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カンボジアの病院で非医療スタッフとして働くという事

現地病院では、医療スタッフのみならず非医療スタッフも多く働いています。
また、ジャパンハートには何でもやりたい事をやらせてもらえる環境が整っていて、新しい事にもどんどんチャレンジできる雰囲気があります。今回は、非医療スタッフとして、新しい取り組みを発案し実行してくれた学生インターン生の活動内容をご紹介いたします。

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医療学生ではない僕は、活動する中で自分の無力さを感じ悩むことが少なくありませんでした。しかし時が流れるにつれて、自分が実現できることに目を向けて、それを最大限意味のあるものにしようと考えられるようになりました。それは今振り返ると、自分にとって大きな学びであったように思います。

僕は、発展途上国と呼ばれる国々での社会貢献活動を自分の将来の仕事としたいと考え、ジャパンハートでインターンを始めました。海外のNPOやNGO、社会的企業でインターンをすることで、今後のキャリアを見据える上での経験やヒントを得たかったからです。

そんな僕がインターンの活動を通して成し遂げたかったこととして、現地の方と密に関わりながら何か物事を達成するということがありました。しかし活動を始めてすぐに、この期待は想像していたよりもはるかに難しいことであると気づきました。今考えれば当然のことですが、当時は現地へ行けば何かヒントが得られるだろうと、そのことを深刻には受け止めていなかったのです。そのため現地で活動を始めてすぐ、自分が病院で活動をすることの意味を深く考えさせられることになりました。病院へ来るのは患者さんで、それを治療するのはドクターやナースの方たちです。対して自分は医療のことなど全く知らない、ただの日本の大学生だという当然の事実を突きつけられました。カンボジアに着いて早々、なぜ自分がここへ来たのか?自分が患者さんに対してできることなどあるのだろうか?そんなことを毎日考えていました。

ありがたいことに大事な広報の仕事を任せてもらい、事業の拡大や存続を左右する大きな役割に活動の意義を強く感じていた一方で、患者さんに向けて直接的な活動ができないことには、もどかしさを感じられずにはいられませんでした。そんな中、広報の一環として患者さんにインタビューを行っていたとき、思いがけず自分にできることのヒントを得ることができました。それはジャパンハートも活動理念に掲げている、こころへの医療というアプローチでした。

病院には、辛いがん治療と向き合うたくましい子どもたちがたくさんいます。彼らは毎日ほかの患者さんと仲良く元気いっぱいに過ごしていますが、病院での生活に様々な制限があることもまた事実です。子どもたちやご家族にインタビューをする中で分かったのは、免疫力が低下していることで病院の外に出られず、新たなことに触れるきっかけが少ないことや、患者さんご自身だけでなく、ご家族含め娯楽が少ないためスマートフォンで暇をつぶすことが多いということでした。そのときに僕は、医療以外でも患者さんに対してできることがあるかもしれないと初めて気がつきました。

自己満足になってしまわないだろうかと不安を抱きつつも、自分にできる最大限のことをしようと、患者さんたちがより楽しく入院生活を送れるような企画を考えることにしました。その結果最終的に採用したのが、生き物や食べ物、乗り物や数字などを扱った図鑑の作成と、スマートフォンを使って勉強できるアプリを紹介するポスターの作成でした。前者は、子どもたちが新しい学びを得るきっかけにして欲しいという思いと、スマートフォンのように一人で完結してしまう遊び方でなく、本を通して子どもたちがご家族やお友達と少しでも多くの時間を共有して欲しいという思いのもとで考えつきました。後者は勉強したいと話す子どもやご家族が多かったことをきっかけに、想像以上にスマートフォンが普及していた事実に加え、カンボジア政府がコロナ禍の影響を受けオンライン教育の導入を急速に進めていることに目をつけて考案したものでした。

それぞれの作成に思いのほか時間がかかったものの、患者さんに見てもらえるかもしれないと思うと、その時間もとても充実したものに感じました。いざ完成させてみると、果たして喜んでもらえるのか、すぐ飽きられてしまうのではないだろうか、そんな不安が込み上げてきましたが、スタッフの方の協力のもと無事絵本を本棚に置いてもらい、ポスターを患者さんに紹介してもらえることになりました。

次の日、制作物が気になる気持ちを隠してパソコンと向き合っていると、遠くから子どもたちの元気な声が聞こえてきました。様子を見てみると、図鑑の写真を指さしながら看護師の方に日本語を尋ね、大きな声で復唱していたのです。また看護師さんからは、早速動画で勉強している子がいるとのご報告も受けました。このとき感じた高揚感は、今でも決して忘れることができません。自分にできることなど、ドクターやナースの方に比べればほんの些細なことに過ぎません。しかし自分にもきっとできることがある、そう実感したかけがえのない経験になりました。

できないと諦めず、できることを追求する。これはきっとこれからも、様々な場面で自分を助けてくれるヒントになるはずです。スタッフの方や患者さんのお陰で得られたこの学びを、これからも大切にしていきたいです。

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