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インドネシアの高速鉄道計画を見て思うこと

Photo by UX Indonesia on Unsplash

ご存知の方も多いと思うが、インドネシアの高速鉄道計画というものがある。

これはインドネシアの首都ジャカルタと西ジャワ州バンドン間約150 kmを結ぶ計画で、将来的にインドネシア第二の都市である東ジャワ州スラバヤへの延伸が計画されている。

この入札には日本も参画し、新幹線の導入を進めるために入念な調査を行い、入札に挑んだが、日本の提示した調査資料を中国に横流しされ、ほぼ同じ内容の提案、安い価格、政府の債務保証を求めない、という内容の提案を行った中国に契約をさらわれた。

工事に入ると様々な問題が出て2019年完工を謳っていたが、現在は2022年末の完工という計画になっているそうだ。

また当初総事業費約86兆2600億ルピアだった見積は、現在約113兆2500億ルピアに膨れ上がり、国費として4兆3000億ルピアの投入をせざる得なくなった。

モノも規模も異なるが、ITをやっていると既視感のある話と言える。

前半の契約を持っていかれる、なんて話は過去何度も聞いてきたし、味わったこともある。

後半の当初見積もりを大きく超え、納期も大幅に遅延し、というPJも身近によくある話。

傍から見ていると何故そんな失敗に遭うのか、と他人事として評論するのは簡単だが、実際には様々な状況や期待が錯綜し、結果的に誤った判断だった、ということが起きているのかと思う。

最近、ある提案を行った案件であった話だが、RFPに従うといくつかやり方が限定され、それをいかに効率よく組合せていくか、という案件があった。

フェーズを分けた2段階のリリースが条件にあり、しかも先行リリースを求められた機能の実現には、ほぼ全域の機能の達成がないと成立しない。

かなりの無駄も覚悟の上での構成を考え、提案の煮詰めていった。

当然無駄の分だけ見積もりは高くなり、その他組んでいるパートナーの事情もあって最終見積はかなり高いものになってしまった。

それでも内容にはそれなりに自信があり、業務領域に対しかなりのアドバンテージを持っていると思っていたところもあり、価格面での歩み寄りができればそれなりに行けるのではないか、と思えるレベルまで提案は出来上がった。

いざ提出をし、選考を待った。

一次選考を通ると、次はプレゼンによる二次選考だと聞いていた。

待っている間、二次選考に向けての準備を進めていた。

しかし一次選考の選考結果は不採用だった(理由は知らされなかった)。

後日、不採用となった理由を人づてに知ることができた。

採用となった他社の方が「安く」「見栄え」する提案だったそうだ。

その時、何故かこのインドネシアの高速鉄道計画が頭をよぎった。

一次選考で採用された提案から二次選考を抜けるのは1社だけだ。

最終的に選考された提案がどんな内容なのかも知らない。

ただ本質的な部分で、自分たちの提案以上であった可能性はそれほど高くない(と勝手に信じている)。

この先何か問題が起き、PJがうまくいかなかったり、リリース後に何らかの問題が発生したときに、「それ見たことか」と思いたい気持ちがないわけではないが、いろいろ思ったところで負けは負け。

良い提案とは何かを自問自答したところで、それでも手にしてもらえる提案ではない限り、どんなにいい内容であってもそれには意味がなく、そこを乗り越えてこそ選んでもらえるのだ。

卑怯なことはする気はないが、多少表面的な内容になったとしても選んでもらえる土俵に残っていなければ意味がない。

また内容もそうだが、PJ実行における品質、成果物に対する品質も、ITには必要不可欠でありこの客観的評価を得るためにやらなければいけないことは少なくない。

インドネシアの高速鉄道計画にて日本の提案が負けた理由ほど理不尽なものではないが、我々は負けるべくして負け、勝つために必要なことが足りてはいなかった。

また一つ鍛えられたと感謝し、次に向け歩みを進めていきたいと思う。

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