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個が集中し、視線と音と香りを共有する大空間。Gの設計思想とは?

G Innovation Hub Yokohama(以下、「G」)の建築プロジェクトに関わったメンバーの対談第2弾は、Gの設計思想に迫ります。メインストリートと路地が組み合わさった「街」のような空間、視線と音の共有、コーヒーの香りと人が集うキッチン……Gの空間と機能がいかに創造性を生み出すのでしょうか。

対談参加者(敬称略)

総合プロデュース:相澤毅(株式会社plan-A)
建築設計:西田司(株式会社オンデザインパートナーズ)
建築設計:原﨑寛明(Hi architecture)
施工:福井信行(株式会社ルーヴィス)
運営体制構築:治田友香(関内イノベーションイニシアティブ株式会社)
ホームページ制作:森川正信(関内イノベーションイニシアティブ株式会社)
ロゴ制作:辻浩史(株式会社セルディビジョン)
コーヒープロデュース:刈込隆二(オトノマ株式会社)
運営:櫻井怜歩(リストプロパティーズ株式会社)
対談進行:北原まどか(特定非営利活動法人森ノオト)
執筆:牧志保(特定非営利活動法人森ノオト)
スチール撮影:堀篭宏幸(関内イノベーションイニシアティブ株式会社)
動画撮影:竹内竜太(サンキャク株式会社)

Gの大空間をどのようにデザインしていったのか?

原﨑寛明(Hi architecture):

私はGの初期検討段階から関わってきました。物件見学会を開き、多くの意見を吸い上げながら、様々なパターンを図面に落とし込み、ワークスペースにはどういうサイズが適当か、どれくらいの席数を確保したら収支予想がたつのか、一つひとつ検討してきました。最終的にコワーキング、シェアオフィス用途に収束しましたが、そこに至るまでには宿泊や店舗、居住も含め、他用途での利用も検討しました。その検討のいくつかはGのオフィス空間以外の部分に痕跡を残していて、ただ「働く」だけではないオフィスとなっていると思います。

計画の最初の段階では、初期検討段階の収益見込みをもとに、貸し出し面積の目標値を割り出し、残った面積(共有スペースなど)をどの位置に持ってくるかというゾーニングをひたすらやっていました。採用されたプランは、真ん中にメインストリートがあり、窓に向かって執務空間が配置された、一般的なオフィスの骨格と同じようなものになっています。一般的なオフィスと大きく違うところは、利用者が空気も音も共有するところです。クローズドブースは壁で間仕切りされているので視線をカットできますが、天井ではつながっているので音は共有されます。セミオープンブースやコワーキングスペースでは視線をも共有することになります。そういった空間で、人と人とが心地よい距離感を保つことができるよう壁の位置を検討し、小さな路地空間や人が溜まれる場所、見え隠れする場所を意識的につくっていきました。

空間に奥行きを持たせるために、間仕切りの高さは1800mmにおさえ、視線を遮りながら圧迫感が出ないように計画しています。スケール感が間延びしない、ひとつの街が縮小されたようなサイズ感を実現させることを意識しています。

音の共有などコワーキングならではの良さや課題は?


森川正信(関内イノベーションイニシアティブ株式会社):

2011年から8年にわたってシェアオフィス・コワーキング(mass×mass 関内フューチャーセンター、通称マスマス)を運営してきて感じるのは、大人数で空間を共有して働く場にはノイズはあって然るべきものだということです。そこが静かな空間になってしまうのでは、コワーキングやシェアオフィスである必要はなくなります。そこにいる人たちの様々な会話や音が聞こえてくるのが、まさに「グッドノイズ」であり、多様性を内包したよいコミュニティだと思います。

治田友香(関内イノベーションイニシアティブ株式会社):

声や音が聞こえることを享受し、そこに居心地の良さを感じる人が利用するのがコワーキングではないでしょうか。静けさを求めるならば別の場所を探せばいいと私は考えています。多くの人にマスマスを利用してもらえているのは、そういったことを入居時にしっかり伝えているからだと思います。

とはいえ、様々な人が利用する施設なので、問題が起こる前に、運営者側と利用者側とでキャッチボールをし、お互い歩み寄りながら対処してきました。日々、運営者と利用者とでリレーションをしている感じです。そこには答えもなく、最適解もありません。日々勉強です。

西田司(株式会社オンデザインパートナーズ):

Gを設計する過程で、治田さんや森川さんにプランを見てもらう機会が何度かあり、まさに親に通知表を見せる子どもの様な心境でした(笑)。

場を運営する側からのアドバイスとして、もっとこうしたほうがいい、席数は事業収支上こうすべきでは等、様々な意見が出されました。私たちはそれを受けて、再びプランに落とし込んでいく。そういったやりとりのプロセスがとても面白かったです。

櫻井怜歩(リストプロパティーズ株式会社):

リストグループとして、シェアオフィス、コワーキングは初めての事業だったので、プロジェクトメンバーの皆さんから意見や経験談を聞きながら社内で話を進めていきました。

相澤毅(株式会社plan-A):

Gが関内エリアの活性化につながるプロジェクトとなることを目指しながら、民間企業が行う事業は収益を得なければならないという大前提を担保していくことが、すべての根元にありました。

設計を担当する西田さん、原﨑さんから上がってくるプランを一つひとつリストグループと協議しました。多くの打ち合わせを経て、プロジェクトチームとリストグループのお互いの理解度が深まり、絶妙なポイントでこのシェアオフィス事業に着地していきました。

リノベーションの醍醐味は?

