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常に変化球を提案したい。「泊まれる演劇」発起人を生んだプロジェクト推進力の源泉

HOTEL SHE, などのホテル・旅館を全国で5施設運営するL&G GLOBAL BUISINESS, Inc.には、多様な経歴を持つ30人超の社員が集まっている。バックグラウンドも価値観も異なるL&Gのメンバーはどのような人生を送り、いま何を思ってここで働いているのか。

今回紹介するのは、「泊まれる演劇」やコンサルティング案件といった、社内外を巻き込む大型プロジェクトやソーシャルマーケティングの進行能力に目を見張るものがある、花岡 直弥。「意志は無いタイプですよ」と控えめに笑う花岡の、優れた企画力と推進力が育まれたパワフルな人生について話を聞いた。

暗黒の中高時代から晴れて東京へ

ーー花岡さんはものすごく、個の力に溢れていますよね。社会人になるまではどんな学生だったんですか?

僕は奈良の橿原(かしはら)市という田舎の出身です。中高を大阪にある男子校、清風(せいふう)学園に通っていました。2,000人のマンモス校だったんですけど、エッサッサという体育祭の強烈な出し物が有名で、周りに女子校がなかったということもあって、ウォーターボーイズのようなきらきらな日々を送ることはできませんでしたね(笑)。

ーー暗黒の中高時代。勉強面はどうでしたか?

実家が歯科医の家系で、親にも勉強を教えられていました。中高でも基本的には勉強しかしていなくて、周りは有名国立大を目指すような環境。そんな僕の当時の目標は、実家のある奈良から離れることでした。だから尾崎豊的な発想で(笑)、東京に行きたかった。ギリギリの合格ラインで、慶應義塾大学・湘南藤沢キャンパス(SFC)に進学しました。

ーー大学から晴れて東京へ。SFCで過ごした手応えは。

SFCは学生一人ひとりの授業カリキュラムの自由度が高く、僕は建築やデザインの授業を好んでとっていました。どの授業もとても面白かったです。学園祭の実行委員を掛け持ち参加したり、年中、なにかを企画したり作ったりして楽しく過ごしていましたね。

双子の妹の「すごいね」がキャリアの原点に

ーー就職活動の準備をするにあたり、当時、どんなふうに自分を分析していましたか?

僕はテレビゲームに全く熱中できない子供で、友人がみんなでワイワイ遊んでいても自分は興味を持てなかったんです。既にある遊び道具をただ受け取るのは好きじゃなかったんだと思います。テレビゲームよりも、双子の妹に自分が作ったレゴを見せてあげて「すごいね」と嬉しそうに言われる方が嬉しくて。この妹の言葉が僕のキャリアの原点になったのかなと感じています。思えばお手製のカードゲームを友達に配ったり、中高大は学園祭に積極的に関わったりと、自分で考えたアイデアを形にして周りの人に驚いたり喜んでもらうことが好きでした。

ーー自分の手で作り、形にすることが好きだったんですね。そして新卒入社は博報堂グループへ。

ゼロから「作る」ことを仕事にしたいなと学生時代からぼんやりと思っていたので、広告業界や制作会社を中心に就活し、博報堂アイ・スタジオに入社しました。博報堂から渡されるデジタルに関わるプランニングを担う仕事で、自分の得意を生かせる仕事に就けたので割とご機嫌にやっていましたね(笑)。僕はウェブとアプリ領域のソリューション事業が中心で、丸4年ほど務めました。

ーー前職で大変だったことはありますか?

業務量が多いのは大変でした。ウェブなら階層が深いとか、アプリならOSによって変数が多い。専門的な知識に加えて、お客さんとの調整も発生する毎日です。こちらとしてはベストなプランで提案しますが、大企業のクライアントさんは社内にステークホルダーが多いので、あえて社内稟義のために不正解を用意する必要があったりもしました。そうすると最終的に行き着くのはオーソドックスなもの、事例があるもの。やりきれない思いは心のどこかでありました。

代理店から事業会社のL&Gにジョイン

ーー転職を検討しはじめたきっかけは?

前職在籍時、徐々に代理店ではなく自社でサービスを作っている事業会社に行きたいという気持ちが強くなっていきました。ウェブ以外の領域にも選択肢を広げたいという思いがあって、リアルな空間の提案などイベントを含めたいろんなことを企画して自分で実行まで手がけられる、事業会社にキャリアを拡張してみたいと考え始めました。

ーーどうしてL&Gに入社を決めたのでしょうか?

元々、「BOY MEETS SHE, 京都夜遊」で夜遊びパジャマを購入したことをきっかけにL&Gのことは知っていて、(龍崎)翔子さんのTwitterもフォローしていました。さらに言うと、転職を検討していた頃に「平成ラストサマー」やHOTEL SHE, KYOTOのリニューアル、「OSAKA BAY DIARY」など既存のホテルのイメージにとらわれない沢山のプロジェクトを発信していて、めちゃくちゃ勢いを感じていましたね。そういったポジティブなイメージがあって、「とにかくかっこいいものが作りたい」という気持ちで2019年6月に入社しました。

ーー入社直後の印象はいかがでしたか?

