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【直撃】ビールを売るだけではない。店舗が成長するための施策立案までも行うKIRINの「営業」とは

1907年に設立した、キリンホールディングス。100年以上も続く企業として、多くの方にとっては “大手飲料メーカー” というイメージが強いかもしれません。

しかし、VUCAと呼ばれる変化の激しい時代。キリンではこれまでの常識にとらわれず、顧客起点での価値提案を行う組織として、また販売戦略はもちろん、社内の組織改革含め、チャレンジをし続ける多様性のある組織として、変わり続けています。

そして、飲料メーカーの営業といえば、 “ルーティンな外回り営業” のイメージをお持ちの方も多くいることでしょう。しかし、実際の現場ではコンサルタントに近い形で、飲食店やお取引先の売上アップや集客サポート、また新店オープンのサポートまで、幅広い課題の解決策をご提案するのがキリンの営業職の仕事です。

そこで今回、営業職を務めている東京西第2支店の細田彩夏、また営業職からマーケティング部へ公募の機会に自ら手を挙げて異動し活躍する佐藤洋介のふたりに、キリンの営業職はどういった業務を行うのか、ただビールを売るだけではない、その仕事の裏側について語ってもらいました。

キリンの営業はコンサルティング。いかにビール等の飲料を通じて、お客様の課題を解決するかが大切

―― キリンの営業職は、あらためてどういったことをするのか教えていただけますか?

細田:私は飲食店への営業がしたいと思ってキリンに入社したのですが、入社前は「毎日飲んで、昼間に出社する」といった不健康そうなイメージを抱いていました(笑)。

もちろん飲食店との関係構築のためにもお店に通って飲みに行く、といったことはします。ただ、それだけでなく、飲食店の売上げや来客数、客単価を伸ばしたいといったニーズに対して、キリンのリソースで解決できることは何かを考え、提案書を作成したりもしますし、新店をオープンしたいとなれば物件をご紹介させていただいたり、インフルエンサーを巻き込んだPR施策を企画・実施するなど、飲食店ごとに抱えている様々な課題を解決する仕事なんですよね。

そのため単純な営業力だけでなく、提案力や人脈も大事な仕事だなと日々感じています。

佐藤:私自身もマーケティング部に異動する前は営業を担当していたのですが、キリンの営業は「ビールを売る」というよりも、コンサルタントのような働き方に近いなと思っていて。ビールを通じて、どうお客様の課題を解決するか、が重要です。

しかもキリンの場合はビール以外にも様々な飲料があるため、ご提案できる幅がとても広い。もちろん、それができる前提として、飲食店で飲み物を頼まれるお客様、量販店で飲み物を買われるお客様の理解があるからこそ、課題解決のご提案ができると感じています。さらに飲料以外でも、飲み物に合うレシピのご提案や、新規出店する際の物件のご紹介など、お客様の課題解決のためにできることはなんでもご提案させていただきます。


たとえば採用について課題を抱えている飲食店があれば、弊社の人事担当を同席させて課題解決のためのご提案をさせていただいたり、採用戦略からサポートさせていただくこともありました。


細田:もちろん、関係づくりができている前提になるため、「どうも、どうも」みたいな泥臭い営業もするんですけど、最終的には飲食店がどういったことに悩んでいるかをヒアリングして、解決していくのが営業の仕事だと思っています。ただ、飲食店の方も簡単に悩みを打ち明けてくれはしないので、営業担当として飲食店のことを徹底的に考え抜き、分析することが課題解決のためには重要です。

そして飲食店ごとに来店されるお客様の層も、売っているものも違いますし、それゆえに抱えている課題も異なります。それらの課題に対して私ひとりでご提案できる幅は限られているため、キリンの様々な部署に相談したり、時には一緒になってご提案をしたりもするんですね。

SNS含め、デジタルでのPRがしたい飲食店がいれば、キリンのデジタルチームに相談して一緒にPR施策を考えたりもしますし、ご提案のためのデータや調査結果が必要であれば、キリンウェルビーイング研究所という様々な研究・調査している部署に相談したりもします。

ただビールを売り込むだけではない、幅広いご提案をするのがキリンの営業の仕事だなと思いますし、飲食店が抱える課題を解決することによって、その先にいらっしゃる、実際にお店に足を運ばれるお客様の喜びに繋がるんだなと感じています。

―― これまでご提案された中で、印象に残っている企画はなにかありますか?

細田:大阪のとある店舗が関東に初出店することになったのですが、新しい場所での集客に不安があるとご相談をいただきました。そこで私もデジタルチームと一緒に企画を練りまして、インフルエンサーを巻き込んだ企画をご提案したんです。

具体的には、そのお店はチーズを扱うお店であったため、キリンのクラフトビールとのペアリングを楽しんでもらうという企画をインフルエンサー20名を招待し、SNSで拡散してもらう形で実施しました。

そうしたら非常に反響が良く、TV番組でも紹介されるなど、いまでは行列ができるお店となっているんですね。

もちろんお店が自らインフルエンサーを巻き込んだ企画を行ってもいいのですが、キリンというブランドを使っていただくことで交渉もしやすくなりますから、私たちとしては使えるものは使っていただくという気持ちで、飲食店へご提案をしています。

新しいお店がオープンする前からお手伝いさせていただき、実際に繁盛するお店になられて、かつキリンのビールも宣伝することができた企画だったので、とても印象に残っています。

「この人のためにできることは何か」ただモノを売るだけではない、その方の人生に関わる仕事をしている

―― そういったキリンが持つ「提案の幅」以外にも、営業において大事だと思う要素はありますか?

