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強いブランドは社員が作る! インナーブランディングの成功事例4選

インナーブランディングとは?

インナーブランディングとは簡単にいえば、「社内へ向けたブランディング」のこと。

自社で働く社員やアルバイトなどのスタッフに、ブランドの理念や企業が進もうとしている目標、ブランドの価値などを知ってもらい、社内外の様々な効果につなげる施策だ。

インナーブランディングの主な効果は、以下のようなものが挙げられる。


1.社員の向上心・モチベーションアップ
自社のビジョンや理念、価値観などを共有・浸透させることは、社員一人ひとりの意識を向上させることにつながる。「この会社の一員」という意識を持つことは、仕事の品質向上や生産性アップも期待できるため、多くの企業にとってメリットとなる。

2.離職率の低減
離職率の高さから人手不足に悩まされる会社は多い。そのため、社員の意識を高めて離職率の増加を防ぐことが必要だ。ただし、会社側の一方的な押し付けではなく、社員の考えや想いに寄り添うことが大切である。

3.顧客満足度の向上
社員がブランドの理念や価値を深く理解することで、商品やサービスの新提案や改善提案が顧客目線のものに変わる。そのため、より顧客を満足させる仕事が生まれるようになる。また、社員が自社の良いところを顧客や家族、知り合いに正しく伝えれば、社会的な評判アップにもつながるだろう。


では、実際にインナーブランディングに成功している企業はどんな取り組みをしているのだろうか。4つの成功事例を紹介したい。


ピザヨッカー:従業員の仕事に対する誇りが熱烈なファンを生む

宅配ピザ業界といえば大手数社がシェアを独占しており、中小事業者が勝つのは至難の業とも言える。

そんな中、船橋市で大手を凌ぐ人気を誇る小さな宅配ピザ屋がある。その名も「ピザヨッカー」。

ピザヨッカーは地元の人に本当に美味しいピザを楽しんでもらうため、あらゆる面で美味しくなるための工夫を施した。抜粋すると以下のとおり。


・生地は船橋で大人気のベーカリー「ピーターパン」に特注

・チーズは焼き上げた時に具の間に入り込んで溶けるように一辺3ミリ角にカット

・ピザソースは無着色保存料なしの無添加ソースを独自開発

・2ヶ月に一度新商品の施策を行い、合格するのは40品中1品のみ

・本場イタリアから水牛のモッツァレラチーズ、オリジナルチーズを特注

・国産地鶏や産直トマト、新鮮な桜えびなど、数量の問題で大手が大量に仕入れることができない贅沢な素材を思い切って使う

・ピザを美味しく焼きあげるための窯の温度も研究を重ね、理想的な60~70度を保った状態でお客さまの玄関先まで宅配

・「お届けの仕方もおいしさの一つ」と、従業員にサービスを徹底教育


これらの施策は、一見非効率なほど過剰にも思える。

しかし、同社はこうしたこだわりをホームページやチラシはもちろん、配達時のピザの入った箱にも表現することで、地域の熱烈なファンを着実に増やしていった。

なによりも、こだわりを追求し続けたことで、ピザヨッカーのいちばんのファンとなったのは店の従業員たちだ。

お客様からの熱烈な反響や感謝の言葉をもらううち、従業員は自分たちの仕事に誇りを持つようになる。

おいしいピザを届けるためにあらゆる手間を惜しまない。

ピザヨッカーの名に恥じないピザをお客様に食べてもらいたい。

こうした想いが社内にどんどん浸透していき、ピザヨッカーのブランドは研ぎ澄まされていく。

そして、従業員を中心にピザヨッカーのこだわりは地域に発信され、船橋市では誰もが知るブランドへと成長したのだ。



無印良品:経営層に著名なデザイナー陣を配置し、強固なブランドイメージを社内に浸透

無印良品を手がける良品計画は、クリエイティブなブランド形成に力を入れている。

その最たるものが、「アドバイザリーボード」という制度。外部パートナーという形で経営をサポートするポジションに著名なデザイナーを迎え、彼らが商品企画やビジョンなどの形成に関わる。

その面々は、かつては田中一光氏が在籍し、ほかにも原研哉氏や深澤直人氏、小池一子氏など日本を代表するデザイナーの名が連なる。

無印良品の店頭には、彼らの厳しいフィルターを通過した商品だけが並ぶ。

実は商品に統一されたデザインコンセプトはなく、ナチュラルカラーや自然素材が比較的多くはなっているが、厳密なルールなどは存在しない。

しかし、同ブランドが大切にする「生活美学」がプロダクトに表現されているかどうか、抽象的なものを視覚化するプロであるアドバイザリーボードのメンバーによって厳選されているのだ。

