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C向けアプリビジネスの教科書 用語説明からベンチマーク指数の解説、Facebookの業績分析まで

初めまして、株式会社Ariiの新井貴雄と申します!


弊社ではモバイルeスポーツアプリ「バトルドリーム」というサービスを開発運営しておりまして、「スキマ時間を、夢に変える。」をキャッチコピーにゲームをしながら自分の現実世界を豊かにできる、そんなサービスを開発運営しております!

この記事は社内の開発チームがアプリビジネスのKPIや用語を理解できるようにと作っていたものをベースに公開しました。
そもそもこれを書こうと思った理由は、スマホアプリビジネス自体10年以上の産業史がある割にも関わらずネット上にあまりソースがまとまっていないよなと思ったことがきっかけです。そのため僕自身もはじめはこの辺りの理解に苦労しました。

ですので、この記事がみなさんの参考になれば幸いです!(転載、引用は自由にしてください!)
対象読者:スタートアップでアプリ開発をしようと思っている起業家、アプリビジネスにアサインされた責任者の方、アプリ開発に関わっているがビジサイドの用語など言っていることが理解できないので勉強しようと思っている開発陣の方々ですと楽しく読んでいただけると思います。

1.CPIの種類について
CPIはCost Per Installの略で1インストールあたりの単価のことを指します。CPIはいくつかに因数分解することができます。




例えば、3つの媒体で広告出稿をして、媒体Aから300円、400円、200円だとして、友達招待のプレゼントで100円分のアイテムを付与します。また全てのチャネル(流入経路)からのインストールが同じだとするとCPIは下のようになります。




気をつけなければいけないことは、流入経路によって継続率やARPUが異なることです。そのため、どの指標を重要視しているフェーズなのかによって注力しなければならない流入経路は異なってきます。

2.ARPUとARPPUの違い
ARPU(アープと呼ぶことが多いです。)はAverage Revenue Per Userの略で指定期間における1ユーザーあたりの平均的売り上げを示す指標です。例えば1日で見る場合はARPDAU(Average Revenue Per Daily Active User),1ヶ月で見る場合はARPMAUと呼ぶことが多いです。
ARPPU(エーアールピーピーユーと呼ぶことが多いです。)はAverage Revenue per Paid Userの略で、指定期間における1課金ユーザーあたりの平均的売り上げを示す指標です。主にソーシャルゲームのように課金しなくても遊べるサービスや、課金+広告売上が存在するサービスの場合に使用します。

ただこれらに関しては明確に分別されているわけではなく企業習慣や文化、またはそのコンテキストによってはARPPUをARPUと表現していたりしますのでご注意下さい。

3.DAUとWAUとMAUのどれを重要視するか

DAU、WAU、MAUはそれぞれ日次、週次、月次のアクティブユーザーを示す指標ですが、どれを重要視するかはサービスの思想によって異なります。

よくあるパターンとしては、
MAUとDAU/MAU比率を追っているパターンが多いと思いますが、サイバーエージェントが運営する「ABEMA」ではリリース当初よりWAUをKPIとされています。勝手な推測ではありますが、サービス思想として「モバイルに最適化されたテレビ局」を志向しているサービスとすると、DAUやMAUだと特定の曜日の番組を見ているユーザーの行動を正確に測れないという思想でこういったKPI設計をしたのではないかなと思います。




引用:https://www.cyberagent.co.jp/ir/library/ataglance/

4.継続率について

継続率はリテンションレート、RRなどと表現されることが多いですが意味としては指定期間内で初日を100%とした場合に何%の人が使ってくれているかの指標になります。
継続率のベンチマークはサービスジャンルや地域によっても異なりますので一概には評価しづらいですが、30DRR(30日後のリテンションレート)が15%を超えているようなサービスだと素晴らしい継続率だと言えると思います。



引用:https://data.metaps.com/blog/2020/10/29/app_analyticstool_retention/

継続率で注意しなければならないことは、日次、週次、月次の継続率は異なるということです。日次の継続率は今日ダウンロードした全ユーザーの毎日の継続率を追っていきますが、週次の場合はその週で一度でも起動すればカウントされるので、基本的に継続率は日次<週次<月次の順番で数値が高くなります。どの継続率を重要視するかはサービス設計にもよりますので、自分たちのサービスの性質にあった継続率のKPIの設計をおすすめします。

