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【ナイルの組織】マネージャー向けに1on1の社内ガイドラインを作りましたので公開します

※この記事は、2019年10月7日にナイル株式会社の採用オウンドメディア「ナイルのかだん」に掲載したものです。Wantedlyから弊社を知ってくれた方にもぜひ読んでもらいたい記事であるため、転載しました。

ヤフーの1on1を読んで全社的に1on1文化を取り入れ、確かに文化としては定着していて毎週1on1やってるものの、手段が目的化したりマネージャーによって品質にムラがあったりしていて当初期待していたような成果がじゅうぶん得られているとは言い難い」という課題を抱えているスタートアップの人事および管理職・経営者のみなさん、こんにちは。

ナイル株式会社 取締役 土居健太郎と申します。note / twitter )

このたびナイルの組織運営について定期連載することになりました。「9月から月1定期更新ならさすがに余裕」と言ったのを完全に忘れていたので、初回はアリモノをそのまま公開することで切り抜けます。

表題の通りですが、ご多分に漏れず当社でも冒頭にあるような1on1に対する課題感があり、今年の6月にマネージャー向けに簡易的な1on1ガイドラインを作成し、マネージャーを集めて1on1に関わる意見交換などを行いました。パッとかける記事ネタがないため、この社内ガイドラインを全社公開をすっ飛ばして一般向けにも公開します

社員の人もこれから社員になる方も社外の人も是非なにかにご活用ください。

              ———— コピペここから ————

1on1 ガイドライン ( マネージャー向け )

作成:2019年6月4日  最終更新日:2019年6月5日  作成者:土居

1.1on1 その前に① 有意義な目標を設定する

1-1.目標を設定し、意志を共有する

その人がどんな役割を担い、どういう結果を出すことを期待されているかを上司と部下で同じ言葉で話せる状態にしてください。

何度でも確認してください。「いちいち言われなくても分かってますよ」くらいが理想です。そうなれば修正が必要になった際にも「目標を変更したいです」が自然とでてきます。

1-2.目標の質を確認する

設定されている目標について、定期的に振り返り、その質を確認してみてください。確認の順序は以下です(3と4は内容次第でどちらからでも)。

1.部署(会社)として重要度の高い仕事の結果が目標になっているかどうか
2.あなた(上司)が本心で達成してほしいと願っている目標かどうか
3.本人がその達成にむかうプロセスを楽しめるかどうか
4.その目標に向かって仕事をすることが本人の成長につながるかどうか

なお、本人に委ねすぎた結果3や4を主体にすると肝心の1と2が後回しになり、

・個人目標を達成してるのに褒められない
・個人目標を達成してるのにチームの成果につながらない
・個人目標を達成してるけどプラス評価にならない

という悲劇が発生することになるので順番には注意してください。

また、定期的に部署の方針が変わったり、必要があれば期中に体制を変更することもあります。それにあたって期初の注力事項よりも重要度の高い課題が出てくることもあります。

定期的に振り返り、「この目標は方針が変わったので廃止として、今後はこちらの仕事に注力してほしい」のように軌道修正を入れていくことも重要です。今までやってくれていたのに申し訳ない、などに配慮する必要はありません。過去は過去、今は今です。

2.1on1 その前に② 部下とその仕事をちゃんと見る

1on1を有意義なものにするための準備として、日頃から部下を観察しておくこと、具体的には以下のような状態を作っておくことは非常に大切です。

・部下に関心を持つ、個性を理解しようとする、それを承認し、尊重する
・部下とその仕事ぶりをできるだけ観察しておく
・ちょっとした変化に気づけるようになっておく
※髪染めた?とかではなく、仕事や人間関係、コンディションなど

その結果、

「前より1人で完結できることが増えてきたように見えるけど、自覚はある?」
「最近珍しくミスが続いてるようだけど、大丈夫か」
「残業続いてるみたいだけどタスクコントロールはできているか」

このような声かけが自然とできる状態が、「ちゃんと観察できている」状態です。

このような、観察に基づくちょっとした声かけはとても大事です。これはマイクロマネジメントが目的ではなく、ちゃんとした仕事をすればこの人はちゃんと見ているし、それを評価してくれるはずだ、という信用を得ることが目的です。

