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“食”に関わる全てのユーザーから、もっと必要とされるサービスになるために。「DELISH KITCHEN」が挑むOMO事業の展望とは?

※この記事は、株式会社エブリーのオウンドメディア「every.thing」にて2019年7月15日に更新されたものです。(https://everything.every.tv/20190712/

執行役員 DELISH KITCHENカンパニー OMO事業部長 鵜飼 勇人
2006年慶應義塾大学卒業後、トーマツ コンサルティング株式会社(現:デロイト トーマツ コンサルティング合同会社)に入社。
2008年1月よりアクセンチュア株式会社に入社、金融業界向けのマーケティング事業に従事。
2011年4月、グリー株式会社へ入社し、プラットフォームの事業戦略、グローバル展開を担う。
2013年4月よりリブセンスに入社、キャリア事業部長として転職サイトなどの運営を主導。
2017年7月、株式会社エブリーに入社、経営企画としてリテールソリューション事業の立ち上げに従事。2019年6月に執行役員、DELISH KITCHENカンパニーOMO事業部長に就任。

「DELISH KITCHEN」は、オンライン領域のみならずオフライン領域まで"食"に関わる全てのユーザーのサポートを強化するため、6月17日よりDELISH KITCHENカンパニー内に「OMO事業部」を設置いたしました。「OMO」とは何か、また「DELISH KITCHEN」が目指すサービスの全体像とはどのようなものなのか。同日に株式会社エブリーの執行役員 DELISH KITCHENカンパニー OMO事業部長に就任した、鵜飼勇人の想いをお届けします。


サービス開始から4年を迎えようとしている今、さらなる成長に向けた事業展開を

ーDELISH KITCHENカンパニーにはこれまで、メーカー向けのソリューション提供を行うマーケティングソリューションズ部と、小売店向けのソリューション提供を行うリテールソリューションズ部が独立して存在していました。その2つを統合して、今回「OMO事業部」が設置されましたが、その意図はなんでしょうか?

鵜飼:ユーザー、メーカー、流通・小売、主にこの3者に対して、それぞれが抱えている課題を解決し”よりよい未来”を実現させるのが目的です。「DELISH KITCHEN」を使っていただいている全ての方に対して、提供していく価値をもう一段高めていきたいと思っています。

エブリーが2015年9月の創業時から展開している「DELISH KITCHEN」は、今や1900万人のユーザーを抱え、レシピ数も25,000件を超えてきました。

もちろんアプリダウンロード数もSNSフォロワー数も引き続き伸びていますし、さらなるレシピの開発にも取り組んでいます。しかし、ユーザー、メーカー、流通・小売と「DELISH KITCHEN」をご活用いただいている皆さまに対して提供できるサービス内容は更に充実・最適化できる余地があると考えています。そこで、オンラインとオフラインの垣根を超えたサービス提供概念「OMO」のもとサービス展開することにより、さらなる事業拡大が可能と考え、今回の組織変更に至りました。


*1 株式会社ビービットの提唱する「アフターデジタル」参照
 (https://www.bebit.co.jp/about/book/article/afterdigital


鵜飼:そもそも『OMO』とは、「Online Merges (with) Offline」を略した言葉です。オンラインとオフラインを分けずに一体のものとして捉え、これをオンラインにおける戦い方や競争原理から再定義していく、といった意味合いを持っています。現実世界からオフラインという概念がなくなり、リアルの世界をもデジタルの世界が含有する。そんな状態を「アフターデジタル※」と呼んでいます。

例えば、「DELISH KITCHEN」を利用するユーザーの行動を過程ごとに追ってみます。「DELISH KITCHEN」を見て当日の献立を考え、スーパーに行って食材を買い、家に帰ってレシピ動画で工程を確認しながら調理をし、食事をする。そして満足度が高ければアプリでそのレシピをお気に入り登録し、次回以降の献立作りや買い物に活かす。大まかにこのようなシーンで分けられると思います。

これまでのサービス内容だと、各シーンごとにユーザーの悩みや意思決定をデータ化して統合的に管理し、次回以降に最適な選択肢をしてもらえるように提案することは難しい状況でした。「DELISH KITCHEN」ではそれを「食」という領域において一人のユーザーの形跡を全て辿っていき、各シーンでの最適な提案をしていくことで、ユーザーの食生活を更に豊かにし、結果としてメーカー、流通・小売にもより良い価値提供をしていきたいと考えています。


“食”にまつわる様々な課題を解決することで、「DELISH KITCHEN」の存在意義を更に高めたい

ーユーザー、メーカー、流通・小売、この3者が抱えている課題とは具体的にどのようなものなのでしょうか?

