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アイデンティティ・デザイナー【ヒロ・カタヤマ】が考える理想のデザインコミュニティの形

こんにちわ、DONGURIミナベです。DONGURIには個性豊かな経歴/職種/スキルのメンバーが同居しています。そんななか今回から一人一人を掘り下げたインタビューを発信していきます。

第一回目は、アメリカPentagramでCIデザイナーで活躍し、現在ではDONGURIでアイデンティティデザインを行っている【ヒロ・カタヤマ】です。

自己とコミュニティのアイデンティティデザインが、自分の動機でありスペシャリティ

ヒロ:自分がデザイナーを目指したのは、元々勤めていたファッション業界を辞めて、24歳からニューヨークに住み始めたことがきっかけでした。ニューヨークという街は都市設計がシンプルで、地下鉄や街のサインシステムが洗練されているので、英語がわからなくても充分に暮らすことができるんです。IKEAの家具についている組み立て説明書も、イラストのインフォグラフィックだけで文字が使われていなかったりして。そうしたコミュニケーションデザインの美しさに感動して、ニューヨークのSVA(スクール・オブ・ビジュアル・アーツ)に入学しました。

そこでは、ユーザーセンタードデザイン、インタラクション、グラフィック、デジタル、モーショングラフィックなどの多くを学んだのですが、特に力を入れたのがアイデンティティデザイン。自分が4年のときに入ったクラスが、PentagramのPaula Scherでした。彼女はNYADCに殿堂入りしていて、今度日本でもgggで展示をするんですが、そんなデザイナーのもとで学べたことが大きかったんです。

Pentagramで学んだイデオロギー

ヒロ:アイデンティティデザイナーである彼女は、「企業のA-Zタイポグラフィを構築することは、ビスポークのスーツを作ることに近い」とよく言っていました。ビスポークとは、テーラーがオーダーを受けた上でその人に適したスーツをオーダーメイドしていくという意味の言葉。企業のタイポグラフィも、細部を作りあげることで、その企業の空気感を纏わせていきます。それが「ビスポークタイプ」と呼ばれることもあり、元々テーラーを目指していた自分にはとてもフィットしました。

その後、Paulaのクラスで9プロジェクト、計20書体近くの開発をしたのですが、それを面白がってもらえたことがきっかけで、Pentagramの彼女のチームにジョインしました。

<↓ヒロ・カタヤマの手がけたCIデザインとその展開>

ヒロ:そこでもひたすらアイデンティティの開発をしていたのですが、Paulaは企業のアイデンティティを擬人化して突き詰めていくことが多く、自分もその影響をかなり受けています。デザインシステムのような細かいエレメント設計ももちろんするのですが、全体を俯瞰したイデオロギーの開発に力を入れているんです。そうやって細部と全体をいったりきたりすることで、1つのブランドを作り上げていく。それがまるで魔法のようで、自分はこれをやり続けたいと思うようになりました。

アメリカと日本で違うデザイナーの立ち位置

ヒロ:Pentagramで数年働くなかで、次第に自分主導でアイデンティティデザインをやりたいと思うようになり、日本に戻ってきました。ただ、そこで驚いたのがアメリカと日本のデザインに対する認知の違いです。

例えば、向こうの美大は日本とは違い、デザインカリキュラムと基礎教養の割合が6:4くらいで、総合大学のデザイン科であれば半々近い場合もあるくらいです。だから、SVA出身で一般ビジネスキャリアを積まれる人もいますし、デザイナーであってもビジネススキルを持っているのが当然。デザインをする際にも「ビジネスの話をする」のが当たり前なんです。

そこで、日本に戻ってきて驚いたのが「デザイナーはビジネスがわからない」という認知が非常に強いということ。ビジネスのディスカッションがしたいのに、「デザイナーだから」という理由だけで、その輪に入れてもらえない雰囲気がありました。

もちろんスキルセットの差もあるのかもしれませんが、これはなんとかしていきたいなと思って。ビジネスとの接合ができないと、活きたアイデンティティデザインにはならないですから。表現だけで作ってしまうと自分の作ったもので誰かを不幸にしてしまう感覚があるんです。それだけは絶対に嫌なんですよね。だから、日本のそんな現状を変えていきたいなと。表現としてのデザインスペシャリストであると同時に、ビジネスのスペシャリストでもありたいですから。

