Wantedlyは、月間200万人が利用する国内最大のビジネスSNSです

This page is intended for users in Japan. Go to the page for users in United States.

【アニメ製作会社の中の人#04】アーチ株式会社平澤さんインタビュー/アニメ業界で起きている20年に一度の変革期を加速させていきたいと思っています

平澤直(ひらさわ なお)さん。早稲田大学法学部卒業。現アーチ株式会社代表取締役、株式会社グラフィニカ代表取締役社長、株式会社YAMATOWORKS取締役、株式会社Yostar Pictures取締役。Production I.Gには2006年-2014年の8年間在籍。


プロダクションI.Gに法務として入社後、持ち前の推進力を生かし『輪廻のラグランジェ』『翠星のガルガンティア』などのオリジナル作品を含む、数多くのアニメ作品のプロデュースを仕掛ける。I.G退職後は、株式会社ウルトラスーパーピクチャーズを経て、アニメの企画・プロデュースを行うアーチ株式会社を設立。サウジアラビアと日本の合作となる初の劇場アニメ『ジャーニー(The Journey)』のプロデュースや、スマートフォンゲーム『アズールレーン』で知られる株式会社Yostarとのアニメ制作会社の設立など、アニメ業界に新たな風を吹き込み続けている。



本日はご機会を頂き有難うございます。まずは、平澤さんが現在どのようなお仕事をされているかお聞かせください。

一言でお伝えすると「アニメの企画・プロデュース」と説明させていただくことが多いです。もう少し具体的にすると、大きく3種類になります。

1つは、新しくアニメを作ろうと思って業界に参入してくる国内外のゲーム会社さんや配信会社さんとのお仕事です。お金はあるしアニメは好きなんだけど、実際の作り方がわからないというときに、プロデュースをお手伝いします。その企画にとって最適なアニメスタジオを選び、そしてそのスタジオの力を最大限発揮してもらうためのお手伝いをする。その後アニメが納品されて世に出るところまでお付き合いし、場合によっては宣伝までお手伝いさせていただく。そういった形が多いです。

2つ目は、アニメスタジオさんからのお仕事になります。良いクリエイターさんはいるんだけど、すべての工程を自分たちだけでは賄えない。そういうときにお手伝いとして入って、クライアントと交渉したり、アニメスタジオさんだけでは賄えないリソースの確保を担当したりします。

1つ目で分かりやすい例としては、サウジアラビアの企業と一緒に映画を作っていること(『ジャーニー(The Journey)』。2020年上映予定)。2つ目のわかりやすい例としては、YAMATOWORKSの企画開発やプロデュースをしていることが挙げられると思います。

3つ目として、自分たちのお金を使ってコンテンツ開発をやったりもします。最近で言えば『みるタイツ』という作品もその一つです。世の中、たくさんのアニメがありますけど、フォーマットで言えばCM・劇場・土日朝・深夜という風に、実はあんまりない。すでにお客さんを持っているクリエイターさんが、深夜アニメという枠にはめずに、自由に自分のお客さんとコミュニケーションをするためのきっかけとして、アニメが役に立つ。そんな風な考えで、コンテンツを作っていきました。


魅力的な内容ですね。お仕事は「企画・プロデュース」とのことですが、「コンサルティング」という表現にもなるのでしょうか?

コンサルティングは、依頼を受けて、相手に影響を与えるのが仕事だと思っています。ただ、この仕事がコンサルよりやや業務範囲が広いのは、お客さんに提案して終わりじゃなくて、最後までお客さんのそばに居続け、OKの出た提案内容を実装し続ける。一緒にいる時間がもう少し長くなると思っています。影響を与えて終わり、にしないようにしてるんですよ。その方が知見も溜まりますし、お客さんとの次のご縁が生まれやすいとも思っています。これは、I.Gの企画室での経験が源流になっているかもしれません。


I.Gのワードが出てきました。それでは次の質問で、I.G時代はどのようなことをされていたのでしょうか?

企画室で、今の仕事の原型になるようなことをさせてもらっていました。現場のアニメーションプロデューサーとは別に、企画室では、製作委員会に出てメンバーの人たちと条件の調整をしたり、I.Gに作品を作ってほしいと思っている人たちと情報交換をしながら、よりよい条件で受注できるようにする、そして実際に委員会のメンバーの一人として作品の成功に向けて各種施策を提案・実行していました。


東奔西走する様子が目に浮かびます。そうした仕事の中で、平澤さんにとって忘れられない作品はありますか?

