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ファシリテーターインタビューvol.84「プロジェクトアドベンチャーには子どもの頃に出会っていた」

非常勤ファシリテーターのえびちゃん(蛭間龍矢)。ライフセーバーやキャンプリーダー、ファシリテーターをしています。自然の中に身を置くことが多いえびちゃんの考えるアドベンチャーとは。

PA(プロジェクトアドベンチャー)との出会い

いま思うと、概念的なことで言えば、小さい頃にすでにPAに出会っていたのかなと思います。

子どもの頃、キャンプ場やスキー場で、一緒に遊んでいる子を泣かせてしまったり、釣りに誘ってくれた子の竿を奪ってしまったり、一緒に秘密基地をつくっていたのに、方向性の違いから解散だ!みたいになったり、また仲直りしたり(笑)。その人を大切にしたい気持ちと、自分のことも大切にしたい、自分の意見を押し切りたいという気持ちのどちらもありました。

さまざまなことを大切にする、今どうあるべきかを選ぶというPAの概念的なことを、僕はその時々にそういう体験の中で得てきたんだと思います。

ファシリテーターへの道

専門学校の実習を手伝う機会にPAアクティビティに出会い、それをきっかけに他社のファシリテーター育成講習会に参加して、プログラムの現場に立つようになりました。その後、背景にある概念についてもっと知りたくなり、PAJのAP(アドベンチャープログラミング)講習会に参加しました。

AP講習会は自分のイメージとの齟齬があったかもしれません。もっと、「ファシリテーションとは」について学べると思っていましたが、AP講習会は体験そのものだけでした。

AP講習会の最初はファシリテーターに対して「もっとリードしてよ」「助けてほしい」と思っていましたが、2日目の午後くらいから、ファシリテーターを山や海のように感じ始めました。

AP講習会の中でファシリテーターは山そのものとして存在していました。山は上りだから登ってみようと進んでいくと、そこにはただ川がある。川があるから、渡ってみようかと渡っていくような気分でした。

僕がプログラムでグループに関わるとき、「ほら川だぞ、渡れ!波だぞ、乗れ!」みたいな言い方はしたくないです。波は選ばせてほしいし、川を渡らない方法だって選んでほしいと思います。そういう意味で、AP講習会のファシリテーターは、「登れ!」と言うのではなく、ただ山として存在してくれていたのがよかったです。

いまこの瞬間、その人やグループに寄り添うとき、ファシリテーターとしてではなくて、一人間として関わることがすごく大切なんだと思います。5日間のAP講習会を終えて思ったことは、僕は僕らしく、自分が人としてありのままでいることが大事なんだなと思いました。

「あなたはこういう考えを、どんな体験から得てきたのか」「過去のどんな体験からそういうことを感じてきたのか」ということをAP講習会の中で問われた気がしました。

PAがない世界に

PAやフルバリューの話をきいたときに、PAはなくなったらいいんだと思いました。PAやフルバリューは、人として当たり前の部分を大切にしています。自分を大切にすること、相手を大切にすること、空間を大切にすることは、人として当たり前のことですが、それが難しい世の中です。それぞれの感情やタイミングもあるので難しいけれど、PAはそういうことを大切にしようとしているものだと思っています。

だからPAJはPAをなくすような世の中をつくりたいんだろうなということを純粋に感じました。

自分で選ぶ

僕は遊んでいたいです。「遊び」があれば、何にでもわくわくできるし、面白いと思えます。わくわくや面白さを求めている瞬間は自分らしいと思っています。

PAプログラムでファシリテーターをしているときも、そんな感じでグループを見ています。チャレンジを自分自身で選ぶということと、フルバリューを大切にしていますが、参加者に冒険したり、わくわくしてほしいです。

「この人たちとこんなコトをしたら面白いかな」「この活動をこんな風にやったら面白そう」と感じてもらえるのが、PAという箱の中での面白さだと思っています。

わくわくや遊び心、好奇心の中で、自分を大切にしてほしいし、一緒につくっている仲間も大切にしてほしい。そして目標を立てたら、目標に対してどういう自分でいたいのか、それをやるやらないを自分で決めることも大切にしたいです。

PAをやっていて、やりたくない子がいたとき、そのことを否定するのではなくて、その子のやりたくない気持ちに対しても好奇心を持っていたいです。

「やる、やらないはどっちでもいいけれど、なんでそう思うの?」「あなたのままでいていいけど、なぜそう思ったのかに興味がある!」と伝えたいです。だから「他にどうやったら面白くなるかな?」ときくこともあります。

端っこにあるもの

僕は山に登ったり、海に潜ったり、スキーをしたりしていますが、いろいろなアドベンチャーがあっていいと思っています。エベレストに登りたければ登ればいいし、高尾山に登りたければ登ればいい。どのアドベンチャーにもその根底には、遊び心があると思っています。

「Edge of Chaos(端っこ)」という言葉がありますが、遊びはまさにその端っこにあると思います。エベレストには生死を分ける端っこがあると思いますが、PAは人と関わりながら、PAという箱の中で端っこを決める作業がたくさんあると思っています。

ファシリテーターは、ときには「こんなこともできるよ」と提案することもあるし、「これを使ってどう遊びたい?」と問いかけることもあります。それはみんなで端っこを決める作業だと思います。目標を決めることもあるし、「これは危ないからこうしよう」という端っこを決めることもあります。

大自然の中のダイナミックなアドベンチャーとPAが指しているアドベンチャーというものを僕なりに考えると、どっちがいいとかすごいということではないと思っています。わくわくもあるし、その先に死があるということをよりリアルに体験していることをアドベンチャーと指していることもありますが、それをより守られた中で遊ぶことで、端っこを楽しむこともできます。

旅を続ける

15歳から唯一続けていることは、旅です。僕が旅でたまたま出会った人たちは、ある意味、僕にファシリテーションしてくれて、僕に選ばせてくれていた気がします。一緒に行こうよと誘ってもくれたり、そのまま放っておいてくれたり。

PAもちょっとした旅だと思っています。それは自分と向き合うことなのか、グループと向き合うことなのか、出来事なのかは、その人によって違います。僕はそんなふうに旅ができるファシリテーターでいたいなと思っています。

(20191126)

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