「GIANT KILLING」18巻より ©ツジトモ,綱本 将也/講談社

なお、「ほっといていただいて大丈夫ですよ」という感じの人も稀にいると思います。少しシビアなことを言いますと、ほとんどの場合、その本音は

「私の仕事にあまり関心ないでしょうし、私からも話したいことは特にありません」
「あなたのことは特に頼りにして / 信用してないのでお構いなく」

のようなものです。これは本人の主体性が高いとか自走力があるとかではなく単に上司が信用されてないというだけなので良い状態ではありません。

お前なんかに話すことはない、となれば1on1は事実上はじめる前から終了しています。1on1の場が有意義な時間であるために、このような信頼関係を日々のコミュニケーションを通じて築いておくことを大事にしてください。

注意:部下との距離の縮め方には順番がある

じゅうぶんな関係性ができていない中で、いきなりプライベート空間まで踏み込まれるのは同性異性かかわらず嫌がる人多いので注意(特に男性上司→女性部下のときは間違えすぎると簡単にセクハラ案件になるので特に注意)が必要です。

この感覚は人それぞれなので、踏み込みすぎて逆に距離を置かれては本末転倒です。話題としての心理的ハードルの高さでいえば、

仕事外の私的な話 > 周辺(職場や同僚など)の話 > 仕事や目標の話 > 雑談

の順です。(部下からみた)無理のない心理的な距離の縮まり方としては、

0.自分の存在を快く受け入れてくれている
1.自分のことをちゃんと理解しようとしてるし、見ててくれる
2.自分の仕事の進捗や目標達成をちゃんとサポートしてくれる
3.仕事外の相談にも乗ってくれるし、有意義なヒントやアドバイスをくれる
4.他の人には話しづらい私的な悩みについてもこの人には相談できる

基本的にはこの順です。4の関係性までいくのは誰でも大変なので、まずは3までの関係性をつくり、「この人には色々話そうと思える」を目指しましょう。

意外と重要視されにくいのは0のステップで、これを実現するのは「雑談」です。普段から仕事関係ない話が気兼ねなくできる関係にある人とそうでない人では、1on1での話題の距離感も全然違ってくるというのはみなさん経験あると思います。雑談は非常に大事です。

1on1を形式的な場にしないよう普段からのコミュニケーションを大事にしてください。

3.1on1 のあり方・進め方

1on1の主体は上司ではなく部下です。すなわち、「部下から上司に色々と話す場」が本来の1on1のスタンスです。

開催頻度は「毎週」または「隔週」が推奨です。最低でも月1以上は実施してください。

部下とのコミュニケーションの中で1on1が果たすべき役割は、

近: 本人が仕事で成果を出し、評価が上がることをサポートする
遠: 本人の将来キャリアまで見据えた総合的な成長を支援する

ですが、理想は「目標達成するうえで困ったこと(近距離の話)があれば即時解消してるので大丈夫です」な状態が作られており、1on1ではそれより遠い話が中心になることです。

とはいえ、「なんか話したいことある?」と言われても「いや、特に」となって出てこない場合もあるので、予め話題をフォーマット化しておいて種をまいておくと楽です。

(フォーマット例)

・目標に対する進捗度、順調か否か(目標ごとに)
順調なものはその場ではスルー
問題があるなら相談にのり、解消のサポートやヒントを与える
目標変更の必要ある、優先度変えたい、などあればその場で話す
・上記以外で取り組んでいることはあるか
・仕事するうえで、何か困ってることはあるか
・その他、話したいことや気になることがあればなんでも

こうした話題の種をまいた結果の本人からのアウトプットに対して、例えば

・足元にばかり目がいっている… もっと遠い話を振って視点を広げる
・遠くばかり見て足元がお留守… 目の前の現実を提示する
・漠然と、道に迷っている…   深掘りしてヒアリングし、言語化を手伝う
・感情と理屈を混同している…  書き出すなどして、切り分けて思考を整理する
・持ち帰りの課題がでてきた…  次回までの宿題として考えてきてもらう

などのような感じでそれぞれ盛り上げてもらえればよいかと思います。

基本は最初に書いたとおりで「成長の支援、目標達成の支援、評価あげるためのサポート」のように考えられていれば問題ありません。

「評価をあげる」というのは変な根回しをするなどではなく、本人が社内で望む待遇やポジションに到達できることを支援する立場に回る、ということです。砕けて言えば「この調子だと今期はプラス評価できる材料がほとんどないのだけど、これからどう挽回していこうか」のような話をしていくことも重要ということです。

