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あたらしい《くに》づくりのはじまり

東北開墾は、東京と東北各地を舞台にゲリラ戦を展開しているため、ふだん、みんなバラバラに活動しています。なので、たまにこうして花巻のアジトに集まり、合宿をしています。東京チームが定期的に花巻にくることから、逆参覲交代合宿と呼んでます。アジトは平屋の一軒家で、庭がこの通りあるので、青空会議もできます。

現在、インターンやアルバイトも含め10人のメンバーで主に5つの事業をやっていますが、ぼくらはひとりの生産者と向き合い、突き抜けさせるミクロの活動が中心です。どこかの地域に現場を持ち、そこに張り付いて面を変革することはしていません。各地の点を変革しています。その点をつなぎ線にし、面にし、うねりにしていく。一方で、文明論から社会論までを包含するマクロの大きなビジョンを議論し、掲げ、発信しています。このミクロとマクロを行き来するダイナミックなジェットコースターばりの動きに酔わない、むしろ心地がいいというメンバーが集まっています。

東北から広がった各地の食べる通信、食べるタイムス、CSAが連動しながら、ひとつの大きなコミュニティが育ちつつあります。まだ生まれたてなので、よちよち歩きですが、このコミュニティがどんな大人に成長していくのかを考えることは、どう世界を変えるのかを考えることでもあり、すごくわくわくしながら議論しています。

水俣の漁師、緒方正人さんがこんなことを言っています。「おれは国には二つあると思っている。システム社会としての幻想の国と、山河・命に育まれた《くに》というか、生命世界のことを言っている。命のつながる《くに》で自分たちで自治をやっていく」。今すでにある国を否定するのではなく、国というシステムの中にいながらにして、もうひとつの《くに》を自分たちの手でつくっていく。

東北開墾がつくろうとしている食のコミュニティは、この《くに》の概念に近いかもしれません。日頃は、みんなこの国の国民として、会社勤めしながら、余暇の時間にこっちの《くに》の"こくみん"となって、土をいじり、波にゆられ、汗を流し、楽しむ場を持つ。この変革は、「ひっくり返す」とか「倒す」ではなく、「上書き」あるいは「浸潤」みたいなイメージかもしれません。一部のとんがったスーパーマンが命をかけるより、世の中の圧倒的大多数の普通の人たちがちょっと動いた方が大きな力になるし、そうすれば日本はおもしろい国になると思います。食べる通信には多くの普通の人たち(生産者や読者)が関わってくれています。この食べる通信の輪は今、全国30地域に広がっていて、有機的につながり始めています。さぁ、あたらしい《くに》づくりの始まりです。

東北開墾代表 高橋博之

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