鵜飼:まず根本的なところとして、ユーザーが抱える”料理”に対しての課題からお話しします。「DELISH KITCHEN」は様々なユーザーにご利用いただいていますが、ターゲットとしてイメージしているのは、毎日どんな献立で料理を作ろうかレシピ選定に悩んでいる方々です。家族に「今日なに食べたい?」と聞いても「なんでもいい」と言われ、毎日自分で献立を考えなければいけない。これが続いていけば献立を考えることがどんどん面倒になってしまいますよね。

他にも、仕事や育児に忙しい合間を縫って簡単に美味しくご飯作りたい、でも得意なわけではないし本やテキストだけではやり方がよくわからない。結果失敗してしまって料理が楽しくなくなってしまった…という声や、特売情報を把握しておトクに買い物をしたいけど、その食材を使ってなにが美味しく作れるのかパッと思いつかない、という声など、料理に関する悩みは多く存在すると思います。事情はそれぞれですが、料理が楽しめなくなってしまう要因に1つ1つ寄り添い、取り除いていくようなサポートはもっと様々な角度から提供できるのではないかなと感じています。


ーたしかに、レシピを考えるのは面倒なことですよね。食べたいものがある時はいいですが、何を食べたいかわからない時も意外とあります。
では続いて、メーカーが抱えている課題とはどのようなものが挙げられますか?

鵜飼:メーカーは、より多くの方に商品を知ってもらい手に取ってもらうために、様々な販促活動を行っていますよね。テレビCMなどマスメディアに出稿し、ユーザーへの認知獲得を図り、購買につなげる方法は現在でも多くあります。一方でインターネット普及に伴って若年層を中心にテレビ・新聞離れが進む中でデジタルマーケティングの比重も高まってきています。

若年層リーチを念頭にSNSマーケティングも多様化する中で、「DELISH KITCHEN」もレシピ動画という新しい広告フォーマットを中心にメーカー商品の販促活動に貢献してきました。ただ、メーカーと商談する中で次なる課題として挙がるのは、販促施策が本当に購買につながったのか?という点です。以前から存在する課題ではあると思いますが、デジタルを中心に多種多様な広告媒体・手法が出現するなかで、投資対効果をよりシビアに精査したいというニーズが出てきているようです。


ー最後に、流通・小売が抱えている課題とはどのようなものが挙げられますか?

鵜飼:全国を回って様々な流通・小売の担当者の方とお話させていただくと、店舗展開エリアや企業規模に応じて課題は様々ですが、店舗集客の課題、店頭での売場作りにおける課題はどのチェーンでも話にでます。ソリューションは色々とありますが、自社に最適化するための知見がない上にそもそも人手不足が深刻である、などといった構造的に根深い状態にあると感じています。

チェーンの来店施策はそのほとんどがまだ新聞折込チラシです。若年層の新聞購読率が下がる中で、有効な次の手が打ち切れていないという思いを多くの担当者の方がお持ちです。複数のWebチラシソリューション・広告配信ソリューションが存在しますが、どこまで閲覧されているのか、どの程度来店につながっているのかが不透明な部分もあり、大きく投資を踏み込めないという点が課題のようです。

一方売場については差別化と効率化が大きなテーマになっていると捉えています。提案型の店舗にすることで、プラスもう一点の購買を進める施策や買い回り行動のデータ化、また将来を見据えると生鮮ECへの対応も課題の一つと考えている流通・小売が多いと感じています。

