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ノンフィクション作家「後藤正治」× ブレーンセンター

あくまで「昼間」を探りつつ、

その人の本質に迫る。

それが後藤流のダンディズム。


1946年京都市に生まれる。京都大学農学部卒業。
ノンフィクション作家となり、医学、スポーツ、人物などの分野で執筆を重ねる。

『空白の軌跡』(講談社文庫)で第四回潮ノンフィクション賞、
『遠いリング』(岩波現代文庫)で第12回講談社ノンフィクション賞、
『リターンマッチ』(文春文庫)で第26回大宅壮一ノンフィクション賞、
『清冽』(中央公論新社)で第14回桑原武夫学芸賞、を受賞。

他の著者に、『牙』(講談社)、『復活』(文藝春秋)、『甦る鼓動』(岩波現代文庫)、『スカウト』(講談社文庫)、『奪われぬもの』(同)、『生体肝移植』(岩波新書)、『刻まれたシーン』(ブレーンセンター)、『秋の季節に』(ブレーンセンター)、『節義のために』(ブレーンセンター)などがある。


朝日新聞 聞き手・木元健二「後藤さんの作品には 「センチメンタル」 との批評もあります。」

(後藤)「文学的ノンフィクション」 と言われたことも。 私がノンフィクションでやってきたのは、 その人の仕事の部分、 いわば一日のうちの昼間の8時間を描いたものがほとんど。 『牙』 という作品の主人公は、 タイガース時代の江夏豊。 彼については刑事罰も受けたし、 別の側面を指摘する声もあった。 ただ、 この本では、 グラウンドにおける江夏豊を書きたかった。圧倒的な強者・巨人に真正面から立ち向かっていった姿に、 自分たちが過ごした青春の日々を重ねたかった。 加えて主人公たちの家族とかプライベートとか、 影の部分を知ることには禁欲的であったと思います。 あくまで 「昼間」 を探りつつ、 その人の本質に迫りたいという流儀です。 雑誌で沢木耕太郎さんと対談したおり、 それは私の 「ダンディズム」 と言われました。


京都新聞・八幡一男

後藤さんは 「スポーツライター」 と呼ばれることがある。 1980年に創刊されたスポーツ雑誌 「Number (ナンバー) 」 で活躍し、96年には定時制高校のボクシング部を描いた「リターンマッチ」 で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。 また、「スカウト」 などプロ野球を舞台にした作品も多いためだ。

■出発点は医科学分野
だが、 後藤さんの書き手としての出発点は医科学の分野だ。著作集第1巻には 「人工心臓に挑む」 など初期の3作が収録された。 「空白の軌跡」 では、 ある 「事件」 をきっかけに世界から立ち遅れた日本の心臓移植の空白の歳月を描き、 「ふたつの生命」 では心配移植を待つ女性患者との絶望と希望、 生と死をつづっている。今後、 著作集には 「甦る鼓動」「咬ませ犬」 「牙│江夏とその時代」 といった代表作や短編が収録される。後藤さんは 「スポーツでも医科学でも、 僕の中では同じことをやってきた。 人間を描くという点で」 と30年間の仕事を振り返る。

■冬の時代というが
一方、 日本のノンフィクション界には今、 危機感が広がっている。 「月刊現代」 など雑誌の休刊が相次ぎ、 各賞でも有力な新人が現れない。「冬の時代と言われることを否定はしない。 では、 今までに春の時代があったかと考えると 『うーん』 となる。 日本でノンフィクションという言葉が定着して、 たかだか30年。 冬の時代と言われるなら、 私たち書き手の力不足でしかない」後藤さんは書き続ける。06年頃からは 「女神像」 を描く清貧の画家・石井一男の取材を重ねている。「言葉だったり、 情景だったり、 その人の本質がふっと浮かび上がる瞬間がある」書く対象には 「探すのではなく、 出会う」 のだと言う。「心から書きたいと思う世界に出会ってきたし、 今も出会っている」



あくまで 「昼間」 を探りつつ、 その人の本質に迫る。
後藤流のダンディズムで書き続けた30年間の集積。

『後藤正治ノンフィクション集 』 全10巻
各巻体裁…文庫版( ソフトカバー)
750頁



『節義のために』
自選エッセイ集
◆人・時代・言葉への旅。著者自身の足跡をたどる自選エッセイ集。
各巻体裁…A5変判上製 488頁



『秋の季節に』
自選エッセイ集
◆人・出来事・書物・自身について記した珠玉の自選エッセイ集。
各巻体裁…A5変判上製 353頁



『刻まれたシーン』
スポーツノンフィクション
◆スポーツシーンの濃厚な一瞬から人物を描き出す。
各巻体裁…A5変判上製 284頁



『関西の新実力者たち』
人物ノンフィクション
◆90年代ウエストパワーの牽引者51人をインタビュー。
各巻体裁…A5変判上製 314頁
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