※そういう話を普通にできる関係性をつくっておけ、というのが前段で書いたことです。

なお、「失敗の責任の追求」のような話題についてはあくまでもそれが発生した時にその場でやるべきことであり、1on1でやるべきことではない(1on1の場で振り返る場合、責任を一切追求しない「無責」のスタンスで、事実そのものの分析を行うのが良い)です。

注意:足元にストレスや阻害要因が多い状況で遠い話に終始するのは✕

足元がボロボロの状態でのキャリアビジョンがどうのこうのみたいな遠い話をしようとしても、実質的には世間話以上の意味をなさないので注意が必要です。

1on1で近距離の話ばかりではなく将来の成長を支援しろ、のような話が重要視されるのは「足元を整備するなんてのは普段からやっているはずで、1on1の場はそれに終始するべきではない」という話です。この点については勘違いなきようにご注意ください。

仮に、足元がボロボロの状態でまともに仕事も進捗していないのに遠くのことばかり考えている人がいたとしたら、それは真剣に仕事や目標と向き合えていない人です。その場合は「まずは目の前の仕事でちゃんと成果を出すことに集中しなさい」という指導が必要です。

図にまとめるとこのようなイメージとなります。中心が近距離、外側が遠距離です。

例えば「本音いうと給与は物足りない、でも仕事は楽しいしチームメンバーもいい奴ばっかだから頑張れる」という人はいると思いますが、「仕事は本当に退屈だし上司も同僚もクソだけど会社の理念にはすごく共感できるから頑張れる」という人は少ないと思います。

足元の問題が何も解決しない状態で給与だけを上げたり企業理念だけを刷新したりしても、働く人のモチベーションには大した影響を与えないのはこのような理屈からです。

健康状態が安定しない、仕事を進める上での阻害要因が多い、同僚や上司と信頼関係が築けない、などは「日常の強烈なストレス要因」です。それらが除去されるためにあれこれ支援する姿勢を示すことは1on1に限らずマネージャーが部下に対して行う最優先業務です。

足元を歩きやすく整備すること(と、それ以前にそれを大事にする姿勢)はメンバーの仕事のモチベーションを維持するための最重要事項でもあるので、「遠い話」を意識するあまり、そこがおろそかにならないようにじゅうぶん注意してください。

以上

              ———— コピペここまで ————

1on1の成否を決める要因は、1つはたしかに「傾聴する、否定しない」「フィードバックに寄り過ぎない」などノウハウ的なものも多いと思いますが、それ以上に「部下がなんでも話をしようと思うような関係を先に作れ」のほうがよほど重要だと確信しています。1on1の成否の7~8割はここで決まると言っても過言ではない派です。

次回以降のネタにしますが、ナイルではマネジメントやレポートラインがどのように機能しているかを把握するために社内アンケート(実名)を3ヶ月ごとに行っているのですが、1on1や日常の上司とのコミュニケーションに関わる設問で

・1on1やっているはずなのに「振り返りの機会ない」
・1on1やっているはずなのに自分の目標の認識が甘い
・自分の個性や好き嫌いにあまり関心を持たれていない
・上司から具体的なフィードバックを得られていない

みたいなのがたまにあります。

気になる箇所があれば関係者ヒアリングを行うようにしていますが、サボっているとか悪意があってそうなるのではなく、真面目にやっていたつもりだったがお互い噛み合っていなかった、などが多いです。そういう状態でいくら「1on1やってます」といっても、成長の支援だとか大きな目標の達成だとかそんなものには貢献できないですね。

ということで、形式的な話の前に、あなたは上司/部下となんでも話せてなんでも聞ける関係が築けていますか?そのために普段からどういうコミュニケーションをとっていますか?という観点で1on1を見直してみることは有意義と考えます。

おわりに

ナイルでは、これまで「マネージャー育成/研修」「マネージャー向けガイドライン/マニュアル」のようなものは限りなくゼロに等しかったのですが、組織拡大に伴いその必要性が日に日に高まっていることを実感しています。

今はまさに1on1ガイドラインしかり、未経験マネージャー向けの外部研修しかり、マネージャー職が集まっての勉強会など組織の中核を担うマネージャー向け強化施策を整備している真っ最中です。

採用に関わる取り組みについては採用マネージャーである渡邉がほぼ独断であちこち取材されたり登壇したりしてそれを事後に知るような立ち位置ではありますが、ナイルの組織づくりのトピックについてもこうした形で発信を増やしていく所存です。

ひきつづきよろしくお願いします。

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