プロコンテンツを配信する“レシピ動画メディア”から、“食のプラットフォーム”へ

ー食を取り巻く様々な課題については理解しました。ではそこに対して「DELISH KITCHEN」は、どのようにアプローチしていくのでしょうか。

鵜飼:「DELISH KITCHEN」では現在25,000件以上のレシピ動画が閲覧可能となっており、季節やジャンルを問わず幅広い料理の調理手順を動画で確認することができます。

また、レシピは全て食のプロである栄養士・管理栄養士などの有資格者が開発・監修していて、安心してお届けできるクオリティの高いコンテンツです。月におよそ1,000本の新着レシピが更新されるので、アプリやSNSをいつ見ても新規性があり繰り返し見てもらえるような設計を心がけています。

そして「毎日献立を考えるのが面倒」というユーザーの悩みを解決するため、検索型ではなく提案型のレシピ動画メディアとして日々コンテンツ配信を行っています。アプリを立ち上げたらすぐにその日オススメのレシピが自動再生される仕様になっているので、何となくアプリを開いてもらうだけで、ユーザーに対してレシピ選定のサポートができるのではないかと考えています。


ーいつアクセスしても新着レシピが見られたり、更新頻度が高くなるとそれだけユーザーの方にも満足して使っていただけそうですね。

鵜飼:そうですね。ですが一方で、全国スーパーマーケット協会の調査(*2)によると、事前にレシピを決めて店舗に買い物に行く人は3-4割程度とされています。多くの買い物客が、店頭で「今日何を買ったらいいかな?」と考える中で、「DELISH KITCHEN」が店頭でもレシピ提案をすることで、より多くのユーザーから買い物に悩む負担を減らしていきたいと思っています。具体的には「DELISH KITCHEN」のアプリ利用時だけでなく、買い物時でも「DELISH KITCHEN」のコンテンツを活用できるサービス体系にすることで、「食」にまつわるあらゆるシーンでユーザーの悩みを解消していきたいと思っています。

*2
http://www.super.or.jp/wp-content/uploads/2015/02/supermarket-hakusho2015-3-0924.pdf


鵜飼:メーカーに対しては、販促活動におけるフルファネル*3を「DELISH KITCHEN」でサポートしていきたい、という想いでサービス提供・開発しています。料理関心度の高い消費者が多くいる「DELISH KITCHEN」では、食品メーカーのターゲットとなりやすい層に対してリーチできるだけでなく、広告色を過度に出さずに利用シーンを想起させやすいレシピ動画というフォーマットで、自然と興味・関心度を高められる構造を作り出しています。弊社独自の調査によると、レシピ動画を活用したタイアップ広告は91%と高い広告好感度を示しているのですが、それも前述のようなフォーマットによる部分が大きいように感じます。

また認知・理解度を向上させるのみならず、来店を後押しする施策としてクーポン機能をアプリ内に設置しました。買いたいなと思っていたものが、実際に店頭で安く買えるというお得情報をユーザーに渡してあげることで、購入につなげて行くという仕組みです。アプリ上のクーポン機能と売り場が連携することで、実際に商品を買うところに近づく「比較・検討」「購買」といったファネルのサポートも行い始めています。

*3 フルファネルマーケティングとは、ユーザーが商品を認知してから購買に至るまでの過程を「認知」「興味・関心」「理解」「比較・検討」「購入」とフェーズを分け、認知から購買までの全てを一気通貫で捉えて行うマーケティング活動のこと。


鵜飼:「DELISH KITCHEN」のアプリ内にあるクーポン機能の拡充をもとに、オンライン(アプリ、SNS)からオフライン(スーパーの売り場)への送客も可能となります。これまでは主に新聞折込チラシしかなかった小売店の販促ツールとして、「DELISH KITCHEN」をご活用いただけるとも思っています。


鵜飼:そして、2018年10月からは大手スーパー「ライフ」を展開するライフコーポレーションとの提携を開始するなど、流通・小売向けのソリューション提供にも力を入れてきました。「DELISH KITCHEN」アプリを使った店舗集客施策や、25,000件以上のレシピ動画コンテンツを売り場に合わせて自由に配信できる店頭デジタルサイネージによる売り場販促支援など、課題に合わせて様々なサービスを提供しています。他にも複数の取り組みに着手し、常に新しいサービスを開発・リリースしています。

