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Gunosyに残した研究ができる研究開発チーム

はじめに

こんにちは、Gunosy Tech Lab 研究開発チームでマネージャーを務めていた関 喜史です。

Gunosyの共同創業者でもあります。 最近のVTuberにハマり始めていきます。推しは星街すいせいですが、最近は毎日にじさんじ甲子園を追いかけています。

この度2021年8月末日でGunosyを退職して、新たなチャレンジをしていくことになりました。

この記事では、私が退職するにあたり、Gunosyでやってきたことを特に研究開発チーム作りを中心に紹介し、今回会社を離れることになった経緯や、今後の研究開発組織の展望にを述べます。

Gunosyでやってきたこと

まずは私のGunosyでやってきたことを簡単に紹介したいと思います。 創業当初は以下のように推薦システムとデータ分析を中心に仕事をしていました。

そんななか、2015年4月のマザーズ上場のタイミングで博士課程に復帰しました。

実は、2013年に修士課程を修了したあとに博士課程へ進学はしていました。

進学を決めた理由はセーフティネットという側面が大きかったのです。 復帰には特に強い理由があったわけではないのですが、事業が一つの節目を迎えたこともあり、取れるものは取っておこうという気持ちだったと思います。 いろいろ大変なことはありましたが、無事2017年3月に博士号を取得することができました。

このときの経験が社会人博士支援制度を作るきっかけとなっています。

博士号を取得したあと、次にやったことは研究開発チームの立ち上げでした。

立ち上げの経緯ややってきたことは以下の2件のブログ、そして人工知能学会誌に寄稿した記事のなかで詳しくお話させていただいておりますので、そちらをご覧いただければと思います。

https://data.gunosy.io/entry/research-development-2019

https://data.gunosy.io/entry/research-development-2020

学生時代、研究という世界に足を踏み入れた私が心惹かれたのは、GoogleやFacebookを始めとしたWebサービス企業が行っていた実務に近い問題に取り組んでいる学術論文でした。

会社を立ち上げた当初から論文を発表できるような会社にしていきたいという思いは強くありました。

よく知られているタスクの性能を競い合うのではなく、どの問題を解くべきかを強く主張し新しく提案するこうした論文は当時の私にとってすごく魅力的に映りました。

そしてこうした研究をおこなっている日本の企業は当時少なく、このような面白い研究をして論文を書けるチームを目指していきたいと思っていました。

今だから話せることですが、私は立ち上げた当時から研究開発チームを作ることをGunosyでの最後の仕事にしようと考えていました。

当時、会社を創業したという以外で、会社や社会になにかを残したい、残さなければならないと考えていました。

その中で論文を書いて世に出すようなチームを作り事業に貢献するということは、自分にしかできないことで必要なことなのではないかと考え、どのように事業に役に立つのかというイメージは当時の自分は強く持っていたわけではありませんでした。

当時の私は、FacebookやGoogleのように論文を出しているウェブサービス企業は継続的に成長を続けている、だから論文を出せるような研究をする組織があることは良い影響があるはずだとある意味で盲目的に考えていました。

研究開発チームは事業に対してどう活きているか

ここで論文の書ける研究開発チームがどのように事業に活きているのかを、自分の約3年間の経験を踏まえて簡単に述べます。

こちらの内容は人工知能学会の論文誌に寄稿した原稿でより詳しく述べていますので、興味のある方はそちらを是非読んでみてください。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsai/36/2/36_151/_article/-char/ja/

私が研究開発の効用と考えている点は以下の3つです。

  • 採用における技術ブランディング
  • 事業の中長期技術課題へのチャレンジ
  • 先端技術へのハードルを下げる

採用におけるブランディングは、最も短期的に成果が確認できる点です。

ソフトウェアエンジニア、特に機械学習領域に関わるエンジニアの採用は現代の事業環境において非常に重要ですが、同時に難しい課題となっています。

採用において待遇や業務内容はもちろん重要ですが、その条件は候補者に伝わらなくてはいけません。

その前に重要なことは採用候補者となるような優秀なプレイヤーに有力な候補として認識してもらうことです。

研究に取り組んで論文を出していることは、自社の技術に対する姿勢、メンバーの能力、チームの環境を目に見える成果として発信できる機会だと思います。

中長期的な課題に研究開発として取り組むことは、現代の科学的になっている事業環境において重要性を増していると考えています。

企業活動の意思決定においては効果とコストの2点が重要な要素になります。

この2点を考慮することで効率的に意思決定ができますが、難易度の高い課題に対しては効果とコストの見積もり自体が難しく,後回しにされやすいと感じています。

こうした難易度が高く、効果やコストは見積もりづらいが会社としては中長期的に価値が高い課題を論文化前提とした研究として取り組むことで、チャレンジしやすくなると考えています。

