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「会社で協力者を増やすための“バックパック理論”とは?」

仕事を進めるとき、積極的あるいは自発的な
協力者がいると格段に質が向上し、成果にも
いい影響をあたえることは、
多くの人が経験していることでしょう。
では、人はどうしたら“よき協力者”
となってくれるのでしょうか?
当社の通販・カスタマーサービスを統括する
熊澤さんに、協力者を増やすためのコツを
聞きました。
「シンプルだけど難しい」、そのコツとは?

信頼を得るためには“正しさ”よりも重要なポイントがある

-仕事はさまざまな人とのかかわりで成り立つもので、
成果もそれに影響されることが多いと思っています。
ふだん会社のいろいろな人と楽しそうに
仕事をしているように見えるのですが、
人とのかかわりについて、熊澤さんが
日頃大切にされていることを聞かせてください。

(熊澤)
はい、一言でいえば「情けは人のためならず」という
言葉のとおりなんですけど…。

-なるほど、詳しく言うとどういうことでしょうか?

(熊澤)
人に情けをかけると自分にかえってくる、
結局は自分のためですよってことですよね。
それを行動にうつすために、自分の中で
「バックパック理論」と呼んで
実践していることがありまして。

-「バックパック理論」ですか?
調べても出てきませんね(笑)

(熊澤)
自分用語なんで(笑)
ええとですね、たとえば人から相談を受けたとき、
あるいは、何か課題について人と話しているとき、
「その人の荷物を持つ」ことを強く
イメージする場合があります。

-荷物を持つ、ですか?

(熊澤)
ええ、僕は山に登るんですが、
一緒に登る人が、荷物が重くて苦しくなったとき
すこし持ってあげることがある。
もちろんその逆もあります。
山ではよくあることなんですが、
それと同じことを仕事でも意識的に
実践するケースがある。
僕はそれを「バックパック理論」と
名づけています(笑)

-では、この続きを読んでくださる皆さんには
山登りをイメージして読み進めていただくと
イメージしやすいかもしれませんね(笑)

ちなみに山登りの場合だと、荷物の重さが
何キロだとか具体的でわかりやすいですが、
仕事を荷物に置き換えると量だけでは
見極められない部分もあり、難しそうですね。

(熊澤)
そうですね。
量だけでははかれないものもありますから。
ただこの理論で大事なことは
実際に荷物を持ったかどうかです。

人が人に対して信頼を持つのは、
言葉よりも行動の影響が大きいですよね。
自分が困っているときに、
口だけでアドバイスされるのと、
実際に動いてくれるのとでは、
内容にかかわらず現実を変える効果に雲泥の差がある。
正しさとか量とかよりも、実際に動くか動かないかが
ポイントで、その実際に動く行為を
荷物を持つイメージでとらえているのが
「バックパック理論」です。

-なるほど。

(熊澤)
最近あったことですが、
僕が仕事のある領域について、
社内の方に相談したんです。
資料まで準備していただいて、
有益なアドバイスをくださった上に、
後日、その方がわざわざ「これを読むといいよ」って、
そのテーマについての本を3冊
持ってきてくださったんですね。
相談した僕のために、
その方の蔵書からそのテーマについての本を探し、
3冊も会社に持ってきてくださった。

僕のために、自分の大切な時間を使い、
行動してくれた。
バックパック理論的にいうと、その方は僕の荷物を
実際に持ってくれたわけです。
その本を手渡されたとき、
「えっ、僕のためにわざわざ…」っていう
気持ちになりますよね。
そして、次にわいてくる感情は、
この恩に報いたい、という気持ちです。

-確かにそれは自然な気持ちのながれですね。
ただ「荷物を持ってもらった」ということに
気づく心のゆとりというか、
その“気づき”はとても重要な気がします。

(熊澤)
たしかに。ただ、「返報性の原理」ってありますよね。
人は人に何かをプレゼントされると
お返ししたくなる心理的特徴です。

マーケティングや、それこそプロパガンダにも
用いられる原理ですが(笑)、それが単純に発生した
ともいえる気がします。
なので、バックパック理論って、
KREVAの「Revolution」の歌詞じゃないですけど、
人から認めてもらうには先に
こちらから認めることが必要ですよ、

人に協力してもらうには先にこちらから
協力しましょうねっていう
すごくシンプルな話なのですが、
ただし、じつは簡単ではないところがミソで、
僕が最近知ったお気に入りの表現でいうと
「シンプルだけど難しい」ってやつです。

-その難しさとは?

(熊澤)
そもそも“荷物を持つ”ってことが意外とできない。
定義づけると「他人のために自分の時間を使って
自分で何かをする」ってことですが、
人は短期的な感情か利益で動くことが一般的なので、

その行為のけっこう先で得られるいい感情や利益、
そういったある種の“報酬”が見えないと、
動けないケースが多いです。なので、
報酬が後でちゃんと返ってくることを
経験として知る必要があります。

ただし、あくまで“結果として”報酬が
返ってくるのであって、
報酬が返ってくることを目的としたり
期待したりすると一気に行為がねじ曲がり、
上手くいきません。そういう意味で、
荷物を持つことの“純粋性”が重要だったりします。

-感覚としてもわかりますね。

(熊澤)
そうですね。あと、言うだけってパターン。
言うだけってすごく簡単なので、安易にできるし、
言っただけで、何かした気分になっちゃうことが
あるんですよね。

荷物の持ち方について無責任に
意見を言っているだけで、
実際に荷物を持ってはいない。
さらには、アドバイスが優越性の
誇示にまでなっちゃうと、
相談している人が不快になるケースもあります。
「そんなこと言われる前からわかってるよ」って。

-なるほど。

(熊澤)
そして、実際に荷物を持ったとしても、
落とし穴があります。

-落とし穴ですか?


