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デフエンジニアリング事業とデフへの思い ――社内インタビュー

みなさんこんにちは
C4C広報部 神園めいです。

今回の記事では、C4Cのデフエンジニアリング事業部についてお届けします。

デフ(deaf)とは「聞こえない人、聞こえにくい人、ろう者」のことで、C4CではデフエンジニアのSES事業を行っています。現在では、社内に2名のデフエンジニアが在籍し、1名はお客様先で、1名は社内の受託開発でエンジニア業務を行っています。

2018年からスタートし、4年目となったこの事業部について、事業部長の有馬さんと、C4C杯や受託開発でデフエンジニアとの交流が多い藤原さんにインタビューしてみました。

ーーそれではさっそく、有馬さん、事業部立ち上げのきっかけを教えてください。


有馬:なんか改まると緊張するね(笑)

(社内の)みんなも知っている通り、俺の妻が耳の聞こえない人で、そのつながりで俺の周りには耳の聞こえない人がたくさんいて、交流する機会が多かったんだよね。
俺はその人達と出会うまで心のどこかで”障がい者の人達は内向きで、前向きな人は少ない”という漠然としたイメージをもっていたんだけど、実際に会った人達は明るく前向きで、障がいをもっているという状況を嘆く様子もなく、イメージとは違う人達ばかりだった。
でも、そういう人達でも障がいを持っているということが理由で労働条件が良くないという話を聞くことがあって、自分はなにかできないかなということはずっと考えていた。

そんな中で、入社前から友達だった(C4C代表の)亀山をデフの集まりに誘ったことがあって。
たぶん亀山もデフに対して俺と同じようなイメージを持っていた思うんだけど、会ってみたら「こんなにエネルギッシュな人たちなんだ!」ってすごく衝撃を受けてたんだよね。
しばらくしたあとに、「聴覚障がい者をエンジニアとして採用して、育てる、という事業を一緒にやりたい」という話があって、そこからがスタートだね。



神園:有馬さんのC4C入社と事業部立ち上げにはそんな経緯があったんですね。亀山さんからの提案だったということもはじめて知りました!(笑)

ーー障がいを持っている人たちの労働条件が良くないという話がありましたが、具体的にはどういうものがあるんですか?


有馬:やっぱり一番大きいことは”障がい者はできることが少ないだろう”という固定観念で、スキルが貯まっていくような仕事を任せてもらえないことだと思う。
エンジニアの世界もそうだけど、開発経験を積んだり扱える言語が増えたり、できることが増えることでその人の価値が上がっていくから、そうなるように仕事を任せていくべき。
実際はデフ採用の多くは障がい者雇用枠*として採用されていて、業務内容も単純でスキルが貯まっていきづらく、給料も上がらないということが多い。

俺はデフの人達と関わりがあるから、”聞こえない”ということ以外の基本的な能力は健聴者の人達と同じということを知ってる。
だから、障がいを理由に労働的な価値が低く見られるということがもったいないと思うし、デフの人達も健聴者と同等に扱って、スキルを身に付ける活躍できるような場を用意するべきだと思っているんだよね。

*障がい者雇用・・・障がいのある人だけの特別な雇用枠「障がい者雇用枠」で障がいのある人を雇用すること。障がい者雇用促進法により、企業は全従業員のうち2.2%に相当する人数の障がいのある人を雇用する義務があることが定められています。


神園:なるほど。障がい者という枠で制限されることなく、”健聴者と同等に扱われる”というのはすごく理想形ですね。

ーーでも、実際に健聴者との間には”聞こえない”という差がありますよね。
プライベートの付き合いとは違う、仕事という場でその差を越えてデフエンジニアがお客様に対して価値を提供していくのはとても難しいことだなとも思います。
有馬さんはここについて、どういう形で実現していこうと考えているんですか?


有馬:よくコミュニケーション能力が高いとか低いとか言うことがあるけど、話し方の明るさとか、会話のスピード、スムーズさのことを”コミュニケーション能力”だと勘違いして表現している人が多いよね。
それも一つの要素ではあると思うけど、コミュニケーションにおいて最も大事なのは相手が何を伝えようとしているのか意図を汲み取ったり、自分の考えを正しく伝えたり、自分がどういうことを期待されているかを考えて応える能力だと思う。

健聴者の人でも、「お前何回言ってもわからないな!」っていう人もいるじゃん(笑)

確かに、会話のスムーズさでは聞こえない人は不利かもしれないけど、本来の意味での”コミュニケーション能力”は健聴者もデフも差はないと思う。
このことをお客様にどうやって伝えてデフエンジニアの価値を理解してもらうか、ということはデフ事業部で今チャレンジしていることだし、これからも力をいれていきたいところかな。
そのためにも”コミュニケーションのスムーズさ”についてはデフエンジニア側の工夫だったり努力が必要で、デフエンジニア側が歩み寄っていかないといけないところだと思ってる。