入社して2ヶ月半ほどはフロント業務に集中しましたね。率直に言って、僕には適性が無いなと打ちのめされました・・・(笑)。HOTEL SHE, KYOTOのスタッフの皆さんに怒られながらフロント業務を一通り覚えてからは「自分がさらに貢献できることを」と考えて、CHILLNNの立ち上げやコーポレートサイトの改修に担当者として手を挙げ、徐々にフロント業務以外の仕事も増やしていきました。

「泊まれる演劇」は宿泊体験の変化球

ーー入社から10ヶ月。現在は「泊まれる演劇」を爆速推進中。立ち上げの経緯を教えていただけますか?

各ホテルの売上向上施策としてみんなでアイデアを持ち寄る定例ミーティングの中で、HOTEL SHE, KYOTOを土台に発案したのがきっかけです。すでに京都でたくさんの他社さんのホテルが営業する中で、「新しい宿泊体験を提供する変化球が必要だ」と以前より考えを巡らせていました。数室の客室を使った企画はこれまでも走っていましたが、建物全体を扱う企画は会社としてやったことがなかった。HOTEL SHE, KYOTOの強みは、程よい大きさと、運営と所有が一緒という点。建物全体を活用することで、面白い企画が作れると思ったんです。

ーー「泊まれる演劇」という発想はどうやって描いていったのでしょうか?

建物全体を使うという切り口で、最初は謎解きのようなアイデアを考えていました。だけど、ニューヨーク発のSLEEP NO MORE(スリープ・ノー・モア)を以前から知っていて、これを再解釈したらもっと面白くなるのではないかと方向転換。「泊まれる演劇」をやろうと決めたとき、演劇のことは正直あまり知らない状態でした。

ーー決めてから形にされるまでのスピードは目を見張るものでした。

見切り発車で(笑)、「泊まれる演劇」の構想をnoteで公開したんです。このとき、実は何も決まっていませんでした。焦って先走ってしまいましたが、結果、多方面から「一緒にやろう」と協力の連絡をいただく形になり、一気に動き出しました。その後、チケットはすぐに売り切れるなど大変反響をいただきとてもありがたく感じています。

ーー反響をいただいた要因は?

時代に合っているコンテンツなのかなと思います。僕はもはや寺を見ても感動しません。インスタで見られるし新鮮味がない、既視感があると感じます。旅行に求められるのは、新鮮味や非日常です。「泊まれる演劇」のように、旅行に体験型のコンテンツを掛け合わせることで、世の中の人が深層心理で求めているエンタメ欲にアプローチできるのではないかと考えています。

まもなく「泊まれる演劇」特別公演を開演

ーー6月に予定していた初公演は新型ウイルスの影響で延期に。

6月公演を楽しみにしていただいていた皆様へ。会期は後ろ倒しになりますがチケットは有効のままなので、再開を待っていてください。僕はへこたれないです。

ーー新たに、5月にオンライン上での特別公演の開催が控えていますね。

コロナをきっかけに、家から出てはいけない時代のエンタメコンテンツの在り方をめちゃくちゃ考えました。そして見えてきたのが、今まで「泊まれる演劇」にはリアルな場が絶対に必要だと思っていましたが、場の共有というよりも、「物語の中に入り込むこと」自体が面白いのではないかということ。舞台がホテルではなく、スマホやPCの画面でも良い。物語に入り込める演出さえきちんと用意できれば、ホテルであるべきだった場所の用意は、お客さんの自宅でも良いんだと考えが変わっていきました。指をくわえて終息を待つことは絶対にしたくない。ウィズコロナ時代に求められるコンテンツとして、まもなく「泊まれる演劇 In Your Room」を開催します。6月の公演準備を進めていたおかげで、周りにはたくさんの仲間がいるから、良いものができると確信しています。

これからも全力投球で「自分が体験してみたいこと」を形に

ーー研ぎ澄まされた熱意に感化されるばかりです・・・。花岡さんはこれからどうなっていくのでしょうか?

20代のうちは、いま目の前で携わっていることに全力投下したいです。「自分が体験してみたいこと」を前提に、海外にはあるけれど日本にはないとか、自分の身の周りにはないとか、あったら楽しいな、世の中に受け入れられたら良いなと感じることを形にしていきたいですね。Netflixを見ているより仕事をしている方が楽しいので(笑)。「HOTEL KUMOI」を舞台にしたサウナストリート、倉敷にある「やま幸」のコンサルティングなど、「泊まれる演劇」以外に進行中の案件もたくさんありますので、リリースを楽しみにしていただけたら嬉しいです。

——意志の強さを感じますね。

全然逆で、僕は、意志が無い人間なんです。ミーハーだし、某大物ミュージシャンが大好きだったりと、周りの友人たちみたいに趣味や嗜好にニッチなこだわりが持てないタイプ。こだわりは空っぽって言ってもいいくらいです。でも、そんなところがコンプレックスでもあって、仕事を通して自分なりに意志を積み上げている最中なんだと思います。

花岡 直弥(はなおか・なおや)
1993年生まれ、奈良出身。大学入学を機に東京へ。卒業後は博報堂アイ・スタジオを経て、2019年6月よりL&G入社。HOTEL SHE, KYOTOでのフロント業務を経験後、現在は「泊まれる演劇」プロジェクトなどを執り仕切るPM/プランナー。

(文:井上菜里子 写真:延原優樹)

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