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HWスタートアップに夢は残っているか?海外初心者COOのCES2019訪問記(その1/開催を前にして)

はじめに

皆様、新年あけましておめでとうございます。MAMORIO株式会社でCOOを務めさせて頂いている泉水です。

私は2019年1月8日から開催される世界最大規模の家電見本市であるCESに参加すべく、アメリカはラスベガスに一人で向かっています。

"向かっています"といいますのも、この記事をまさにラスベガス行きの飛行機の中で書き出したところだからです。
現地レポートは現地時間の8日以降に書かせていただくとして、今回は旅の目的等についてご紹介いいたします。

弊社は「なくすを、なくす。」をミッションに紛失防止IoTデバイスMAMORIOを活用して、「紛失の起こらない未来」を作っているスタートアップです。
私達自身がそう自称しているかは別として、世間的には「コンシューマーIoTスタートアップ」「HW
スタートアップ」と見て頂くケースが多いようですが、そんな会社の人が書いている記事だということを頭に入れてご覧いただければ幸いです。

尚、私自身は英語もろくに話せない海外初心者ですので、道中に直面するトラブルも含む旅行記も兼ねて投稿していきたいと思います。

いや、トラブルは何もないといいのですが。。。

CESとは?

さて、今回の旅の目的であるCESについて、聞き慣れない方もいらっしゃるかと思いますので、一応ご紹介をさせていただきます。
CESはConsumer Electronics Showの略で源流を遡ると1967年にニューヨークで始まり、1995年からは毎年ラスベガスで年一回開かれている世界最大の家電見本市です。
読み方はシーイーエスという人と、セスという人がいます。

ここに世界中から電機メーカーを始めとした多くの参加者が集結し、今年〜数年先までの技術などを展示します。
1月2週目の月曜日から開催される特性上、CESを見れば今年~数年の家電トレンドがわかるなんて言われています。
会場は非常に広大で複数のエリアにまたがっており個人的な感覚では幕張メッセ10個分くらいの規模です。(あくまで感覚ですが)

[大きく分けて3つの会場に跨って行われるCES]


過去のCESでお披露目となった製品として後に有名になった代表的な物には、あのファミコンや、DVD、古くはレーザーディスクなどがあります。

さらに近年は世界的なスタートアップブームもあり、大手メーカーだけではなくスタートアップ専用のホールが用意され、アメリカはもちろん、勢いのある中国やフランス、そしてもちろん日本のスタートアップなども出展しています。
特に今年は2018年に発足したJ-STARTUP(経産省/JETRO/NEDOが主催)として初めて、日本のスタートアップ達も日本国の威信を懸けて送りこんでいます。

尚、弊社もJ-STARTUPに選出されておりますが、諸事情により今年は出展しておりません。
ただし、昨年はお国の力を借りずに自力での出展を果たしており、私がここに来るのは2回目となります。
尚、過去の海外出張についてはこちらの記事を御覧ください。

[参考]文化を体感し、描くヴィジョン―MAMORIOが海外イベントに挑戦する理由

https://www.wantedly.com/companies/mamorio/post_articles/115599

[CES2019で設営されるJ-STARTUPブース。豪華ですね。]

何をしにきたのか

実は今回の私の視察に関しては社内でも「行くべきか否か」で議論がありました。むしろ積極的に行くべきと主張していたのは私だけであったかも知れません。
コスパを考えて行くべきでない理由についてなども色々ありますが、結論からいえばCESのトレンドも目の当たりにせずに国内コンシューマーIoT業界を牽引していく存在になれる気がしないと私が前回のCESで強く感じてしまったのです。だから行く

個人的な話も含めてご説明させていただきますと、私が電機メーカーに憧れるガジェット好き小中学生だった2000年代前半〜中盤にかけて、世界三大家電ショーといえば、CES(アメリカ)、IFA(ドイツ/ヨーロッパ)、そして日本の誇るCEATEC JAPAN(アジア)でした。

私はこれら展示会を毎回楽しみにしており、会期中はガラケーで一生懸命ニュースサイトを漁っていたものです。
もちろん、国内開催のCEATECには少ないお小遣いを叩いて毎年参加していました。
当時のCEATECの勢いは凄まじく、当時3Gサービスを世界に先駆けてサービス開始するなど、最先端を行っていた通信業界とまだまだ元気だった家電業界がその技術力と10年後の未来を世界に誇示していたのでした。

