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「安い住まい」路線を捨てて正解でした

NEWVERYでは、マンガ家を育成するシェアハウス事業「トキワ荘プロジェクト」を手がけています。

5年前までのトキワ荘プロジェクトのWEBサイトに書かれた一番大きな売り文句はこうでした。

「賃料を安く抑えることができるので、バイトの時間を抑えて、マンガ制作に時間を割くことができます。」


しかし、この売り文句に疑問を感じたのです。

もしこれが本当なら、安い部屋に住んでいる人ほどプロになっているのではないか……と。

ところが、ざっくりと調べたところでは、必ずしもそうとは言い切れなかったのです。むしろ担当者の感触としては、賃料の安い部屋を選ぶ居住者は、バイトを最小限にしつつ、全体的にダラダラしてしまう人も見られるとのことだったのです。


また、賃料が安い住まいというのは、大家さんから安くお借りしているから実現できることであり、安さの理由として建物自体に問題を抱えているケースがあります。

そのため、雨漏り、トイレづまり、漏水、倒木、ネズミや害虫など、建物自体の問題が原因でトラブルになることがあります。結果として、居住者の方がこのトラブル対応に振り回されたり、NEWVERYの担当者が修繕対応してもらえる業者さんに連絡したりと、時間を大きく浪費することがあります。

この結果、NEWVERYのスタッフが居住者の育成支援を担当するというよりも、トラブル対応係のようになってしまっていたのです。


なぜ、一人暮らしではなく、複数人が住むシェアハウスに住むのでしょうか。

それは、それは同じ目標に向かって進む仲間が近くにいることで、自分のモチベーションを高め、お互いの知らない世界を教え合うことで、作家としての視野を広げ、より高い実力を持ったプロとして成長していけるからです。

賃料が安くて済むというのは副次的なものであって、本来的な目的ではないはずです。

つまり、「安い住まい」路線は、本質的な方向性ではないのです。

私たちは色々考えました。たどり着く結論は一つで、一定の賃料はいただきつつも、それだけの価値がある環境へとシフトしていくしかないと判断しました。

その一つの試金石となるのが「多摩トキワソウ団地」です。


マンガ家育成の新路線

多摩トキワソウ団地は、マンガ家やマンガ家志望者を多く集めた住まいです。

2011年にリノベーション済みの団地で各室エアコンを完備しています。断熱・防音性に優れた現代的な部屋で、名前とは裏腹に居住面では昭和感はありません。

そしてこのほど、増室を行い、男女混合38名規模の住まいとなりました(↓の記事をぜひご覧ください!)。学校の一クラスほど人数なので、色々な個性を持った人がいることになります。

日本最大級のマンガ家交流住居「多摩トキワソウ団地」を約40名規模に拡張
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000055034.html


▲居室外で仕事もできるワークスペース(カメラの反対側にも座席があります)

賃料と管理費を合わせて1室あたり49,000円~という住まいですので、そもそもが「高い住まい」でもないのですが、さすがに「月3万円台で生活する」といったことはできません。安さだけが勝負材料という以前の考え方には合っていない住まいです。(一般的に見れば十分に「安い住まい」だとは思いますが……)

安さの追求を抑える一方で、相当数の規模になることを生かし、交流を増やす取り組みを強化しました。さらに、マインドセット研修をトキワ荘プロジェクト参加のタイミングで必ず実施するようにし、作家としての方向付けを考えてもらうようにしたのです。

また、NEWVERYは、シェア型学生寮「チェルシーハウス」(約40名規模)を運営し、学生自身の自主的な運営による成長促進を得意としています。マンガ家向けシェアハウスが、学生寮と似た規模感になってきたことで、集団性を生かした育成という強みが相乗効果を上げるようになってきたのです。

2021年6月1日オープンし、5か月が経過しようとしている今、居住者へのアンケート調査をしてみました。さてその結果は……。


マンガ制作において有益と回答:100%

多摩トキワソウ団地設立に当たって、新規に入居していただいた方だけではありません。今まで安い賃料だった従来型シェアハウス(男女別)を閉鎖し、整理統合する形で転居してきた方もいます。

そのため、この賃料や環境について満足できないという反応をされる方がいても不思議ではありません。

多摩トキワソウ団地の居住者全員にアンケート調査をしたところ、以下のような回答が返ってきました。

質問1
多摩トキワソウ団地の環境は、マンガ制作において有益だと思いますか?

回答結果
良かった 24名(100%)
悪かった 0名(0%)
質問2
(共用部について)男女混合の住まいについてはどう感じましたか?

回答結果
良かった 24名(100%)
悪かった 0名(0%)
質問3
居室のユニット制(1ユニット3室)について、どう感じましたか?

回答結果
良かった 22名(約83.3%)
悪かった 2名(約16.7%)

具体的な回答内容はこちらをご覧ください
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000055034.html


回答内容からは、マンガ家としての環境として有益だとする強い推奨意見を伺うことができました。

特に多く見られたのが二つの意見です。

一つは、まとまった人数が住んでいることで、マンガ家としての働き方や、ステージの違い、ジャンルの違いや性差から来る感覚の違いを知ることができ、自分自身の視野を広げることになるという点です。

もう一つは、マンガ家という同じ目標で頑張っている仲間同士で、一様に高い熱意を持っているため、自分のモチベーションにつながるという点です。



知的生産活動におけるスランプの原因の多くは、インプット不足とも言われています。

インプットが減少するのは、周囲との接触の少なさが原因で、自分の知らない世界の情報を入れる機会が枯渇していることも大きな要因とも言えます。

多摩トキワソウ団地のスタイルが、自分の知らない世界を知る機会になっていることは、私たち運営者が思う以上に、作家それぞれにとっての満足度につながっていると感じました。



そして、一人だけで高いモチベーションを維持するのは大変なことです。周囲からの適度なプレッシャーがあることも、成長には欠かせない要素となります。

特に多摩トキワソウ団地では30名から40名規模の住まいになるので、自分のステージとも似た仲間を容易に見つけることができます。プレッシャーという面でも逃げられない環境にあることが、実は満足度の点でも重要な要素になっていることが伺えます。


改めて調査結果を見てみると、安くて良かったという意見は一つもなく、移転してきて賃料が高くなって不満だという意見もありません。賃料以上のサービス環境・設備環境と居住性の良さを評価してもらえている様子です。

今のところ、「安い住まい」路線を捨てたことは、居住者の皆さんにとっても評価してもらえているようです。

▲新路線の一環として行われた無料の研修講座の様子

今後、新型コロナウイルスの感染予防に配慮しながら、新たな取り組みを進めていくことになります。「安い住まい」路線ではない新たな取り組みが、さらに成長の鍵となるように頑張っていきたいと思います。


……ちなみに「ネズミが出なくなって良かった」という意見もありましたよ。


↓ トキワ荘プロジェクトの変革に関する詳しい記事はこちらへ ↓
https://graphium.jp/blog/tkpj-tamatokiwaso-concept


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