原﨑:

横浜第一有楽ビルが持っている、時を経た趣を残したい。一過性ではない、普遍的なデザインにしたという思いから、既存の躯体の表現を活かすために、新たに加えた壁の仕上げはあえて下地材をそのまま使ったり、鉄の塗料には錆びる仕様のものを使ったりと、この建物がもともと持つ表情が活かされるような内装にしました。

西田:

今回、内装にあまり白い材料を使っていません。空間全てが白の場合、そこに違う色が入ってきたら気になりますが、もともと20色ある空間だと、21色目に入ってくる色は気にならないのではないでしょうか。

空間に自分のパソコンやカップを置いたとき、それらのものが違和感なくその場に溶け込んでくる。物の背景に流れる空気や光を感じられるような空間では、リラックスでき、仕事がはかどりします。

この建物が持つ包容力は、不均質さから生まれてくるものであり、それを失うことがないよう内装を調整していきました。

福井信行(株式会社ルーヴィス):

コーヒーショップの前を通ると、いつも決まった人が仕事をしているのを見かけることがあります。オフィスに戻れば席はあるのでしょうが、その人にとっては、コーヒーショップの方が快適なのでしょう。オフィス空間で仕事をするよりも、ちょっと曖昧な場所で仕事をする方が心地いいよねと感じる人が増えてきているように思います。

内装も同じで、最近の内装は一般の人が見た時に、仕上がっているのか、未完成なのか分からないような曖昧な仕上げが多くなっています。

この曖昧な部分をどれくらい残すのが、使う人にとって心地よいか、設計者も図面だけで表現するのは難しいところですが、私たちは、その設計思想をうまく汲み取りながら空間をつくっています。

Gの床も普通にはがして終わりだと、つまずいて転んでしまうかもしれない。この建物がそもそも持つ質感を残した上で、新しいものと調和するほどよい仕上げ、ちょうどいいバランスがどこなのかを常に考えながら工事を進めてきました。

西田:

高度成長期に品質を高めることに重きを置いてきたおかげで、日本の建築施工の品質レベルはとても高くなっています。一般的に施工者は、汚れているからきれいにしようとか、段差があるから埋めておこうとか、きれいに仕上げることを前提に工事します。しかし、ルーヴィスは均質でぴかっとしているよりも、不均質で味があるのが良いと感じる時流を踏まえて施工しています。施工会社としてはピカイチだと思っています。

Gにおいてコーヒーが果たす役割は?

相澤:

Gはオフィス空間なので、仕事をするのは当たり前、仕事以外の何かでGに集まる人のコミュニケーションを促進するきっかけとなるものを探っていました。そこで、コーヒーがいいと思い至り、コーヒーを重要なコンテンツとして生み出せるCAFENOMA(カフェノマ)の刈込さんに相談しました。カフェノマは、コーヒーのある暮らしから、空間デザインやライフスタイル提案をしているオトノマ株式会社のプロジェクトで、彼らのつくり出す温度感に、これだ!と。


刈込隆二(オトノマ株式会社):

Gに集まる人々の関係性を深めるためのツールとしてのコーヒー、販売ではなくサービスとしてのコーヒー、それらのあり方を考えました。

そもそも私は、コーヒーは語るものではなく、感じるものであってほしいと思っています。そんな思いから、焙煎機やコーヒーを淹れる道具、豆の品質にこだわっています。Gには、生豆から自分好みに焙煎できる焙煎機を導入しました。これがGのコミュニティの中で大切な役割を果たしてくれるはずです。

森川:

仕事を始める前や仕事の途中など、1日2、3杯コーヒーを飲みたくなります。マスマスでは、カウンターでコーヒーを買うことができ、そこに行くと、私と同じタイミングで買いに来ている人がいて、そのタイミングで彼らと会話を交わします。普段はみんな集中して仕事しているので話しかけづらいのですが、コーヒーを買いに来る場では自然にコミュニケーションが生まれます。

相澤:

シェアハウスの増加など、暮らし方が多様になってきている現在、食を通じたコミュニケーション、キッチンが果たす役割の重要性を実感しています。リストグループの本社ビル1階のラウンジスペース「List Link Lounge」においてもキッチンを真ん中に配置しています。コミュニティの中でキッチンが活用されるのを目の当たりにしてきたので、Gにキッチンをつくらないという選択肢はありませんでした。


西田:

キッチンがあるといいですよね。オンデザインのオフィスにもキッチンがありますが、その周りに人が集まって会話をするという雰囲気が自然に生まれています。

原﨑:

キッチンでコーヒーを淹れていたら、コミュニケーションをとってもいい時間なのだなというサインとなり、話しかけやすくなります。シェアオフィスにあるキッチンは、利用者のオン/オフを示すツールにもなると思っています。



Edited by 北原まどかさん 森ノオト 理事長/編集長/ライター

ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。生活者とエコ、エネルギーを近づけ、楽しむ啓発活動と、メディアを介したまちづくりに力を注ぐ。これまでの10年間で90名以上の市民ライターを育成、本記事は森ノオトライターで建築士の牧志保さんが手がけている。

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