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結果だけが、あなたを守る: 川鍋一朗 at TEDxKeio

2014年9月24日、慶應義塾大学三田キャンパスにてスピーチイベントTEDxKEIOが開催され慶應義塾大学の卒業生である日本交通社長、川鍋一朗氏が登壇し、スピーチを行いました。スピーチの内容は「仕事をするうえで大切なこと」。川鍋氏が日本交通に入社した頃は1900億円の借金を抱えていました。そこからどのように借金を返済したのか、そしてそこから何を学んだのかを語っています。



川鍋社長の経歴

今日は、結果だけがあなたを守ってくれるという話をしたいと思います。

私がそもそもここに立っているのはそもそもこの人のお陰なんですね。私の祖父、川鍋秋蔵。一代で日本で最大のタクシー会社を創ってくれました。私の父二代目。この二人にやっぱり私はすごく影響を受けたんですよね。ちっちゃい頃から祖父も父もタクシー協会の会長とかやっていたのでしょっちゅう家に来たんですね、タクシー業界の人が。それで来る度に「これが三代目です。」って紹介されるわけ。一応ですよ。そうすると必然的にやっぱりこう洗脳されてきますよね。「自分が三代目なんだ」「ここの社長になるんだ」って。

それを1ミリも疑わずに今日まで来ています。おかげさまで慶應幼稚舎に入れてもらって普通部中高、そして大学では体育会のスキー部に入りました。大学の時に私のすごい尊敬する先輩がいて、その先輩は私と同じような跡取りだったんですよね。その先輩が「一朗くん、僕はね、卒業したらMBAを取るんだ」「MBAか…。かっこいいな。」と思って。
それでMBAに行きたいと思って行きました。しかもノースウエスタン大学のケロッグビジネススクール。
その後、やっぱり社長になるには多分コンサルティングでの経験が役に立つんじゃないかと思って、マッキンゼーというアメリカのコンサルティング会社の東京支社で3年くらい働きました。


借金は1900億円

これで自分の人生のトレーニング期間終了。考える限りの自分としてはここ日本交通の社長になるのに一番良いトレーニングを積んでいざ、本番開始って感じですよね。
2000年に、29の時に日本交通に入りました。ちょっと思い違いだったのが、入った途端にですね、借金がたくさんあるってことに気づいたんですね。1900億円。もう100億円超えるともうあまりわからないですよね(笑)。なんか実感ないですけどね。

でも借金を返す方法って2つしかないです。1つはとにかく持っているものを売る。売りまくりました。本社とかね、家とか、ホテルとか、ゴルフ場とかね。私もスキーそこでやっているわけだったからスキー場とかね。ピザ屋とかも全部。まあ売るのは良いんです。そんなに実は難しくない。

難しいのはもう1つの借金を返す方法。その2、会社を上手く回して利益に還す。
会社を上手く回すには取締役会ってのが大事なんですよね。その会社の中の最高意思決定機関ですから。私も日本交通の取締役会のメンバーで。ビジネススクールから学んできたことをいっぱい喋りたい。一番こうなんですかね、戦略的に激論を交わすところでどんな議論をしているのか、楽しみに行ったら、経理部長が「今月の売り上げは何某で今月の利益はこうでございます」。シーン。社長である私の父も「今月の売上利益共に良いな、何でだ。」と聞くと、「はい、雨でございました。」と。


改革のつもりでやったことが毎月赤字2000万円に

これちょっときついなと思ったんですよね。この会社を変えるのは難しい。だから自分は新しいノアの箱舟を作ってそっちを大きくしてそしてこの沈みゆく泥船を救ってやろうと。そう思って子会社を創りました。銀色のミニバン50台買ってね、英語が喋れる運転手さん50人雇って。斬新だと思う。こうやって取り上げられるんですよ。
日経ビジネスって皆さんご存知ですか。最初マッキゼーの時に載りたいと思ってね、最初三行ぐらいしか載らなくてね。
いきなり見開きです。「流石だよ俺って」。で、結果がこれです。

最初の月の売上が11万3000円、196万円、231万円、660万円ってどんどんどんどん右肩上がり、売上ね、伸びて。すげえと。
ところが、50台で50人ですからね、コストが数千万円かかるんですよ。毎月。で、結局毎月約2000万円ずつの赤字。1年間で2億100万円のになっちゃった。
流石にね、最初のうちは3ヶ月、半年くらいは私も「もうすぐ良くなりますよね。」って言っていたんですけど、私の周りの人も「この今の良くない会社の状況を救ってくれる人がいるとすればこの人かもしれない」「まだ若いけども慶應だし、ビジネススクールだしマッキンゼーだし」と。みんなのほのかな期待の色が段々目から薄れてくるわけです。「この人もだめだった」。やばいな。