関わったタイトルは全部忘れられませんが、やっぱり『翠星のガルガンティア』です。お金集めもクリエイター集めも自分が主軸となってやりましたし、コンセプトもニトロプラスさんとバンダイビジュアルさんと一緒に作りました。そのあと、コンセプトに賛同頂く形で村田さん(村田和也監督)が参加されて。あれは、はっきりと自分がプロデュースしたと言えると思います。

当時『コードギアス』シリーズや『マクロス』シリーズといったオリジナルのロボットアニメが流行ってて、オリジナルロボットアニメはまだ可能性があると思っていました。一方でそうした作品を手掛けられるスタジオは限定的だったんですが、I.Gもやれるぞと証明したかったんです。

I.Gは設立からその時点まで、オリジナルのヒット作が少なかったんです。あっても、監督が主導している色合いが濃い作品でした。そこでスタジオとしてもう一段階強くなっていくときに、プロデューサー主導でオリジナル企画でヒットが出せるということを証明したかったんです。ときどき、「I.Gさんのヒットはほとんどが漫画原作でしょ」と言われたりするのが悔しかった。だから「I.Gでもやれるんだ。それも、オリジナルでも最も企画・制作が難しいジャンルの一つでやってやるぞ」と思ったんです。最終的に、一定の評価が得られてよかったです。


そんな背景があったんですね。ちなみに、平澤さんは法務で入社されたんですよね。一見、法務でありながらプロデュース業務ができるというのは不思議に見えるのですが、どういったかかわり方だったのでしょうか?

I.Gにやってきたのは2006年なのですが、上場したばかりで、法務関係を強化したいというニーズがI.G内にありました。そんな中「法務きちんとやったらP(プロデューサー)やっていいよ」と言われたので、昼間は法務と部下の育成をして、空いた時間でプロデュース業務をするという生活が始まって。その後転機が訪れたのは、神山さん(神山健治監督)に声をかけてもらったことです。神山さんとは、自分がバンダイビジュアルさんに在籍していた時代に一緒にお仕事をさせてもらった『攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG』のときから、ずっと目をかけてくれてました。そして、『東のエデン』の企画会議の時に、物語でも重要になってくる就活や現代の大学生の感覚がわかる人が必要だとなって、神山さんと石井さん(石井朋彦プロデューサー)が呼んでくれたんです。その後企画合宿が始まったりして、その中で神山さんに実に多くのことを教えてもらいました。

もう一人、きっかけを頂いたのは石川さん(石川光久社長)です。法務の主な仕事の一つはI.Gにとって必要十分な条件が明記された契約書を作成して必要な時期までに締結することです。加えて、契約書は誰が読んでも一通りにしか解釈できないように書かなければならない。そうした簡潔な文章が書ける奴がいるなら、日々の会議の約束事の議事録をとらせておけば、その積み重ねでできている契約書の交渉でもI.Gの利益を確保できる可能性が高くなる。そうした流れで石川さんが交渉する席に呼ばれることが増えて。『ゴースト・イン・ザ・シェル』の実写化許諾交渉のときも、石川さんについていく形で、ハリウッドのプロデューサーたちとの交渉現場にも立ち会いました。


人とのつながりの中で、チャンスをつかんでいったのですね。企画をやってみたいという就活生もたくさんいると思うのですが、声を上げていれば実現できるということなのでしょうか。

キャリアは山登りだと思っています。登山口も登山ルートもたくさんあって、様々なアプローチができます。同じように、キャリアでもそれぞれのルートがあると思います。管理から企画に行く人もいるし、逆もしかり。自分みたいな珍しいルートから入ってる人間もいるわけですし。それに直線ルートって、有名な分混んでたりするんですよね。

バンダイビジュアルさんでお世話になっていた新卒時代、海外営業で英文契約を読めるようになったあと、2年間法務をやっていました。その間同期入社メンバーが続々とプロデュース部門に異動していくのが悔しくて「早くプロデューサーになりたい」と毎日臍(ほぞ)をかんでいました。でも、英文契約が読めるからI.Gに入れたし、法務でいろんな知見があったので『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』みたいな巨大な企画で法務担当としてプロデュースの根幹を動くことができたのも事実なんです。

その場その場で必要とされる方法を考えて手を打っていくと、意外に人通りのない登山道の方が、早く登れたりすることもあるかもしれないですよね。これは、強くお伝えしたいです。


なるほど。そういったI.Gでのキャリアは、今の自分にどのように生きていると思いますか?