そのCEATECは2007年をピークに、リーマンショックも相まって来場者が年々減少し、2010年代には大手電機メーカーが相次いで出展を取りやめるなど冬の時代を迎えていきました。

私が就職活動を迎えた2011年には震災後の自粛ムードもあり、とても元気が無かったのを覚えています。まさに家電不況に突入する最中に社会人の一歩目を踏み出そうとしていたのです。

さて、時は流れて2017年からMAMORIOは海外進出の道を探るべく海外の展示会やイベントの参加を行ってきました。

少しずつ自信をつけた私達はついに、2018年初頭にCES、さらに通信業界のCESとも言えるMWC(Mobile World Congress)に参加をします。

そこで目の当たりにしたのは、全く存在感の無い日本メーカーと対照的にとてつもなく勢いを感じる中国や韓国などのアジアメーカー、そしてフレンチテックを始めとする海外のスタートアップ、どでかいブースを構えるMAMORIOに近いデバイスを作るメーカー、更にそれらを束ねる神のような存在として君臨するGoogleの姿でした。


[Hey,Googleがいたるところで見かけられました]

音声UIに関連するあらゆるサービスの展示やスマートホームなど、日本では殆ど存在感の無いプロダクトが"すでに普及段階にあるもの"という前提で数多出展されている中、強く危機感を抱きました。

「あぁ、日本だけ見てたらこの危機感は生まれない。自分たちが思っている以上に世界は進んでいて、日本は相対的に遅れ始めている。もはや世界に日本やMADE IN JAPANの存在感がない。"なんとかせねば"」

もちろん、この点については2017年のサンフランシスコへの出張時にCTOの高野が書いた通り、「むしろ世界が今まで遅れすぎていて着手出来なかった課題を日本は20世紀のうちに解決してしまっていた」という側面はあります。

[参考]シリコンバレーに勝ちに行く -MAMORIO CTO滞米日記-①
https://www.wantedly.com/companies/mamorio/post_articles/79236

これによって海外でトレンドになった製品がそのまま日本で売れるわけでもないことはわかっていますが、作り手となった今は、普通に日本に暮らしている感覚だけで製品を拡販していくことに耐えられなくなってしまいました。

何ができるかはわからない、でも少なくとも知っていたい。
知った上で自分たちにできることをやりたい。
そしてCESに行く多くの日本の方々と触れ合い一緒に知見を持ち帰ることでより良い日本にしていきたい。

酷く個人的に見えるかもしれませんが、私がCESに行く理由は上記が多くを占めます。

タイトルの意味

実はもう一つ、CESで見つけたい答えがあります。
それがタイトルに書いた「HWスタートアップに夢は残っているのか?」ということです。


私達は大変未熟ながら、それでも血反吐を吐くような思いをしながらMAMORIOというハードウェアを作っています。もちろんIoTなのでソフトウェアやアライアンスに因るインフラ構築もかなり苦労してやっていますが、スタートアップの経営者として辛いのはやり直しの効かない、そしてすぐに陳腐化してしまう、お金もかかる(笑)ハードウェアです。

それだけ大変なものづくりですが、純粋なHWスタートアップで話題を集め、その上で長く続けられているスタートアップってどれだけあるでしょうか?

例えば、あんなに勢いのあった、そして素晴らしい製品を作っていたGoProは1年ほど前に日経で経営不振が取り沙汰されました。
ヘルスケアで名を馳せたFitbitも100億円を超える赤字を計上し、ジリ貧状態です。
ウェアラブル界隈ではMisfitやJawboneやPebbleなどなど、いいものを作りながら消えていくHWスタートアップは非常に多いです。

あのGoogleだってGoogle Glassを失敗させてしまいました。
負け無しに見えたAppleだってiPhoneだって売上不振と言われます。

それだけハードウェアを作りながら経営していくのは難しいのです。一歩間違えば「死」が待っている。
そういう意味で何千億も赤字を出しながらも復活したトヨタもまだまだ稼ぎまくれるアップルもとんでもないことをやってのけているんです。

純粋なHWスタートアップで生き残っていく会社が非常に少ないこの世界で、私たちのような少人数のスタートアップが「夢」を見続けることは本当に可能なのでしょうか。

世界中から集まった数千社のケーススタディを見ることが出来るCESで、その答えに少しでも近づけたらいいなと思っています。

・・・とは言え、リアルタイムで更新していきますので、単なる旅行記になる可能性は捨てきれません。笑

次回に続きます。

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