店頭デジタルサイネージへのメーカー商品の広告出稿メニューも充実してきており、直近ではサイネージ上でのタイアップレシピ動画の配信、レシピカードデータの店舗へのご提供などを実現することで来店客への訴求を強め、販売点数・数量/金額PI値の上昇が見られた事例も複数出てきています。嬉しい発見としては、メーカー商品の販売結果だけでなく、材料に使われるチェーンのPB商品や生鮮品の販売結果も良好だったことです。流通・小売側に好影響のある施策として成立できていることで、メーカー各社に対しても購買に直結しやすく、流通・小売と良好な関係を築きやすい施策として価値提供していけるのではないかと考えております。

ただレシピ動画を配信するのみならず、ユーザーに対しては料理に関わる全てのシーンのサポートを提供していきたいですし、メーカーや流通・小売のようなto Bサービスに対しても一緒に”食”の課題に取り組んでいきたいです。その意味を込めて我々は今後”食のプラットフォーム”としてサービス基盤を整えていきたいと思っています。

なぜ「OMO」なのか – サービスとしての価値を高め、まだ日本で成し遂げられていない”アフターデジタル”を作り上げていく

ーこれまで展開してきたサービス内容は、「OMO」の概念のもと今後どのように変わっていくのでしょうか?

鵜飼:今後の日本社会では、5Gの普及により動画を通じた情報の発受信が普遍化するのみならず、IoT、センサーなどテクノロジーが生活インフラとして当たり前に存在する世界が想定されます。冒頭の「OMO」の紹介でも触れていますが、現実世界からオフラインという概念がなくなり、リアルの世界をもデジタルの世界が含有している社会はすでに中国の一部で実現されている事例もあります。アリババが運営するスーパー「盒馬鮮生(フーマー)」などは世界からも注目を集めています。


鵜飼:「DELISH KITCHEN」のOMO事業が進めば、今までできなかった認知から購買までのフルファネルでのマーケティング活動支援ができるようになります。買い物に行く前に「DELISH KITCHEN」をひらけば、視聴データに基づいたオススメのレシピ動画がチェックできるほか、スーパーでも店頭のデジタルサイネージで店舗がオススメするレシピ動画の表示が可能です。実際におすすめレシピの訴求から購入まで促せるよう、その場でお得に買えるクーポンの配信もアプリから行えるよう準備を進めています。さらにその購買データのオンライン化も着手できれば、出稿した広告に対する購買率の洗い出しから効果検証も可能となり、より効率的なマーケティング支援ができるようになると考えています。

店頭での販促活動や、来客増員施策のデジタル化推進も今以上に進めていきます。「DELISH KITCHEN」の資産である25,000本以上のレシピ動画コンテンツとデジタルサイネージを組み合わせ、スーパーの販促計画に沿いながらもチェーンや店舗の独自性を保てるような販促活動を提供します。アプリ・SNSのユーザー送客はもちろん、チラシやクーポンを組み合わせた総合的な施策も働きかけていきたいです。ネットスーパーとの連携、デジタル領域での購買サポートも進んでいけば、今後は店内の購買行動のデータ化によりオンライン・オフラインにまたがる効率的なマーケティングの実現が可能となるので、これまでなかった施策ができるようになります。

そしてユーザーに対しても還元できることを増やしていきたいです。今後店頭でも、選んだ食材からその場でレシピ提案を行ったり、今までにないオンラインとオフラインを融合した楽しい買い物体験の提供ができれば、もっと料理をすることが楽しく充実したものになっていくのではないかと思っています。

「DELISH KITCHEN」が、使っていただいている全ての方からもっと必要とされるようなサービスとなるように、今後も事業推進に取り組んでまいります。

”食”という多くの人々が関わる領域でビジネスを展開する「DELISH KITCHEN」だからこそ、サービスを通じて関わる全ての皆様がより楽しく充実した体験をしていただけるように、スタッフ一同邁進してまいります。この先も、OMO事業部のキーマンとなる人たちのインタビュー記事を準備していますので、ぜひご期待ください!

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