クリエイターと深くかかわれたのが嬉しかったですね。I.G時代では、大御所に加えて、駆け出しのクリエイターにいっぱい会えたというのがよかったです。最近で言えば、『ゆるキャン△』の京極さん(京極義昭監督)。I.Gではアニメーターとして駆け出しの時期だったんですよね。一緒にご飯も食べましたし、話している中で、なるほどそうだったのかと思うことがたくさんありました。

やっぱり、クリエイティブな現場が熱量を保ったまま成長していくことが一番難しく、また、価値があるんだと、どこかで自分自身思うところがありまして。そのベースになっているのが、この経験です。とにかく、時間がかかるんだと。作品というのは、これだけ才気あふれる人たちが何年もかけて、ようやくできるものなんだと、感じました。そうした経験から、いかに継続してその人たちにいいチャンスを渡せるか、そして支えるかを考えることが、いまの立脚点になっています。

本を読むことが趣味だという平澤さん。オフィスにもたくさんの本が置いてある


I.Gは、ある側面で見るとアニメ業界で活躍してる人を輩出しているともいえるかと思うのですが、I.Gにはどんな風土があると思いますか?

当時のI.Gは、他の会社に比べて、チャンスが社内に流通する風土があったと思います。活躍を見せた人はすぐ社内で見いだされ、新たな機会をもらえるような風土があって、いわば戦国時代の武将の論功行賞みたいなモデルになっていたと思います。自分自身、法務で仕事をしていればチャンスがくると思って働いていて、実際にチャンスを頂けました。そこでチャンスをものにできた人が活躍したり、名前を残したりしているわけです。石川さんには社内の序列を守ること以上に、若者がどれくらい伸びるかを見たいという欲望があるんじゃないんでしょうか。笑


話は少し大きくなりますが、アニメ業界はこれからどういう変化を見せていくと思いますか?

世界的に見れば、大先輩たちが営々と積み重ねてきた日本アニメのスタイルが、日本を含む多くの地域のクリエイターたちに受け継がれていく時期に来ている気がします。海外の配信サービスなどは、日本のアニメルックで映像が作れるなら日本のスタジオが制作してなくていいと判断すると思います。実際、Netflixのアニメのラインナップって、日本のスタジオばかりじゃなく、東アジアのスタジオなども入っているんです。そのように、制作スタジオも市場も多極化して、お客さんも世界中に広がっていく。とにかく全部、世界中を巻き込んだ戦いになると思います。

そうした中で、超ハイクオリティ・超巨大予算で世界中の傑作と競争するアニメと、そこそこのクオリティと予算で国内のお客さん向けに提供されるアニメの2極化になるでしょう。I.Gは前者の超巨大アニメのお誘いが必ずくるスタジオになっていると思いますので、そういった超巨大案件をやりたいプロデューサーやクリエイターの人が参加すると楽しめるスタジオになるんじゃないかなと思いますね。


最後に、平澤さんの目標を教えてください!

世の中の豊かさは、解決された課題の量によって測ることができると思っていますので、アニメ産業の課題解決をどれだけできるかを自分のミッションに据えています。具体的な課題解決のひとつは、アニメ産業の選択肢を増やすことです。Netflixや国内の製作委員会以外にも、アニメ業界にお金を出していく会社がいる、なおかついい関係で一緒に仕事ができるということを証明したいです。他にも、3DCGのアニメスタジオが世界に対して独自の価値を提供できるとか、そういった難易度が高いけれど意義のあることが可能だと証明していく中で、アニメ業界で起きている20年に一度の変革期を加速させていきたいと思っています。


ありがとうございました!


Production I.Gでは一緒に働く仲間を募集しています
3 いいね!
3 いいね!
同じタグの記事
今週のランキング
このストーリーが気になったら、直接話を聞きに行こう