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DXへの取り組みについて講演しました

2020/11/17-18に開催されたAgile Japan 2020にて「三越伊勢丹が考える百貨店におけるデジタルサービスのつくり方〜伝統を舞台にした新しい挑戦〜」、および2020/11/20に開催されたエンタープライズアジャイル勉強会にて「三越伊勢丹におけるDXとアジャイル」という講演をしました。


講演では、アイムデジタルラボが開発してきたYourFIT 365三越伊勢丹リモートショッピングについて、アジャイルを活用しながら、どのような考え方や姿勢で三越伊勢丹のDXに取り組んできたか、について説明しました。


開発スピード

YourFIT 365は2019年4月にコンセプトを決めるワークショップを開催し、6月に開発スタート、そして8月28日にサービスを開始しました。一方の三越伊勢丹リモートショッピングは、緊急事態宣言中の2020年5月にコンセプトを決めるワークショップを開催、7月から開発スタート、11月2日に公開トライアルを開始しました。YourFIT 365は5ヶ月間、三越伊勢丹リモートショッピングは7ヶ月間で立ち上げています。


システムではなくサービスをつくる

我々が取り組んだのはシステムの開発ではなく、新しいサービスの創造です。三越伊勢丹の強みは「人」。デジタル技術は売場にいる販売員(スタイリスト)を支援し、その力を引き出すために使います。こうすることで他にはない価値を提供することができます。

デジタル技術を接客にくみこむことで、お客さまが自然に三越伊勢丹のサービスとして体験できるようにデザインしました。たとえばYourFIT 365であれば、足形の3D計測から、靴をレコメンドするまでにシステムの処理時間が必要になります。この時間を販売員が接客を通じて埋めることで、お客さまはストレスを感じることなくサービスを受けることができます。



三越伊勢丹のサービスですから、当然、売上に貢献しなくては意味がありません。開発の優先順位は売上に寄与するのか?を軸に考えられており、さまざまな改善が行われています。実際、YourFIT 365では購買決定率を20%あげています。


組織内でアジャイルを実現させる

スクラムガイドによれば、プロダクトオーナーの役割は「プロダクトの価値の最大化に責任を持つ」とされていますが、さらに以下のように書かれています。

プロダクトオーナーをうまく機能させるには、組織全体でプロダクトオーナーの決定を尊重しなければならない。

三越伊勢丹だけではなく、多くの日本企業においてプロダクトオーナー(PO)という個人の決定を尊重するのは簡単なことではありません。多くの部門が関わるほど利害関係の調整が困難になり、時間がかかるだけではなく、社内の都合が優先され、お客様に価値のないものになってしまうこともあります。



スクラムガイドでは『プロダクトオーナーは1人の人間であり、委員会ではない』と書かれています。その通りではあるのですが、POに全ての権限を移譲することは難しいです。そこで三越伊勢丹では「POは組織的な意思決定を導くためのハブとなる」という考え方にしています。

さらに関係者を絞り込むことにも注力しています。YourFIT 365の場合、立ち上げ時は対象を新宿伊勢丹の婦人靴売場のみに絞りました。さらに靴売場のスタッフをPOにすることで売場と開発チームが直接やりとりできるようにしました。また、権限移譲も適切に行われた結果、POの決定がきちんと組織内で尊重されました。

一方、三越伊勢丹リモートショッピングは、すべての売場を対象にする必要がありました。これまでであれば多くの時間がかかってい可能性もあったのですが、コロナ禍において店舗が休業しているという危機的状況が背景となり、あえて関係者を最小限にして議論をスタートしました。そのうえで三越伊勢丹のDX推進組織と協業することで多くの売場とのコミュニケーションを実現しています。また、役員を含む意思決定ミーティングを週次で開催し、そこでの意思決定が組織内で尊重されるようにしています。

また、我々はYourFIT 365での経験を通じて、小さいサービスから始め、フィードバックを得ながら段階的に改善していくことが重要であることを学んでいました。最大のポイントは、どのようにサービスを成長させるのか?です。



例えば「車が欲しい」という要求から始めてしまうと、最初に提供される部分はタイヤになります。タイヤだけが提供されても顧客は満足せず、結局は最後に車ができるまで不満を持ち続けます。途中でフィードバックをすることもできません。そうではなくて「AからBに素早く移動したい」という目的から始めましょう。それなら最初に提供するのはスケボーでも良くなります。もちろん、全員を満足させることはできませんが、特定の状況にいるユーザーはスケボーを利用し、なんらかのフィードバックをくれます。このフィードバックに従い、改善を続けながら、だんだんと満足度をあげいくのです。「こういう機能が欲しい」という要求ではなく、その機能が提供する目的に対して満足度を増やしていくことでフィードバックによる改善が可能になるのです。

三越伊勢丹リモートショッピングにおいても、最終的にはすべての売場を対象にすることを見据えてはいたものの、より三越伊勢丹が価値を発揮しやすい売場に絞り込んで、そこで必要な機能だけを提供することに集中しました。

YourFIT 365はサービス開始から1年以上、三越伊勢丹リモートショッピングは1ヶ月も経っていませんが、いずれも毎週リリースを続けており、継続的な改善をおこなっています。


三越伊勢丹のDX

三越伊勢丹では、自らの強みを利用し、さらに活かすことにDXを推進しようと考えています。

たとえばYourFIT 365では、靴のノウハウがあるスタッフがいるからこそお客様の足形データを収集でき、一方で、三越伊勢丹の信頼があるからこそ靴メーカー/ブランドが木型データを提供してくれました。デジタル技術がそれらマッチングし、新しい靴の購買体験を実現しています。また、メーカーとの関係性を活かし、蓄積されたデータから新しい木型を作るといったことにも取り組んでいます。

三越伊勢丹リモートショッピングでは、三越伊勢丹の強みである「接客力」のデジタル化することで競争上の優位性を確立することができると考えました。いかにレコメンドエンジンが優れていても、お客様が納得する買い物を支援できるとは限りません。デジタルメディアを通じた接客が、新しい購買スタイルを生み出していけるはずです。

三越伊勢丹のDXは始まったばかりです。よりよい姿を目指して、これからも取り組んでいきます。

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