5.CPMとRPMとeCPMの違い

CPMはCost Per Milleの略で広告表示1,000回あたりの費用を指します。主に広告出稿の際に使用する単語です。RPMはRevenue Per Mille の略で広告表示1,000回あたりの収益を指します。主にアドネットワークや純広告でマネタイズをする媒体が使用します。eCPMはeffective Cost Per Milleの略で、計算上で求められる実際の広告表示1,000回あたりの費用を指します。例えば広告費が20,000円かかり、imp数が10,000impだとするとeCPMは2,000円になります。eCPMはメディア側の収益単価を見る際にも使用するのですが、なぜeRPMでないのかは僕自身もちょっとわかりません。(苦笑)

6.アプリビジネスでのLTV算出方法について

LTVとはLife Time Valueの略で生涯顧客価値と訳されることが多いです。個人的にはアプリビジネスを始めた際これが一番の難題だった気がします。よくSaaSやサブスクサービスのLTVの計算式は記事にありますが、アプリビジネスのLTV計算式はなかなか調べても出てこないんですよね。
(SaaSやサブスクのLTVについては、このブロブとか詳しく書いてありますのでお時間あればぜひ見てみてください。「ユーザの平均継続期間が「1/解約率」で求められることの数学的証明」

後ほど後述しますアトリビューションツールでLTVの取得ができますが、ここではシュミレーションなどをする際に使える計算式をお伝えします。

そもそもアプリビジネスの場合は、LTVをどの期間に設定するかが必要となります。それこそLINEのようなアプリの場合ロイヤルユーザーは10年近く使っていると思いますが、それを言い始めるとLTVのまともな計算ができません。そのためLTVという指標自体を利用するシーンは逆にいうと広告運用をはじめとした獲得コストに対する投資効率を計算する際に使用しますので、ほとんどの場合は投資回収期間として妥当な30Dや60D、長めに見る場合は365D、720Dなどで見ることがあります。

それを踏まえて、LTVの計算をする際なのですが以下のような計算式で算出することが可能です。

LTV(0~365)=平均ARPDAU×(D1+D2+D3••D365の継続ユーザー数) / 初日のDL数
例えば、ARPDAU10円で継続率が

D1 50%
D3 35%
D7 27%
D30 12%
D60 9%
D365 5.95%
とすると365DのLTVはおおよそ334円になります。(正確には全ての日にちのRR次第でLTVは変化します。)



毎回計算するのは大変なので一度RRというスプレッドシートのフォーマットを作るといつでも使えるのでおすすめです。



7.各ジャンルのARPUのベンチマーク指数

アプリの収益性は各ジャンルによっても異なります。もちろんこの数値は固定ではなく常に上下するのと、地域によっても異なりますのであくまで参考値程度にしてください。
*分かり易さのため今回は全てARPDAUで統一しました。もしARPMAUを知りたい場合は以下のARPDAUに月間平均起動回数を掛け算していただければと思います。

ゲーム
ゲームの場合は、ソーシャルゲーム(高ARPU)、ソーシャルゲーム(低ARPU)、カジュアルゲームの3つに大別される複雑なジャンルなのでいくつかに大別して説明します。大別した際のベンチマークはおよそ以下の数値の範囲になると言われています。

ソーシャルゲーム(高ARPU) ARPDAU 数十円~数百円前後
例:ウマ娘、モンスト、パズドラ、荒野行動など
ソーシャルゲーム(低ARPU) ARPDAU 数十円〜数十円
例:LINNEツムツムなど
ハイパーカジュアルゲーム ARPDAU 数円~10円前後
例:Voodoo

これらの数値を先ほどのLTVシュミレーションに追記してみました。(計算を簡易にするため先ほどのリテンションの数値をそのまま利用しました。)
ソーシャルゲーム(高ARPU) ARPDAU 80円の場合



そうすると60日のLTVが888円になりました。ソーシャルゲームの目標Ad CPIが600〜800円と言われていますので、非常に納得感のある数値になりましたね。次に、ハイパーカジュアルゲームの計算をしてみました。
ハイパーカジュアルゲーム ARPDAU 10円の場合


