、「面倒くさい」とパパっと済ませてしまったというのが、アンケート調査の正直な実情なのではないでしょうか。つまり消費者の口やコメントからはインサイト(消費者の隠れた心理)は出てこないのです。

だからこそ、消費者のインサイトは何なのか、仮定と検証を繰り返しながら、消費者理解を進めていく必要があります。

消費者理解は終わりがない旅です。
なぜならそこには無限の答えがあり、完全な正解はないからです。

例えば、皆さんは自分の母親に「これまでの人生で1番喜んでもらえるプレゼント」を選び、贈ることはできますか?母親という1番身近な存在でさえ、深層心理を読み取ることはかなり難しいのではないでしょうか。様々な仮説を立てて答えを導きだすことはできますが、それが正解かどうかはわかりません。そしてその正解は母親本人ですら、自覚できていない可能性がある部分なのです。

人の気持ちを理解し、動かせるようにアプローチの方法を考えることはそれくらい難しいものです。しかし、学べば学ぶほど深く理解できるようになっていくものでもあります。

だから、消費者理解という終わらない旅は、日々継続していかねばなりません。

6. カスタマージャーニーとパーセプションフロー

それでは消費者理解を進めていく中で、見えてきた消費者像に対して、どのようにアプローチの方法を考えていけばよいのでしょうか?

カスタマージャーニーとは、消費者が商品を知り、購買するまでの行動の変化を時系列に沿ってまとめて可視化したものになります。消費者に商品を知ってもらい、購買してもらうためには、消費者の行動を変える必要があります。消費者の行動を変えるには、消費者の気持ちや認識を変えることです。

例えば、「男性にスキンケアが必要だと考えたことがなかった」という消費者に、「スキンケアすることによって肌の色が明るくなり、かっこよくなれる」という訴求をすることによって、消費者の興味を引き、認識を変え、行動が変わる期待ができます。

このような消費者の気持ちや認識を変えるためのコミュニケーションを設計することをパーセプションフロー(コミュニケーション設定図)といいます。

7. パーセプションフローの基本的な考え方

ブランドとは「お客様の消費者の頭の中に蓄積された意味の集合体」である、と前回の記事でお伝えさせていただきました。そしてその「意味」を構築するのは私達ブランド側です。私達が作った意味を、消費者の頭の中に蓄積させるには、意味を届けるという作業が必要になります。どのようにして意味を届けるのかを設計するのかがパーセプションフローです。消費者の頭の中に確実に意味を蓄積させるには、入念な設計が必要なのです。

消費者は1つの商品やサービスに対して、表・裏・ポジティブ・ネガティブなど様々な思いが混在しています。

例えば、とんかつ定食というランチメニューを目の前にして、

  • 美味しそう!
  • お昼はがっつり食べたい!
  • でもカロリー高いしなぁ
  • 太りたくないなあ

など、相反した思いが混在するのです。

この混在した意識の中で、購入を促進する可能性のある生活者意識を「モチベーター」といい、購入の阻害になる可能性のある生活者意識を「バリア」といいます。

消費者に商品やサービスを購買していただくには、

  • モチベーターを持ち上げる訴求
  • バリアを取り除く訴求

が必要になるのです。「消費者の気持ち」と「訴求ポイント」のどこに接点を設計するのかを試行錯誤するのがパーセプションフローの考え方になります。

8. まとめ

消費者理解の重要性と考え方について、以下2点を中心に解説させていただきました。

  • 何を見て、何にわくわくするのかが想像できるまで、消費者を理解する
  • 認識を変えるためには、どこで、どんな気持ちのときに、どんなことを伝えるかを設計し、発信する

消費者理解は終わりのない旅です。仮定と検証を繰り返しながら理解を深め、消費者の期待値を越える商品やサービスを、確実に消費者に届けるためにコミュニケーションの設計をする。この流れがマーケティング活動において重要なのです。
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しるし株式会社
代表取締役 長井秀興

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