その結果、無印良品の世界観は見事に統一され、特別な教育制度などはなくても、社内に暗黙の空気感が共有されているという。

明確な定義はないけれど、明確なイメージはある

言葉にはない「無印良品らしさ」を社員一人ひとりが理解しているため、それが商品企画から店づくりから接客サービスまで、ブランドの至るところに反映され、ブランドらしさは力強く育っていく。

今や、一般の消費者の中にも「これは無印っぽいよね」というイメージの共通認識があるのではないだろうか。

ブランドの社会的認知をこのような状態に持っていくことこそが、インナーブランディングの一つの到達点と言えるだろう。



オリエンタルランド:「キャスト」で成功

東京ディスニーランドと東京ディズニーシーを運営する「株式会社オリエンタルランド」は、この2つのテーマパークの「夢の国」のイメージを揺るぎないものにすることに成功している。

2013年に2パーク合算の年間入園者数が初めて3000万人を超え、それ以降2017年までの5年間、多少の増減はあるものの3000万人超えを記録し続けてきた。

その理由には、テーマパークとしての質の高さに加えて、キャストの接客や対応の質の高さがあった。

この夢の国では、働く従業員を「キャスト=役者」と呼ぶ。顧客は「ゲスト」だ。

そして、キャストはゲストに魔法をかける重要な役割を担っている。

パークはただのステージで、ゲストの感動体験をつくるのは、あくまでもキャストなのだ。

同社は、キャストの接客の質を高めるために、接客ルールを覚え込ませている訳ではない。東京ディズニーリゾートには、キャスト用のサービスマニュアルというものが存在しないのである。

キャストにとって必要なのはマニュアルではなく、「ゲストにハピネスを提供する」という企業理念を理解し従うこと。

企業は、キャストという名の従業員に「ハピネスを提供する」テクニックを教えるのではなく、その「考え方」を徹底的に植え付けたのだ。

そのためには、まず企業側がそれを明確にする必要がある。

「何を目指すのか」が明確になり、そのための「行動指針」を企業全体に浸透させることで、キャストは同じ方向を向き、自発的に動き出すのである。

さらに、東京ディズニーリゾートでは、キャストのモチベーションを維持するための制度を充実させてきた。

キャスト同志の信頼関係の構築、アイディア公募制度、仲間同士で相手のよさを讃え合う「スピリットアワード」、上司から部下であるキャストに贈られる「ファイブスターカード」、キャストが休日や空いた時間に自分の担当ではない仕事を体験できる「デュアル・キャスト・エクスペリエンス制度」などがそれに当たる。

インナーブランディングによって、キャストの「夢の国」という自社ブランドに対する愛着はさらに深まる。

そして、そのキャストたちが、ゲストに最高の接客をすることで、ゲストに「夢の国」を何度も訪れたいと思わせる感動体験を生み出すことに成功しているのだ。



ANA:社員の手で作られた「グループ行動指針」のリアルさ

ANAは、2012年に「ANA’s Way」と題したグループ行動指針を打ち出した。

それまでの企業としての長い歩みの中で培われてきた「ANAブランド」の価値を再認識し、未来につなげるために改めて策定されたものだ。

このグループ行動指針を包括する言葉が「あんしん、あったか、あかるく元気!」。

この言葉は、社長直轄の社員によるプロジェクトチームによって生まれた。社員自身が自社のサービスやブランドのあり方を徹底的に考え抜いた結果、この言葉にたどり着いたのだ。プロセスでは、多くの社員がこのプロジェクトチームに参加し、多くの時間が費やされたという。

ANAグループは行動指針を、「ANAらしさ」を自分たちが探した結果たどり着いた、と発信している。

この指針は、広告等を通じて顧客のANAに対する期待を高めただけではなく、ANAで働く全社員の「自分たちらしさ」を定義づけた。

ANAは、この言葉が意味する価値観を全グループ社員に浸透させるための様々な取り組みを行っている。社員の仕事への想いや姿勢、満足度を分析し改善する「グループ社員意識調査」や「ANA’s Way 遂行度評価制度」は「ANA’s Way」の実践を強化。

また、社員一人ひとりがANAグル―プの歴史を学び、あるべき姿を再認識する研修「ANA’s Day」は、日本国内のみならず海外の全支店でも展開され、社員の自ら実践しようとする意識を高めることに成功している。ANAグループの歴史展示施設の設立も、その取り組みのひとつと言えるであろう。

さらに、こうして高まった社員の意識を日常での行動に結びつけるために、ANAは顧客から集めた声をデータベースに落とし込み、その中からサービスに関する課題を抽出している。

「顧客の視点」を元にすることで、社員の日々の行動や意識を可視化。社員へのインナーブランディングがなされているかどうか、継続的に確認することでANAブランドのクオリティを保ち続けているのだ。

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