実際に2017年の研究開発チーム立ち上げ当初から釣り記事対策に取り組んでいましたが、ここ1年事業として決算資料等でも出ている通りメディア健全化に取り組みを進めており、こうした中長期のチャレンジが多少なりとも事業に寄与しつつあると実感しています。

論文を書くチームがあることは、事業の意思決定における高度な技術を採用する際のハードルを下げることにも繋がります。

意思決定で効果とコストの見積もりが重要であることは既に述べましたが、高度な技術的解決策を採用する際はコストの見積もりが非常に難しくなります。

コストを測ることは経験によって解消が期待でき、その経験を研究開発組織の取り組みが担うことができると考えています。

研究開発の取り組みを共有することによって,エンジニアチームが取り組める技術領域が増え,社内の施策にこうした技術を取り入れる土壌ができます。

これからやっていきたいこと

このように約3年間の取り組みで研究チームを立ち上げ、研究成果を出しながら、事業組織における研究開発組織のあり方を模索してきました。

その中で短期的には研究開発組織が不要とはならないような、ある程度の立ち位置を示すことができたと考えています。

こうした中で研究開発組織のあり方などについて他の会社の方と議論する機会も増え、いまの自分のやり方や考えが、Gunosy以外で通じるものなのかということが気になってきました。

こうした組織ができたことは、Gunosyという会社だったから、そして自分が共同創業者というある程度社内外に発言力のある立場だったからであったという要因は無視できない程度にあると思います。

一方で研究開発の重要性や、その価値の作り方、示し方に一定の共通要素や再現性もあるのではないかと考えており、それを試してみたいと思うようになりました。

これからは事業とともに歩む研究組織を作るということを、自分のスキルセットの中心におけるようなキャリアを模索していきます。

研究をすることやデータ分析や機械学習を応用することは今でも大好きなのですが、スキルとしては今の若い人たちのほうが圧倒的に高く、これからますますそうなっていくでしょう。

ソフトウェアエンジニアの領域においてはプレイヤーとしてのキャリアと、組織づくりやマネジメントのキャリアがCTOとVPoEという形で分かれてきていますが、これは研究者においても同じようなことがあるのではないかと思っています。

僕の恩師である松尾教授は現在ソフトバンクの社外取締役になっています。

こういったことはもっと当たり前にあるようになってほしいと思っていて、研究者が研究をすること以外でも価値を発揮することは重要になってくると思いますし、多くのロールモデルが必要になってくると考えています。

これからのGunosy研究開発チーム

私はGunosyを8月末で退職しますが、引き続き顧問としてGunosyの研究の取り組みを支援していきます。

研究の打ち合わせをするだけなく、論文は引き続き書いていきますし、社内の論文輪読会にも継続して出ていく予定です。

Gunosyの研究のできる組織を続けていけるように最大限の支援をしていきます。

現在のメンバーである飯塚さんとは約2年間一緒に研究をしてきました。

当社の社会人博士支援制度の第一号事例であり、現在筑波大学大学院の博士課程にも在籍しながら研究に取り組んでいます。

特にインターリビングと呼ばれる検索・推薦アルゴリズムの成果を効率的に評価する枠組みの研究で素晴らしい成果をあげている研究者です。

もともとウェブサービスのソフトウェアエンジニアとしてキャリアをスタートしていることもあり、サービスへの造詣も深く、事業と研究テーマをどう合わせていくかということをいつも考えて一緒に議論してきました。

信頼して後を任せていけると思っています。

他の若い機械学習チームのメンバーも非常に優秀なメンバーが多く、彼らやこれから入ってくるメンバーが研究に短期的でもチャレンジしたいと思ったときに応援できるような体制はあり続けてくれると思っています。

おわりに

非常に長くなってしましたが、退職にあたり、自分の10年間の総括ができて非常に良い機会となりました。 最後に個人的なメッセージを記します。

今の自分があるのは誘ってくれた創業者の2人、起業の後押しをしてくれた現会長の木村さんを始めとして、Gunosyという組織で共に働いてきたすべての皆様のおかげです。

Gunosyという会社が生み出してきた偉大な成果に対して、私がやってきたことはとても小さく、それを共同創業者という立場で評価されてしまうことに恥ずかしい、辛いという気持ちになっていた時期もありました。

研究組織というどう事業に関わっていくのかわからない組織を作りはじめて、なにをやっているんだと思われていた方もいらっしゃるかもしれませんが、それも含めて多くのサポートや応援をしてくれたメンバーに強く感謝しています。

この組織ができたことで、少しでもそれに報いることができていれば幸いです。

これからのGunosyをますます楽しみにしていますし、私もそれに負けないように頑張っていきますので、引き続きよろしくお願いします。

PHOTO:Shibuya Scramble Square/WeWork

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