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9年前沖縄で宿を始めたたったひとつの理由

きっかけはオーストラリア

13年前の2006年(当時28歳)、私たちは住み慣れた横浜と東京から沖縄へ移住しました。自然豊かで海が美しく、人も気候も社会も暖かい。そんな環境で結婚生活と子育て生活をしてみたいと思ったからでした。

都会で忙しく毎日を過ごしていた20代後半、妻文子が滞在していたオーストラリアに夫祐介が会いに訪れたのがきっかけになりました。都会で生活する日常からは想像しがたい真逆の社会がオーストラリアにはありました。多少の不便はあるけれど、仕事が終わったら当たり前のように皆が早く家に帰って家族中心の時間、自分の時間を過ごす。自分たちの時間や家族との暮らしの時間を大切にする社会環境って、至極真っ当だなと思ったのです。そんな環境と、そこに住んでいる方々の生き方や暮らし方に強烈に惹かれたのです。

沖縄へ移住しよう

帰国後、これから結婚生活を営み子育てをしていくのなら、自然に囲まれた土地で自分たちの生活を大切にしていく自分たちが納得する暮らし方をしたいと思い、環境がオーストラリアに似ていると感じた”沖縄”を選びました。

そして結婚と同時に沖縄那覇へ移住。2人とも地元企業に就職し、本土と沖縄の習慣や企業風土の違いなどに驚き楽しみながら3年間、それぞれの知見を深めていくことになります。週末や休みには沖縄本島や離島を含め、観光地やカフェ、居酒屋など気になるお店をつぶさに見て周り、また共通の趣味だったダイビングで沖縄各地の海を潜るなど、仕事でもプライベートでもじっくりと沖縄を楽しみ学んだ3年間。その3年が私たちの礎になったのだと感じています。

宿をはじめよう

私たちが那覇生活をしているころ、夫の両親が第2の人生をと少し先に沖縄に移住し「マチャン・マチャン」という宿を始めていました。週末などに時々、沖縄北部の今帰仁に住む両親を訪ねていると、子育てをするなら、私たちが好きな沖縄と旅に家族で関われる宿を営み、家族中心の生活を送るのが良いのではないかと思うようになっていきました。

その後、マチャン・マチャンの隣地を購入できることになったことがきっかけで、2009年(当時30歳)、長男の妊娠中に北部へ移り住むことにし、宿の建設・企画準備が始まりました。「マチャン・マチャン」は”小学生以上から宿泊可”の宿なので、子育て世代の私たちは、乳幼児から宿泊できる新しい宿を立ち上げることにしました。

宿を開業してわかったこと

宿の開業準備と運営は長男の子育てが重なり、忙しく余裕のない毎日でした。夫婦で2人で開業したのに「息子の一瞬一瞬を見逃さない!」がモットーだったので、どちらかが仕事、どちらかが息子と、ほぼ1人で実働をしているような状態の日々。初めての子育てをしながら初めての開業をするのはかなりの困難でした。当然、私たちが思い描いていたようなゆったりとした生活なんてできるわけもありません。”仕事”と”子育て”どちらも中心の生活は大きなプレッシャーでした。

これはどんな場所でどんな生活をしようとも、お客様に喜んで頂くため、子どもを育てていくためには、きっと誰しもが感じていること、そして自分で生きるってそいうことなんだと強く感じました。沖縄で暮らしている、沖縄で開業した、だけでは何ともならない現実がそこにはありました。

ただ、そこで感じた思いは、それ以降ずっとtinto*tintoの運営の根幹になりました。「自分たちのような新米のママパパで日々子育てと仕事に追われて忙しい同世代のお客様が小さなお子様と安心して泊まれる宿」「子育てを頑張っていて自分が行きたい場所やお店に行けず我慢しているお母さんに喜んでもらえるような宿」「家族みんなの思い出に残るような宿」を作りたいということでした。

家族の成長に宿運営を合わせること

宿の運営が軌道に乗り、一見、理想に向かって歩み出したかのように見えますが、圧倒的な現実を前に理想だけでは何ともならないと感じるようになります。理想だった自然豊かな今帰仁での生活が日常になるのです。やりたいと始めた「仕事が生活、生活が仕事」であるという環境が、子供が成長するにつれ、不便に感じるようになってきたのです。お客様がいらっしゃる時には子どもがうるさくするのを叱らねばならない。子どものペースで生活したかったのにお客様のペースに合わせねばならない。子どもがぐずる時間とお客様がいらっしゃる時間が重なってしまう。などなど。

そのため長男が3歳の頃、宿兼自宅であった今帰仁から、生活拠点を名護に移すことにしました。仕事においても家庭生活においても大きな方針転換のひとつでした。

以降、「私たち自身が辛くなってはいけない」「私たちの家庭生活や暮らしに合わせた仕事をすべきだ」という思いで、やり方や運営方法を、家族の成長に応じて柔軟に変えていくということ、これを徹底するようにしていきました。ご好評を頂いていた1組限定朝食のご提供を人気シーズンである夏休みにお休みさせて頂いたり、次男の出産の時にはサービス業だというのに1年ほどは土日を休みにしたり。

理想だからとそのまま押し通していたらきっと今のtinto*tintoは無いかもしれません。結果、仕事と生活を分けることで、改めて感じることがたくさんありました。お客様を丁寧にお迎えするということ、綺麗な海のそばで仕事をすることなど、日々の子育て生活のなかで良さというより億劫に感じてしまっていたことが、やはり素晴らしいことだったのだなと改めて気づくことができたのです。私たちが日々を過ごし生活する日常と、事業として作り上げてきたtinto*tintoの非日常。どちらもとても大切なものだと気づくことができたのです。きっと理想までの道のりには、遠回りがつきもので、でも結果、それが一番の近道だったと後々で気づくことができるのかもしれません。

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