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意外と知られていないお役所DXとは?

【ハマザスDX(デラックス)第3観測ポイント】

意外と知られていないお役所DXとは?

国と自治体が結びつくDX、最後の砦は行政サービスの改善

新聞を読むと、ほとんど毎日どこかでDXの話題が取り上げられている。

例えば、日経新聞Nikkei view11月25日版では、『介護現場、DX競う「日本モデル」を磨く好機に』で、人工知能を使って、今までベテランが作成していた介護計画づくりや対話型ロボットを使った健康テストなど、個別に現場ですでに実証されている要素技術や同様の試みを一つのサービスにする状況を取り上げている。

現場のデータ化や見える化はDXの大きな特徴だが、見えることでの迅速な情報共有、新しい気づきを得る利点がある。一方、デジタル化の見える化により、縦割りで独自のやり方が公になることを嫌い、現場で自分達の仕事量を紙で暗示する慣習が残っている役所では、思った以上に抵抗があるようだ。

他の記事を読むと、日本固有の商習慣に阻まれて、現場がついていかないシステムの導入だけが先走ってしまうと、デジタル庁事務方トップの石倉さんも、想像以上の抵抗勢力に阻まれていることを述べておられる。指揮役のデジタル庁長官として、リーダーシップが思うように取れない苛立ちを隠しきれないようだ。

一方、国から遠い自治体では、現場の取り組みはかなり違っているようにも見える。

元々、行政サービスの情報を管理する基幹システムが国(省庁)と切り離されている自治体のシステムは、各行政区分で疎結合をしながらほぼ独立して発達しており、最近は各手続きにおいてマイナンバーポータルとは別に、一部自治体のWebでのデジタル手続きサービスもある。

地方でDXの実証実験などを積極的に推進する背景には、国から降りてくるDX施策の導入で自治体が利用者の不満を押し付けられるのではなく、今のうちに自治体主導で早めに実証実験などの事例ができれば、直接市民と向きあう利便性を盛り込みたい自治体と、全国で素早い導入を目論む国の前例主義の利害が一致しやすいからではと思う。昨今のDX事例は、ひと昔前の役所の仕事のように、中央(官庁)から自然に降りてくるというような、受身的なお役所仕事とはだいぶイメージが違っている。

例えば「引越しワンストップ」という自治体連携のサービスがあるが、これは引越し元と先で自治体が分断されるため、煩雑になる窓口手続きをできる限り纏めるだけでなく、電気ガス水道などの公共インフラや通信などを、民間の引越しサービスを起点にワンストップしようという試みだ。最初は誰もが無謀と思われた官民サービスの連携も、デジタルを使って何度かの段階を経て、少しづつ利便性が上がってきている。

D Xが企業文化の改革とすれば、いくら革新的なシステムを苦労して導入したからといっても、一夜でサービスが改善する費用対効果を求めるのは、現実的に難しいのではないかと経営者も気づき始めている。自治体の例を見ても、とにかくやれることからやってみて、お互いが効果を実感できるところを見定めて、新たな一歩を踏み出すやり方に活路を見出しているようだ。

だからこそ、DXは時間がかかることを踏まえて、経営者は成功イメージを明示しながらそのかかるコストや時間に十分配慮する。従業員は実際の効果を小さく積み重ねて実感を確かにし、連携する業務の賛同者を増やしていく。こうして一見、周りくどいようなやり方を繰り返すことが、実はDX導入の一番の近道かもしれない。

※本コンテンツは、日経新聞Nikkei view11月25日版を参考にいたしました。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD17B8H0X11C21A1000000

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