ハイパーカジュアルゲームのAd CPIが60〜100円と言われていますので、こちらも上記ARPDAUが出ると、60日で投資回収できるLTVになりました。
(アプリの広告運用では指定期間での投資回収率のことをROAS N%と表現します。例えばAd CPI100円で獲得したユーザーのLTVが59日目に101円になったとすると、「ROAS100%を59日目に超えました」と表現します)

その他アプリ
その他のアプリジャンルは以下の数値をベンチマークにするといいかもしれません。

SNS、メディアアプリ(アドネットワークのみ) ARPDAU 数円〜10円
漫画アプリ 数十円〜数十円
ライブ配信アプリ 数十円〜数百円
※ショッピングアプリやデーティングアプリはARPDAUがあまり意味をなさない指標なので今回は割愛しました。

LTVの算出やARPDAUのベンチマークを理解すると、なぜ多くの投資家が「オーガニックで伸びている」ことにこだわるのかお分かりいただけましたでしょうか? 実はほとんどのアプリは広告投資に耐え続けるLTVを出せることが非常に少ないからなのです。(逆にいうと高ARPUのソーシャルゲームは継続率次第では十分広告投資に耐えられるのでこれだけ多くの広告が世の中に溢れているわけです。)

8.C向けアプリのパターン仮説について
それらを踏まえて、成功しているC向けアプリには大別すると2パターンが横軸であり、縦軸にはARPUをベースにしたイクイティロジックの2パターンで計4パターンが存在していると思っています。

9.Facebookの業績分析

本日お伝えした知識を踏まえた上でアプリビジネスの王者、Facebookの数値を見てみましょう。(Facebook社の決算資料は情報の透明性が高く、勉強資料としてとても使いやすいです。SECへの報告書に記載あるとおり以下の数値にはWhats AppやInstagramの数値は含まれていません。)
※分かり易さのため、本記事ではFacebookアプリを「Facebook」会社を「Facebook社」と定義します。
引用:https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1326801/000132680116000087/fb-9302016x10q.htm


直近四半期でのDAUが何と18億DAUというさすが王者というような数値。笑しかもDAU/MAU 比率が2021/Q1で66%ということで月間アクティブユーザーの6割以上が毎日立ち上げている計算になります。(笑)



ARPUに関してはMAU,DAUなどの表記がなかったのですがユーザー数と売上から計算してみるとARPMAUだと推測がついたので、ここではFacebookのARPU=ARPMAUだと仮定します。そうすると、Facebookの最重要地域の北米は
$1=110.22円(20221/8/8)
ARPMAU=$48.03
DAU/MAU=66%=20day
ARPDAU=$48.03/20=$2.40*110.22=約264円
という結果になりました。もはや北米在住者の半数以上からソーシャルゲーム並みの単価収益を得ていると同等の数値なので、Facebookがいかに収益性の高いサービスであるかお分かりいただけましたでしょうか。
しかもこれを、ほとんど広告費をかけずにここまでグロースしているわけですから途轍もない利益をあげる会社になったのが理解できますし、ここまでプライバシー問題が取り沙汰されてもなお広告ビジネスに拘る理由や、純広告ビジネスが全てのSNSにとってはいかに重要か、また北米で目を出し始めるSNSを片っ端から買収するor潰す理由など世の中のニュースの背景が見えてきますよね。

10.C向けアプリビジネスにおすすめのツール、サービス紹介
本記事も終わりが見えてきましたので、ビジネスサイドが実際にアプリビジネスを行う上でおすすめのツール、システムがいくつかあるのでご紹介します。

分析、解析編
・アトリビューションツール
両OSの分析ツールである、AppStore Connect, Play Console 共に基本的な分析機能はありますが、細かく分析するためには以下のようなアトリビューションツールの導入をおすすめします。(WebサービスでいうGoogleアナリティクスみたいなものと理解ください。)

・AppsFlyer
AppsFlyer | 信頼できるアトリビューションデータ正確なデータの提供、お客様第一主義、業界標準を超えるプライバシーとセキュリティで、AppsFlyerは世界のトップ企業からwww.appsflyer.com

・Adjust
モバイル測定企業 | Adjustモバイル計測を簡単に:Adjustはお客様のマーケティング活動を管理画面で一括管理し、ビジネスの拡大に必要な情報やデータをwww.adjust.com

