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“任天堂の哲学”から学んだ「STREAMED」のプロダクト思想とは。

こんにちは、クラビス広報です。
株式会社クラビスについて、クラビスが提供する「クラウド記帳サービス STREAMED」について。その裏側にある、私たちのストーリーをお伝えしていきます。

今回は、CEO菅藤が「STREAMED」のプロダクト思想について語ります!


語り手:菅藤達也(かんとうたつや)
株式会社クラビス代表取締役・CEO。株式会社マネーフォワード執行役員 提携/M&A戦略担当。2001年、ソフトウェア開発会社にて、プロジェクトマネジメントや東南アジアでの開発拠点の設立を担当。2006年、現マクロミルに入社。経営・事業企画に従事しM&AやJV設立を担当。2012年、株式会社クラビスを設立し、代表取締役・CEOに就任。2017年11月より、マネーフォワードグループに参画。

「STREAMED」について:
「クラウド記帳サービス STREAMED」は、経理の現場の課題である「紙からのデータ化」を解決するサービスです。領収書や通帳のコピーをスキャンするだけで、手書きの領収書でも99.9%正確にデータ化され、仕訳データを作ることが可能です。

ゲームクリエイター時代に学んだ「任天堂の哲学」

ゲームボーイの生みの親である、元任天堂の技術者・横井軍平さんの「枯れた技術の水平思考」という有名な言葉があります。「枯れた技術」というのは、ひとつ前の世代の既に広まった技術をあえて使う。そうすると安く仕入れることができる。「水平思考」というのは、新しい視点で見たり、組み合わせることによって何ができるか?と、縦に深くではなく、横に浅く考えていく。結果的にそれが新しいものや、世の中から必要とされるものを生み出すんじゃないかということですね。

ぼくは20代はゲーム業界にいて、その時に先輩から「任天堂の哲学」について教えてもらいました。任天堂は子どもたちのお小遣いでも手の届く価格帯のゲーム機を作っている。それを象徴してるのが、初代「ゲームボーイ」なんです。

ゲームボーイは、当時世の中にカラー液晶が普及してたにも関わらず、あえて安く調達できるモノクロの液晶を選んでる。ハードウェアももっとスマートにできるのに、落としても割れないようにわざとゴツくしてる。余計なものは削って、シンプルに極力コストをかけないようにしている。中でもぼくがもっとも感動したのは、当時充電式に出来たにも関わらず、あえて乾電池式にしているんです。電気のインフラが整備されていない国の子どもたちが充電できないからっていう発想なんですね。もう、めちゃめちゃ考え抜いて作られたプロダクトですよね。

それを作ったのが横井軍平さんで、彼は世界中の子どもたちにゲームを届けたいと思ってると。しかし、最先端の技術を使ってしまうと、当たり前だけど大きな開発費がかかり、部品の調達コストも高くなりますよね。そうすると、商品の値段があがり、子どもたちには手が届かなくなっちゃう。技術で競おうと思えば出来るはずなんだけど、やりたいことはそれじゃないっていうところに任天堂の哲学がある

そして、ソフトウェアだけじゃなくてハードウェアと融合してるっていうのが任天堂の素晴らしいところですよね。おそらくiPhoneとかも、そういう発想を重視してるんじゃないかと思います。ハードウェアとソフトウェアを融合させて、かつ世界中に届けるみたいなね。


「枯れた技術の水平思考」に影響を受け、STREAMEDが生まれる

任天堂の哲学に深く共感したので、自分が起業して実際にプロダクトを作るときにも、とても影響を受けていたなと思います。

テーマとしては世界中の共通の課題である「会計」に絞って、その中で一番面倒くさい「紙の入力作業」を解決しようと。じゃあ紙やっつけるにはどうしたらいいんだろう?と考えたときに、エンジニアだったらきっと、OCRやAIを駆使しよう!ってなると思うんです。でもそれだと、技術的に、どうしても満足できるレベルの正確性にならなかったんですね。

人間が入力すると確実性は上がるけれど、コストとスピードが犠牲になる。OCRでやるとスピードとコスト的には良いけれど、正確性が犠牲になる。であれば、そこをお互い補完し合うようなサービスを作ればいいんじゃないかと思って。おそらく、人力でBPOをやっている業界の人たちは、人力だけでなんとかしたいと思うし、テック系の人たちはテクノロジーだけでかっこよくスマートにやりたい。当時まだ両方を兼ね備えたプロダクトはなかったので、きっと自分なら出来ると思って開発を始めました。

