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現CDO古結×前CDO山崎が語るエムスリーにおける「デザインx経営」~事業に貢献できるデザイン組織とは?

こんにちは。エムスリーCDOの古結です。

今回は、2023年7月にエムスリーの取締役に就任された山崎聡さんに「経営×デザイン」についてお話お聞きしました。山崎さんはエムスリーの初代CDOであり、現CTO兼VPoPとして、企業経営からプロダクト開発まで幅広く携わられています。そんな山崎さんが締役に就任され、経営におけるデザインの重要性やデザイナーの事業貢献など、今だからこそ話せる話も含めて色々お話お伺いしてきました。


古結:今日はいろいろとお話しを聞いてみたいと思います。さっそくですが7月から取締役就任おめでとうございます!

山崎:ありがとうございます。


古結:プロダクト開発組織の出身の方が取締役になられるということは、とても意義のあることだと思うんですけど、取締役になられて何か変化はありましたか?

山崎:そうですね。あまり変わらない部分と、確かに変わった部分がそれぞれありますね。変わらない部分としては、エムスリーはフラットな組織なので、もともと代表取締役の谷村さんがレポートラインでしたし、執行役員時代と今回で大きくフォーメーションが変わるということはありませんでした。

一方で、取締役会で選任されて株主総会で指名いただいたということは、株主様も含め、ステークホルダーに対して私達が成果を出していかなければならない、ということだと思います。よりデザインの力、プロダクト開発の力を使って、日本、世界の医療をより発展させていく必要があると、気が引き締まっています。


古結:ありがとうございます。今日は山崎さんに「経営×デザイン」の話を色々聞いてみたいと思います。まず最初は「経営とデザインがどう関連しているのか?」について、どう考えていらっしゃいますか。

山崎:私は経営にとってデザインとは非常に重要だと思っています。日本では「デザイン経営」という言葉が広く使われるようになって、最近ではマッキンゼーのレポートでも、デザインと利益が大きいという話も昨今注目されていて、デザインそのものが経営を引っ張る時代になってきていると思います。

なぜそう思うかというと、プロダクトを中心に社会がどんどん動くようになっているからです。例えば、デザインが全く必要のないビジネスモデルだけで成り立つ事業というものが昔に比べて非常に少なくなっているというのはあると思いますね。例えば、ものづくりの世界では、デザインによって、ものが売れる売れないを左右しているというところがあると思います。

これを大きく分解していくと、「3つのデザイン」が経営にとって重要だと思っています。

1つ目は、プロダクトデザインの重要性です。昨今の売れる売れないを決めるのが、プロダクトのデザインにどんどんなってきています。それを踏まえて使いやすさやユーザー体験もいかにデザインするかが肝で、やっぱりデザインの力が大きくなっているというのは感じますね。

2つ目は、プロモーションデザインですね。コミュニケーションデザインと言ってもいいかもしれません。素晴らしいプロダクトを作った後で、そのプロダクトが素晴らしいということを伝えないといけないというフェーズが次に来ます。エムスリーでは様々なサービスを作っていますが、それぞれのサービスのことが理解できるLPであったり動画であったり、いわゆるコミュニケーションとしてのデザインというのは、プロダクトが磨かれていく中で、より重要になっていくんじゃないかなと思ってます。

3つ目は、ブランドデザイン(BXデザイン)ですよね。BXデザインとは、そのプロダクトやプロモーションから、ユーザーが企業に対してどんなイメージを描くのか?それをデザインするということです。これもいろんな業界で進んでいて、例えば一番わかりやすいのはファッション業界ですよね。やっぱり「このブランドのイメージはこう」みたいなものがある。もっと言えば、ブランドのファンが出来て、その方々がブランドを支えていく。こういったものは、デジタルプロダクトの世界でも十分にありえる話です。

エムスリーでも最近、「デジカル」や「デジスマ」というブランドに対してファンができている。それが非常に重要なのかなと思います。


古結:ありがとうございます。そうなんですよね、エムスリーのデザイン組織でも「3本の柱」として皆さんにお伝えしていることですね。

山崎:これは順番が比較的重要だと思っています。やっぱり経営とデザインを接続するというのが前提にあるので、「どうやったらビジネス成果が最大化するのか」というところから逆算しないといけない。やっぱりまずは良いものがないと始まらないのかなと思います。

例えばわかりやすいところでいうと、私達のサービスで「デジスマ」というものがありますが、患者様からも医師の皆様からも両方評価されているという声が日々届きます。本当に良いものを作っているので、次の段階として、やはり日本全国の医師の皆様や患者様にこの良さというのを伝えるっていうフェーズに入ってきます。

そこで、例えばグラフィックデザイナーのパワーを使ったり動画の力を使って、そこをより拡大していく。本当にいいものを知ってもらうというプロセスに入っていくってことだと思います。そうすると、非常に良いファンの方々の反応というのが得られるわけです。それが広がっていくことによって、そのブランドのファンが増え、ブランドイメージが構築されていく。そこもまた広い意味でデザインしていくってそういうことだと思いますね。


古結:経営は事業に結びついていると思いますが、デザインが事業貢献にどうつながるのか、どんなデザイナーがどういうバリューを発揮していくのかを聞いてみたいと思います。

山崎:エムスリーでは、やっぱりギークかつ優秀な人材、デザインギークかつスマートに物事が考えられる人材ですね。そういった人達に入社してもらって、それぞれの領域で活躍してもらうことが重要だと思っています。