10個新しいことをやってみる

流石に1年間毎月2000万ずつの赤字を出す人間ね、素直になります、最後に。どうしよう。でも逃げるわけにはいかないですよね。しょうがない。今からできることをやるしかない。
今からできることって言ったら何だろう。「やっぱり自分はコンサルティングしかやったことがない、コンサルティングだ」と。
それで若手にね「集まってくれ」って言って。「ランチ奢るから」って。
「何したら良いか教えてくれ」ってホワイトボードにわーって書いていって。100個ぐらいあった中でどれが一番か考えて10個ぐらいその若者たちと一緒にやったんですよ。起死回生ってのはこういうことですよ。

ハイヤーってタクシーと違って売上がバラバラなんですよ。普通ボリュームディスカウントなんで大きいお客さんほど利益率が下がるはずなんですよ。
ところがバラバラなことに気づきます。
すごい売上が大きいのだけれども毎月赤字垂れ流しなお客さん。「これまずいじゃん」と。

それでその若手たちと一緒に行ったんです、このお客様に。「すみません申し訳ないんですけれども当社赤字でございまして…値上げさせてください」。8割型値上げさせてもらえました。
やっぱり大企業の総務とかはわかっているんですよね、大体情報持っていますから、「チケット安いな」とか。わずか3ヶ月で5000万円くらい利益がどーんって出たんですよ。ラッキー。

上手くいかないものもあったんです。例えばすごい大事だからって、交通安全プロジェクト。すごい大事なんです。確かに事故は減ったんです、去年に比べて。
だけどどうも誰も納得してないんですよね。「何で?」って聞いたら」一朗さんに恥かかせちゃいけないって俺が一生懸命頑張ったんですよ」って。
つまり自分私じゃなくて我々頑張った。そうか、気づいたのがどんな大事なネタをやるよりも結果が出やすいネタをやるってのがすごい大事なんだと。
そしてしかもその結果ってのは短期間、しかも「全部俺がやった」と言える。

あともう一つ気づいたのは、いっぺんに10やって良かったってことなんです。最初はどれが当たるかわかんないですよ正直。でも10くらいやれば2、3は当たるんです。
1個を正確にやるよりももういい加減、適当でいいからいっぱいやる方が大事なんだと。
結果が出たら言いまくらないといけないです。人生みんな忙しいから誰もあなたが何やっているかなんて興味ないんです。だから言わなきゃいけない。「私これやりました」。こんなうまくいったことをね。


社員とコミュニケーションを取ってみてわかったこと

だけど言うと何が起こるかというと必ず批判が起こります。「一朗社長はどこまで乗務員を泣かせれば気が済むのか」と。散々たくさん手紙とかファックスとかが来るんです。
で、こういうのをどうする。無視します。
最初の頃は私も真面目に2chとかも全部読んでね、これは経営者の務めだと思ってたんです。だけどオーバーリアクションしちゃうんですよね、どこかで。
「いや、こういうことを言ってる人がいますけどそうじゃないんです、こういうのなんです。」って。そのうち「社長誰もそんなこと思ってないです」って言われて。そうなんだと。

めげずにコミュニケーションしまくります。最近はメールとかで。地球温暖化を防ごうクールビズなんて。そうするとこういうのが返ってきます。
「イチローちゃん、貴方が一番暑苦しい。君が居なければ、日本交通はクールビズ。」って。おっしゃる通り。すごく思ったらなんでこの人たち斜に構えてるんだろうって。

東京駅に行って300人も並んでるタクシーの運転手さんに聞いたんですよ。「何でみなさんタクシーやってるんですか」って。やっぱり「時間がある程度自由になる」とか「運転が好きだ」とかそういうのが来ると思ったんですよ。
ダントツ1位は「ほかにやることが無かったから」。なるほど。
続いて聞いたのが「何で今の会社に勤めてるんですか」。「車両が良いから」「大手だから」「社長が良いから」ってね。何の事ないダントツ1位は「家に近かったから」。2番目は「知り合いがいたから」。

そう、やっぱりこういう人たちのね、ハートをぐっと掴むにはどうしたら良いかわかったの。「俺も運転しよう」。
実際1ヶ月ハンドル握って街に出て色々わかりました。でも多分私が一番得たのは社員からの共感だったんじゃないかと思います。


「結果しかあなたを守ってくれない」

ぜひみなさん、慶應すばらしい、関係ないです。ビジネススクール、マッキンゼーね、何代目とか関係ない。今あなたがいる場でこれから皆さんが入る場でどれだけの結果をちゃんと出せるかって人はそこしか見てないですね。
結果だけしかあなたを守ってくれない。だから、何とか結果を出しましょう。
そのためにいきなり大事なことってやると真面目過ぎてだめなんです。
大事かよりも結果が出やすいかどうか、結果が出やすい方をやる。しかもたくさんやってください。どれか当たります。当たったものをきちっと言う。アピール。
当たらなかったらね、黙っていれば良いんですよ。


結果を出して人生を楽しもう

みなさんもぜひとも結果を出してください。エンジョイですね、人生を楽しく生きたいと思います。私も最近はこうやって楽しんでます。



東京・日本交通グループ
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