佐藤:やはり人と人の仕事ですので、人として信頼していただけるか、というのは大事な要素だと思います。いまでも覚えているエピソードがあるのですが、沖縄支社勤務時代に、宮古島のお店に営業をさせていただいたことがありまして。

そのお店は地域柄、オリオンビールしか置いていないお店だったんですね。何度もキリンを置いてもらえないかお願いしたんですけど、なかなか置いてもらえませんでした。

そこで酒屋さんから話をしてもらったり、月1で出張して2年間通い詰めて、ビール以外のウイスキーや果実酒などのドリンクを提案したりと、いろいろやりまして。その中でオーナーさんから、「季節感を演出したい」というお話があり、キリンの「秋味」という商品をご提案させていただいたんです。


しかし宮古島の場合は船で飲料を運ぶ必要があり、また商品の管理や在庫のリスクもあるため、宮古島では秋味が楽しめない状況がずっと続いていて。それらのハードルを乗り越えるためには、酒屋さんや卸業者を巻き込んで流通を整えたりと本当に泥臭く根回しをする必要がありました。

そういったことを経て、ようやくの思いで「秋味」をお店に置かせてもらうことができたのですが、結果的にはお店にいらっしゃるお客様にも喜んでいただけましたし、お店に対しても客数アップ、客単価アップに貢献でき、最後にはキリンの「一番搾り」の樽生ビールをお店に置いてくださるようになりました。

はじめは本当にオリオンビールしかないアウェイな環境だったんですけど、最後の最後には私の人柄を評価いただいて「一番搾り」を置いてくださるようになったのは、本当に嬉しかったです。

営業はお店の方やお店にいらっしゃるお客様に一番近い存在ですし、直接喜んでいただけるのを目にすると、やっぱり嬉しいですよね。お店のことを考え抜いて、お店の方が抱える課題解決に繋がるご提案をし、結果多くの方を笑顔にしていく。

いまはマーケティング部に所属していますが、再び営業に携わったとしても、マーケティング部で学んだ経験を活かせばご提案の幅が広がりそうで、楽しいだろうなと思っています。


細田:私も、半年近くランチも夜も毎日通っていたお店がありました。繁盛している焼肉屋さんで、味はもちろん、お店のスタッフの方もいい方ばかりで、大好きなお店だったんです。「大好きなこのお店で、キリンの生ビールを飲めたらいいな」と思い、通っていました。

ただ、競合他社の方も営業に来ていて、毎日顔を合わせるんですよ。最終的にはお店のオーナーと競合の営業の方、そして私の3人でお食事をさせていただいて、何十枚もの提案書をつくったりしたのですが、「もともと契約している企業とは何十年ものお付き合いがあるので……」ということで断られてしまいました。

ただ、毎日通っていて良くしていただいていたので、オーナーの方からも泣きながら「ごめんなさい」と言われて。あのときは本当に悔しかったです。半年間通い詰めていた最後は、もう何が何でもという意地で通っていたのを今でも覚えています(笑)。

佐藤:やはり競合他社も営業を頑張られている中、ただ「ものを売る」というだけでは競合との価格競争になってしまいます。そのため、お客様の立場に寄り添い、課題を把握し、それを解決する企画を考えたりと、「この人のためにやってあげたい」「この人の役に立ちたい」という気持ちで営業をしていますから、どうしても気持ちが入っていきます。

そういった関係構築の末にご契約に繋がったときは、毎回本当に嬉しいですし、言ってしまえばひとつの人生に関わらせてもらえたと思うと感慨深いものがありますよね。

自信を持ってセールスできる商品ばかり。だからこそ、みなお客様視点で価値提案を考えられる

―― お話をうかがっていると、本当にメーカーというよりもコンサルに近い動き方ですよね。

佐藤:私自身も入社前は “大企業のメーカー” ということで真面目で保守的な人が働いているというイメージでしたが、自主的に考えて、チャレンジしようというマインドの人が多いなと感じています。もちろん市場自体は縮小していますので、そもそも新しいことにチャレンジをしなければいけない、というのもあります。

だからこそ、大企業であっても「大企業病」にかかっているわけでもなく、意欲があれば若手であろうがどんどんチャレンジしていってますし、お客様、そして世の中にキリンの商品を通じて価値提案をしていこうと、みな同じ方向を向いて考えているからこそだと思います。

―― どういったときに、「大企業っぽくないな」と感じますか?

細田:営業職に関して言えば、当然チームとしての目標数値はありますが、それを達成するためのプロセスは個々で考えて実行しています。

そのため社内はボトムアップな雰囲気があり、各チームでは若手であってもリーダー的役割を担いますし、時には年齢関係なく、上司に対してもストレートに意見を伝え、互いに納得いくまで話し合いをしています。

またキリンビール社長の布施さんと若手社員が集まる「布施塾」というのがあるのですが、会社の課題を話し合い、そこで生まれたアイデアを実際に会社に反映されたりするのを見ていると、「いい会社だな」と素直に思いますね。


佐藤:部署間で大きな壁というのもなく、他の部署の人と飲みに行く機会も多いんですよ。変な隔たりなく、みな仲が良いなと感じています。

また、私たちは売りたくないものを売っている、というわけではないんですね。味はもちろん、コンセプト含め、自信を持ってお届けできる商品ばかり。みんな自分たちの商品が大好きなので、それをどうお客様に届けていくか、最適な提案は何なのかと話し合えるのは、いい環境だなと思います。

>>後編に続く

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