古結さんとも付き合いは長いですが、私が古結さんの一番良いと思っているところはデザインギークなところです。古結さんはデザインに対して非常にこだわりが強いとおもいますが、そのこだわりがあるということが大前提になりますよね。古結さんと一緒に仕事をしていて、出てくるアウトプットには非常にいい意味でこだわりを感じます。デザインで医療が良くなるとか、世の中を変えられるって信じているところがやっぱり一番いいし、そういったメンバーにエムスリーに集まって欲しいと思いますよね。


古結:そうですね。私の中で「事業貢献」という言葉の捉え方が変わったタイミングがあったのですが、それは山崎さんとプロダクトを作ったときでした。その前も「事業貢献」というものを意識して、デザインをしていましたが、山崎さんは全然アプローチが違った。プロダクトを通じての事業貢献、というものがあって私の中で衝撃的でした。

山崎:確かに、その数字を上げるためのアイデアを出すとか、そういったことも重要だと認識してます。今はプロダクトマネージャーという職種がこれをミッションにしています。

でも、それを前提として、デザイナーがデザイナーらしく、実際に数字を作るってどういうことっていう話になる。デザイナーがそういった企画的なことをするっていうのも全然我々はウェルカムですが、一方で、デザイナーらしく数字を作る方法っていうのもまたあってもいいと思うんですね。


古結:結構衝撃的だったんですよね。山崎さんと仕事をしていて、いつもデザイナーとしての貢献を数字化するってことが重要だっていう話を口酸っぱく言ってますよね。

山崎:当時の話を少しすると、私がプロダクトマネージャーとして売れる製品というのは保証しますと言ったとして、その上でこれをより売れるデザインにしてほしい。もっと言うとプロダクトマネージャーとして抽象的なゴールとか、形のない企画は私が作って、それを具体的な形に落として欲しいということですよね。このみんなで売れるものを作りましょうっていうのがすごくシンプルな戦略になっていく。


古結:売れるイコール数字を伸ばすっていうことももちろん大事だけど、その先にいるユーザーが何を求めてるかっていうのを現場で見て欲しいっていうのを山崎さんは当時言ってたんですよ。現場で見て、善し悪しって本当に分かるのかなみたいな疑問が当時あったのですが、実際に見てもらったら、私が売れると思ってたやつは全然ダメだった笑。

山崎:それ、あるあるです。世の中全般のあるあるでしょう。


古結:そうなんです。これめちゃくちゃ衝撃だったんですよね。何が売れるのかっていうのを具体化するってことについて、大事なのは、やっぱりビジネス感覚だったり、市場とかユーザーのことをどれだけわかるかだと思います。これはやっぱりプロダクトマネージャーがプロフェッショナルなので、そこにデザイナーとしてどう近づくかをずっと考えていました。

山崎:これが「ビジネスと接続する」ということなのかなと思いますね。売れると思っているものを作るのではなくて、売れるものを作るということが重要視されてくるので、その自分が売れると思っているものを作るっていうのはまだまだ前半戦。実際に売れるものを作るっていうのが後半戦なので、それから前半戦の仮説検証はあっても良いんだけど、より重要なのは後半戦ですね。

これは、プロダクト関連職種全部に言えることなんですね。確かにプロダクトマネージャーも当然、自分の好きなプロダクトを作るではなくて、そのユーザーに求められていて、喉から手が出るほど欲しいようなプロダクトを作ることによって、そのユーザーのジョブが解決されるわけですから、そのいわゆるジョブ理論を使って売れるものを作るっていうのが求められます。デザイナーも同じように売れると思うものを作るんじゃなくて、実際に売れるものを作らなきゃいけない。エンジニアも一緒ですよね。

これはもう会社全体でワンチームになれるんですね。もちろん、最終的な私達のゴールは「インターネットを活用し、健康で楽しく長生きする人を一人でも増やして不必要な医療コストを1円でも減らす」、それがゴールです。そのためには使ってもらわないといけないわけですね。もっと言えば対価を得られるほど必要とされているものを作るべきなんです。その点からビジネスサイドのメンバーも売れるものを作るということに対して非常に重要視している。なのでプロダクトサイドもそこに合わせて売れるものを作るというのがやっぱり一つの形だと思います。そういったことをデザイン組織のリーダーとして、プロダクト組織のリーダーとして全社一丸となって作っていく。そういったカルチャーを作っていくってことは非常に重要なのかなと思ってますね。


古結:デザイン組織のリーダーが取締になるってどういうことか?これについてはどう考えていますか?初代CDOですもんね。

山崎:そうですね。初代CDOをやらせて頂きました笑。プロダクトが会社の業績を動かしたり、サービスのプロモーションにデザインがすごく重要になっているこの時代に、デザインは経営の一部であって、もっと言えばデザインこそ経営の重要な鍵を握っている。「売れると思っているものを作る」を乗り越えて、「実際に売れるものを作る」。もっと言えば世の中のマーケットのニーズがあるものを作るってことですね。

マーケットのニーズに当たれば、顕在ニーズでも潜在ニーズでも、それは売れるはずなので、それをリーダーとして、他の経営陣にコミットメントすることが自分の役割ですし、もっと言えばメンバーにその方向性を伝えて同じように考えてもらうってこともそうですし、いわゆるリーダーとして先頭に立って組織を導くというのはそういうことなのかなと思っています。


古結:確かに、エムスリーのリーダーは前線で戦ってますよね笑。

山崎:そうですね笑。私は今日もエラーメッセージを設計していました笑。


後編へ続く

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