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「世界をwell-beingに」業界注目のCOOが語る新産業を創る醍醐味とは

「めちゃくちゃ大変だけど、今までなかった新しい価値が生まれていくことにやりがいを感じますし、楽しいです。お客様に利用いただき、「処方箋なしで薬を買えて助かりました!」と笑顔で喜んでもらえると、本当に嬉しいです。」

こう語るのはGOODAID株式会社(以下、GOODAID)で取締役COO(最高執行責任者)を務める小瀬 文彰氏(オセ フミアキ氏)だ。大学時はソーシャルベンチャー企業であるケアプロ株式会社(以下ケアプロ)でインターン生として働き、そのまま入社。

そして、業界で前例がなく不可能とされた「新卒訪問看護師」のキャリアを切り開いた異端児だ。

「薬局業界の産業を変革し、今までなかった新しい価値を生み出したい」

こう語る小瀬氏は「零売」に新しい価値を見出し、GOODAIDの子会社であるSD C株式会社(以下SD C)の取締役COOも兼任。

GOODAIDでは薬を売ることだけに熱意を燃やすのではなく、零売薬局(処方箋なしで病院の薬が買える薬局)を通して薬剤師が患者さんのファーストコンタクトになる世界を目指していく。

このインタビューでは、COOの小瀬の観点から「零売」事業の面白さ・難題などを語っていただきます。

――貴社の事業内容を教えてください。

当社は調剤薬局、訪問看護、EC事業などの健康事業を推進しています。メインとなる薬局事業では、調剤薬局と「零売(れいばい)」薬局の機能を合わせ持つハイブリッド薬局「おだいじに薬局」を運営しております。また子会社のSD Cでは、零売をメインとする「セルフケア薬局」を路面店で展開しており、2月に初めてJR駅ナカ店を出店しました。

2020年11月、SD Cは『JR東日本スタートアッププログラム2020』の採択企業に選ばれました。これによりJR東日本グループとともに、零売薬局を皮切りに、オンライン診療、健診サービス、フィットネスなどを兼ね備えた「スマート健康ステーション」を実現したいと考えています。駅は移動するための拠点から、健康になるために行く拠点へ。そんな新たな駅のあり方を実現するため、新たな医療の選択肢である零売薬局を展開しています。


JR東日本スタートアッププログラム2020にて「オーディエンス賞」を受賞しました。


JR東日本と協業で推進する「スマート健康ステーション構想」

――中長期的にはどれくらいの規模を目指すのでしょうか?

当社は2024年9月期に株式上場を目指しており、その時点ではグループ全体で約170店舗になっているイメージです。店舗を網目のように組み合わせ地域全体をカバーしつつ、薬剤師がお客様や地域医療とつながる体制をつくることで、単なる薬局チェーンではない、処方せんがなくても病院の薬が買える零売薬局と、そこからはじまる「セルフケアプラットフォーム構想」を描いています。

――セルフケアプラットフォームをもう少し教えてください。

セルフケアプラットフォームを説明する前に、まずは「薬局」の構造的なお話からさせていただきます。イメージしていただきたいのですが、皆さんが薬局に薬剤師に求めることは何でしょうか? 

「1秒でも早く薬を出してくれること。」

そう思われる方も多いのではないでしょうか。薬学部に6年の年月と高い学費を出して通い、やっと資格を取ったのに、お客様とコミュニケーションもとらず、医師から受けた処方箋をオペレーショナルにとにかく薬を急いで用意するだけの仕事になっているのが現状です。

このことは、私自身も苦い経験があり、経営大学院に通っていたころ、あるディスカッションでチームにいた大手薬局チェーンの経営者の方が「薬局とは不動産ビジネス」だと表現しておられました。「いかにいいクリニックの横をとるのか?」という意味です。

事業の価値はもっと別のところにあると思いつつも、今のビジネスモデルや事業構造を考えると、「立地が肝」「次に処方箋枚数に合わせた人員配置」という意見に当時の私は反論できず、悔しいをしました。

いかに医師と良好な関係を構築し、そのクリニックの横に置いてもられるか?