藤原:うん、現実的に”聞こえない”ということは弱点にはなるだろうね。
健聴者と一緒に仕事していても、「この人は勘違いや認識違いが多いな」という人もいる。
デフは勘違いとは違うけれど、聞こえないことで開発作業のときに仕様の実装が漏れちゃうとかは起こりやすいことだと思うんだよ。

でもそこで「実装が漏れてしまった」でデフ側が止まっちゃうならエンジニアとして弱いままだよね。
例えばだけど、自分は聞こえなくて勘違いしやすいからという意識を持って「こういうことですよね」「私の解釈はこうです」という確認作業をやってみる。
そうすれば、認識違いは減っていくし、一緒に仕事する人もすごくやりやすいと思う。
そこまでいくとコミュニケーションとして問題ない、と判断できるよね。

だから、厳しい言い方になるけどコミュニケーションで躓いたときにデフエンジニア側が諦めてしまうんだったら、健聴者と同等に扱われることはないんだよね。
じゃないと健聴者側も、”聴覚障がい者だから”というふうに考えてしまってその枠からは出られない。



有馬:そうだね。
どうしても現場に入るときの面談とかではデフだけどそこまでできる人材ってことを伝えづらいという課題はあるけど、入った後は「大丈夫じゃん」って思ってもらえると思う。
そうすれば周りの意識も少しずつ変わり始めると思っているよ。
だから、そういう印象をお客様や一緒に働くエンジニアに持ってもらえるように事前に社内で教育を行って「こういうふうにやるんだぞ」ということを教えていこうと思っています。


神園:そうですね!しっかり、甘やかさずに(笑)


藤原:問題としてはね、我々は健聴者なのでデフがコミュニケーションにおいて工夫したり努力したりということが、どれくらい大変なことなのかということがわからない、共有できないというところがあると思う。
そういう努力がデフにとって苦しい時がもちろんあると思う。
でもそんな時もサポートまではできるし、するけど、代わりにやってあげるってことはできない。
代わりにやってしまったら健聴者と同じように扱っていないことになるからね。
実際に行動するのはその人自身じゃないといけない。


有馬:うん、そうだね。
これからC4Cにどんどんデフ仲間が増えていけば、デフに「この環境ならデフが多いから働きやすそう」と思われるかもしれないけれど、そういう意図でこの環境を作っているわけではなくて、デフが自分たちの価値を高めていくための環境を作っていきたいだけだから。
その環境に入って実際にどう努力していくかの方が大事だし、それはデフにとって楽な道ではないと思っているよ。

健聴者と同じように活躍の機会を用意して、その結果に対しても同じように評価していきたい。
そのためにはデフ側の努力が必要で、それはとても大変な作業だと思う。
でも一緒にやっていきたいと思っている。

それを続けていけば社内だけに留まらず、社外でもデフの労働者に対する意識を変えていけると思うんだよね。

神園:なるほど。ありがとうございます!
「デフが自分たちの価値を高めていくための環境」というのはC4Cの姿勢を表すのにぴったりなワードですね。

ーーここまで、デフが健聴者と変わらず働くときの気持ちの持ち方みたいな観点でお話を聞いてきたんですけど、藤原さんは受託開発業務や社内コンペのC4C杯などで社内のデフエンジニアと関わりが多いと思うのですが一緒にやってみて率直にどうですか?


藤原:そうだね。ここまでは”デフ側の頑張りが必要”という話をたくさんしてきたけれど、実際は同じくらい自分側の課題も感じてたね。
(社内にいるデフエンジニアの)皓治が入ってもうすぐ3年、特にはじめの方はやりとりの中でもたくさん葛藤があって。
なんせデフとのコミュニケーションに慣れていないから、「どこまで過保護にすればいいのか…。いや、過保護に扱うのは違う。普通に扱わないとダメなんだ。」ということを考えすぎちゃって…。
でもそう考えること自体がある意味不自然だと思ったんだよね。


神園:確かにそうですね。健聴者に比べて”デフだから”という1ステップを追加で考えてコミュニケーションをとっていた、ということですね。


藤原:そうそう。その時点で平等に扱っていないなって、そういう葛藤があった。
皓治に対してもはじめは自分側が必要以上に”聞こえない”を意識して接していて、言いたいことを伝えるのに表現に気を使い過ぎてしまったり、迷ってしまったり。
その感覚が必要な歩み寄りなのか、本人のためにならない甘やかしなのか、ってすごく考えたね。