<↓ヒロ・カタヤマが実際にCIからA-Zまで手がけた、OKAYASU>

デザイナー主体でデザイン思考に取り組む例は、アメリカでも稀

ヒロ:日本ではアメリカのデザイン思考が非常に進んでいると思われていますが、実際にデザイン思考を取り入れているのはコンサルタント達で、デザイナー自身がそれに取り組んでいるのは稀です。

しかし、VIにはじまる表現的な要素だけではなく、MIやBIのような組織やコミュニティづくりに関わっていくことが、これからのデザイナーにはイデオロギーとして重要だと考えます。

実際にビジネスデベロップメントとビスポークを高いレベルで両立しているデザイナーは、世界でもまだいないと思いますし、イデオロギーと表現の両端を実現できる、世界的にも稀有な存在になりたいですね。

具体的には、Pentagramでやっていたようなアイデンティティの開発はもちろん、サービスデザインやコデザインなどのデザインメソッドにも取り組んでいきたいと考えています。実際に日本に戻ってきてから、教育機関と一緒にワークショップを開催したり、色々とチャレンジをしています。

自分の理想とするデザインコミュニティを作りたい

ヒロ:自分がPentagramを好きな理由は、デザインコミュニティとして世界で最も成功している場所だからなんです。

日本のデザイナーは、40歳や50歳になると王様感が出て、周りになにも言わせなくする雰囲気があるじゃないですか。そうすると競争心がなくなって、実力が錆びついてしまう気がして。

でも、Pentagramにはアメリカを代表するデザイナー達がたくさんいるにも関わらず、そうした人たちを中心にして複数のコミュニティが存在しているんです。まるで、社内に別会社がいくつもあるみたいに。そんな状況だと誰が一番というわけではないから、何歳になっても気概を持っていなければならなくて。そうした風土があれば、60歳を過ぎても一流でいられると思うんですよ。年齢が上がっても、間違ったことをしたら誰かが指摘してくれるというのは本当に大きい。

あと、なにより好きなのが、朝の出社時にみんなでコーヒーを飲みながら1時間くらい雑談するところで。尊敬しあうライバルであると同時に、仲のいい友人でもあるんです。

日本の組織って、スターウォーズのストームトルーパーみたいに、全員に同一なものを押し付けようとするところがあるじゃないですか。そういうのとは180度違くて、凄くいいなって思ったんです。

あらゆる多様性が同居するコミュニティを作る

ヒロ:日本に戻るなら、Pentagramのようなデザインコミュニティを自分で作るか、それにチャレンジしている会社と一緒にやりたいと思っていました。“CI”をやっているブランドファームにも応募したんですが、それでは挑戦として意味がないなと。結果的に、2017年からDONGURIにジョインしています。

DONGURIのビジョンは「PLAYGROUND」。多様性を大切にするコミュニティを作るというものなんですが、自分の目指しているものと近くて、とても共感できたんです。自分が今までやってこなかったことにもチャレンジできるし、そこも入社の決め手となりました。

あと、自分がアメリカで学んだことや、北欧コデザイン、バウハウスのような歴史的文脈を共感してくれるコミュニティじゃないと話が合わなくてつらいと思っていたんですが、DONGURIではそういったコンテキストを理解してくれるので、とても楽しいです。

いま会社で話しているのが、DONGURIのなかにユベントスや、アーセナル、レアルマドリッドのような、思想も戦術もスキルも異なるチームが同居しているデザインコミュニティにしたいということ。自分がファシリテーターとなって今後実現していきたいと思っています。

自分のスペシャリティとしてアイデンティティデザインを軸にしていますが、それは単順にCIを作りたいというだけではなくて、社会であったりデザインコミュニティのイデオロギーであったり、もっと広い範囲のものを全て作り上げたいと思っているんです。枠にとらわれず、これからも多くのチャレンジをして、自分のアイデンティティを広げていきたいですね。

ヒロ・カタヤマ
DONGURI アイデンティティデザイナー

アメリカPentagramでPaula Scherに師事し、CIデザイナーとして活躍。企業や美術館のCI/サイン計画/ タイポグラフィを中心として活躍。その後DONGURIでは企業のCIにとらわれず、サービスや商品、そしてコミュニティのアイデンティティをデザインする事を領域として活躍している。

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