いかに稼働率をあげるのか?

たしかに、経営のKSFとしては間違えがありません。また、お客様のニーズとしても「近くの薬局で早く薬を出してほしい」という方が多くマッチしている。

ただ、「もっと、薬局や薬剤師さんは活躍できるし、お客様によりよい価値を提供できるはず」と、考えていました。

色々と模索した結果、既存の調剤薬局のビジネスモデルの中で考えるのではなく、事業モデルやバリューチェーンを大きく変える必要があると考えました。従来の待ちの姿勢の薬局ではなく、もっと攻めている薬局、つまり薬局があらゆるヘルスケアサービスの第一起点のハブとなれるような拠点にすることが業界全体として変化を大きく求められているのではないかと思います。まさにこの在り方をカタチとして表現したのが「セルフケアプラットフォーム」と我々が呼んでいるものになります。薬局に訪れたお客様に対し、薬剤師がニーズを引き出し健康に関する提案を行う、その上で薬の販売を超えて、オンライン診療、EC、その他健康サービスなどにつなげていく。これらによって、より健康なれる社会の実現を目指していきます。


2021年2月にオープンしたセルフケア薬局西国分寺店。JR東日本との実証実験第一号店舗。

――このセルフケアプラットフォームの入り口となる「零売薬局」には、どんなベネフィットがあるのでしょうか?

3点あります。

まずは、当然ながら「お客様の利便性向上」です。

事業を創るうえでは、お客様の課題や提供価値がなければ始まりません。

零売薬局では、所要時間の短さを強みに、受診ができない方などの課題を解決しています。通常、病院で診察してもらい薬局で薬を買うまでには、かなりの時間がかかります。病院によっては1時間以上待つ場合もあります。そのため病院に行くときには、余裕を見て半日程度時間を空ける必要があります。時間に余裕のある方ならよいですが、働いていたり、子育て中の方など受診の時間が創れずに、我慢してしまう方も多くいらっしゃいます。

零売薬局では、薬局でのヒアリングとお薬の説明を合わせても約10分でお薬が買えます。この圧倒的な時間削減によって、受診できずに困っている方に貢献していきたいと考えています。

印象的なエピソードだと、ベビーカーを押しながら来店され、ステロイド軟こうをご希望の方がいらっしゃいました。薬剤師と一緒に背景を伺うと、「子供のことだったら飛んででも病院に行くけど、家事や育児をしながら、自分のアトピーのために子供を連れて受診する余裕がなくて。」とのことでした。お薬を購入してくださった2か月後くらいにまた立ち寄ってくれて、症状の改善の報告とお礼を頂いたことは、今でもとても嬉しかったエピソードの1つです。

こういうお客様は決して少数ではなく、全国各地にいらっしゃると思っています。そのため、新たな医療の選択肢として、全国のお客様のニーズに応えられる体制を、いち早く作っていきたいと思っています。

2点目は「医療費削減」です。

昨今、医療費の増大が問題になっています。日本は、誰でも保険で医療が受けられる、他国にはない素晴らしい制度がありますが、現在の人口動態を見ても先々保険で賄いきれなくなる状況は目に見えています。

そんな中、OTC(ドラッグストアなどで販売している一般用医薬品)で、同成分のものがあるにも関わらず、処方箋で保険適応で使われているお薬が年間5500億円程度あるという調査も出ております。もちろん、医師の診察の上、然るべき処方もあると思いますが、その内訳を見ると、最も多いのが湿布薬、次いで保湿剤です。この状況に対し、国もセルフメディケーション税制などで、OTCの利用を促す動きを取っていますが、消費者からすると、一般用の薬を買って1年分のレシートを保管し、僅かな節税を行うより、病院の薬を保険でもらう方が楽であり、あまりOTCへの促しが行い切れていない現状があります。

そこで、私たちは、保険財源を使わないサービスであること、病院と同じ薬が圧倒的時間短縮で買えること、の強みがある零売を展開することで、医療費の削減を目指していきたいと考えています。

