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第6話 ホーチミンでの創業 ココロの葛藤編

〜第6話 ホーチミンでの創業 ココロの葛藤編〜

来る日も来る日も求人案件獲得に走る日々。
文字通りバイクで営業をかけるために駆けずり回っていた。事業は、戦略を描き、日々の事業数値を洗い出し、課題点を発見し、PDCAを回す。しかしこんな定石通りになんて出来ていなかった。オーナー経営者によくある話だが、数字を細かく出すよりも1件でも案件獲得、成約につながる営業活動を優先するため時間もお金も避けない。事業を進める上で、レビューや問題点を指摘してくれる上司も投資家もいない。自分のやっていることが正しいのか間違っているかもわからない。

とにかく走った。
当時はメンバーのマネジメントも全くしていなかったと思う。
1on1なんてしたことない。
恥ずかしい話だが、昇給や賞与も出来る限り抑えた。
ジョブ・ディスクリプションも評価基準もない。
えんぴつなめなめだ。
不満が上がってくる度に何故と思い悩み。
退職される度にひどく落ち込んでいた。

人材ビジネスそのものを全く理解していなかった為、うまくメンバーへやり方を伝えられなかった。それに、当時はベトナム人メンバーと共にディスカッションしてよい方法を探すみたいな事さえ出来ていなかった。

事業の立ち上げ期は、高揚感があり興奮した毎日が続く。
しかし、日々が日常になるにつれ、ひどく孤独を感じるようになっていった。忙しいのにココロが満たされない日々を過ごしていた。今では恵まれている起業家や様々な世界で活躍する友人が全くいなかったのも辛かった一つの原因だ。異常な節約生活のため気晴らしに飲みに行くことも出来ない。それぞれで志を持ち挑戦する仲間が横にいるというだけで刺激になりまた勉強にもなる。そんな環境はなかった。
一方、孤独で我慢が多い生活もどこかで楽しんでいる自分もいた。
それは自分の中に事業に対して大きく2つの矛盾した思いをもっていたからである。

一つ 社会に対してのインパクトを最大化させる!

一つ 正直事業は実験だ。

当時現金として持っていたキャッシュは、約300万円。2008年当時は、毎年インフレするベトナムにおいては現在よりキャッシュの価値が高かった。日本での300万円よりもベトナムのほうが有効に使える。
生活費だって安い。

事業の失敗というのは継続不可能になった時を意味する。
継続さえしていれば失敗ではない。
全ては過程であり結果ではない。
投資家のいない自分にリビングデッドは存在しない。
自分のライフワークとして事業に挑戦している為、継続し続けさえできれば失敗ではない。
たった300万円の話だ。失ったとして大した話ではない。
仮に、失ったとしても新車を買って保険に入らずにぶつけてしまったと思えば良い。
少なくとも新車を廃車にするより、1人でいきなりベトナムに行って挑戦した結果の失敗のほうが何倍も面白い。その上、その経験は資産となり、それを活用したい人や組織は間違いなく出てくる。
つまり、何の損もしないのだ。

最悪は、事業継続が失敗してしまい最初の300万円を失ってしまう事。
最高は、価値ある事業を創出し自分も社会も豊かになる事。

めちゃくちゃローリスク・ハイリターンじゃないかと。

そもそも人生の目的とは成功するためでもお金持ちになる為でもない。
人生の目的は、「経験」そのものにあると感じている。
挑戦する過程で生まれる経験を得て、死んでいくのではないだろうか?
自分が信じた未来、夢を仲間と挑戦し、泣いたり笑ったりしながら前に進む。
蛮勇で何でもかんでも玉砕すればよいわけではない。
我慢も機を見ることも重要だ。そこで発生する悩み・苦しみが発生することも避けられない。
その悩みや苦しむ葛藤は同じぐらい喜びや笑いのための、自分が選んだ人生のそのもの=経験だと思い出せば良い。

創業期の苦しみを経たことで大事な事に気づけた。

葛藤を繰り返しながら創業一年目の終わり頃にはある程度のまとまったキャッシュを生み出せるようになっていたのだった。

(第7話へ続くhttps://www.wantedly.com/companies/iconic/post_articles/277725

※カバー写真 2019年
社員旅行でマレーシア・クアラルンプールオフィスを訪問の時のもの

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第2話:https://www.wantedly.com/companies/iconic/post_articles/180256
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