連続エッセイ『FICに入って一ヶ月の新入社員が見たもの』最終回
著:8月1日入社の社員
コーヒーの芳香で頭をしゃきっとさせると、午後の勉強だ。
私は購入してもらったITパスポートの教本を開く。
FICは新入社員の研修に潤沢な投資をしてくれる。
eラーニングにせよ資格にせよ、業務時間を勉強に充てさせてくれ、
会社の業務で重視しているポイントを個別に解説してくれるなど、フォローも手厚い。
社員の成長を助けることに非常に熱心なのだ。
二時間、三時間と勉強すると、流石に燃料切れを感じたので、私はラムネを投入することにした。
シンプルな、懐かしい甘みで頭が冴え、血の巡りが良くなっていく。
グループウェアに「今後のタスクについて説明したい」と連絡が入ったのはその時だ。
承知の返事を送ると、参加しているプロジェクトのタスクについて、
先輩がPowerPointの画面を開いて今後の業務を説明してくれた。
FICの先輩方が作る資料は、どれも非常に完成度が高く、
私は読むたびに身が引き締まるのを感じる。
と同時に、私もこういうふうになりたい、と闘志が燃え上がる。
身につけなければならないスキルは無数にあるが、
それでもいつか先輩方の半分でも仕事をさばけるようになれば、
きっと自分が大きくなったのを感じられるだろう、と思う。
高い能力を持つ仲間の姿を見て、切磋琢磨していける環境。
そして、それを惜しみなく褒め、積極的に背中を押し、仕事を任せてくれる上司たち。
ここには、良い環境が揃っている。
今、レクチャーしてもらった仕事も、ゆくゆくは私の手にも任せられていく仕事である。
会社の業務の非常に重要な位置を占めることになるこの仕事が、少しずつ、
入りたてほやほやの新入社員の手の中に預けられていく。
きっと、誰もが会社に入りたての頃に感じるドキドキ感。
風通しの良い、モラルの高い職場で、それをもう一度味わうことができるのだ。
そんなわけで、長い午後もあっという間に過ぎた。
終業の18時。先輩社員には育児休業明けのお母さんたちもいて、
そういった社員は時短勤務のため二時間ほど前に退社している。
社員の働きやすさが第一優先。
「お先に失礼します」と挨拶して、私はオフィスを出た。
8月も後半になると日の傾きは早まり、ビルの隙間にもほのかに夕闇の気配が漂い出す。
私はたまには目黒駅に歩いて出てみようと決めた。
まだまだ暑い18時すぎ、暮れなずむ木立の陰には親子連れが立ち止まって涼み、
橋の下を流れる大きな川が、近くを走り抜ける電車の音に水面を揺らす。
目黒までの10分あまり。心地よい疲れと、帰ってからの余暇への楽しみが、
坂道を上る背中を押す。
「終業後は仕事のことは考えないでね。自分の時間を大事に!」
社員の皆が言ってくれる。
スマホに導入しているグループウェアも、18時を境にぴたっと沈黙する。
帰り道を歩きながら、私はそれでも、つい来週のことを考えてしまう。
それも、嬉しい気持ちで。
来週はどんな仕事を任せてもらえるんだろう。どんな朝から始まるかな。
どんなふうに資料を作っていこう。今日レビューしてもらったイメージを大事に。
来月、再来月にもなれば、そのうち残業もするようになるだろうし、
自分もここまで溌溂とはしていないかもしれない。
だが、この抑えきれないわくわく感は、長く保つ私の燃料になり、
私をずっと照らしていってくれるだろう。
そう感じさせてくれる何かが、この会社にはある。
そんなFICで、私と一緒に、働いてみませんか?
~Fin~