そして、最後に「薬剤師の役割拡大」です。

私も現場の薬剤師を心の底から尊敬していて、お薬のプロフェッショナルとして、個人的にも色々相談させていただいています。しかし、通常の薬局だと、薬剤師が行える業務が限られているのが現状です。「どうしても医師の処方箋ありきになってしまっている」「経営者からは効率性ばかり求められる」「結局、患者様は薬局や薬剤師ではなく、どのクリニックを利用するかが大事で、薬局は近ければいい人が多い。」「そんなつもりで薬剤師になったわけではなく、お客様とコミュニケーションを積極的にとり、薬のプロとしてその人の健康に携わりたい」そんな薬剤師の声もよく聞きます。

零売は、「相談から始まる薬局」です。薬局の入場券である処方箋がなくても気軽に立ち寄り、相談やお薬を買うことができる場所。そこで働く薬剤師は、地域の方々が健康について課題や悩みを持たれた時に、ファーストコンタクトとして受診の勧めやお薬の販売、その他健康に関する情報提供を行う、地域に一番身近な医療者です。

これまでにない働き方が故に、薬剤師もレベルアップが必要ですし、ある意味責任感も大きい。でも、そのように、相談から始まる薬局を全国に広げ、一番身近な医療者として、お客様の健康に深く寄り添える職場、活躍の機会を創造したいと考えています。



薬剤師研修の様子。弊社は薬剤師の価値の最大化を目的に、人事ポリシーに「タレントファーマシー」を掲げております。


――お話を伺うと、良いことばかりな気がします。なぜ世の中に広がってないのですか?

一言でいうと、めちゃくちゃ、難しいからです。(笑)

私自身、試行錯誤、仮説立案と検証をしてますが、お客様は当たり前のように利用してくれません。

まず、「処方箋なしで病院の薬を買う(零売)」という市場自体存在しないので、新市場を創り上げていく所から実現をしなければなりません。

現状でいうと、1000人に零売のサービスを知っているか聞いて、1名知っているだけでも「スゴイ、なんで知ってるんですか?」と聞いてしまうくらいです。業界関係者ですら、知らない方も多いです。
サービスが出来たからと言って、わざわざ処方箋なしで病院の薬を買う方法を調べる人はほぼいない、医療広告の観点もあり広告も制限がある。それらによって、認知度を如何にあげて行くかという点が、今後の重要な課題となっています。

また、すでに述べた通り、今までにない薬剤師の働き方であるため、薬剤師のスキルセットの再構築が必要です。オペレーションも、1つ1つの接客から内部システムまで、0 to 1で創り上げる必要があり、何より医療系サービスなので運用の徹底、各種法制度とオペレーションのすり合わせ・関係機関・行政との折衝なども含め、地に足付けて成長させていくことが求められ、オペレーション構築・人材育成・行政対応など幅広い観点を考慮した上での事業開発が求められます。

我々がとてもいいサービスだと思っていても、お客様は当たり前のように利用してくれない。利用してくれたとしても、我々が目指すセルフケアプラットフォーム構想に向けては、まだまだほど遠く伸びしろしかない。そんな状況です。毎日、悔しさ感じながら、どうしたらもっと利用してもらえるか、どうしたらもっとお客様に価値を提供できるかという事ばかり考えています。

正直、新市場に、新規事業を、展開することが、こんなに難しいとは思ってなかったです。(笑)

大義にために、道なき道を自ら切り開いていくのは、めちゃくちゃ難しくて苦しいですが、その分、本当に楽しいです。

ちなみに、このめちゃくちゃ大変な道を一緒に進んでいく仲間、絶賛募集中です。(笑)

冗談でなく、社会の課題解決に向けて、業界を変革するような取り組みには仲間が必要不可欠なので、ぜひ共感いただける方がいたら飛び込んできてほしいです。

ともに、新たな社会、創りましょう!



――小瀬さん、本日はありがとうございました!

会社HP:https://good-aid.com/

セルフケア薬局:https://selfcare-sdc.com/

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