バックパック理論の落とし穴

(熊澤)
まず、継続して荷物を持つ場合の落とし穴。
自分の荷物を持ってもらう人の立場で考えると、
人によっては
「この人はいつも自分の荷物を持ってくれる人」と
認識して、荷物を持ってもらうことを
当たり前に感じたり、だんだん何も感じなくなったり、
ときには荷物の持たれ方に腹が立ったりなど、
依存心を誘発してしまう可能性がある。

-ああ~…。

(熊澤)
依存心が進むと、より自分で荷物を持たずに、
機嫌で依存の対象となる人を動かそうとして、
思いどおりにならないと、
依存の対象になる人に対して
敵意まで抱くようになる。

心理学者の加藤諦三氏の言う「依存的敵意」ですね。
つまり、荷物を持ち方によっては、
荷物を持っているのに感謝されるどころか、
敵意すら抱かれちゃう。むずかしいですよね。

-そういう意味でいうと、
どうしても荷物を持ってしまうという性格の人も
いると思うのですが、
そういう人はどうしたらよいのでしょうか。

(熊澤)
自分が持てない大きさの荷物は
持たないことだと思います。
人はそもそも自分の荷物をつねに持っているので、
バックパックの余裕や気力体力の余裕がないと、
他人の荷物は持てないんです。
理想的には自分の荷物を人に持ってもらわずに
自分だけでしっかり持つことができれば
大合格なんですが、社会で生きていく上では、
誰かに自分の荷物を持ってもらっています。
僕も自覚がないことがほとんどですが、
社会的インフラや所属のコミュニティをふくめて、
人はみな持ちつ持たれつで生きていますよね。

-そうですね。

(熊澤)
自分に余裕がある状態で人の荷物を持たないと、
つぶれてしまう。
あと、最初は純粋に見返りのない気持ちで
荷物を持っても、
感謝などがまったくない状態が続くと、
純粋に荷物を持つ気持ちは継続しない。
この世は等価交換なので、
あまりにも何も返ってこないと、
人はけっこう早い段階で、
純粋な気持ちが消えると思います(笑)。
人って
「助けられた人ではなく、助けた人を好きになる」
という心理的特徴があるらしく、
実感としてもそうかなって思うのですが、
好意が発生しても、けっきょく無理して持つと、
意地をはることになったり、
自己犠牲的な気持ちになったりして、
今度は荷物を持っている側が敵意を抱いたりしちゃう(笑)。
わざわざ自分から荷物を持ちに行っているのに...

-自分がどれだけの荷物が持てるのかはいったん
持ちすぎないとわからないですから、そういう経験って
荷物を持とうとする人には必ずあると思います。

(熊澤)
誰でもあると思うんですよね。
持つべきじゃない荷物を持って
大きなお世話だったり、
人の荷物を持ってる場合じゃなくて
自分の荷物を持つべきだったり、
過度に荷物を持ちすぎて
人の成長機会を奪ってしまったり。
僕なんていまだに失敗だらけです。
その上で、最大の落とし穴があって。

失敗してやめてしまったら報酬を失う

-最大の落とし穴?

(熊澤)
最大の落とし穴は、失敗をして、
荷物を持つのをやめちゃうこと。
失敗を恐れて、荷物を持たない人になっちゃう。
適切に荷物を持てば報酬がある。

本当に、予想もしなかったような
大きな報酬があるんですよ。
適切に荷物を持っていないから報酬ではなく
コストになるわけです。
なにかを習得するために、
失敗は必要なプロセスですよね。
失敗をして、次に失敗をしないようにやり方を修正して、
スキルが上がっていく。
転ばずに自転車に乗れるようになる人はいないですよね。
転んだからといって自転車に乗る練習を
やめちゃうようなものです。

-ちなみに、バックパックの容量を増やすというか、
上手に荷物を持つために
必要なのはどんなことでしょうか。

(熊澤)
場数です。
これは場数しかないと思います。
量から質へ、ですね。
そのうちに容量だけでなく、
荷物を持つコツのようなものもつかめます。

たとえば年を重ねると、量はそんなに持てなくなるけど、
「それそれ、その荷物持って欲しかったんです…!」
みたいな、

持つ荷物を絶妙に選ぶコツまで習得できる気がします(笑)
つねに荷物を持つ人でありつづけることですね。
やめたら終わり。

適切に荷物を持てれば、ちゃんと人間関係に
恵まれるので、バックパック理論、
おすすめです(笑)

-熊澤さんのバックパック理論、よくわかりました。
ただ私が次に気になるのは荷物の中身です。
場数によって、きっと荷物の中身も変わってくる。
仕事だとそれは“質”ということになってくると
思うのですが、そのあたりもぜひ聞かせて欲しと思います。

(熊澤)
わかりました。そのあたりについては
次にお話しできればと思います。

-ありがとうございました。

(熊澤)
ありがとうございました。

(文責)山道昌幸

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