・Tenjin
Tenjin - Free attribution, Ad Revenue LTV, Cost and ad revenue aggregation, Automation APIs, Internal BI on demandTenjinWebsitewww.tenjin.com

これらのツールは流入経路ごとに独自のURLを設定できるので、どのチャネルから入ってきたユーザーの継続率が高いのかといったことや課金イベントやアドネットワークを設定することで指定期間でのLTV算出なども可能です。弊社はAppsFlyerを使っていますが、上記であればどれでも基本的な機能は変わりません。

市場、キーワードリサーチ編
・App Annie

App Annie|アプリ市場データと分析プラットフォームApp Annieは、世界最高水準のアプリ市場データと分析ツールを提供しており、直感的でシンプルなプラットフォームは、アプwww.appannie.com

・App Tweak
アプリ&ゲーム向けのASO対策ツール | アプリダウンロード数を増やす | AppTweakAppTweakは、シンプルなインターフェースで実用的なインサイトを提供し、新たな成長の機会を見つけることで世界のトップモwww.apptweak.com

これらのツールは市場動向やキーワード分析を行う際に利用します。
サービスごとにデータの算出ロジックが異なりますので必ずしも正確であるとは言い切れませんが参考にするには十分の価値があります。月額金額が結構するのでそこだけがネックですね。

マネタイズ編
アプリビジネスの場合、マネタイズはほとんどアプリ内課金なので創意工夫の余地は少ないですが、広告収益を主にするアプリの場合、以下のようなサービスはおすすめです。

・メディエーションツール
メディエーションツールは、複数のアドネットワークを各impごとにビッティング(競争入札)させて一番高単価の広告在庫をもつアドネットワークを呼び出してくれるツールです。一つのアドネットワークしか接続していない場合、広告在庫がない場合やメディア側が希望する単価で広告在庫をアドネットワーク側が出せない場合、メディア側は収益機会を損失することになります。これらのツールはそういった機会損失をなるべく減らしてくれます。

・AppLovin MAX

MAX | AppLovinアプリ内ビディングを活用する収益化ソリューション「MAX」では広告在庫に対し全ての広告主の入札が一度に行われるため、競争がjp.applovin.com

・Admob メディエーション
メディエーション | Android | Google Developersdevelopers.google.com

・MoPub
MoPub | Japanwww.mopub.com

これらのツールはどれも大手アドネットワークの会社が運営していますので機能の差異は少ないです。弊社ではMAXを使っていますがそれぞれ問い合わせをして何が違うのか?自社の都合にはどれが合うのか?を確認するのがおすすめです。

メンター編

アプリビジネスは多岐に渡る知見が必要な上に詳しい方々は抽象的なことしか教えてくれないので、今回は日本語が話せて、アプリビジネスに詳しく、面倒臭い質問にも答えてくれる代表格を3名紹介します。(笑)
Smartly社 坂本さん


坂本さんは楽天、Google(Admob)、Applovin、とアプリビジネスにずっと携わっているので非常に知見が多く、新井も週に数回は相談しています。笑
特に広告運用が前提になるハイパーカジュアルや広告マネタイズが中心になるアプリの場合はぜひ相談してみてください。

1LDK社 朝岡さん



朝岡さんはアカツキ社の元プロデューサーだったのでエンタメ系アプリや特にソーシャルゲームに関してはめちゃくちゃ詳しいです。1ユーザーあたりのARPPUが高いアプリの場合はおすすめです。

ナナメウエ社 石濱さん



石濱さんは、「Yay!」という音声、コミュニティアプリを運営していてコミュニティアプリやSNSに関して狂気的なまでに考えている人です。もしコミュニティ要素のあるサービスをやるなら一度相談してみてください。

最後に

「アプリビジネスでは何が重要なんですか?」と言われると結論は「使い続けてくれるユーザーさんが増え続けてくれること」だと思います。
これが本当に大変で僕らも毎日頭を悩ませています。

ということでそんな弊社の課題を一緒に解決してくれる方を絶賛募集中ですので、まずは気軽にお話をさせてください!一次面談から新井も参加しますのでぜひ感想などカジュアルにお話しさせてください!
弊社に少しでも興味を持っていただいた方向けに会社について少し理解いただける資料を用意しておりますのでこちらもぜひ覗いてみてください。

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