ぼくはエンジニアじゃなかったから、人力とテクノロジーを組み合わせるっていう発想に至ったんですよね。これはまさにぼくの中では「枯れた技術の水平思考」という感じなんです。オペレーションコストをとにかく安くするために、日本という概念をとっぱらって、東南アジアで人材を調達する。そして、その人力でのオペレーションとテクノロジーを組み合わせてみる。サービス自体は、裏側の人力やシステムを感じさせないように、めちゃくちゃシンプルに作る。データ化までは1営業日以内、かつ1件あたりのデータ化は20円というふうに明朗にする。ゲームボーイが余計なものを削ったように、「STREAMED」もとにかくわかりやすいサービスにしたかったんですね。そんな風に、初期のコンセプトにはすごくこだわって作っていました。

(スキャンするだけでいい、シンプルなサービスにしたSTREAMED)

会計ソフトに対して、ぼくたちは「自由な存在」であることが重要

起業したとき、海外では既に「クラウド会計」が出てきていて、世の中はこうやってクラウド化していくんだろうなと思っていました。ただ、現実を見ると紙の山なんですよね。きっと紙に困ってる人たちが取り残されてしまって、クラウド会計と現場のギャップが生まれるはずだと。実際にシンガポールでは、クラウド会計があったにも関わらず、紙の入力に超てこずっているという現実を見ていたので、世界中でそういうギャップが生まれるんだろうなと。

それで、戦略としては「ニッチの一点突破」。プロダクトとしては「枯れた技術の水平思考」。まずスイートスポットを見つけて、そこにいかに効率的なサービスをぶつけにいくかというのを重要視しました。いまも全くそこはブレないですね。それで結果的に差別化できるプロダクトになっていけたんだと思います。

重要なのは、会計ソフトに対して中立的であるという点。将来的に海外展開も考えている中で、「会計」はどうしてもその国の法律に縛られてしまう。でも「記帳」はその手前にある入力プロセスだから、あまり国に対する依存度が高くない。会計ソフトそのものに手を出しちゃうと、グローバル化は非常に難しいだろうと思ったので、その手前の「記帳」にフォーカスしようと決めました。

「記帳サービス」は会計ソフトに対して中立な立場になるので、今お客様が使ってるソフトをリプレースせずにすぐに使い始めることができます。クラウドっていいなと思っても、既存のやり方を変えるのってとても勇気が必要で、乗り越えてもらうためには大きなパワーが必要になるんですよね。つまり、たくさんの広告宣伝費と営業コストがかかる。そうすると、「枯れた技術の水平思考」とは異なるコンセプトになってしまう。だから、ぼくたちは、会計ソフトに対して自由な存在じゃなきゃいけないと思っています。


システムとオペレーションの融合が、競合優位性を生み出すカギになる

もうひとつ、前職のマクロミル時代に得たヒントがあります。

マクロミルはインターネットリサーチという調査サービスを販売してる会社なのですが、それまでは電話や郵送などアナログで行われていた調査をインターネットに置き換えて急成長したんです。もともとは、メーカーなどの企画部門が「自分たちで調査を行うためのシステム」を販売するIT企業だった。ところが、お客さんは調査はしたいけれど、調査のためのソフトウェアを覚える労力は使いたくない。そこで当時のマクロミルは、だったらぼくらがそのシステムを使って調査をするから案件をくださいっていうモデルに変えたんですね。要は、システムじゃなくてソリューションに変えることで成功したわけです。

その時に、システムを使いこなすオペレーション部隊を上手に組んでいる。それまでは、統計学を勉強した人たちが設計して、専門の部署が調査を行うというのが一般的だったけど、パッケージ化されたシステムで誰でもオペレーションできるようにしたんです。そうすると量産型になって工場化できる。システムとオペレーションを融合させて「ソリューション」になっていると、簡単にそれを真似できないので、すごく参入障壁が高くなると。それをマクロミル内部にいた人間として、深く理解することができました。

システムやUIは簡単に真似できてしまうので、あとから大きな資本が入ってきて追い越されるということがよく起きます。でも、システムとオペレーションが融合されてると、裏側のその緻密さがとても高い参入障壁となるのではないか。当時こんな仮説を持ってプロダクトを作ってみたら、実際その通りだったという感じです。

システムとオペレーションを融合させるためには、テクノロジーだけでも、オペレーションだけでも成立しないんですね。業務フローをきちっと描きながら、東南アジアに行って人材を調達して、緻密にそれをマネジメントする。今でこそしっかり出来るようになったけど、それを数人の会社で始めるというのは、相当難易度が高かったです(笑)でも、これらの思想が軸となっていることで、「STREAMED」というプロダクトがブレずに価値提供できている、そう思っています。


STREAMED」のプロダクト思想についてのインタビューでした。この思想をもとに実際に事業化していく中で、どんな苦悩やお客様の感動があったのかというストーリーは、別途記事にする予定です!

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