でもコミュニケーションをたくさんとって、皓治の努力と俺も試行錯誤して慣れて信頼関係ができてきたことで、やりとりとか実際の作業で困難を感じることはなくなったね。

今は、皓治に対しても「今のわかった?」とか「今の仕様理解した?」って自然に聞ける。
はじめはそれを聞くことさえ子ども扱いで傷つけるんじゃないかって思いながらやってたけど、今は確認の意味で自然にできてる。

前は、”困難を感じないように”と意識して振る舞っていたことが逆に不自然さというか壁を作っていたというか…。



神園:めちゃめちゃわかります。私も一昨年と今年、皓治さんとC4C杯を一緒にやってて。
はじめはすごく遠慮しちゃってたので、一通り自分が話し終わった後に皓治さんが「こういう話ですよね」って確認を取ってきた内容が全然合っていないことがあって。
いまは、「いや、違います」って言ってもう一度、ってなるんですけど、はじめは遠慮してしまって言い方もだいぶ回りくどくなっていたと思います(笑)


藤原:わかるわかる。
あとは、俺にあった変化としてデフエンジニアとして2人目になる龍平が入ってきたことも大きくて。
今までは皓治とのコミュニケーションで思うことがあったときに「デフだからこうなのかな?」ってくくって考えちゃうこともあったけど、龍平が入ってきたことで、皓治の個性と龍平の個性とそれぞれ見えてきて、”デフだから”ではなくその個人個人で考えられるようになってきたね。


有馬:うん。接する機会が増えていけば、デフだからコミュニケーションが取りづらいって感覚は薄れていくよね。


藤原:うん、本当にそう思う。


神園:そうですね。
コミュニケーションにおいてデフ側の工夫や努力が必要であると同時に、私達はデフに対してある心の壁みたいなものを自覚して少しずつなくしていくことがスタートになるのかもしれないですね。C4Cのスタンスや理念を理解して入ってくるデフエンジニアを信頼して一歩踏み出していくことが必要なのかなと。


藤原:うん、いまいいこと言ったね!
第一ステップは健聴者側の多くが持ってる壁を意識することなんだよね。能力的にデフを下に見ちゃってないかな、とか。


神園:ありがとうございます(笑)そうですね。
自分の話したことがスムーズに伝わらなかったり、相手が伝えたい内容が理解できなかったときに、誰だって怯んだり身構えてしまうものだと思うので、それを自覚して認めるというところからですね。

ーーさて、ここまでどういう思いでこのデフ事業部をやっているのかというお話を聞いてきました。
最後の質問になるのですが、デフ事業部の今後の展望としてどういう形を考えていますか?


有馬:そうだね。
現状の課題としてはデフがSESエンジニアとして現場の面談にいったときに、「デフだけどコミュニケーションには問題ないよ」と伝えてきてはいるものの、採用する側のお客様からは見えづらいということもあってか結果に繋がりづらい。
そこを変えていくために、まずは健聴者とのチーム体制を組んで、お客様とのコミュニケーション的なところは最初は健聴者にまかせてそこから徐々にデフエンジニアも変わらずやれるよということを見せていけたらと思ってる。


藤原:うん。最初はチーム体制を作っていくことからだね。
さっきも話したけど、コミュニケーションをとっていけば慣れていくということがわかったから、社内でそういう雰囲気を作ってチーム体制につなげていきたい。

“聞こえない”という差はあるけど、それ以外は変わらないっていう意識が社内に浸透していけば、個人の障がいを気にするのではなく、個性や能力を信じて健聴者と変わらず扱えるようになると思う。

その環境を作りつつ、はじめは健聴者とセットで現場に…というふうにしていけば進んでいくね。
デフの人の努力は必要になるけど…それをやっていきたい。


有馬:社内を変える、はまず1ステップ目として。
目指す先としてはIT業界、社会の意識を変えていきたいよね。
俺の生きているうちにどこまでいけるかだけど(笑)

だから、C4Cで囲うつもりはないし、どんどん現場にだして、どこに出しても恥ずかしくないエンジニアに育てていくつもりです。


神園:デフが活躍する場をC4Cからどんどん広げていきたいですね!

有馬さん、藤原さんありがとうございました!

皆さん、有馬さん、藤原さんへのインタビューいかがでしたか?

今回はC4Cデフエンジニアリング事業部発足のきっかけや、デフエンジニアへの想いについてお話を聞きました。

C4C広報部では今後もデフエンジニアリング事業部の情報をお届けしていく予定です。また、社内メディアのC4C COCOではデフエンジニアリング事業部に限らずC4C社内のできごとも発信しています。


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ぜひ、立ち寄ってみてください!

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